【更新日:2022年9月13日 by ナオ】
SDGsという言葉は、誰もが1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
SDGsとは「持続可能な開発目標」のことで、大まかに言えば”現代世代が将来世代のために今後も持続できる社会をつくろう”という考え方です。
私たちには、将来世代が持続可能な社会を生きていけるようにその考え方や課題を伝えていく義務があります。
そこで、今回は未来を担う子どもたちと共に保育の場で行われるSDGsの取り組みについてご紹介します。
SDGsと保育の関わり
SDGsと一言で表していても、17の目標で構成されるその内容や取り組みは多岐に渡ります。保育の中でとくに子どもに伝えるべきはどの目標で、なぜ取り組まれているのかを考えてみましょう。
保育と関連性の高いSDGs目標
はじめに、実際に保育の場でどのような取り組みが行われているのかご存じですか?
関連性の高い目標と共に、実際に保育の中で行うことのできる取り組みをいくつかご紹介します。
SDGs目標 | 内容 |
目標2「飢餓をゼロに」 | ・食育を通じたフードロス削減 ・植物の栽培などで職の大切さを学ぶ |
目標4「質の高い教育をみんなに」 | ・質の高い保育環境の確保 ・さまざまな体験屋経験の機会提供 |
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」 | ・男の子と女の子が仲良く過ごせる環境づくり ・職員の性別を問わない雇用体制 |
目標8「働きがいも経済成長も」 | ・保育士の業務負担軽減 ・お手伝いで働きがいを学ぶ |
目標11「住み続けられるまちづくりを」 | ・地域の連携した地域貢献活動 ・子どもを預けやすい環境づくり |
目標12「つくる責任つかう責任」 | ・ゴミのリサイクルや分別の実施 ・バザーの開催 |
関連の高い目標を見てみると、子どもの周辺の環境づくりや体験を通じて学べるものが多い印象です。また、保育士の労働環境の面でもSDGsの取り組みがうかがえます。
このほかにも、お遊戯会などのイベントテーマとしてSDGsの目標を組み込んだり、生活の中で教えられる場面を見つけたりと、保育にはさまざまな形のSDGs教育が存在します。
(参考文献:最近よく耳にするSDGsとは?保育園でできる取り組みを解説!|手ぶら登園保育コラム)
保育現場で高まるSDGsへの意識
株式会社明日香が実施した「保育の現場におけるSDGsへの取り組み」に関する実態調査によると、現役保育士の76.7%が「保育の現場でSDGsに取り組みたい」と回答したといいます。
また、現時点でSDGsに取り組む保育園は52.3%にのぼっており、具体的な取り組み内容としては「古紙回収やバザー」や「給食の残りを出さないようにする」などがあげられていました。
研修や勉強会などを通してSDGsに関して学ぶ機会がある保育園も約9割にのぼっており、保育現場においてもSDGsに対する意識の高さが見られます。
数値的にも、保育現場におけるSDGsへの取り組みに注目されていることがわかります。
SDGsを保育に取り入れる意義とは
保育環境には多くの取り組みがあります。
では、大人に対してではなく、「保育」の場にSDGsを取り入れる意義は何でしょうか?
一言でいうと「マインドを育てるため」です。
保育園に通う年齢からSDGsの課題を考えて、体験を通じて学ぶことで、子どもたちがこれからの時代に不可欠なSDGsの本質を当事者として理解し、持続可能な社会を築いていく基盤となる考え方を養うことにつながります。
また、子どもたち自身にとっても幼少期から多様性やジェンダーといったSDGs課題を意識することで、物事に対する広い視野や人への接し方などポジティブな影響をもたらすとも考えられます。
(参考文献:【保育SDGs】会社全体で取り組むSDGs~あしたばマインド~|手ぶら登園保育コラム)
SDGsを取り入れる保育園の取り組み5選
ここまで保育とSDGsの関係性を見てきました。
幼少期からSDGsと触れ合うことも重要性が理解できたかと思います。
では、実際に保育にSDGsをどのように取り入れていけばよいのでしょうか。
今回は5つの保育園の取り組み事例を紹介していきます。
事例1 株式会社みんなの保育園
株式会社みんなの保育園ではSDGsへの取り組みの方針を8つ表明しています。
取り組み方針のひとつは「食事に関心を持ってもらう」です。
SDGsの目標1「貧困をなくそう」と目標2「飢餓をゼロに」と関連させています。ただ食事をするだけでなく、世界には食事をとれない人がいることやご飯を残すことがもったいないという意識を教育することで、食事に対して感謝の気持ちを持たせられるように取り組んでいるのです。
また、「一人ひとりの個性を尊重する」という取り組み方針は、SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と関連しています。
子どもが性別を気にすることなく過ごせる環境を整えることはもちろん、職員の雇用に関しても性別問わず採用し、全員が活躍できる環境を目指していくといいます。
保育という観点からどのようにSDGsと関わっていけるのか、これからSDGsに取り組む保育園は、取り組み方針を立ててみることからはじめてみてください。
▽株式会社みんなの保育園の取り組み目標はこちら
https://minna-no-hoikuen.jp/nursery/sdgs/
事例2 認定こども園たちばな
認定こども園たちばなでは、毎月行われる保育者の出し物にSDGsに沿ったテーマが取り入れられています。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」をテーマとした会では、先生たちが”男の子は車で遊ぶ” ”女の子はピンクが好き” の考えについて子どもたちに質問を投げかけてみると、「男の子だからって関係ないよ!」「なんだっていいんだよ!」と言った意見が飛び交い、個性を大事にすることを再認識する会となりました。
また、夏には目標14「海の豊かさを守ろう」をテーマに海に住む生き物のシルエットクイズが行われ、海にたくさんの生き物が住むことを学んで、ゴミはゴミ箱に捨てるなどの取り組みで綺麗な海を守っていこうという話がされました。
このように認定こども園たちばなでは、SDGsをイベントに組み込むという方法でSDGsについて知る機会を設ける取り組みが行われています。
(参考文献:SDGsの取り組み|認定こども園たちばな)
事例3 明日葉保育園
株式会社あしたばマインドが運営する明日葉保育園では、子どもたちが環境に関連するSDGsの課題を自ら考え、楽しく体験できるような取り組みを実施しています。
最近では、食品ロスの軽減を目指して「コンポスト」が始められました。
手順は非常にシンプルで、園児が給食室から残菜を受け取り、コンポスト容器に入れてシャベルで混ぜます。これを2か月間繰り返し、そのあと3週間発酵させます。
すると、栄養たっぷりのたい肥が完成するのです。
園児たちは当番制で毎日コンポストに取り組み、完成したたい肥を子どもたちの野菜の栽培に活用して資源の循環を体験する機会につなげ、子どもたちの食育に活かされます。
このほかにも、水を綺麗にするろ過装置の作成から行う異文化交流プログラム「あしたばドア」など子どもが自主的に調べ、課題を探して自ら「SDGsに当てはめるとどうなのか?」を考えられる学習環境がつくられています。
また、子どもに対してのみならず地域で子育てに関わるすべての人に対し、さまざまな子育て支援事業を行っていて、緊急事態宣言中の5月には自宅で育児を行う子育て家庭に向けて公園での出前保育が実施されました。
地域の子育て支援によって、子育て家庭が安心して住み続けられる街づくりにも貢献しています。
(参考文献:「これってSDGsじゃない?」明日葉保育園、食品ロス削減を目指し園児たちが自らコンポストに挑戦|時事通信)
事例4 檸檬会
全国に58の保育施設を運営する檸檬会は、これからSDGsに注力していく予定の保育園です。
「子どもたちが身の回りの課題を『自分ごと』として取り組めるようにする」という考えのもとにSDGs保育の実施を目指しています。
2021年4月には、法人内のSDGsのプロジェクトを立ち上げられました。
年内には具体的な行動指針を定める方針で活動を継続しており、オンラインセミナーなども開催されています。
子どもたちに対しては、土づくりからの野菜栽培による食育や保護者にも便利な登降園の連絡アプリなど、SDGsに触れられる環境が形成されつつあります。
今後子どもたちのために何をすべきかを考えることで、大人たちのSDGsに対する理解が深まり、結果としてSDGsを浸透させることに貢献していくでしょう。
(参考文献:レイモンド・チルドレンHP|檸檬会)
事例5 こどもSDGsプログラム
株式会社ここるくでは、保育園の子どもたちと企業が協同して持続可能な社会づくりに取り組む「こどもSDGsプログラム」を実施しています。
SDGsへ取り組む保育園は年々増加しています。
その取り組み内容の多くは「給食を残さずに食べる」「地域のごみ拾いをする」など、園での生活に密着したものです。
「こどもSDGsプログラム」は園の枠組みを超えて、子どもと企業が協同し、SDGsに取り組むプログラムです。
このプログラムは以下4つにわかれています。
「STEP1 基本プログラム」では、デジタル絵本を用いてSDGsについての理解を深めたり、また最後には「STEP4 フィードバックプログラム」として、保育現場からの発見や知見のフィードバックがあります。
こどもSDGsプログラムの第1弾としてぽぽちゃんシリーズを展開するピープル株式会社が参加しました。
子どもたちが楽しみながらSDGsを学べるプログラムになっています。
気になる方はぜひ下記URLよりご覧ください。
『こどもSDGsプログラム』始動!子どもをまんなかに企業とつくる持続可能な社会
SDGs保育に大切な3つのポイント
実際に行われている取り組みを見て、取り組み方法や子どもの関わる程度など、園によって多種多様なSDGs保育を行っていることがわかりました。
実は、SDGs保育を行う上で共通したポイントがあります。それらを3つに厳選してご紹介します。
POINT1-子どもが楽しんで取り組める
SDGs保育の主役は子どもたちです。そのため、SDGs保育は「子どもたちに興味を持ってもらえること」「主体的に取り組めること」を前提に取り組み内容を考える必要があるのです。
たとえば、事例2で紹介した認定こども園たちばなの出し物では、海の生き物をクイズ形式にすることで興味を持たせ、環境問題へのとっかかりをつくっています。
また、事例3の明日葉保育園では、コンポストなど子どもたちが自主的かつ楽しんで参加出来るようなプログラムが考えられています。
子どもたちが”楽しい”と思って取り組みに参加できなければ記憶に定着しにくく、理解しようという発想にも至りません。遊んで”楽しい”はもちろん、考えて”楽しい”プログラムであることが重要です。
POINT2-保育士と保護者の連携
事例では保育園で行われている取り組みについて取り上げましたが、保育には保育士だけでなく、保護者や地域の人々の存在が欠かせません。
とくに保育士と保護者は子どもと過ごす時間が長く、思考や性格の形成に大きな影響力を持っています。
仮に保育園でSDGsを学び、子どもが「ゴミはごみ箱に捨てなきゃいけないんだ」と覚えても、保護者が道端にポイ捨てしていれば「道に捨ててもいいんだ」と考えてしまう可能性もあります。
SDGs保育を行うためには、子どもに対して一貫性を持った行動・態度で接しなければなりません。
保育士と保護者が連携して、子どもが学んだことを正しく実践できる環境をつくっていく必要があります。
POINT3-ステップごとの理解で誰一人取り残さない
子どもたちは一人ひとり理解のスピードや性格・積極性などに個性があります。誰一人取り残さずにSDGs保育を行うためには、
「きっかけ」⇒「疑問」⇒「理解」⇒「気づき」
といったように段階的に理解しやすくしなければならず、ステップごとに丁寧に取り組んでいくことでより深い理解が実現します。
家庭でもできるSDGs保育
幼少期からSDGsに触れることの重要性、そのためのポイントなどを説明してきました。
実は保育園などの保育現場だけでなく、家庭でも子どもがSDGsにふれる機会を作れるのです。
ここではその方法を紹介します。
SDGsに関する絵本の読み聞かせ
SDGsの絵本を読み聞かせてあげることで、子どもが家庭でSDGsに触れられます。
昨今SDGsに関する絵本が多く出版されており、子どもでもわかりやすくSDGsを理解できるものが多く存在しています。
SDGsの絵本を読み聞かせることで、SDGsと触れられるのはもちろん、親子でSDGsについて考えるきっかけにもなるでしょう。
この機会にぜひ、ご家庭で1冊SDGsの本を購入されてみてはいかがですか?
▽SDGsの絵本について詳しく知りたい方はこちら
▶関連記事|《必見》絵本で学ぶSDGs|絵本の可能性とは?おすすめの絵本を紹介!>>
まとめ
将来世代を担う子どもたちのために、SDGsは保育の現場にもさまざまな方法で取り入れられていました。
持続可能な社会の実現のために、子どもに対するSDGs教育は不可欠になります。
しかし、適切なSDGs保育のためには、保育士や保護者など大人のSDGsに対する理解や工夫が大切です。
この記事が、皆さんのお子様への接し方や新しい教育的視点の一助となれば幸いです。