LGBTとスポーツの間にはどのような問題があるのでしょう。
性別や階級の分類によってスポーツの公平性が保たれています。一方で現状の体制はLGBT、特にトランスジェンダー選手のスポーツの機会を奪っているとも言えます。私たちはこのような複雑な問題に向き合う必要があります。
今回はLGBTとスポーツの関係性について問題点や選手事例、日本の現状まで網羅的に紹介します。
【この記事でわかること】 |
LGBTとは-分かりやすく簡単に説明
LGBTとは1つの意味を持つ言葉ではなく、意味の違う4つのアルファベットの頭文字をとったものです。
それぞれの頭文字は異なる「性」のあり方を表しています。
LGBTの意味と定義-それぞれの頭文字について
LGBTの4つのアルファベットにはそれぞれ意味があります。
L : レズビアン(Lesbian)
レズビアンとは、性自認が女性で性的指向も女性であるセクシュアルマイノリティのことです。
性自認とは自分自身が認識している性別のことを意味しています。
▼参考
レズビアンとは?意味や女性の同性愛について簡単にわかりやすく解説。きっかけも紹介。
G : ゲイ (Gay)
ゲイとは、性自認が男性で性的指向も男性であるセクシュアルマイノリティのことです。
海外では同性愛者をまとめて「ゲイ」と表現することもあります。
B : バイセクシャル (Bisexual)
バイセクシャルとは、男性と女性の両方に恋愛感情や性的欲求を抱くセクシュアルマイノリティのことです。日本語では「両性愛者」と表記されることもあります。
バイセクシュアルは男性と女性の両方に性愛感情が向く人を意味するため、レズビアンやゲイと違い本人の性別は関係ありません。
▼参考
バイセクシャルの意味と特徴とは?パンセクシャルとの違いも解説
T : トランスジェンダー (Transgender)
トランスジェンダーとは、身体的特徴としての性と自身の性についての認識が異なる状態を指す言葉です。
身体的特徴としての性とは、自身の性に対する考え方に関係なく、性器などの身体的特徴に基づく性別のことを指します。
日本では医学用語の「性同一性障害」と混同されることもありますが、トランスジェンダーとは性別に違和感をもつ人々のことを表します。
このように、それぞれの性の対象や性の不一致をまとめてLGBTと呼んでいるのです。
性自認と身体的特徴としての性が一致せず違和感を感じている人や、男性でも女性でもないと感じている人もいるのが現状です。
日本では人口の8%から10%がLGBTと言われています。
▼参考
LGBTの割合がバラつく理由【13人に1人? 100人に1人?】
なぜLGBTに分類する必要があるのか-「性」のあり方はグラデーション
LGBTそれぞれが異なる性のあり方を表していることがわかりましたでしょうか?
異性を好きになることが当たり前とされる社会では、LGBTの方々は生活しにくくなってしまいます。
LGBTについて理解することで、性的マイノリティの人たちが過ごしやすい世の中になるのです。
LGBT以外のマイノリティも存在する-LGBTQやLGBT+とは
LGBTの他にも性的マイノリティは存在します。
今回は2種類の性的マイノリティを紹介します。
LGBTQ
LGBTQとはLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)にQ(クエスチョニング)を加えたものです。
クエスチョニングとは、性自認(自分の性を何と考えるか)や性的指向(どんな性を好きになるか)が定まっていないセクシュアリティを表した言葉です。
LGBT+
性のあり方はLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の他にも数多く存在しています。つまり、LGBT+とはLGBT以外の性のあり方を表しています。
LGBT以外の性のあり方を5つ紹介します。
・アセクシュアル・・・どの性別も性的対象としない無性愛者 ・パンセクシュアル・・・相手の性自認に関係なく、すべての人を恋愛対象とする人 ・Xジェンダー・・・性自認が男性にも女性にも当てはまらないという人 ・ジェンダーフルイド・・・性表現がその時々で変わる人 ・ノンバイナリー・・・性自認と性表現が性別の枠にとらわれない人 |
その他にも性のあり方を表す言葉は多く存在しています。
▼LGBT+について詳しくはこちら
《徹底解説》LGBTQとは|SDGsとの関係から、現状や課題まで徹底網羅
▼参考
今知っておきたい!LGBTQIA+とは? – JapanWonderGuide
SDGsとLGBTの関係性
LGBTを理解することは、SDGsが目標とする「誰も置き去りにしない社会」を達成するために不可欠なことです。
LGBTとそれを取り巻くSDGsの関係を2つ紹介します。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
LGBTの方々が過ごしやすい社会を作るためにはジェンダー平等に対する理解を深める必要があります。
まずは性の多様性を受け入れることが求められます。
▼SDGs目標5について詳しくはこちら
目標16「平和と公平をすべての人に」
LGBT+であるために自由に結婚できない人が存在します。
そのような人が自分の理想とする人生を歩むためには、多くの人のLGBTへの理解が欠かせません。
紹介した2つ以外にもLGBTとSDGsの関係は多数存在しています。
▼LGBTとSDGsの関係性について詳しくはこちら
よく耳にするLGBTQ+って何のこと? SDGsとの関係は?
LGBTスポーツの問題点4選
LGBTスポーツの問題点を4つ紹介します。
そもそもスポーツの目的とは?-全ての人が健康であるため
スポーツする目的としてどのようなことが挙げられるでしょうか?
・ストレスの発散 ・他者と連携することの楽しさ ・勝利したときの爽快感 |
スポーツする目的は人それぞれ違うと思います。
しかし、スポーツ庁は「スポーツを通じた健康増進」を提言しています。
▼SDGs目標3について詳しくはこちら
LGBTスポーツは不公平
LGBTスポーツは不公平だという主張があります。
例えば、もともとは男性で成長していく過程で女性になったトランスジェンダーの選手が女性部門に出場した場合はどうでしょうか。
男性として成長期を過ごした人は、一般的に筋肉量や骨密度の値が女性より高くなります。
このことから、生まれつき女性の選手とそうでない女性選手とでは競技結果に差が生じてしまいます。
▼参考
トランスジェンダー女性の競技参加から浮かび上がる スポーツにおける平等と公平性とは
▼SDGsについて詳しくはこちら
トランスジェンダー女性選手の問題
トランスジェンダー女性選手が女性部門に出場することに対して、不公平だと言われることがあります。
ウエイトリフティングのニュージーランド代表であるローレル・ハバード選手も不公平だと言われた1人です。
国際オリンピック委員会が改訂したガイドラインに基づいて条件をクリアしていたため、トランスジェンダー女性選手として2021年の東京オリンピックに出場しました。
しかし、男性として成長したため女性よりも筋肉量が多く、他の選手が不利になるという声が上がりました。
▼詳しくはこちら
日本の女子は思春期にスポーツをやめる割合が男子よりも高い|世界のスポーツ参加の現状を調査した報告書が発表
テストステロン量の制限-高アンドロゲン症検査
1960年代に「性別確認検査」が制度化され、2011年にはIOC(国際オリンピック委員会)と当時のIAAF(国際陸上競技連盟)が女子選手に「高アンドロゲン症検査」を導入しました。
もともとは女子を装った男子選手を排除し、女子競技の公平性を保つことが目的でしたが、現在ではトランスジェンダー女性選手として出場できるかの判断材料として使われています。
しかし、検査結果の取り扱いには十分注意する必要があります。
例えば、ウガンダでは性的マイノリティが処罰の対象になり、テストステロン量を制限していることを周囲に知られないようにする必要があります。
スポーツを理由に計測した個人情報を世界にばらすのは人権問題ということを認識する必要があります。
LGBT選手の事例2選
LGBTのスポーツ選手を2人紹介します。
リア・トーマス選手-トランスジェンダー水泳選手
1人目に紹介するLGBTのスポーツ選手はリア・トーマスです。
リア・トーマスはペンシルベニア大学の水泳部に所属するトランスジェンダーの水泳選手です。
入学当初は男子選手として出場していましたが、徐々に性自認に違和感を覚え、性別移行のプロセスであるホルモン治療を開始しました。
1年以上テストステロンの分泌を抑えつづけていたリア選手は、2020年の夏頃に医学的な証明を全米大学体育協会に提出し、公式に女子選手として参加する資格を承認されました。
しかし、女子選手として競うことは不公平なのではないかという意見もあり、議論の余地があります。
▼参考
「不公平」の声に対抗し…トランスジェンダー選手に集まる支持
▼関連記事
《SDGs事例集》スポーツを通して世界を変える|アディダス
ミーガン・ラピノー-恋人とヌードでスポーツ誌面を飾る
2人目に紹介するLGBTのスポーツ選手はミーガン・ラピノーです。
ミーガン・ラピノーはアメリカ代表のサッカー選手で、サッカー女子ワールドカップフランス大会でアメリカ代表の快進撃に貢献したことで有名です。
ラピノーは自分が同性愛者であることを積極的にアピールしており、女子プロバスケット選手のスー・バードと恋人の関係にあります。
SNSに恋人との写真を投稿するだけでなく、昨年には恋人と共にヌードでスポーツ誌面を飾りました。
▼参考
同性愛を公言、ヌードも披露 女子サッカー米代表のミーガン・ラピノー
日本のLGBTスポーツの現状
日本のLGBTスポーツの現状について2つ紹介します。
日本スポーツ協会-性の多様性を理解するためのガイドライン
1つ目に紹介する事例は日本スポーツ協会です。
日本スポーツ協会は「体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン」を公開しています。
ガイドラインにはLGBTの人がスポーツで抱える課題や困難に加えて、競技への参加資格や対応事例まで紹介されています。
トランスジェンダー選手の参加規定としてIOC(国際オリンピック委員会)は以下のことを掲げています。
(1)性自認の宣言(4年間は変更不可能) (2)トランス女性(MtF)選手では ①出場前最低1年間、血中テストステロンレベルが10nml/l以下 ②女子カテゴリーで競技を希望する期間中を通して血中テストステロンレベルが10nmol/l以下であること |
このほかにも様々なことが紹介されています。
▼ガイドラインはこちら
体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン
▼関連記事
《徹底解説》女性とSDGsの関係性|日本の抱えるジェンダー問題を徹底解説
下山田志帆選手-まずは発信から
2つ目に紹介する事例は女子サッカー選手の下山田志帆選手です。
彼女はSNSに「女子サッカー選手やってます。そして、彼女がいます」と投稿したことで、日本のLGBTをめぐる問題に一石を投じました。
友達やチームメイトから嫌われるのではないかという恐怖からカミングアウトできなかった下山田選手。
しかし、後に所属したドイツのチームではLGBTであることが特別ではなく、当たり前の世界でした。
自分が嘘をついていること、これからも嘘をついたまま生きていくことに耐えられなくなり、自身が同性愛者であることをカミングアウトしたのです。
▼参考
女子サッカー下山田志帆選手に学ぶ、SDGsな世界への第一歩。「まずは発信から」
▼関連記事
《徹底網羅》 SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の取り組み 9選
まとめ
LGBTとスポーツの関係について新しく知ったことはありましたでしょうか。
LGBTのスポーツ選手の意思を尊重することが求められる一方で、生まれながらの体格差を理由に不公平だと感じている人も多くいます。
LGBTの人が伸び伸びとスポーツできるようになるために、より進んだ議論が必要です。
大学では国際デザイン経営学科に所属し、解決が困難な問題をあらゆる角度から解決できるようにするため、日々勉学に努めている。