《徹底解説》ファッション業界とSDGs|課題から取り組み事例まで紹介

#SDGs目標12#SDGs目標8#再利用#持続可能#環境 2021.08.31

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【更新日:2021年9月11日 by 森あゆみ

私たちの生活が多様化する中、ファッション分野も大きく変化しています。スマートフォンの台頭により、ZOZOTOWNなど気軽にファッションアイテムを購入できるようになりました。また自社サイト上にショップ機能を搭載し、ファンに対して直接アイテムを販売するD2Cも盛んになっています。

競争が激しいファッション分野では、少しでも安い価格でアイテムを提供しようと、ファストファッションも大きく台頭し、存在感を示しています。

多種多様な服が展開されるようになった今、個性としてファッションを楽しめるようになりました。

国内のファッション分野の市場規模は10兆円近くになるとも言われており、SDGsで掲げられた持続的な社会に向けて、多くの企業が取り組み始めています。

今回は、そんな「ファッション×SDGs」について徹底解説します。

ファッション業界でSDGsの注目が高まる3つの理由

①大量生産大量消費:膨大なファッションロス

近年国内では安い値段で手に入るファストファッションが流行しています。その影響で国内における衣服の供給数は増加しているものの、服が安価になっていくことにより、衣服のライフサイクルが短期化し、大量生産・大量消費が拡大しています。

環境省が発表している「1人あたり(年間平均)の衣服消費・利用状況」のデータを見ると、購入枚数が約18枚、手放す服が約12枚、着用されない服が約25枚となっており、「低価格」という特徴を持つファストファッション流行の影響により、消費者の中で衣服の短サイクル化が起こり、大量消費、さらには大量廃棄につながっていることがわかります。

参照:環境省_サステナブルファッション (env.go.jp)

②労働力の搾取

ファッション分野では、労働力の搾取が問題視されるケースが多くなっています。

安価に商品を販売するために、危険な薬品の取り扱い、低賃金かつ長時間の悪条件の労働、児童労働など、多くの問題が発生しています。

例えば、中国では新疆ウイグル自治区のウイグル族に対しての強制労働が問題になっています。世界で流通する綿(コットン)製品の約20%はウイグルで生産されたものが含まれていると言われています。

ファッション分野では、そのサプライチェーンが海外にまで広く渡るため、多くのアパレルメーカーが批判の的にもなっており、世界的な問題になっています。

参照:気づいてる? ファストファッションの裏にある真実。 | Vogue Japan

③環境への悪影響

ファッションは生産時の環境負荷の問題も抱えています。

原材料調達、製造、輸送、販売など多くの段階を経て流通される衣服は、各段階でさまざまな環境負荷が発生しています。

例えば、原材料の調達段階では、コットンなどの天然繊維の栽培時に大量の水を消費することや、化学肥料による土壌汚染などが問題として指摘されています。さらに、ポリエステルなどの合成繊維は有限の石油資源を使用するだけでなく、工場でCO2も排出され、環境に負荷がかかっています。

また、天然繊維を栽培する過程で行われる農薬散布や害虫駆除などは、農業従事者の環境にも悪影響を与えています。

原材料調達から製造段階までに排出されるCO2の排出量は約25.5㎏とも言われています。また、服1着を作るために約2300Lもの水が消費されています。

石油産業に続いて、2番目に環境汚染の多い産業でもあるファッション産業にとってこれらの問題は改善すべき非常に重要な課題であると言えるでしょう。

SDGsに取り組むファッション業界の事例

ファッション業界では、さまざまな企業が持続的な社会をつくっていくために取り組んでいます。主な取り組みは以下に分類されます。

  • 服を長期的利用の促進
  • 服の再利用の促進(リユース)
  • 計画的な販売の促進
  • 製造過程の適正化
  • 服の再活用の促進

服を長期的利用の促進|THE NORTH FACE

ファッション分野の持続可能性を高めるには、まず、1着を長く愛用してもらう工夫が重要です。

現在、多くのファッションブランドが展開する中、服の利用期間が短期化し、新たな服を購入する機会も増加しています。そんな中、環境により負荷をかけないようにするためには、衣服の買い替えを減らたり、衣服そのものの質を向上し、壊れづらくするなどの取り組みが必要になっています。

「THE NORTH FACE ザ・ノース・フェイス」を提供する株式会社ゴールドウインは、1着の服の着用期間を長くするために取り組んでいます。例えば、キッズウェアでは、子どもの早い成長に合わせて、袖丈や裾丈を調整できるEXP GROW systemを開発しました。通常のウェアより1年長く着用が可能です。

また、マタニティウェアでは妊娠中、産後の体型変化に合わせられるようシルエットの変更が可能なオーバーオールや、産後も子供と一緒に着用できるシステムを備えたダウンコートなどを開発し、子供の成長後まで長期間の着用が可能となる製品の設計を行っています。

このように、少しでも長い期間、着用してもらえる工夫がファッション分野全体に求められているといえます。

服の再利用の促進|エアークローゼット

服の長期的な利用を促進しても、場合によっては必要性がなくなってしまい、手放してしまうことも多いでしょう。そこで、服を長期的に利用してもらうだけでなく、必要ではなくなったあとに、必要な人に服を再利用してもらう取り組みも重要になっています。

また、再利用だけでなく、複数人でファッションアイテムをシェアし、必要なときだけ、必要なアイテムを利用するシェアリングエコノミーの活用も重要です。

エアークローゼットは、プロのスタイリストがコーディネートした洋服を月額制で借りられるファッションレンタルサービスです。スマートフォンアプリから簡単に衣服をレンタルすることができるサービスで、1着1着の洋服が無駄に捨てられることなく、必要なときに必要な人が、その衣服を着用できるようになっています。

他にもメルカリやラクマなど、スマートフォンアプリから簡単に出品できるフリーマーケットサービスも台頭しており、必要ではなくなった衣服を簡単に転売することができるようになっています。

このように、必要がなくなった衣服は廃棄するのではなく、必要な人に届けられる仕組みづくりをさらに進めていくことが、ファッション分野全体で求められています。

計画的な販売の促進|アダストリア

各ブランド・店舗では毎年、毎シーズンごとにデザインの異なる衣服が展開されています。そのため特定の時期に売り切る必要があり、売り切らなければ廃棄されてしまいます。そのため、なるべく廃棄を出さないように適正在庫を保つ「在庫管理」の必要があります。

グローバルワーク、ニコアンド、ローリーズファームなど、複数のブランドを展開する株式会社アダストリアは売上や粗利に応じて仕入や在庫の調整をするOTB(open to buy)管理の徹底、また商品ごとの管理を徹底し、追加発注及び仕入抑制を素早く判断することで在庫を適切にコントロールしています。

また、売れ残った在庫はアップサイクルや二次流通などへの再販を実施しており、2020年2月には、着られることのない「倉庫の服」を黒染めによってアップサイクルし、再販売するブランド“FROMSTOCK”をスタートさせました。

このように衣服の過剰生産をしないための工夫や、また過剰生産してしまった際の対策などをすることが大量廃棄を防ぐことにつながっています。

製造過程の適正化|東レ

ここまで衣服の製造後に行われている各ブランドのサステナビリティに繋がる取組を紹介してきました。もちろん、製造段階でも環境への負荷などを考える必要があります。

ここでは原材料の視点からSDGsに取り組む事例を紹介します。

合成繊維を初めとする基礎素材を展開している東レでは回収したペットボトルを再生繊維として活用するという取組を行っています。

2019年9月に使用済みペットボトルを原料としたリサイクル繊維ブランド「&+」立ち上げ、2020年1月から本格的に糸や縫製品などの製品を販売しています。

東レの高い技術力により、繊維の断面や細さの実現が可能となり、幅広い衣類への活用を実現しています。

このように衣服の原材料自体を見直すことで消費者自身が何か特別なことをしなくても環境配慮の取り組みに参加していることにもなるため、原材料という根本からの見直しは今後もファッション業界に求められていくでしょう。

参照:https://www.andplus.toray/
https://www.wwdjapan.com/articles/921881

服の再活用の促進|株式会社良品計画

あなたは着なくなった衣服を手放す際、どのような手段を選びますか?

ゴミとして処分したり、リサイクルショップへ売却したりとさまざまな方法があります。

環境省が発表しているデータによると、衣服を手放す手段のうち68%は可燃ゴミ・不燃ゴミとして処分されており、資源として回収される衣服はわずか18%となっています。

そんな中、2020年12月にオープンした無印良品 東京有明では江東区と連携して衣服を資源として回収し、リユース・リサイクルするという取り組みを実施しています。

回収された古着は国内外での再利用されるだけでなく、工業用雑巾(ウエス)の加工されたり、さらに軍手や断熱材フェルトなどに使用される再生原料になります。

サービス開始1.5ヶ月で約1.6トンの古着回収を達成しました。

このように、衣服の処分方法には環境配慮につながるような手段があり、この手段を推進するようなサービスを自治体などを巻き込んで実施していくことでより効果的なものとなります。

参照:st_fashion_and_environment_r2gaiyo.pdf

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

まとめ

今回は「SDGs×ファッション」について紹介していきました。

普段から身近に存在してるファッションにはSDGsの観点において、さまざまな課題を抱えていることがわかったと思います。

私たち消費者は衣服を購入する際に「本当に必要かな」と慎重に検討したり、衣服を手放す際もゴミ以外の処分方法を実践したりと課題解決に取り組むことができます。

また各ブランド・メーカーのSDGsの取組に興味を示すことも非常に大切です。

ぜひ自分に合った取組を探してみてください。

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