《徹底解説》CSR企業ランキング上位の企業の取り組み|上位5つの企業を徹底解説

#環境 2021.12.01

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【更新日:2021年12月17日 by 三浦莉奈

2015年に国連でSDGsが採択されて以降、CSRの重要性はますます高まっています。

みなさんは「CSR」について詳しく知っていますか?

よく聞く言葉になってきた現代でも、具体的なことは知らないという人も多いのではないでしょうか。

東洋経済新報社は、1,600社以上の「CSR企業調査」のデータを元に財務・非財務の両面を評価した調査母数国内最大のCSR総合調査である「CSR企業ランキング」を2017年から毎年発表しています。今回は、2021年度版のランキング上位5社の取り組みをご紹介します。

CSRとは

CSRとは「Corporate Social Responsibility」という言葉の頭文字をとった言葉で、日本語では「企業の社会的責任」といい、社会や環境に配慮・貢献し、その企業が関わる全ての人や団体、そして社会に対して責任のある行動をとることを意味します。

代表的な活動例として、ボランティアや募金活動が挙げられます。CSRは必ずしも企業の利益に直結するわけではありません。

SDGs CONNECTでは、CSRについて詳しく説明した記事を公開しています。

CSRに取り組む2つのメリット

続いてCSRに取り組むメリットをご紹介します。

① 企業価値の向上・維持

1つ目のメリットは、CSRを通して積極的に社会貢献することで、世間の企業に対するイメージが向上することです。

実際に東京商工会議所が実施したアンケートによると、中小企業の79.7%、大企業の98.3%がCSRに取り組んだメリットに「企業イメージの向上」を挙げています。

② ステークホルダーへの影響

2つ目のメリットは、CSR活動を行うことで、取引先や株主などのステークホルダーからの信頼を得ることができることです。

消費者から信頼されている企業と接することによって、取引先もイメージの向上というメリットを享受することができるため、取引先との関係もより強固なものとなります。

また、消費者や取引先から信頼されている企業は、将来性も高いと考えられるので、投資家の注目も集まります。

前述した東京商工会議所のアンケートによると、中小企業の56.7%、大企業の44.1%がCSRに取り組んだメリットに「販売先・納入先との関係強化」を挙げています。

CSRに取り組む企業ランキング

CSR企業ランキングとは

東洋経済新報社は、調査母数国内最大のCSR総合調査である「CSR企業ランキング」を2017年から毎年発表しています。

東洋経済新報社はランキング作成にあたり、CSRと財務の両面を重視し、幅広いステークホルダーに信頼される会社を見つけるため、「東洋経済CSR調査」データベースを使用しています。15回目となる2021年版では、『CSR企業総覧』2021年版に掲載する1614社を対象にCSR143項目、財務15項目で総合評価を行いました。

上位800社までのさらに詳しい得点の内訳などランキングの詳細は『CSR企業白書』2021年版に掲載しています。

CSR企業ランキングはこちら▼

信頼される「CSR企業」ランキングTOP500社 | CSR企業総覧

2021年ランキングトップ5の企業の取り組み

2021年CSR企業ランキングトップ5の企業は以下の通りです。今回はこれらの企業のCSRの取り組みを紹介します。

1位 KDDI
2位 日本電信電話(NTT)
3位 富士フイルムホールディングス
4位 日本たばこ産業(JT)
5位 花王

1位 KDDI

KDDIは2020年に続き2年連続で1位となりました。

KDDIは、「ステークホルダーの評価や意思決定への影響」と「自社が社会・環境・経済に与えるインパクト」の2つの視点のもと取り組みの検証を行い、6つのマテリアリテイ(重要課題)を定めており、サステナビリティを経営戦略の一環として位置付けています。

KDDIの6つのマテリアリテイ

  • 安全で強靭な情報通信社会の構築
  • 情報セキュリティの確保とプライバシーの保護
  • ICTを通じた心豊かな暮らしの実現
  • 多様な人財の育成と働きがいのある労働環境の実現
  • 人権尊重と公正な事業活動の推進
  • エネルギー効率の向上と資源循環の達成

KDDIが1位に選ばれた理由の一つとして、事業を通じてどのように社会課題の解決へ貢献できるかといった観点で活動が行われている点があげられます。強靭な通信インフラを提供し続けるため、日々アップデートしながら改善に取り組んでいます。

具体的には、「スマホ・ケータイ安全教室」「スマホ de 防災リテラシー講座」などを通して、子どもたちや高齢者が安心・安全にスマートフォンや携帯電話を利用できるようになるための教育を行なっています。

また、地域創生への取り組みも行なっています。岐阜県飛騨市では、2019年からICT技術を使ったスマート農業システムが導入され、総労働時間の50%を占めていた水田の水管理の作業時間を70%以上削減することに成功しました。

水田の管理には、水位・水温・地温を計測できる「水田センサー」と水位低下時に水門の円柱が下がり自動で水門を開ける「自動水門装置」が導入され、農家はスマホで情報を取得でき、見回りに行く回数が軽減されました。

出典:KDDI

このほかにも、従業員による環境保全活動や、安定した情報通信サービスの提供、被災地支援の募金募集、女性の活躍推進、働き方改革、健康経営の実践など、様々な取り組みを行なっています。

2位 日本電信電話(NTT)

2位は2020年の結果の3位から上昇したNTTです。

NTTは、CSR活動における具体的な重点取り組み項目を示した4つの「CSR テーマ」を掲げており、社会的責務の大きいグループとして幅広く活動しています。

4つの「CSR テーマ」

  • 人と社会のコミュニケーション
  • 人と地球のコミュニケーション
  • 安心・安全なコミュニケーション
  • チームNTTのコミュニケーション

また、2005年度に設置された「CSR委員会」において毎年1回以上討議し、経済・環境・社会の各側面からなるCSRへの取り組みについてマネジメントしています。

有給休暇取得率が88.7%と高水準で介護休業も最大1年6カ月と長く、障害者雇用率も2.70%と法定雇用率2.3%を大きく上回っています。

主な活動として、自然災害による被害者の生活再建に必要不可欠となる、「被災証明書」の発行の手間を削減することを目的とした「被災者生活再建支援システム」では、迅速な証明書発行を実現し被災者支援に貢献しました。

また、 NTTグループによるIoT技術とクラウドを活用した「地域食品資源循環ソリューション」では、地域の食品関連企業から排出される食品廃棄物をリサイクル事業者が回収し、それを堆肥に変換した後、農作物の生産者に提供するというリサイクルループを実現しています。

3位 富士フイルムホールディングス

富士フイルムホールディングスは、企業統治+社会性の分野で高い評価を得て、3位という高い順位になりした。

富士フイルムホールディングスも上位2つの企業と同様に、CSR活動方針と、CSR計画を立てて積極的に取り組んでいます。

2030年に目指す姿として、2017年にCSR 計画「Sustainable Value Plan 2030」 を策定し、「事業を通じた社会課題の解決」と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」の両面から4つの重点分野(環境、健康、生活、働き方)と事業活動の基盤(サプライチェーン、ガバナンス)における課題・ 目標を設定しています。

富士フイルムでは、従業員へのコンプライアンス意識の浸透を目的として、2019年から毎年グローバルで企業行動憲章・行動規範についての教育を実施し、「理解、順守、行動する」旨の順守宣言を全従業員に求めています。また、ハラスメントや不祥事防止等、コンプライアンスやリスクに関する課題を職場の仲間と議論する「職場ディスカッション」を定期的に実施し、行動規範の内容が「自分ごと」となることを目指しています。

また、以下のような重点リスクを設定しており、それに対するリスクマネジメントプロセスが明確に規定されています。

リスク項目 選定理由
個人情報管理 各国の規制強化の状況下、法令違反や情報漏洩事故の影響が大きいため、管理を強化
情報セキュリティ 製品、サービス、製造でのICT活用の拡大に伴い、従来の社内システムへの強化が必要
ヘルスケア事業のコンプライアンス

(倫理・透明性の確保)

ヘルスケア事業は、社会及び各国の規制当局から、より高い倫理性、透明性、公正な事業活動が求められており、法令順守はもとより、社会的要請にも的確に応えていく必要がある
不正・不祥事撲滅 発生事案は減少傾向にあるが、海外を中心に管理強化と教育の継続展開が必要
労働管理 2019年4月の働き方改革法施行に伴い、勤怠の適正管理と長時間労働防止を徹底
ハラスメント行為 ハラスメントに対する社会的関心が高まる中、ハラスメント行為防止は必須の課題

リスクの抽出とアクションプラン策定のプロセス

また、2013年〜2019年の間でグループによるCO2排出量を30%削減することに成功しているなど、社外での取り組みにも力を入れています。

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4位 日本たばこ産業(JT)

日本たばこ産業(JT)グループは、社会貢献活動の重点課題として、「格差是正」「災害分野」「環境保全」の3つに焦点を当てています。

具体的に「格差是正」では、「JTグローバル奨学金制度」を設けており、日本に留学する私費留学生に対して奨学金を給付しています。採用者には、月額13万円(東京23区居住者は15万円)の奨学金を最長2年間にわたり給付しています。また、社会の持続可能な発展に貢献できる優秀な人財の輩出を目指し、年2回交流行事も実施しています。

「環境保全」では、全国9カ所にある「JTの森」では 木を植え、森を整備することで豊かな自然を守っています。山梨県にある「JTの森 小菅」では、スギやヒノキといった針葉樹を伐採し、土壌を豊かにする落葉をもたらす広葉樹を植栽。針葉樹と広葉樹がともに育つ混交林づくりで、水源の森としての機能を高めようとしています。また、森に適度な光を入れて木々を育成する、間伐も実施しています。これは、従業員の環境教育やボランティア、福利厚生の機会ともなっています。

5位 花王

花王は、「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」「よりすこやかな地球のために」という3つの軸で持続的な社会に貢献しています。こちらも戦略がはっきりと規定されていて、19の重点課題が設定されています。

具体的には、乳がん防止の世界的な運動である「ピンクリボン」に賛同し、「花王グループピンクリボンキャンペーン」を実施しています。がん教育プロジェクトや商品を投資て乳がんの早期発見の大切さを伝えています。また、「手洗い講座」や「お掃除講座」などの出張授業を小学校低学年に向けて実施するなど、教育面の取り組みも充実しています。

また、商品自体のデザインをユニバーサルなものにしたり、環境に配慮した素材を使うなど、商品を通した社会貢献ができています。

まとめ

今回は、CSRの取り組みを高く評価されている企業の取り組みをまとめました。

CSRは直接利益には関わらないものもありますが、企業にとってはステークホルダーと強固な関係を築くために必須とも言えます。

利益だけを求めずに本質から社会を変えたいと、活動している企業がさらに増えていくことを願っています。

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