カーボンニュートラル市場規模は大幅拡大-市場規模や成長、企業の投資事例まで紹介

#ESG#持続可能#環境#経済#脱炭素(カーボンニュートラル) 2022.12.06

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世界・日本共にカーボンニュートラルの市場規模は拡大し続けています。

そこには温暖化への対応を「経済成長の制約やコスト」と考える時代が終わり、「成長の機会」と捉える時代に移ったという背景があります。

今回は、世界と日本のカーボンニュートラルの市場規模や成長予測を紹介します。また企業のカーボンニュートラル投資事例も紹介します。

【この記事でわかること】
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カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。つまり、温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を意味します。

実質ゼロとは具体的に、人間が排出したCO2を含む温室効果ガス排出量と植物が吸収した温室効果ガス量がプラスマイナスゼロになることを指します。

カーボンニュートラルへの取り組みは温室効果ガスの削減だけではありません。削減しきれなかった温室効果ガスを植物に吸収してもらうために、森林保全や植林活動を行うのもカーボンニュートラルへの大事な取り組みの1つです。

国民一人ひとりの衣食住や移動といったライフスタイルに起因する温室効果ガスが、日本全体の排出量の約6割を占めるという分析もあります。カーボンニュートラルは国や自治体、企業だけの問題ではありません。

温室効果ガスの問題について無関係な人はいません。カーボンニュートラルの実現に向けて、全員が意識して取り組む必要があります。

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気候変動がもたらす経済への影響

近年、国内外でさまざまな気象災害が発生しています。こうした気候変動は、農林水産業、自然生態系だけでなく私たちの経済活動等にも影響を及ぼします。

1998年〜2017年間における気候変動に伴う自然災害の経済損失は、世界全体で約252兆円に上りました。

この額はその前の20年間に比べて150%以上増加しています。

また国別でみると、日本の損失の大きさは世界3位に位置します。

地球温暖化が進みさらなる気象災害が発生すれば、経済への打撃は計り知れない額となるでしょう。

 

カーボンニュートラルの市場規模は大幅拡大

世界でも日本でもカーボンニュートラルの市場規模は大幅拡大しています。

その背景には温暖化への対応を「経済成長の制約やコスト」と考える時代が終わり、「成長の機会」と捉える時代に移りつつあることがあります。

また、GDP世界1位かつ温室効果ガス排出量世界2位のアメリカがカーボンニュートラルへかじを切りました。
第46代米大統領のバイデン氏は、地球温暖化に背を向け続けたトランプ前大統領とは反対に「パリ協定への復帰」、「クリーンエネルギーのインフラ・技術に対しての4年間で2兆ドルの投資計画の表明」などと脱炭素化に力を入れています。

経済大国アメリカのこうした動きは、各国のカーボンニュートラル市場規模拡大をけん引します。

この章ではカーボンニュートラルの市場の指標としてESG投資市場と分野別の市場の動向について解説します。

(ESGとは、環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉です。環境問題や人権問題などの様々な社会課題が顕在化している中、この3つの要素に配慮した経営をすることが重要だと言われています。)

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世界のESG投資額は35兆ドル-投資市場の3割以上を占める

GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の2021年7月の最新の報告によると、2020年の世界のESG投資総額は35兆3千億ドルまで拡大しました。

この額は投資市場の約3分の1を超える割合です。

推移を見ると、2018年の総額からは15%、2016年の総額からは55%増加しています。

地域別では、アメリカが2018年から4割以上の成長を遂げています。

世界のESG投資はますます拡大していくと予想されており、2025年には53億ドルに達する想定です。

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分野別-世界のカーボンニュートラル市場規模

世界のカーボンニュートラル市場の代表例として水素、CO2フリーアンモニア、CCUSカーボンリサイクル、再生可能エネルギー、蓄電池の市場規模を以下の表にまとめました。

市場規模 (ドル)
水素 700億(2020)
CO2フリーアンモニア 952万(2019)
CCUS・カーボンリサイクル 23億(2021)
再生可能エネルギー 8815億(2020)
蓄電池 280億(2021)

(ちなみに日本の映画興行の市場規模は14億ドルです。)

どの分野の市場規模も過去最大を記録しており、今後も拡大していくことは間違いありません。

日本のESG投資額は310兆円-投資市場の24%を占める

日本のESG投資額は2018年から34%増の310兆392億円まで拡大しています。

2020年における運用資産額に占めるESG投資の割合は24%で、拡大傾向にあります。

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分野別-日本のカーボンニュートラル市場規模

日本のカーボンニュートラル市場の代表例も表にまとめました。

2021 2030(予測) 2050(予測)
水素 960 8,200 17,400
CO2フリーアンモニア 20 430 2,350
CCUS・カーボンリサイクル 20 1,600 4,800
再生可能エネルギー 4,100 4,700 6,800
蓄電池 2,150 8,500 8,500

(単位:億円)

参考:脱炭素社会を実現するための国内エネルギー設備・システム …

(ちなみに日本の映画興行の市場規模は約2兆円です。)

どの分野の市場規模も増加傾向にあり、2030年と2050年においても拡大することが予測されています。
これらの市場の拡大は、2050年カーボンニュートラル実現へ大きく貢献するに違いありません。

環境産業が日本の経済成長のカギを握る-市場規模は105兆円

環境産業は日本経済の主要エンジンとなりつつあります。

全産業における環境産業の市場規模の割合は、2001年の6.1%から2018年には10.1%へ上昇しました。

2018年の環境省の推計によると、国内環境産業の市場規模は105兆3203円(前年比3.1%増)、雇用規模は約260.9万人(1.0%増)といずれも過去最大を記録しています。

分野別市場規模では、最も市場規模が大きい「廃棄物処理・資源有効利用」が47兆8165億円(0.2%減)、次いで「地球温暖化対策」が37兆712億円(9.7%増)、「環境汚染防止」12兆326億円(0.6%増)、「自然環境保全」8兆3999億円(1.4%減)となっています。

地球温暖化対策市場が2桁近い伸び率を記録し、全体をけん引した結果となりました。

地球温暖化対策分野には以下が挙げられます。

  • 省エネルギー化(15兆1019億円)
  • 自動車の低燃料化(15兆267億円)
  • クリーンエネルギー利用(6兆8940億円)
  • 排出権取引(486億円)

環境産業は今後も拡大を続け、2050年の市場規模は約133兆4674億円まで成長するとされています。このうち最も構成比が大きいのは地球温暖化対策(62兆6342億円)の46.9%となる予測です。

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環境産業市場拡大に伴う研究開発投資の増加-2019年の開発費は2兆5000億円

環境産業の市場規模拡大に伴い、グリーンインフラ・技術関連の研究開発投資も増加傾向にあります。

総務省によると、2019年度における日本の環境・エネルギー分野の研究開発費は2兆4548億円(前年度比7.5%増)と3年連続で増加しています。

中でも投資額が最も大きいのは企業です。企業の研究開発費は1兆9354億円(前年度比7.9%増)と、全体の8割を占めています。
また政府は企業のグリーン投資を後押しするため、2021年度税制改正で脱炭素化へ設備投資を行う企業の減税措置を設けたほか、「グリーン成長戦略」を策定しています。

「グリーン成長戦略」では、カーボンニュートラルへの技術開発を支援する2兆円の基金を創設し、約15兆円の研究開発や設備投資を引き出したいとしています。
政府はこれらの施策による経済効果を2030年に年90兆円、2050年には年190兆円に上ると見込んでいます。

グリーン投資を長期的に活発化することで2050年カーボンニュートラルの達成を目指します。

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企業にとってカーボンニュートラルへの投資はビックチャンス-企業の投資例2選

IRENA(国際再生可能エネルギー機関)によると、大規模なカーボンニュートラルを進めるには最大130兆ドルの再エネ投資を要するものの、エネルギーシステムが転換されれば世界のGDPを2.4%押し上げると報告されています。

その上昇分は2050年までの累計で98兆ドルに達し、1ドルの投資に対して3~8ドルの見返りが得られると予想されているのです。

つまり、企業にとってカーボンニュートラルへの投資はビッグチャンスとなります。既に世界の有力企業はカーボンニュートラルへの投資を積極的に行っています。

今回は

  • Microsoft
  • Google

の2社の投資例を紹介します。

MicrosoftCO2削減テクノロジーへ10億ドルの投資-2030年カーボンネガティブに貢献

Microsoftは2020年、CO2削減や除去のためのテクノロジーを開発する企業などに投資するために10億ドル規模のファンドを立ち上げました。

以下に気候イノベーション基金の事例を紹介します。

NCX (旧SilviaTerra) 米国本土で最大の面積を持つ森林炭素プロジェクトの創設に資金を提供し、あらゆる規模の土地所有者の炭素市場への参加を容易 にできるよう支援しています。
Twelve (旧Opus12) CO2を、これまで化石から作られていた化学物質や燃料に変換する技術をもつ Twelve に資金提供をしています。 この技術を活用し、様々な産業での炭素削減が促進されることが見込まれます。
Rheaply MIT Solve(マサチューセッツ工科大学の革新を促進するイニシアティブ)とともに、再利用や再製造を最大限に行うプラットフォーム上で、 CO2排出量の削減量測定する方式の構築および炭素関連のRheaply 製品の機能アップデートの開発に資金提供をしています。
Climeworks 空気中のCO2を回収し、炭素除去のソリューションを提供するClimeworksが、アイスランドに建設する世界初の商業規模の 再生可能な炭素回収・貯留プラントに資金を提供しました。回収されたCO2を水と混合してポンプで地下に送り、急速な鉱化作用の プロセスでCO2を効率的かつ恒久的に、そして安全に貯留する技術です。

参考:持続可能なグリーン社会に向けて – Microsoft

Google再生可能エネルギーへ35億ドルの投資-全ての人がクリーンエネルギーを利用できる世界を目指す

Googleロゴ

画像引用:Google

Googleは再生可能エネルギー100%の実現のために、再生可能エネルギープロジェクトを20以上所有しています。
Googleがこれまでにグリーンインフラ整備に投資した額は、35億ドル以上で、そのうち 3 分の 2 が米国での投資です。

こうした取り組みの結果、2017年にはGoogleでの年間消費電力の100%を再生可能エネルギーで賄えるようになりました。

このような活動にとどまらず、Googleはすべての人が、クリーンなエネルギーを利用できるような世界にすることを最終目標として掲げています。

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まとめ

今回は世界・日本のカーボンニュートラル市場規模について解説しました。

カーボンニュートラル市場は過去最大の規模に拡大しており、今後もさらなる成長を期待できます。

その要因としては世界がカーボンニュートラルを「経済成長の制約やコスト」と考えるのではなく、「成長の機会」と捉えるようになったからでしょう。また現在ではカーボンニュートラルへの投資は企業のビッグチャンスだということも理由の1つです。

このような「カーボンニュートラル×経済」の効果は私たちの生活をより豊かにすると共に持続可能な社会の実現にも貢献します。

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