SDGs目標8「働きがいも経済成長も」の達成のため、どのような取り組み事例があるかみなさんはご存じでしょうか。取り組み事例から企業にできることや、個人にできることの参考にしたい方も多いのではないでしょうか。今回は、SDGs8の現状を紹介し、課題解決のための取り組み事例を10選紹介します。
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SDGs8「働きがいも経済成長も」とは
SDGs目標8は「包摂的かつ持続可能な経済成⻑及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用 (ディーセント・ワーク)を促進する」というテーマのもと、「経済成長」と「働きがい」の両方をバランスよく伸ばすことでより良い社会を目指していく目標です。
ディーセント・ワークとは性別や障害などに左右されず、安全な職場で一定水準賃金が受け取れるなど人としての権利をまっとうに受け取れる仕事のことです。
SDGs8の現状や課題
世界の達成度と課題
世界では人口増加に伴い、雇用機会の拡大が求められており、世界各地の生産年齢人口(15〜64歳)の推移を予測したものでは、1950年から2010年で約3倍に増えています。、世界の人口は、今後さらなる増加が見込まれています。
国際連合広報センターによると、2030年までに世界で毎年約3,000万件もの雇用創出が必要だといわれています。
日本の達成度と課題
「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると2022年の日本のランキングは19位で、2021年より1位ランクダウンしました。
ただしSDGs目標8は2015年から目標達成値を毎年超えており、取り組みが足りないわけではありません。
日本での課題は特に非正規雇用への対応があげられます。
2020年の非正規雇用労働者数は2000万人を超えており、そのすべてに正社員と同じような待遇が与えられていません。
また非正規雇用は女性の方が多い傾向にあり、ジェンダー差別の点からみても改善する必要があります。
▼SDGs目標8の現状について詳しくはこちら
https://sdgs-connect.com/archives/31503
SDGs8の課題解決に向けてできる6つのこと
SDGs目標8の課題解決に向けてできることは何があるでしょうか。
企業ができること、私たちにできることを紹介します。
解決のために企業にできる3つのこと
失業率の改善
失業率の改善は必須級といってもいいでしょう。
労働環境や公平な賃金、雰囲気など離職に繋がる可能性のあるものは改善していかなければいけません。
環境が整えば社員のモチベーションも変わり、一人一人が働きがいを感じ、結果的に会社の経済成長も見込めるようになります。
SDGs目標8「働きがいも、経済成長も」の実現のためには、失業率の改善を積極的に進めていくことが求められています。
雇用環境の改善
障がい者雇用やジェンダー平等などが謳われているなか、雇用環境の改善も大事です。
平均勤続年数をあげるためにどうすればよいのかを考え、社員が感じていることを調査し、改善していくことが必要になります。
世界的にみると若者の雇用環境が良くないと言われており、全世界の約61%が非公式の部門で働いているとされています。
また、良質な労働環境を年長者が占めているとも言われており、若者世代にとっては良質な労働環境の獲得が不利な状況に置かれていることもわかります。
長期労働時間を減らす
長期労働を減らすことは失業率の改善などに繋がります。
特に肉体労働など、作業の進み方によっては残業が当たり前という考え方が根付く仕事もあり、過労死や精神的な問題など健康に被害をもたらしかねません。
仕事とプライベートのバランスをうまくとることはモチベーションに繋がり効率の上昇にもなるので見直しは必要でしょう。
▼企業とSDGsについて詳しくはこちら
https://sdgs-connect.com/archives/34355
▼SDGsウォッシュについて詳しくはこちら
▼企業のメリットについて詳しくはこちら
https://sdgs-connect.com/archives/4243
私たちにできる3つのこと
エシカル消費
エシカル消費とは、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うことを指します。
海外などでは、子供の労働などが問題になっており、エシカル消費をするということはそうした子供たちを助ける行為に繋がります。
フェアトレードなど正規の方法で販売しているものだけを買うことで、子供を労働に使って生産された違法な商品が売れなくなり、子供が労働せず学校にいけるようになり、その国の生活水準が上がるのです。
障がい者雇用のマルシェ、イベント、お店に行ってみる
障がい者を積極的に採用している企業の応援や、マルシェやイベントなどで買い物をすることで助けになります。
また地産地消などもでき、地域で経済が回ることで障がい者の雇用や農作物などを売る環境が整いやすくなります。
ESG投資
ESG投資とはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス・企業統治)の頭文字を取ったもので、投資をする際に儲かっているかだけの判断ではなく、環境への配慮や従業員の働く環境などに注目して投資先を決定する方法です。
これをすることでSDGsに配慮している会社を選ぶことになるので、投資によって社会活動に貢献することに繋がります。
▼SDGs目標8の私たちにできることについて詳しくはこちら
https://sdgs-connect.com/archives/29838
▼個人でできるSDGs取り組むについて詳しくはこちら
https://sdgs-connect.com/archives/5241
SDGs8の取り組み事例10選
海外の取り組み事例4選
国際労働機関(ILO)
国際労働機関(ILO)は国連と提携する自治体の1つで「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することができる」という憲章原則の元に設立された国際機関です。
国際労働機関(ILO)は、ディーセント・ワークの実現に向けて各国への計画や支援センターを提供、児童労働へのプロジェクトの実施や社会的保護の拡大のなど世界的な取り組みを主な活動としています。
テトラ・パック社
テトラ・パック社では、途上国の市場に品質の高い牛乳を適正価格で流すことで現地の人々の収入を増加するといった取り組みを行っています。
世界で生産される牛乳の約3割は小規模自作農家で生産されますが、加工されず廃棄される場合が多く、市場へのアクセスが制限されてしまいます。
この制限を取り除くのがテトラ・パック社のデイリーハブモデルです。これによって現地生産された牛乳を長期的に供給することを目指しています。
金融サービスの普及:アフリカ
アフリカでは、保有率の高い携帯電話の回線を使ったモバイル送金サービスが開発されました。
ケニアの通信業者Safaricomとアフリカ商業銀行が提携して開発したもので、低所得者でも銀行口座を簡単に開設できるといったメリットがあります。
口座があることで金融資産の管理や資金調達、起業などがしやすくなります。
サハラ以南アフリカでの2017年の口座保有率は2011年に比べ、約2倍にふえています。
口座があることで金融資産の管理や資金調達、企業などがしやすくなります。
移住労働者への支援:ドイツ
ドイツは労働者不足という問題を抱えているため外国人労働者の雇用に積極的です。
ですが、ドイツ語を話すことが出来ないため就職できない人が多いため、国が費用のほとんどを負担しドイツ語が学べるコースの受講を外国人に義務付けています。
国は労働力を確保でき、外国人労働者はドイツ語の習得により仕事の幅や質が広がるメリットがあります。
日本の取り組み事例6選
UNROOFが目指す平等な社会
UNROOFは障がい者が一流の革職人を目指せる環境を整え、経済発展を進めています。
UNROOFでは、障がいがあっても自分の可能性を信じて挑戦できる社会、正当に評価される社会をつくるという目的のもと活動しています。
障がい者の基本給や仕事内容などを健常者と同じように扱うことで、線引きをしない社会を実現しています。
株式会社ヤクルト本社
株式会社ヤクルト本社は、雇用環境改善の取り組みを行っています。
主な取り組みは適正な雇用や労働関係への配慮、女性の能力向上などです。
また、従業員がSDGsに対して積極的に行動できるよう、My「SDGs」行動宣言として活動する取り組みも行われています。
AYUMI
AYUMIはエクアドルの元女受刑者の社会復帰のサポートをしています。
洗顔石鹼の製造販売を手がけており、元受刑者を積極的に採用しています。
創始者の宮浦歩美さんがエクアドルのボランティアで女性刑務所の託児スタッフとして働いた時に、出所する受刑者に雇用機会がない、収入が不安定なため子供を学校へ通わせられないなどの問題があると知り、元受刑者の女性が社会復帰を目指せる社会を目標にして活動しています。
ハラスメント対策の義務化
2020年6月にパワハラ防止法が適用され、2022年4月からは中小企業も義務付けられました。
パワハラは約3社に1社の割合で発生しているとされており、身近に発生しています。パワハラ防止法の施行によって定義が明確化されたことで、今までよりも厳しくなり職場環境が改善する可能性は大いにあります。
定義
職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすもの |
労働集約型セクターへの対策
労働集約型セクターとは、人間の労働力が大きい産業のことを指します。
主に漁業やサービス業、農業などが典型的な労働集約業に割り当てられます。
これの対策として高知県ではAIの使用による作物の出荷時期の予測や収穫時期の特定など、機器の導入により生産者の収入向上や負担の軽減などが期待されています。
日本郵政株式会社の取り組み
日本郵政株式会社では、「従業員1人1人が、能力を十分に発揮し活躍する」という目標を掲げ、人材の育成や働き方改革を実現しています。
また、女性活躍推進や障がい者雇用も進めており、働きがいのある職場づくりが行われています。
▼SDGs事例について詳しくはこちら
https://sdgs-connect.com/archives/1800
SDGs8の解決に取り組むメリット
解決に取り組むメリット
企業
企業がSDGs目標8に取り組むことで、労働環境の改善や雇用の多様性などが充実するため、企業は魅力的になり、人が絶えることはなくなるでしょう。
障がい者の雇用などは社会の新しいニーズの発見や対応なども期待でき、会社にとってのメリットになります。
▼SDGsメリットについて詳しくはこちら
https://sdgs-connect.com/archives/46826
個人
個人が取り組むSDGs目標8は結果的に自分に返ってきます。
主に購入の仕方などから変えていくのが個人ができることであり、それによって損をすることはありません。
新鮮な野菜が手に入る、正規取引された安全なものを購入できるなどのメリットがあります。
損をしているわけではないのに、他人を助けることにつながるのは魅力的だと思います。
SDGsに取り組む方法
SDGsに取り組む方法はさまざまですが、企業がSDGsを導入するための指針となる「SDGsコンパス」というマニュアルが、インターネット上で配布されています。
SDGsコンパスでは以下5つのステップで構成されています。
・SDGsを理解する
・優先課題を決定する ・目標を設定する ・経営へ統合する ・報告とコミュニケーションを行う |
まとめ
どんな人でも労働は関係のある問題です。
自分で変えられることは少ないかもしれませんが、知っているだけで助けになることもあるかもしれません。
実際に実施されている取り組みを知ることで新しい発見もできるのではないでしょうか。
大学2年生。新しいゲームが好きで日々Apple Storeで新作アプリを探しています。
簡単に理解できるようにをモットーに頑張っていきます。