リスキリングの課題とは?|企業や中小企業の課題、国際比較を紹介

#教育 2024.02.06

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「リスキリング」とは、新たにスキルを習得し、一人ひとりが業務を効率よく行えるようにすることです。海外の企業では活発に行われていますが、日本の企業ではあまり広く普及していません。

会社がリスキリングに取り組む際に、さまざまな課題に直面しています。とくに人材の確保や、教育内容のアップデートなどは、多くの会社が抱えています。

この記事では、リスキリングの概要や会社が直面する課題について、解説していきます。また日本と、海外のリスキリング市場についても説明していきます。

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リスキリングとは|リカレント教育との違いも説明

まずはリスキリングにおける概要や、リカレント教育との違いについて、説明していきます。

リスキリング」とは、すでに習得したスキル以外のスキルを新たに習得し、異なる職務を担えるように教育することです。リスキリングを行うことで、一人ひとりが業務をより効率よく行えるようになり、高い生産性をもって仕事ができます。

一方で「リカレント教育」は、会社に務める社員が、幅広い知識を身につけるために取り組む教育です。「リスキリング」とは異なり「リカレント教育」では、仕事の効率を高めるのではなく、さまざまな知識を得ることが目的です。

企業がリスキリングを推進する際は、社員にどのような目的をもって行うのか、把握したうえで目的に適した教育を行う必要があります。

関連記事:リスキリングの内容とは?-資格や補助金、従業員への支援内容も紹介

日本のリスキリングの現状と市場

つぎに日本におけるリスキリングの現状や、市場規模について、説明していきます。

日本のリスキリングの現状|海外と比べてなぜ遅れているのか

日本では、海外の企業と比較するとリスキリングはあまり行われていません。リスキリングが遅れている原因として、とくに日本の企業はそもそもリスキリングの知識が不足しておらず、実際に取り組みを行うまでに時間がかかっています。さらに中小企業では、資金や人手の不足により、取り組みが実施できていない傾向にあります。

一方で海外では、リスキリングの取り組みが広く行われています。とくにアメリカや北欧諸国の企業や政府が、積極的に実施しています。今後、日本でリスキリングを推進していくためには、企業や政府の取り組みが必要不可欠です。

日本のリスキリングの市場規模

日本のリスキリング市場は、年々増加傾向にあります。とくにDX化が推進されることで、働き方が急激に変化しています。またリスキリングを実施する際にeラーニングも広く活用されており、市場規模も拡大しつつあります。

矢野経済研究所が調査した結果、2022年度におけるeラーニング市場規模は、約3,705億円でした。この数値は、2021年度と比べて4.3%も増加しています。また今後市場規模はさらに拡大すると見込まれており、2025年には6,000億円に達すると予測されています。

eラーニング
…パソコンやタブレットなどの電子機器を用いて学ぶ学習のこと。ITスキルやマネジメント学習など、幅広く学べるもの。

 

企業側のリスキリングの課題3選

続いてリスキリングを実施するうえで発生する課題について、説明していきます。

関連記事:DX時代のリスキリングとは-DX人材の役割や何を学ぶべきかを徹底解説

関連記事:リスキリングに最適な資格10選-人気の資格を分野別に紹介

スキル向上のため十分な時間と費用を確保する

企業がリスキリングに取り組む際に直面する課題の一つとして、時間費用が挙げられます。リスキリングは、社員一人ひとりがスキルを習得できるように、企業側も時間を確保したり、リスキリング支援の費用が必要な場合があったりします。

たとえば研修などの参加費や、教材費などの支援です。社員が希望するスキルを得られるよう、長期的なサポートを行っていくことが大切となります。また社員が、学ぶ時間を十分に確保できなければ、成長にもつながりません。会社側は、多くの社員がスキルを高められるよう、時間の確保と費用のサポートを行うことが重要です。

教育内容の定期的なアップデートをする

リスキリングを行ううえで、教育内容をアップデートし続けることも、課題になります。近年では変化が著しいため、次々と新しい技術や知識が生み出されています。そのため従来のやり方にとどまるのではなく、時代に適した学びを提供することが必要です。

常に教育内容をアップデートしていくための方法として、その時代のトレンドや需要を把握することがあります。また社員にアンケートをとり、実際に働いている人の意見を聞くことで、教育内容を見直すこともできます。これらの取り組みを通じて、多くの社員がより効率よく仕事ができる環境づくりを目指すことができます。

リスキリングに対する公正な評価制度を構築する

社員がリスキリングできる環境があるにもかかわらず、正当な評価がされなければ、社員のモチベーションにも悪影響を与えます。そのためリスキリングをしたことによる公正な評価制度を設けることも、企業には求められます。

具体的な制度として、リスキリング後に社員がどの程度スキルが向上したのか、実績にどのような変化を与えたのかを評価するシステムが挙げられます。また社員一人ひとりがどのような業務を行っているかにより、評価制度も変えていく必要があります。

リスキリングによる公正な評価制度は、社員のモチベーション向上にもつながります。さらにリスキリングの推進にも貢献するため、積極的に取り組むことがおすすめです。

中小企業のリスキリング課題3選

つぎに中小企業が直面するリスキリングの課題について、説明していきます。

関連記事:中小企業の働き方改革の課題と効果的な進め方-事例5選も紹介

社員へリスキリングに関する理解を深める

中小企業がリスキリングの課題に取り組む際、まず重要となるのが、リスキリングの理解を深めることです。中小企業に勤めている社員の中には、リスキリングについて認識していない人も一定数存在します。

社員への理解を深めるためには、企業側が取り組みを行うことが求められます。たとえば社内研修などの開催です。リスキリングの意義や内容について理解してもらうことで、会社の中でリスキリングを活発にできます。

育成に必要な知識やノウハウを身につける

またリスキリングを推進するうえで、教育に必要な知識やノウハウを身につけることも大切な課題です。リスキリングの教育を行うためには、まず会社の中で求められるスキルを明確にしていきます。

教育方法としては、eラーニング集合研修など、さまざまな種類があります。会社のニーズや個々のスキルに合わせて、適切な教育が行える環境を整えることが必要です。

必要なスキルが明確にならなければ、リスキリングを推進しても会社の成長につながらない可能性もあります。会社にとって求められるスキルを考え、そのスキルを得られるような教育制度を設けましょう。

リスキリングのための人材を確保する

教育の制度が整っていても、リスキリングに必要な人材が確保できていなければ、リスキリングは推進されません。そのためリスキリングを行うために教育担当者を設けることも求められます。

中小企業の中には、人手が不足していることが原因で、教育担当者を確保できない場合があります。そのため社員全体でリスキリングの重要性を理解し、会社全体で学び続ける環境をつくることが必要です。

リスキリングの国際比較|アメリカと北欧の事例2選

続いて海外で実施されているリスキリングの状況について、紹介していきます。

アメリカ|IT企業を中心としてリスキリングプログラムの提供

アメリカでは、IT企業を中心にリスキリングの取り組みが進められています。具体的な事例として、有名なテック企業であるAmazonがあります。

Amazonは、社員のリスキリングプログラムとして「Upskilling 2025」という計画を行っています。このプログラムでは、2025年までに30万人の従業員へ新たなスキルを教えるというものです。中には「Amazon Technical Apprenticeship」という、アメリカの労働省に認定されたプログラムも提供されています。

またIBMでは、社員がリスキリングによりスキルを得たことでバッジとして証明できる「デジタルバッジ・プログラム」を実施しています。その他の会社でもリスキリングを促すことで、会社全体での成長を促進しています。

スウェーデン|政府主導のリスキリングの推進

スウェーデンでは政府が主導となり、リスキリングの推進に積極的に取り組んでいます。とくに、先端技術の発達に伴い、必要なスキルを向上させる政策を展開しています。

たとえば「Job Security Councils」という制度があります。これは企業が倒産やリストラなどで働けなくなった従業員を対象に、新たな職を見つけるためのサポートや再教育を提供するものです。

また政府の機関である「National Agency for Education」では、無料でコンピューターレッスンが受けられる環境を整えています。これらの取り組みを通じ、スウェーデンで暮らす人々がスキルを得られる社会の実現を目指しています。

フィンランド|ライフロングラーニング

フィンランドでは、「Lifelong Learning」が大いに推進されています。「Lifelong Learning」では、国民全体で学びを継続し、自身のスキルを常にアップデートしていくことを目指した取り組みです。

具体的には、全国民を対象に教育プログラムを提供しています。このプログラムでは、教育を無料、または低費用で受けられるようにしています。これにより、誰でも新しいスキルを身につけることが可能です。

フィンランドにおいても、教育の機会を常に設けることで、国民全体のスキルを高め、リスキリングを促進しています。

リスキリングの事例3選|中小企業の取り組みを紹介

つぎに日本において中小企業が、実際に行っている取り組みを紹介していきます。

株式会社陣屋|OFF-JT制度を用いて社員の意欲向上

株式会社陣屋は、老舗旅館を経営している会社です。新たに旅館管理システムである「陣屋コネクト」を開発し、導入をはじめました。「陣屋コネクト」では、社員全員が顧客の満足度を高めるために教育を行っています。

具体的な教育例は、ITツールの活用方法の教育や、OFF-JTの取り組みです。OFF-JTでは、マニュアルの再作成を行い、読みやすいマニュアルをつくるなど、従業員の方が意欲を持って行っています。

そのほかにも研修制度を充実させることで、リスキリングを推進しています。たとえば職場体験では、他部署の仕事を経験することで、新たなスキルを身につけることを目的としています。

OFF-JT
…仕事の時間の中で、特別に時間を設けて教育や学習を行うこと。

久野金属工業株式会社|社員の技術力の向上支援

久野金属工業株式会社は、製品開発や量産を行う金属加工メーカーです。久野金属工業株式会社は、リスキリングに積極的に取り組み、若手の教育を行っています。

とくに技術認定制度は、社員の成長意欲を向上させています。この制度では毎年1回レポートを提出することで、一人ひとりを評価しています。評価は10段階存在し、国家資格の2級技能士に相当する階級もあります。

またクラウドサービスである「IoT GO」を開発し、製品の製造や稼働状況を目で見えるようにしています。「IoT GO」はすべての社員が活用し、改善を続けています。

西川コミュニケーションズ株式会社|リスキリングによる人材育成の実施

西川コミュニケーションズ株式会社は、デジタル技術を活用して印刷事業を展開している会社です。今後の事業を展開するうえで、人材の育成が課題であると考え、リスキリングを推進しています。

リスキリングの促進において、リスキリングアップスキリングアウトスキリングという3つの分野の取り組みを強化しています。たとえばアップルスキリングでは、デジタル機器を積極的に導入し、業務の効率化を目指しています。

またアウトリスキングでは、転職を試みている社員が独立できたり、レベルアップできたりするよう、学びの支援を行います。この取り組みを通じて、自立した人材の育成に力を入れています。

西川コミュニケーションズ株式会社におけるリスキリング
…業務において、新規事業を立ち上げるなど、経験のないスキルを学ぶために教育を促進する。専門学校の通学や、講師を招いた勉強会を行う。

まとめ

リスキリング」とは、会社に勤めるうえでより効率よく仕事をできるよう、スキルを得るために教育を行うことです。近年では変化が著しいため、一人ひとりがさまざまなスキルを求められています。そのため会社側が、社員の教育の場を設けることが必要となります。

リスキリングは海外で徐々に普及していますが、日本ではあまり行われていません。その理由の一つが、リスキリングについて理解が深まっていないことです。またリスキリングを行う際に時間・費用の確保や、正式な評価制度を設けるなど、課題も数多く存在します。

日本でさらにリスキリングを推進するためには、会社側の取り組みが必要不可欠です。社員一人ひとりに適した成長ができるように、体制を整えていくことが求められていきます。

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