「リスキリング」とは、新たな知識やスキルを学び、社員一人ひとりがスキルアップできるよう企業側が支援することです。
一方で似た用語に「リカレント教育」や「アンラーニング」などの用語があります。これらの用語の違いはなんでしょうか。
この記事では、リスキリングとリカレント教育の違いや、日本政府が実施している支援制度を解説していきます。さらに実際にリスキリングに取り組んでいる企業についても、紹介していきます。
【この記事で分かること】※クリックするとジャンプします。 |
リスキリングの意味と用語の違い
まずはリスキリングの概要や、関連用語との違いについて、説明していきます。
リスキリングとは?|意味や定義を紹介
「リスキリング」とは、業務で必要なスキルや能力を習得することです。世界では、数多くの企業が積極的に取り組んでいます。
一方で日本では、あまりリスキリングが普及していません。今後AI技術などの発展に伴い、リスキリングも重要な要素となる可能性があります。
「リスキリング」を理解し、企業にとって必要なスキル・知識を学べる機会を設けることが大切です。
リスキリングとリカレント教育の違い
リスキリングと似た用語として「リカレント教育」がありますが、それぞれ意味が異なるものです。「リスキリング」と「リカレント教育」はそれぞれ異なる目的で行う教育で、企業にとって必要な教育を行うことが求められます。
「リカレント教育」は、仕事を行う際に必要な知識やスキルを向上させる教育のことを言います。また求められる知識やスキルは、従来の仕事を行うために必要なスキル・知識です。
一方で「リスキリング」は、新たな仕事を担うために必要なスキルや知識を身につけるために行う教育のことを言います。
関連記事:リスキリングの課題とは?|企業や中小企業の課題、国際比較を紹介
スキルアップやアンラーニングとの違いは?
「リスキリング」の関連用語は、他にもあります。それが「スキルアップ」や「アンラーニング」です。この2つにおいても、「リスキリング」とは異なる意味を持っています。
「スキルアップ」とは、既存のスキルを高めることを意味します。とくに業務における技術力などを高めるために行われる教育です。
一方で「アンラーニング」は、もともと身についたスキルや知識を捨て、新しい知識やスキルを学び直すことを意味します。企業で新しい制度などを導入する際に、既存の知識・スキルが支障をきたさないようにするために行う教育です。
企業は、事業を行うために重要な教育方法を導入するようにしましょう。
関連記事:リスキリング(学び直し)とは-言葉の意味の違いや支援策を紹介
政府が行う支援制度3選
つぎに政府が、リスキリングやリカレント教育を推進するために行っている支援制度を3つ紹介していきます。
関連記事:リスキリングの内容とは?-資格や補助金、従業員への支援内容も紹介
文部科学省|リカレント教育推進事業
文部科学省が実施しているのが、リカレント教育推進事業です。この事業では、社会人が主体的に学び続ける機会を提供し、新たな知識やスキルを得ることを目的としています。
具体的には、大学や高等専門学校の講義で、デジタル分野などの教育を促す支援を行っています。この支援を通じて文部科学省は、社会人のキャリアアップや業務の生産性向上を促していきます。
厚生労働省|人材開発支援助成金
厚生労働省は、企業がリスキリングを実施する際に発生する費用を補助する制度を設けています。それが「人材開発支援助成金」です。
たとえば「人材育成コース」では、企業側が社員に対して教育を行う際に発生する費用を一部支援してもらうコースです。助成金には7種類のコースがあるため、企業に適した支援コースを活用しましょう。
生産性向上人材育成支援センター|生産性向上支援訓練
生産性向上人材育成支援センターでは、中小企業の事業における生産性を向上するために人材育成を行っています。具体的には、生産性向上支援訓練があります。この訓練では、時代やビジネススタイルの変化に応じて、求められるスキルが得られるようにしていきます。
さらにそれぞれの会社が抱える悩みを解決するために、個々の会社だけの訓練を構成しています。
リスキリングに取り組んでいる企業5選
続いて実際にリスキリングを実施している企業について、説明していきます。
アマゾン|Upskilling 2025
アマゾンは、2019年からリスキリングの取り組みを始め、現在も積極的に取り組んでいます。たとえば「Upskilling 2025」です。
Upskilling 2025では、アメリカに在住している従業員30万人に対して、無償でスキルを得る機会を与えています。具体的には、クラウドコンピューティングや機械学習などです。多くの人々が、学ぶ機会を得ることで、従業員のキャリアアップ促進を目指しています。
その他にも技術職以外の従業員がエンジニア職に移行できるよう、トレーニングを行い、従業員の育成にも力を入れています。
AT&T|キャリアインテリジェンス
AT&Tは、アメリカに本社を置く電気通信や、技術サービスを提供する会社です。AT&Tも、早期の段階からリスキリングに力を入れています。
たとえば「キャリアインテリジェンス」の提供です。このツールは、従業員が社内の情報をより早く得られるようにし、次の役職へ昇格するために必要なスキルを知れるよう、支援しています。
またオンライン学習も提供しています。具体的には、デジタルスキルやマネジメントスキルなどです。これにより社員がスキルを得られるようサポートを行っています。
PwC|Digital Accelerators
PwCは、経営戦略の策定などコンサルティングサービスを提供する会社です。PwCは社員がデジタル時代に活躍できる人材を育成するために、「Digital Accelerators」というプログラムを実施しています。
このプログラムでは、デジタルツールを用いたデータ分析や人工知能などに関する学習を行います。このプログラムを通じて、個々のスキルを高めていきます。
さらに「大人の体験入部」という制度では、他部門への一時的な移動ができます。これにより、社員が自身のキャリアを見直すきっかけとなっています。またさまざまな部門を経験し、社員一人ひとりのスキルが高まっています。
IBM|New Collor Initiative
IBMは、世界各国でビジネスを展開している会社です。IBMでは社員を学業やキャリアパスで判断するのではなく、スキルや能力で判断する「New Collor Initiative」を導入しました。
具体的にはオンライン学習の機会を提供し、社員が主体的に学べるようにしています。学習できる内容としては、データサイエンスやクラウドコンピューティングなどがあります。
そのほかにもカリフォルニア州の技術省と連携しながら、リスキリングを促進するなど、さまざまな取り組みを行っています。
ユニリーバ|FFP(フューチャー・フィット・プラン)
ユニリーバは、食品や洗剤など数多くの商品を提供している会社です。ユニリーバでは、成果主義に基づいた評価を行っており、性別や国籍問わず、一人ひとりを評価しています。
一人ひとりを評価し、スキルを高めていくために行っているのが「FFP(フューチャー・フィット・プラン)」です。このプログラムでは、社員がそれぞれ目指している目標や求めているスキルを支援しています。
求めるスキルに対し、実際のキャリアプランを共に構築することで、働く人すべてが実現できることを目標としています。
関連記事:《SDGs事例》ユニリーバ ”世界一サステイナブルなビジネスのための旅に”
まとめ
「リスキリング」とは、仕事をするうえで新たに必要なスキルや知識を習得することです。これにより社員一人ひとりが、キャリアアップしていくことを目指しています。一方で「リカレント教育」では、より仕事を効率よくするために学ぶことを指します。
近年海外では、多くの会社が導入しています。しかし日本では、あまり浸透していません。そこで日本の政府では、文部科学省や厚生労働省などが支援制度を設けています。
実際に企業でリスキリングやリカレント教育に取り組む際には、企業にとって本当に必要な教育プログラムを定めるようにしましょう。
SDGsCONNECT SEOライター。大学では文学を通じて、ジェンダーについて学んでいます。SDGsについて詳しくない人にとってもわかりやすく、かつ情報が正確な記事を書けるよう、心がけています。