サステナブルなエネルギー供給のためのテクノロジーとは?|第2回 SDGs TECH CONNECTレポート

#SDGs目標7#エネルギー#再生可能エネルギー#技術#発電 2021.11.04

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【更新日:2021年11月5日 by 佐野 太一

SDGs CONNECTとRecursiveは9月15日、オンラインイベント「第2回 SDGs TECH CONNECT」を開催した。

今回のテーマは、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」。SDGsに注目が集まる今、テクノロジーを活用した具体的な解決策について検討した。

前半では、日本のエネルギー問題や各社が開発するテクノロジーを紹介するプレゼンテーション。後半では、「SDGs目標7に解決策を」と題したパネルディスカッションを実施。

この記事では、イベント当日の様子をレポートする。

登壇者

株式会社ユーグレナ 広報マネージャー 北見 裕介さん

2019年に株式会社ユーグレナに入社。現在は広報のマネージャーとして広報・PRの全体企画や、オウンドメディア運営など全般を担当。サステナブルタイムズ編集長。微細藻類ユーグレナやクロレラを活用した食品、化粧品等の販売、バイオ燃料の生産、遺伝子解析サービスなど幅広く事業を展開する中、2020年に出荷を開始したバイオ燃料事業では、陸海空の移動体導入の企画を推進。

みんな電力株式会社(※) 専務取締役 事業本部長 三宅 成也さん

名古屋大学大学院(電気工学)修了、神戸大学大学院(MBA)修了。2007年まで関西電力原子力部門にて13年間勤務。その後、アーサー・D・リトル、KPMGコンサルティングにて幅広い業界のコンサルティングの経験を積む。みんな電力では、小売電力事業の責任者として、ブロックチェーンP2P電力プラットフォームの開発などに取り組む。

(※)2021年10月1日より株式会社UPDATERに社名変更

SDGs CONNECT 編集部 佐野 太一

2020年2月にディップ株式会社次世代事業統括部にインターン生として参加。オウンドメディア『StartupTimes』のインタビューライターとして年間100名以上の起業家と顔を合わせる。2021年2月より『SDGs CONNECT』編集部に加わり、SDGs関連ニュースの発信やイベントの企画に取り組む。

株式会社Recursive Co-founder and COO 山田 勝俊

ディーキン大学経営大学院卒業後、日系、外資のIT業界での勤務経験を経てエシカルファッションの日本市場立ち上げと2社の起業を経験。その後、多国籍AIスタートアップ、コージェントラボでセールスディレクターとしてAI-OCR「Tegaki」の営業、アライアンス、戦略等、幅広く担当。2018年度からAI活用コンサルティング及びに新規事業開発支援を行う株式 会社コルノバムを創業し、主に大企業向けにAIプロジェクトを推進。 2020年8月、株式会社Recursiveを共同創業。

株式会社Recursive PR Director 飯野 希

新卒で大手メーカーに入社。国内最大のAI関連webメディア『Ledge.ai』を立ち上げ、編集長としてグロースを牽引。その他大型AIカンファレンス『THE AI』、AI事例集『e.g.』などのAIサービスを立ち上げる。 現在はRecursiveのPR Directorの他、さまざまな事業の立ち上げに関わっている。

日本におけるSDGs目標7と再生可能エネルギーの論点とは|SDGs CONNECT 佐野 太一

目標7の達成のためにできること

最初のプログラムは、SDGs CONNECT編集部の佐野によるプレゼンテーション。SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の概要を説明し、日本のエネルギー問題の主な論点を整理した。

SDGs目標7で掲げられているのは、地球上のエネルギー問題を解決するための内容。世界中の人々に安く信頼でき、持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保することを目的としてターゲットが設定されている。

佐野は、日本のエネルギー問題に関わる主なテーマとして以下の2つを提示した。

①エネルギー自給率の低さ
→もともと、日本は石油や天然ガスなどの資源に乏しい国。エネルギー源として使われる石油・石炭・液化天然ガス(LNG)などの化石燃料はほとんどなく、海外からの輸入に大きく依存している。2017年のエネルギー自給率は9.6%で、これは他のOECD諸国と比較しても低い水準だ。②一次エネルギーにおける化石燃料への依存
→東日本大震災が起こった2011年からは国内の原子力発電所が停止し、火力発電が全体の発電量に占める割合が増加。現在の化石燃料への依存度は85.5%と、非常に高い数値で推移している。

これらの課題を解決するための手段として考えられるのが、地球環境へのダメージを抑えた「再生可能エネルギーの利用促進」とエネルギーの無駄遣いを抑える「省エネ」。

2つの手法を「攻めと守り」に分けるならば、「攻め」と捉えられるのが再生可能エネルギーの活用だ。今回は、再エネが抱える課題に焦点を当てた。

▼SDGs目標7について詳しく解説した記事はこちら。

再生可能エネルギーが抱える3つの課題

主要な再生可能エネルギーとして挙げられるのが、太陽光、風力、水力、地熱、海洋エネルギー、そしてバイオマス。

再エネを活用した発電に関わる課題は大きく分けて3つあるという。

①エネルギー変換効率
関西電力によると、堺港にある火力発電所の出力は堺太陽光発電所の200倍。単位面積あたりでは約2600倍以上の発電電力量がある。②天候などの自然条件にエネルギー量が左右されやすい
→安定的な供給・環境問題・発電コストといったそれぞれの側面で、各発電方法には長所と短所があるため、既存のエネルギーと再生可能エネルギーによる発電をバランスよく組み合わせる必要がある。③発電コストが割高
経産省エネルギー資源庁によると、非住宅向け太陽光発電システムの費用を比較すると、日本とヨーロッパの間には2倍程度の差がある。

注目が集まる脱炭素社会の実現に向け、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を掲げた。再生可能エネルギーの有効活用は、目標達成のための重要なファクターの1つ。

佐野は「世界的には発電コストの低減化が年々進むなど、再エネ技術は日進月歩で進歩しています。ここに関心を集めることが、導入がさらに進む契機になるのではないでしょうか」と締めくくった。

”Sustainability First”で創出するバイオテクノロジーの未来|ユーグレナ 北見 裕介さん

栄養豊富で多機能な微細藻類ユーグレナが持つ可能性

提供:株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナで広報のマネージャーを務める北見裕介さんは、”Sustainability First”で進める事業とエネルギー分野の取り組みについて解説した。

ユーグレナ社は、2005年12月に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の屋外大量培養に成功した東京大学発のベンチャー企業。59種類の栄養素を含むユーグレナの培養技術を確立し、高い生産効率を実現している。

「バングラデシュで目の当たりにした栄養失調の問題を解決したい」という社長の出雲 充氏の想いから立ち上げられた同社は、創業15年目にフィロソフィー(企業理念)を刷新し、”Sustainability First”を掲げた。

北見さんは「ユーグレナグループの仲間全員が“自分たちの幸せが誰かの幸せと共存し続ける方法”を常に考え、行動している状態を作り上げていきたい」と強調する。

豊富な栄養素とともに多様な機能性も備えているのが、微細藻類ユーグレナ。同社は、健康食品や飲料などを生産するヘルスケア事業や、遺伝子解析サービス「ユーグレナ・マイヘルス」をはじめとした多彩な事業を展開している。イベントのテーマでもある「SDGs目標7」の達成に関連する事業が、バイオ燃料事業だ。

自社開発のバイオジェット燃料で飛行機を空へ

提供:株式会社ユーグレナ

ユーグレナ社が所有する横浜市の実証プラントで生産されるバイオ燃料「サステオ」には、微細藻類ユーグレナと産業廃棄油(使用済み食用油)などの原料が用いられている。北見さんによると、バイオマス原料は成長過程で大気中のCO2を吸収するため、燃焼時のCO2排出量は合計で0というカーボンニュートラルの考え方を目指せるという。

「サステオ」は、主にバス、配送車、船舶、消防車、ドローン、飛行機への導入が進んでいる。性状が石油由来の燃料と全く変わらないため、今使っている車両にそのまま使える、買い替えなくても済むことが最大のメリットだ。

2021年に初めて自社のバイオジェット燃料で飛行機を飛ばしたユーグレナ社は、既に2回のフライトに成功している。北見さんは「バイオジェット燃料でのフライト実績は世界で35万回を超えていますが、日本では5回(国産バイオ燃料を使用したフライトの回数)しか行われていない。日本の取り組みは世界に比べて後れを取っています」と訴える。

北見さんによると、日本にバイオジェット燃料を使用したフライト実績が少ない要因は、燃料を生産するプラントの建設に多大なコストがかかること。国の支援や企業同士のパートナーシップ締結の事例が増えていけば、バイオジェット燃料の大量生産が可能になり、産業として形になる見通しが立つという。今後は、官民連携によるバイオ燃料の普及促進に期待したい。

▼SDGs CONNECTは、ユーグレナ社のSDGs取り組み事例を以下の記事でまとめている。

企業価値を高めるトレーサブルな再エネ電力の供給|みんな電力 三宅 成也さん

「顔の見える電力™」の提供を支えるブロックチェーン

提供:みんな電力株式会社

みんな電力株式会社(※)で専務取締役を務める三宅成也さんは、「皆さんは電気を使うとき、それがどこから来ているのか気にしたことはありますか?」という言葉からプレゼンテーションを始めた。

電源構成における化石燃料依存度が8割近くを占める日本。家電製品のスイッチを押すことは、国内のどこかで温室効果ガスを含む煙が上がっていることを意味していると言っても過言ではない。

みんな電力は、ブロックチェーンによる電力トレーサビリティを世界で初めて商用化し、「顔の見える電力™」を提供している会社だ。発電量と需要量を30分ごとにマッチングして電力の取引を見える化し、「どこからどれだけ電力を仕入れ、どこに届けたのか」をトラッキングすることを可能にしている。

同社の電力サービスを利用すれば、再生可能エネルギーによって生産された電気を「誰がどのようにつくったのか」を知ったうえで購入することができるわけだ。

三宅さんは、「電気は物理的には送電線で混ざってしまうため、誰がどのように生産したのかを見分けることはできません。電力取引のトレーサビリティ導入で生産者の顔が見えるようになれば、コンセントの向こう側を意識しながら電力を利用することができます」と語った。

(※)2021年10月1日より株式会社UPDATERに社名変更

「電力の選択」が企業にもたらす価値

提供:みんな電力株式会社

三宅さんによると、企業は再エネ由来の電力を選択することにより、ステークホルダー全体を巻き込んだ企業価値の向上を見込むことができるという。

例えば、アパレル大手の株式会社ビームスは、「ビームス ジャパン(新宿)」を含む複数の店舗で南相馬市にある太陽光発電所などの電力を利用している。このことは福島県の復興支援にも繋がった。

電気のトラッキングは、払った電気料金がどこに行くのかを明確にして「価値ある電源」を増やす仕組み。生産地や生産方法は、電気に付加価値をもたらす。

三宅さんは、「需要家の選択次第で、再生可能エネルギーの比率が向上するかどうかが決まります」とまとめた。

▼SDGs CONNECTは、みんな電力株式会社にインタビューを実施している。ぜひチェックしてみてほしい。

パネルディスカッション「SDGs目標7に解決策を」

<モデレーター>

  • 飯野 希さん(Recursive PR Director)

<パネリスト>

  • 山田 勝俊さん(Recursive Co-founder and COO)
  • 三宅 成也さん(みんな電力 専務取締役 事業本部長)
  • 北見 裕介さん(ユーグレナ 広報マネージャー)

イベント後半では、共催企業のRecursiveから飯野さん・山田さんを加え、「SDGs目標7に解決策を」をメインテーマとしたパネルディスカッションが行われた。テクノロジーを用いてエネルギー問題の解決に取り組む企業が抱える課題感や、今後の展望についてチェックしてみてほしい。

Recursiveは、「AI for sustainable innovation」を掲げるベンチャー企業。AIをはじめとした先端テクノロジーを活用し、数々の企業とサステナビリティを実現するための事業開発や研究を行っている。

同社が持つAI×SDGsのノウハウを紹介するホワイトペーパーはこちら

テーマ1:SDGs目標7達成のためのテクノロジー活用。超えるべきハードルは?

ー飯野「テクノロジーを用いてサステナビリティを推進する上で、どんな壁にぶつかりましたか?」

ー山田「Recursiveは、電力やエネルギー源を供給する会社ではなく、SDGsを先端テクノロジーで達成しようというコンセプトの会社です。私たちが超えるべき壁というのは、『先端テクノロジーがビジネスにもたらす成果』を企業様にご理解いただくところだと感じています。規模が大きいほどシステムの導入によるインパクトが大きくなるので、大手企業様の産業プロセスの最適化は積極的に進めていきたいです。」

ー飯野「日本企業に先端テクノロジーを導入してもらうために、みんな電力さん・ユーグレナさんはどんな取り組みを進めていますか?」

ー三宅「再エネ電力に香りや味があるわけではないので、当社の場合は電力を再エネ由来に切り替えるという考え方自体を理解していただく必要がありました。そこで、電気の生産者や生産方法を見える化するという部分に注力しています。ブロックチェーンを活用することで、再エネ電力の購入に『手触り感』をもたらすことが重要なんです。ユーグレナさんには顧客として電気をご利用いただいていますが、導入を決定するのにどんなプロセスがありましたか?」

ー北見「ユーグレナ社にはCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)という18歳以下しか就くことができないポジションがあります。会社と未来を変えるためのすべてに取り組む専任の役職です。みんな電力さんと契約することはもともと検討していたのですが、CFOが発した『当たり前じゃないですか』という一言で方針が決定しました。大人世代の決定が子どもたちの未来に悪い影響を及ぼすことはあってはならないという発想で、当社ではCFOの意見を基本的にすべて検討するようにしています。」

ー飯野「海外では、環境に配慮した消費行動が当たり前になりつつあります。日本企業の意識が大きく変わるタイミングはいつ頃になるのでしょうか?」

ー三宅「海外企業はNGOに大きな影響を受けます。企業が環境に配慮しているかを判断するための質問状を頻繁に送ったりするので、仕組みが大きく変わりやすいんですよね。アップルが製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギー由来に切り替える方針を発表したのにも、こうした背景があります。ブランディングと再エネ電力の利用を結びつける意識が定着すれば、日本企業の取り組みも今後数年で大きく変わるかもしれません。」

ー北見「SDGsやサステナビリティの考え方が、どこまで一般の消費者に認知されるかというのも大きな要因です。この認知度が上がってくると、企業が再エネを取り入れる意識も自然と強くなっていくと思います。ユーグレナ社は昨年、既存の飲料用ペットボトル商品の全廃を決定しました。企業経営の視点では難しい判断でしたが、大手他社に少なからず影響や意識変化を与えられるかもしれないという思いから方針決定に至っています。ニーズの移り変わりに気づいた企業から、思い切った行動を起こす必要があるのではないでしょうか。」

テーマ2:持続可能なエネルギー供給のためのパートナーシップ。テクノロジーと相性がいい業種・分野とは?

ー飯野「1社だけで新しい試みを始めることは、なかなか簡単なことではありません。企業同士でパートナーシップを結ぶために必要なのはどんなことでしょうか?」

ー山田「先端テクノロジーを活用することはあくまで手段に過ぎず、『テクノロジーで何をするのか』が大切です。これまで数多くの企業様と商談をさせていただきましたが、社会的意義のある『課題解決型』ビジネスの成功率の高さを実感しています。業界・分野というよりは、企業がどれほど本気で社会課題の解決を考えているのかがパートナーシップ締結のポイントだと思います。」

ー北見「豊富なリソースがあるけれど、踏み出すべき方向性がわからない企業。アイデアはあるけれど、実現するためのリソースが不足している企業。このような企業同士が出合ったとき、物事は前に進むと思うんです。ユーグレナ社には、いすゞ自動車様とともにバイオディーゼル燃料を開発した実績があります。いすゞ自動車様と燃料のテストを実施すれば、環境配慮のアピールと正確な実証データの算出を同時に行うことができますよね。このような企業双方がwin-winなパートナーシップの組みやすさは、日々感じています。」

ー三宅「私たちの『顔の見える経済』という考え方に共感いただける企業様は、必然的に情報感度が高いです。ベンチャー企業と協力することで、若者を中心とした消費者の考え方を可視化しようとする動きは拡がりつつあります。SDGsをきっかけに新たなネットワークを作るという観点がパートナーシップ締結のモチベーションの1つになるんじゃないかと思っています。」

ー飯野「モノやサービスがどこからやっているのかを一人ひとりが意識することで、結果的にすべての企業が持続可能な事業に取り組まなくてはいけなくなる状況をつくる。企業や個人という垣根を越えて、私たちの思考をサステナビリティな方向に向けていくことの重要性に改めて気づかされたセッションでした!」

まとめ

「第2回SDGs TECH CONNECT」では、再生可能エネルギー技術を活用したSDGs目標7の達成方法と、解決すべき課題について議論がなされた。

持続可能な社会を目指して事業を展開する各社が持つ課題感に共通していたのは、「企業と消費者の双方のマインドチェンジ」の必要性だ。

「安さ重視」「効率重視」の思考から抜け出す動きを気づいた人から実行していくことが、SDGsのすべての目標達成に通じる解決手段なのかもしれない。

エシカル消費やESG投資の考え方が拡がりつつある中、企業はより具体的な取り組みの策定やパートナーシップの締結を検討する必要があるのではないだろうか。

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