SDGsが採択されて以降、SDGsに対する取り組みを行う人や企業が増えてきました。
しかし、その一方で、SDGsを掲げるいまの世界と日本が向かう先がSDGsが本来意図しているものとずれてきているのではという「取り組みの矛盾」を指摘する声も上がっています。
今回の記事では、そんな矛盾とどう向き合いながら行動していくべきかについて解説していきます。
見出し
SDGsの取り組みに矛盾が生じる理由
個人でSDGsに取り組むときの矛盾
SDGsの取り組みを行うにあたり、どういったことが矛盾であると言えるのでしょうか。
それは、「個人で行うSDGsの取り組みと、SDGsの取り組みを行っている個人が大切にしている軸の間でずれが生じた状態」にあると言えます。
例えば、小食の人が食事を注文して、食べきれない量を残すことはフードロスに繋がります。しかし、小食の人に無理やりにでも全て食べさせることが正しいとは言えません。
このように、SDGsに取り組んだ際に矛盾が生まれてしまう事例が存在するのです。
今回は、実際の矛盾例とその予防策についてご紹介いたします。
企業でSDGsに取り組むときの矛盾(SDGsウォッシュについて)
企業が取り組むSDGsには、時として矛盾が存在します。
個人で取り組むSDGsと違い、良い面でも悪い面でも世間に大きな影響を及ぼすのが企業によるSDGsの取り組みです。
そのためSDGsの取り組みに慎重になる必要性がありますが、SDGsへの取り組みを行っているように見えて、その実態が伴っていないビジネスも存在します。
それをSDGsウォッシュと呼びます。
こちらの記事でSDGsウォッシュと指摘された企業例や、避ける方法についてを詳しく紹介しています。
▼SDGsウォッシュについて詳しくはこちら
SDGsと矛盾している4つの問題
例① 電気自動車の二酸化炭素排出問題
環境にやさしいと言われており、現在も開発が進んでいる電気自動車ですが、エネルギー源である電気に注目すると、違った捉え方ができます。
特に日本をはじめとした世界の産業主要国は、火力発電に頼っている国が多く、日本原子力文化財団が公表した2019年のデータでは 日本が89%、中国が87%、アメリカが84%となっています。
つまり、電気自動車は既存の車よりも排気ガスを減らせるとしても、燃料の代わりにエネルギー源としている電気の発電を必要としているために、膨大な二酸化炭素が空気中に排出されてしまうという問題が発生します。
例② プラスチック削減による雇用問題
現在、プラスチックの削減が叫ばれており、ラベルレスのペットボトルが普及したり、紙ストローを採用する飲食店が増えたりするなどの取り組みが行なわれています。
しかし、プラスチックの削減をこのまま続けると、プラスチックを作っている人たちの仕事が失われ、SDGs目標8の「働きがいも 経済成長も」に相反する動きとなってしまう恐れがあります。
また、ラベルレスの普及により商品の形が似てしまい、他社との区別が難しくなるという問題も発生しています。
独自の形のペットボトルを作れる大企業と違い、中小企業は開発力が低く、差別化が図れずに大きく売り上げに響く可能性も懸念されています。
例③ 高価なオーガニック化粧品
ナチュラルコスメブランド「LUSH」をはじめとした、環境に配慮した成分配合や、サステナブルなパッケージを使用している化粧品が存在します。
しかしそのような商品は一般的な化粧品と比べて値段が高いことが多く、手を出しにくい人が一定数存在するのも事実としてあります。
SDGsを追求した商品が開発されても、値段が高いという理由から購入を諦めなければいけないという矛盾が存在していると考えられます。
例④ オリンピックの廃棄問題
オリンピックは「スポーツは持続可能な開発における重要な鍵」とされており、政府は気候変動対策や資源の有効利用、生物多様性の保全などに配慮することを運営の柱にしていました。
しかし、国立競技場の建設において貴重な熱帯林の木材が資材として使われていたことや、スタッフ向けに配られる予定だった弁当が大量に廃棄されてしまったことなど、実際はSDGsに矛盾した事例があったことが分かっています。
矛盾を回避するために行なうべき2つのこと
では、SDGsの矛盾を防ぐためにはどのような対策が必要でしょうか。いくつかの対策をご紹介いたします。
①矛盾に気づく
いままでに紹介したように、私たちの日常生活には一見SDGsの取り組みを行なっているように見えても、実は矛盾していて、逆効果をもたらしてしまっている場合が存在します。
私たちが少しでもその矛盾を無くしていくためには、私たちの普段の生活のために、さまざまな矛盾が都合よく隠されてきたことを、知ることが大切です。
②他人に押し付けない
個人としては、自分では絶対に譲れない軸を持ちながら、できる範囲でSDGsに向けて取り組んでいくことが大切です。
自分の許容範囲以上の活動を続けていると、長く続かなかったり、途中で嫌になってしまったりすることがあります。
よって、「自分だけが無理する必要はない」という心を持ちながら、個人でSDGsの取り組みを行っていく事が鍵となるのではないかと考えています。
その上で、他人にも自分の軸としていることがあることを忘れてはいけません。
そのため、自分の行っているSDGsの取り組みを他人に押し付けるといった行動は推奨できません。自分のできる範囲で、少しずつでも長く続けていく事が大切であると言えるでしょう。
まとめ
個人と企業の両方の点で、一見SDGsの取り組みを行なっているように見えても、実は矛盾していて、逆効果をもたらしてしまっている場合があるということを紹介しました。
私たちはSDGsをただ行うだけで終わりにするのではなく、定期的に行動を振り返り、自分の活動がSDGsに矛盾していないかを振り返る必要があります。この記事が、自分の活動を思い返すきっかけになれば幸いです。
わたしたちのメディアはSDGsに特化したメディアです。様々なトピックスが取り上げられており、新たな発見があるかもしれませんので、是非読んでみてください!
SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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大学では西洋史を勉強しています。趣味はトマトの食べ比べ。高校時代から触れてきたSDGsについて、自分自身でも学びながら発信していきます!