グリーントランスフォーメーション(GX)の取り組み事例5選|政府や企業の取り組みも紹介

#ESG#GX#SDGs#再生可能エネルギー#脱炭素 2023.08.07

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グリーントランスフォーメーション(GX)は、カーボンニュートラルな社会の実現のために、クリーンエネルギーを中心とするための取り組みです。

近年では地球温暖化が深刻な問題とされており、世界中で温室効果防止対策が行われています。ではGXの取り組み内容とは、一体どのようなものがあるのでしょうか。

この記事ではGXの内容や、GXの取り組みが必要な理由について、解説していきます。さらに日本の政府や自治体、企業が実施しているGXの取り組み例について紹介します。

【この記事で分かること】

グリーントランスフォーメーション(GX)とは|カーボンニュートラルとの関係も説明

再エネ風力

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、社会経済や産業構造を見直し、社会の中で使われているエネルギーの脱炭素化を進めることで、持続可能な社会と経済活動にすることです。

エネルギーの省力化(省エネ)やエネルギーの脱炭素化によってGXができれば、経済活動を制限することなくカーボンニュートラルを実現できるため、カーボンニュートラル達成にはGXが欠かせません。

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GXはなぜ必要なのか

グリーングロウス

GXが日本で必要とされる理由の1つに、カーボンニュートラル達成の需要が高まっていることが挙げられます。カーボンニュートラルとは、社会全体の温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすることです。地球温暖化による気候危機などの被害が世界中で深刻化する中で、カーボンニュートラル達成への国際社会からの要求は年々大きくなっています。そのような状況を受け、2020年に日本政府は「2050年までにカーボンニュートラル達成を目指す」と宣言しました。

カーボンニュートラルに大きく貢献するのがGXです。カーボンニュートラル達成により地球温暖化を防止することが重要なことだとはわかっていても、そのために経済活動が大きく制限されてるのであれば、企業からの反発が予想されます。

GXにより経済活動と温室効果ガス排出の関係を切り離すことができれば、経済活動を抑えることなく温室効果ガスの排出量を減らすことができ、カーボンニュートラル達成への国民・産業の理解が得やすくなります。

また、GXが実現すれば化石燃料への依存を減らすことができるため、エネルギー自給率が低い日本にとって、GXの達成は重要です。日本は化石資源が乏しく、毎年外国から約17兆円の化石燃料を輸入しています。化石燃料への依存を減らせれば、この17兆円の国外流出を防ぐことができるだけでなく、外国の情勢によってエネルギーの確保が左右されることもなくなります。エネルギー安全保障の面でも重要です。

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政府・自治体によるGX取り組み事例

1.再エネ・省エネ設備導入の補助

日本には、10年以上前から再エネ・省エネ設備導入の支援制度があります。支援には、導入費用への補助金や再エネ電力の固定価格買取(FIT制度)など様々な形があり、国・自治体などによって支援の形も異なります。

2.投資・技術開発支援

GXの実現には、再エネ・省エネの効率化と普及が欠かせません。そのため、日本では関連技術への開発支援や関連企業への投資が行われてきました。また、再エネ・省エネ関連技術だけではなく、水素・アンモニア燃焼技術や電気自動車への研究開発支援なども行われています。

現在、政府はGX分野に今後10年で官民合わせて150兆円規模の投資を行うことを目標とし、その呼び水とするために国としておよそ20兆円の先行投資を行うことを宣言しています。

3.カーボンプライシング

上記の投資と並んで政府が導入を検討するのが、カーボンプライシング制度です。カーボンプライシングとは、政府が企業などの温室効果ガス排出に価格を付け、社会全体で効率的な排出削減や費用負担、再エネ設備の普及などを目指す制度です。カーボンプライシングにも様々な手法がありますが、政府は現在「炭素税」と「排出量取引制度」の併用によるカーボンプライシングの導入を目指しています。

企業が実施できるGXの取り組み例とは|中小企業でもできる取り組みを紹介

1.再生可能エネルギー設備を導入する

GXで最も基本となる取り組みの1つが、再生可能エネルギー設備の導入です。企業で消費するエネルギーの脱炭素化を進めるためには、再生可能エネルギーの使用が不可欠だからです。

太陽光パネルや風力、小水力などの再生可能エネルギー発電設備の導入には、国や自治体からの補助金などによる支援があるため、場合によっては低いコストで設備を導入することが可能です。発電した電力が余った場合は余った分を電力会社に売ることもできますし、FIP制度などによる支援があるため、再生可能エネルギー発電設備の導入を一度検討してみてはいかがでしょうか。

2.エネルギーの使用量を減らす

GX実現において再生可能エネルギーの導入と並んで重要となるのが、エネルギーの使用量を減らすことです。たとえ再エネの導入によって発電の温室効果ガス排出量をゼロにすることは難しくても、消費電力を減らすことで排出量をさらに減らすことができます。

省エネのためには、エアコンの設定温度を低くしすぎないことや、使用中でない照明設備をオフにすることなどの、簡単に実行できることはたくさんあります。さらに、より照明設備や冷暖房設備などをよりエネルギー効率の高い省エネなものへの買い替えなどが有効です。省エネ設備の導入に補助金等の支援を受けられる場合があり、一度調べてみることがおすすめです。

3.電力プランを切り替える

自社で再生可能エネルギー発電設備を導入することが難しくても、電力プランの切り替えによって再エネ電力を利用することが可能になる場合があります。電力市場には現在多くの電力プランがありますが、その中には再生可能エネルギー100%の電力を供給するプランもあるため、そのような電力プランに切り替えることで自社の再エネ電源比率を高めることが可能です。

あくまで発電会社が発電した再エネ電力を買い取る仕組みであるため、1つ1つの契約切り替えによって社会全体の再生可能エネルギー導入量が増加するわけではありませんが、多くの企業や家庭が再エネ電力を購入するようになり需要が高まれば、再生可能エネルギー発電施設の開発や技術開発を促進することになり、結果としてGXに一歩近づきます。

再エネを特徴とする電力プランはいくつもあり、それぞれ料金やその他条件などは異なるため、慎重に比較して利用しましょう。

4.カーボンクレジットを購入する

カーボンクレジットとは、企業などが自社の取り組みによって削減した温室効果ガスの排出量を市場で売買することを可能とする仕組みです。他社が販売したクレジットを購入することで、自社では温室効果ガスの排出削減が難しい企業でも排出削減をしたことになります。

再エネ電力プランへの切り替えと同じ様に、あくまで他社の温室効果ガス排出削減実績を買い取る仕組みであるため、1つ1つのクレジット購入によって社会全体の削減量が増加するわけではありません。しかし、多くの企業などがクレジットを購入するようになり需要が高まれば、温室効果ガス排出削減が可能でクレジットを販売したい会社の排出削減を促進することや排出削減への技術開発などに繋がり、結果としてGXに一歩近づくことができます。

5.RE100へ加盟する

RE100とは、使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする企業などによる国際的イニシアティブです。RE100は、電力需要側(企業など)が再生可能エネルギーの必要性を政府や関係機関に訴えかけることを目的として設立されました。RE100に加盟し、実際に再生可能エネルギーの導入などを行うことで、再生可能エネルギーの普及に繋がり、GXに貢献することができます。

また、近年、環境などへ配慮している企業に優先的に投資をするESG投資が活発化してきており、RE100のような脱炭素イニシアティブに加盟していることは、ESG投資を呼び込む投資家へアピールポイントにもなります。そのため、加盟する企業側にとっても、投資が呼び込みやすくなるという点でメリットがあります。

企業が行うGX取り組み事例5選

1.トヨタ自動車株式会社

自動車は私たちの生活に欠かせない存在である一方、自動車から排出される二酸化炭素は地球温暖化の大きな原因です。トヨタは、地球環境に関する2050年までの長期的な取り組みを「トヨタ環境チャレンジ2050」と定め、推進しています。

「トヨタ環境チャレンジ2050」のうち、「ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ」「新車CO2ゼロチャレンジ」では、車の製造・使用などのライフサイクル全体におけるCO2排出量の実質ゼロ化を目指しています。また、「工場CO2ゼロチャレンジ」では、世界の自社工場のCO2排出量をゼロにすることを目指しており、例えば太陽光発電の活用などにより、2014年から2022年3月にかけて286,794tのCO2を削減しています。

2.NTTグループ

NTTドコモやNTT東日本/西日本等を擁する日本最大の通信系企業グループです。通信事業では大規模なデータセンターや通信設備の莫大な電力消費が課題となりますが、NTTグループは2030年度の再生可能エネルギー利用割合を30%以上にすることを目標に、自グループ内で再生可能エネルギーの電源開発に取り組むとともに、低電力消費の通信技術の開発にも取り組んでいます。

また、例えばグループ企業のNTTコミュニケーションズでは自社が得意なICTを利用した「グリーンプログラム for Employee」で従業員の環境意識醸成と行動変容を促したり、カーボンクレジットを利用したりするなど、一般的な再エネ・省エネ以外の切り口からもGX達成への取り組みを行っています。

3.Sustech

Sustechは、企業のGX支援を行うエネルギーテックのスタートアップ企業です。Suctechは脱炭素化電力運用発電所のEPC(設計・調達・運用)支援GXファンドなど、GXに関わる多岐にわたる事業を行っています。自社ビジネスの中でGXに取り組む先述の2社とは異なり、SustechはGX支援事業を提供する企業であり、その事業内容も発電所のEPCやGXファンドなど、テック企業の枠に収まらない多角的な支援を行い、社会のGX達成に貢献しています。

4.ENEOSホールディングス

ENEOSホールディングスは、ガソリンなどの石油製品と金属を扱うグループ企業です。日本の石油元売最大手であることから、脱炭素社会への適応が課題です。

2019年に策定した「2040年長期ビジョン」において、2040年までのカーボンニュートラル実現を掲げました。国内最多のガソリンスタンド数を誇るENEOSは、水素ステーション事業を推進し、モビリティ分野における低炭素化に貢献しようとしています。また、製油・生産拠点では省エネルギー設備に投資し低炭素化に努めるとともに、金属事業においては主要生産拠点での再生可能エネルギー導入を進めています。

さらには、国内の再生可能エネルギーの主力電源化や、2040年カーボンニュートラルを実現するため、洋上風力発電事業へも進出するとともに、カーボンニュートラル実現において注目されているCO2回収・貯留(CCS)事業にも取り組んでいます。

5.清水建設

近年、建設業界のGX実現において注目されているのが、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)です。ZEBとは、省エネと再エネの導入により年間の1次エネルギー消費量が正味ゼロ(カーボン・ニュートラル)またはマイナスである建物のことです。

建物におけるエネルギー消費による温室効果ガス排出は、省エネや再エネの導入により減らすことができますが、その削減を建設段階から設計に組み込み、カーボンニュートラルを達成した建物ということができます。

清水建設は、2050年カーボンニュートラル実現の目標を掲げ、水素エネルギー利用事業や洋上風力発電事業だけでなく、新築・改築双方の建築物のZEB化の普及も行っています。他の多くの建設会社も、ZEBの普及・推進に向けた事業を行っています。

まとめ

gx

今回は、GXについて解説してきました。ESGやDXなど似た言葉が複数存在するため、名前を聞いたことはあるが意味がわかっていなかった方も多かったのではないでしょうか。この記事を読み、GXとは「カーボンニュートラルに向けた社会変革全体のことを指すこと」とお分かりいただけたら幸いです。

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