カーボンニュートラルを目指す製造業の課題と取り組み-事例6選も紹介

#カーボンニュートラル#環境#脱炭素(カーボンニュートラル) 2022.12.30

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気候変動が深刻化する中、世界中の企業が温室効果ガス排出量を減らすために取り組みを行っています。特に製造業は、他の産業に比べて温室効果ガス排出量が多いと言われていますが、DX化や省エネを進めることで、排出量を大幅に減らすことができます。

カーボンニュートラルを達成するための製造業企業の課題とはなんでしょうか。また、温室効果ガスを減らすためにどのような取り組みができるのでしょうか。

この記事では、製造業を営む中小企業に焦点を当て、カーボンニュートラルのための取り組みを分かりやすく解説します。

【この記事で分かること】※クリックするとジャンプします。

製造業におけるカーボンニュートラルの課題

日本の部門別CO2排出量のなかで産業部門が占める割合は多く、2020年度のCO2の部門別排出量(各部門の間接排出量)では、産業部門が全体の34%を占めました。

そして産業部門から排出されるCO2の9割以上は製造業によるものであるため、各産業でもとくに製造業におけるカーボンニュートラルの重要性が高まっています。

温室効果ガスを削減する取り組みとして企業や工場での再生可能エネルギー導入が進むなか、課題は電気料金や設備投資にかかるコストです。

製造業に必要不可欠な存在である「電力」を再生可能エネルギーに変えることはカーボンニュートラルを推進するにあたり効果的ですが、一方で電気料金の増加を覚悟しなければなりません。また省エネ設備への切り替えや、稼働効率を高めるためのメンテナンスなど、省エネに関わる取り組みのなかでも多くの費用がかかります。

製造ではなるべく製品の価格を抑え、かつ品質を維持することが求められます。そのため製造業のカーボンニュートラルでは再エネ導入、省エネ化に伴う電気・設備コストの増加が課題といえます。

カーボンニュートラルが製造業に求められる理由

カーボンニュートラルが製造業に求められる理由の1つは消費意識の変化です。

脱炭素の文字

日本政府は2030年に温室効果ガスを46%削減(2013年度比)し、2050年にカーボンニュートラルを実現することを目標として定めました。

カーボンニュートラルや脱炭素という言葉が浸透した昨今では、SDGsの目標を意識した活動が多く見られるようになりました。「エシカル消費」もその1つです。SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」に関係したこの言葉は、社会や環境に配慮した消費行動を意味します。

このエシカル消費の活発化により、つくる側である製造業にも環境を考慮した運営が求められるようになってきています。また、環境意識の高まりがZ世代と呼ばれる20代前後の世代に多く見られることから、環境に配慮した商品を通してz世代に企業をアピールできるというメリットもあります。

関連記事:カーボンニュートラル達成に向けた政府の取り組み-目標や宣言も紹介

製造業の中小企業ができるカーボンニュートラルの取り組み4選

ここまで製造業におけるカーボンニュートラルの必要性について紹介しました。では、カーボンニュートラルに向け、企業や工場ではどのような取り組みが行えるのでしょうか。続いて、製造業の中小企業ができるカーボンニュートラルの取り組みを紹介します。

工場の画像

省エネ設備への切り替え

蛍光灯からLED電球へ切り替えたり、省エネ性能の高い設備を導入したりすることでエネルギーの消費を節約し、温室効果ガス削減することができます。

昨今では省エネ効果のある家電なども販売されているため、これら製品の切り替えや機材のメンテナンスもエネルギー消費を抑える取り組みとして有効です。

再生可能エネルギーの導入

工場の屋根や壁に太陽光パネルを設置し、作り出した電力を生産に活用するという取り組みがあります。また再エネと併せて蓄電池を設置すると、台風や停電など非常時の電源として発電した電力を活用することができます。

自社で発電する方法の他に、再生可能エネルギー由来の電力を小売電気事業者から購入することでもカーボンニュートラルに貢献することができます。

製造業のDX化やスマートファクトリーの実施

データ分析や製品の品質チェックにIoTやAIを活用することで生産性を上げ、エネルギー消費を抑えることができます。

IoT・AIの技術を導入することで業務を効率化、また自動化している工場を「スマートファクトリー」と呼び、人手不足を解消する取り組みとして注目を集めています。スマートファクトリーの例としては、工場内で稼働する設備の情報や生産現場のデータをAIで分析することで工程を見える化し、製品の品質や作業効率を向上させるなどがあります。

カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、どうしても削減できない二酸化炭素を他の活動で埋め合わせるという取り組みです。

埋め合わせの例としては植林など二酸化炭素の削減に貢献する活動や、そのような活動によって削減・吸収された二酸化炭素量をクレジットとして発行した「カーボンクレジット」の購入などが挙げられます。

カーボンオフセットを企業で活用する取り組みとして、以下があります。

  • 企業で定めた二酸化炭素削減量のうち、削減しきれなかった分をカーボンクレジットで購入・環境保全などでオフセットする。
  • 商品の製造過程やイベント活動において排出された二酸化炭素を、カーボンクレジットで購入・環境保全などでオフセットする。
  • 商品にカーボンクレジットを付与することで、対象商品を購入する消費者の生活から排出される二酸化炭素量のオフセットを支援する。

関連記事:カーボンニュートラルLNGの仕組みと課題-販売企業3社も紹介

製造業の企業がカーボンニュートラルへ取り組む3つのメリット

この章では、製造業の企業がカーボンニュートラルへ取り組むメリットについて紹介します。

メリット・デメリットの文字を見つめる人物

生産効率の最適化・向上を実現できる

温室効果ガスを削減するためには、無駄なエネルギー消費を抑える取り組みが必要です。具体的には、現状の分析から無駄な工程を洗い出し、工数の削減や工夫などにより効率化を図ります。すると結果として、温室効果ガス削減と同時に生産効率の最適化・向上が自ずと行われることとなります。

さらに設備の更新などからエネルギー消費を抑えることで、光熱費や燃料費などの費用を削減することができます。

エネルギーコストの削減につながる

温室効果ガスを抑えるために導入された省エネ設備や、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入によりエネルギーコストの削減が行えます。

設備の省エネ化ではエネルギー消費量そのものを抑えることができ、再エネの導入では事業に必要なエネルギーを自社で補うことができます。またIoTやAI技術を活用した生産性の向上では、エネルギー使用の効率化に繋がります。

これにより、カーボンニュートラルに向けた取り組みの多くには省エネ効果が付与されます。

企業価値と競争力の向上につながる

カーボンニュートラルを意識した製造は、社会や環境に配慮した企業としてのアピールポイントとなります。

またステークホルダーに対しSDGsへの取り組みを宣伝することで、企業イメージ・価値を向上させる効果があります。その結果、ESG投資の対象や新規顧客の獲得といった新しいビジネスチャンスを獲得する可能性を生み出します。

関連記事:カーボンニュートラル市場規模は大幅拡大-市場規模や成長、企業の投資事例まで紹介

カーボンニュートラル達成のための4つのステップ

製造業がカーボンニュートラルを目指すには、どのように行動すれば良いのでしょうか。続いて、カーボンニュートラルに向けた行動ステップを紹介します。

stepという文字が印刷された紙を見下ろす人物

カーボンニュートラルを効率よく達成するためには現状の把握に始まり、取り組みのコストと効果の推測、両者のバランス検討など、いくつかのステップが必要です。

以下の表にカーボンニュートラルに向けた4つのステップを示します。

step1:現状把握 現状のエネルギー使用状況や使用箇所などを把握し、削減できるエネルギーや二酸化炭素量を計算・検討します。
step2:取り組み実施 取り組み体制を整備し、進捗を管理します。また取り組みの達成の基準を設定します。
step3:効果検証 設備のデータや運転状況からエネルギー使用量を視覚化し、効果を測定します。
step4:計画見直し 達成基準と効果との差を基に取り組みを見直し、新たな施策の追加などを検討します。

(参考:カーボンニュートラルを目指す製造業の取り組み|省エネ工場 | キーエンス

カーボンニュートラルに取り組む中小企業の取り組み事例3選

ここまでカーボンニュートラルのメリットと実現までのステップについて紹介してきました。では、実際に企業はどのようにカーボンニュートラルに取り組んでいるのでしょうか。3つの事例を紹介します。

青空の画像

鹿島建設株式会社|建設業

鹿島建設株式会社では、施工現場や工程で排出されるCO2を把握・可視化するシステム「環境データ評価システム(edes;イーデス)」の開発と運用を通し、脱炭素社会の実現に取り組んでいます。

他にも、工事規模に合わせてCO2排出削減計画を検討できるツール「現場deエコ」を開発するなど、現場のCO2だけでなくコストの削減にも貢献する技術ツールを活用しカーボンニュートラルに貢献しています。

株式会社和泉|化学製品業

株式会社和泉では「人へ、環境へ、未来へ、確かな信頼を包む」という理念のもと、地球環境への負担を軽減する新たな気泡緩衝材「ナノツーエアセルマット」の開発を通してCO2削減に取り組んでいます。

ナノツーエアセルマットは従来の製品と比べ燃焼時における二酸化炭素排出量が50%以上削減されています。また全国で4つの製造拠点、複数の物流拠点を用意することで物流の効率化を図り、輸送時に発生する二酸化炭素の削減に取り組んでいます。

株式会社篠原化学|繊維産業

株式会社篠原化学では、「すべての人々が睡眠を通してもっと健康に」というスローガンのもと、寝具製品の輸入・卸売・小売からSDGs活動をサポートしています。

商品の輸送・配送ではマットレスなど大物商品を圧縮ロールすることで体積を約1/3にする「エコロジー梱包」を実施しています。エコロジー梱包では輸送時に使用する石油燃料や、排気ガスの削減が行われています。他にもビニールや段ボールといった資材のリサイクルなど、複数の環境対策に貢献しています。

関連記事:カーボンニュートラルへの取り組み事例8選-企業と自治体の対策を解説
関連記事:カーボンニュートラルに取り組む企業一覧-取り組むための3つのステップも解説!

まとめ

本記事では製造業を中心としたカーボンニュートラルの取り組みについて解説しました。

製造業は排出される温室効果ガスが他の産業に比べて多いことから、カーボンニュートラルへの取り組みが重要視されています。

省エネ設備への切り替えや製造業のDX化など中小企業が行える取り組みは多く、また生産効率の向上や企業価値向上といったメリットもあることから、カーボンニュートラル実現に向けた活動の加速が期待できます。

SDGsCONNECTではカーボンニュートラル以外にも再エネ、温室効果ガスについても詳しく解説しています。関連記事のリンクから併せて読んでみてください。

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