LGBTの中学生の割合はどのくらいでしょうか。
日本には約1000万人がLGBTとして生活しています。その中でも実際に、LGBTと自覚している中学生はどのくらいいるのでしょう。
今回は、日本のLGBT中学生の割合や悩み、学校のLGBT意識、私たちに出来ることを紹介します。
▼SDGsについて詳しくはこちら
【この記事でわかること】 |
見出し
LGBTとは-簡単に説明
LGBTとは、「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の頭文字をとった言葉です。
それぞれ性的指向や性自認が違います。レズビアンは「女性の同性愛者」、ゲイは「男性の同性愛者」、バイセクシュアルは「両性愛者」、トランスジェンダーは「心の性と身体の性が一致していない人」を指します。
また、LGBT以外にも「LGBTQ+」や「SOGI」などの言葉も使われています。
LGBTQ+
「Q」は、「クィア」、「クエスチョニング」と呼ばれ、自分の性自認や性的指向が定まっていない人を指します。「+」はLGBT以外の分類できない性別を含んでいる事を表します。 「LGBTQ+」という言葉は、表現できていないセクシュアルを含み、全てのセクシュアルマイノリティに配慮を示す表現です。 |
SOGI(ソジ)
「SOGI」とは、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字を取った言葉です。SOGIは、全ての人が持っている「属性」を表す言葉です。 |
▼関連記事
《徹底解説》LGBTQとは|SDGsとの関係から、現状や課題まで徹底網羅
日本中学生のLGBT割合は不明
日本にいるLGBTの割合は8〜10%と言われています。しかし、特定の世代の割合ははっきりしていないため、LGBTである中学生の具体的な数値は分かりません。
その理由として、LGBTであるとカミングアウトしていないことがあげられます。中学生など思春期である学生は、周りの環境や自身の性について悩む時期でもあります。そのため、アンケートに回答したくない人や自身の性が分かっていない場合も多くあるのです。
LGBT中学生の悩み
中学生に差し掛かる当たりで身体や心の変化が生じ、性別に違和感を持つことがあります。
しかし学校では、男女を区別する文化が根強く残っており、辛い思いをする中学生がいます。普段の生活で、辛い、受け入れてもらえないと感じている部分はどこなのでしょうか。
制服-男女別のデザイン
学校では、制服を身に着ける時間が長いですが、男女ではっきりとデザインが違っています。それがLGBT中学生の悩みの原因の1つです。
性自認によって着用したい制服も異なり、LGBTに配慮していない学校の場合、希望する制服を着られないことがあります。
いじめ-LGBTの68%が、中学卒業までの間にいじめを経験
LGBT該当者のうち68%が、6歳から15歳までの間にいじめを経験しています。
特にいじめの多い時期は小学生高学年から中学生の二次性徴期に集中しています。
身体の変化が目に見えてわかる時期に、自身の性自認に違和感を持つことがあり悩んでしまいます。
さらに、身のこなしや話し方が周りと違うという理由でいじめが起きています。知識や情報が不十分な子どものうちは、「他の人と違う子」がいじめの対象になります。
二次性徴期
身体の各部分に見られる男女の特徴。成人としての性の特徴が現れてくる。 |
トイレ-性別に合わないトイレの使用がストレスになる
トイレの使用は、特にトランスジェンダーが使いづらさを感じることが多いです。
どちらの性か決まっていない、または一致していないトランスジェンダーは、男女どちらのトイレを使用したらよいのか悩んでしまいます。
性自認に基づいてトイレを使用すると身体の性と別のトイレを使用することになり、周囲からの視線が気になります。
自殺-10代LGBTの自殺は増加傾向
2022年、10代LGBT当事者の自殺念慮や自殺未遂の割合は上がっています。さらに日本財団の調査とLGBTの10代の調査を比較したとき、10代LGBTの自殺念慮は3.8倍高くなっています。
LGBTの自殺念慮や自殺未遂率が高くなっている背景には、LGBTであることやそれに関する相談を十分に行えていないことがあります。
カミングアウト-アウティングに注意
LGBT中学生が自身のセクシュアリティを自覚した上で悩みとなってくるのは、カミングアウトです。
カミングアウトには、段階があります。最初は、身近な友人や家族、次に職場や学校など範囲は徐々に広がっていくことがほとんどです。
カミングアウトの範囲は人により異なりますが、一度カミングアウトしたからといって全てオープンになるわけではありません。
気をつけなければいけないのは、アウティングです。
例え自分が理解していても、アウティングした先の人が理解がある人とは限りません。当事者にとって、アウティングされることはとても危険です。
「大したことは無い」と判断せず本人のとらえ方を尊重し、カミングアウトの確認をすることが大切です。
カミングアウト
誰にも言ってこなかった自分の秘密を自分から打ち明けること。特に、「自分がセクシャルマイノリティである」ことを指します。 |
アウティング
セクシュアルマイノリティであることを、本人の了承を得ずに第三者に公言すること。 |
LGBTと学校-事例も紹介
LGBT該当者は40人クラスに2〜3人いると言われています。本人が気づいていなかったりカミングアウトしていないこともあるためそれ以上いる可能性もあります。
次は、学校のLGBTへの対応を紹介します。
日本の中学校の現状
LGBTであると気づき始めるのは小学校高学年あたりが多いと言われています。そして、中学生になり周りと違うことが悩みやいじめにつながるのです。
さらに、体の変化もあり周囲だけでなく自分自身も辛くて受け入れられなくなります。
学校では、LGBT配慮を取り入れ、制服のデザインを変更するなどの対応を行っていますが全ての学校では見直されていません。
現状、学校側のLGBTへの配慮は不十分であり、改善の余地があります。
中学校がLGBTに取り組む意義
LGBT当事者が辛いと感じる部分は、相談できないところです。
「周りと違う」「理解してくれる人がいない」と思い、不登校になるケースもあります。
中学校がLGBTに取り組むことでそのような生徒を救うことができます。
LGBTに配慮した制服-全国の中学校の半数が実施
制服に配慮している学校の調査では約5割が意識してLGBTに配慮しています。
上記のグラフでは、服装の配慮をしている学校の割合は18.1%、検討している学校の割合は37.7%です。
服装に配慮している学校では、スカート・スラックス・リボン・ネクタイを男女関係なく選べるようにしています。さらに、男女共通のデザインの制服を採用している学校もあります。
制服は、デザインを変えることでLGBT配慮を取り入れやすく、今後も対応校が増えてくると予想できます。
LGBTと中学教師-事例も紹介
LGBT該当者がいた場合、先生はどのような対応が必要でしょうか。
LGBTに出会う機会も少なく、良い対応をし損ねる教師もいると思います。傷つけるつもりはなくても、無意識に生徒との信頼も崩れてしまいます。
どのように対応すると良いのか、説明していきます。
先生の意識の現状
LGBT理解は広がっていますが、実際に勉強すべきなのは子どもだけでしょうか。
教える立場の教師も同じ人間です。知らないことを教えることはできません。
LGBTについて積極的に学んでいる中学校教師はとても少ないです。相談できる場がないという悩みも、知識がない先生が多いことが原因の一つです。
「LGBTの知識をつける」ことを意識できていない先生もいます。
全ての人が過ごしやすくなるよう、先生がLGBTについて知ることも重要です。
LGBTへの支援策-LGBT生徒と向き合う
可視化することが難しいLGBTは、どのように配慮すべきなのでしょう。
しかし、配慮しすぎてLGBTについて触れないのは、居ないことと同じです。よくわからないのであれば、LGBTについて学び、その姿勢を子どもに見せることが重要です。
もちろん、全てわかるわけではないので言葉選びを間違えることもあります。その場合は、間違えていることや嫌だと思ったことを本人に聞いてみるのが適切です。
学んだことをクラスで話題にすることで、LGBTを知るきっかけにもなり、理解があると安心する人も増えてきます。
LGBTへの悪口や偏見に対して注意する
LGBTへの気になる言葉や悪口など、先生が注意するべき場面ではどうしたらよいでしょうか。
セクシュアルを揶揄する表現は、特にLGBT当事者が気にする言葉です。何気ない一言で一生傷を負うことにもなります。
その言動が人を傷つけているのだと説明し、釈然とした態度で接することが大切です。
おすすめ教材-Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)
最後に、セクシュアルマイノリティを勉強できる教材「Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)」を紹介します。
この教材は、セクシュアルマイノリティの子供にとって過ごしやすい小学校を作るための教材キットです。
教師用と生徒用の教材があり、教師は「アライ(Ally)先生」となりセクシュアルマイノリティの人も、セクシュアルマジョリティの人も自分自身を見つめ直す授業ができます。
アライ
セクシュアルマイノリティの人たちを理解し、支援する人。 |
自分の性が分からない中学生へ
セクシュアルマイノリティを学び、自分がLGBTに該当すると気づく人も少なくありません。
「もしかしたら自分はセクシュアルマイノリティかもしれない」と思うこともあると思います。
そんなとき、どのようにしてセクシュアルを知ったらよいでしょうか。
自分の性を知るためには-診断サイト紹介
今回は、自身がどのセクシュアルに当てはまるのかわからない人向けに作成された診断サイトを2つ紹介します。
anone,
「anone,」では、66個の質問に答え自身のセクシュアルを診断するサイトです。 多くのセクシュアリティを網羅しているため、自分のことがとても分かりやすいです。セクシュアリティを知らない人でも、分かりやすい解説が書かれています。 ▼サイトはこちら |
JobRainbow
JobRainbowが運営しているサイトで、質問に答えていくことで「性的指向、性自認、性表現」が分かります。質問は29個で、診断結果は詳しくみられるようになっています。 ▼サイトはこちら |
勘違いも起きやすい
上記のサイトでは、複数の質問から性的指向や性表現などを知ることができますがこの結果は、絶対ではありません。
近年、セクシャルマイノリティは性的指向や性表現によって分類され、種類が増えています。世界中にいる人の数だけ、性があります。
「これが絶対だ!」、ということはありません。
LGBTを知る中で、自分と共通する事例も出てきます。サイトの診断を参考に、自分のセクシュアルを受け入れていくことが大切です。
相談窓口の紹介-ひとりで悩まない
ここではLGBTのために設けられた悩み相談窓口を紹介します。
よりそいホットライン
よりそいホットラインとは、国の「寄り添い型相談支援事業」による補助金を受け、授業者が行う電話相談です。
よりそいホットラインでは、7つの分野に分けそれぞれの相談員が電話に対応しています。
よりそいホットライン 7つの回線
① 一般ライン ② 自殺予防ライン ③ DV性被害者等女性のための専門ライン ④ セクシュアルマイノリティライン ⑤ 外国語ライン ⑥ 広域避難者ライン ⑦ 被災地の10代、20代の女性のための専門ライン |
また、お悩みクラウド「Moyatter」やチャットルーム「もやもやルーム」など、若者が気軽に相談しやすい環境になっています。
▼よりそいホットラインの電話番号はこちら
0120-279-338
海外の中学生LGBTの現状2選
海外のLGBTへの関心や教育など、日本より進んでいるように思われがちですが、実際はどのようになっているのでしょうか。
アメリカ-LGBTの歴史を義務教育化
アメリカでは、2017年に中学生までの教科書にLGBTの歴史を含めることになっています。
こうした取り組みは、LGBTの生徒が受けている差別やいじめを問題視している背景があります。
2018年、コロラド州で9歳の同性愛者がいじめられ自殺してしまった事件があります。さらに、2022年には、セクシュアルマイノリティの集まるクラブで銃の乱射事件があり、死亡者も出ています。
フランス-生物学でLGBTを取り上げる
フランスでは、LGBTについて「生物学」の授業で勉強します。女性の染色体を持ち、外見が女性の男性や、体つきが男女共の特徴がないトランスジェンダーも学んでいきます。
その中で、性的指向や性表現、自身のアイデンティティ確立まで勉強していきます。
ただ、教科書をなぞるだけでなく歴史的にどのような経緯があったのか、個人の性を考えていく観点を育てます。
しかし、どの国でも問題はあります。教育をしているからといって全員が正しく理解し、LGBTを完璧に守っていくことはできません。
1人1人が、LGBTを理解し正しい知識を持っていくことが重要になってきます。
LGBT中学生の事例2選
セクシュアルマイノリティは、学校の1クラスに2〜3人いると言われています。
学校生活では、悩むことも多く何気ない言葉で傷つくこともあります。
Rさん-学校生活で困ること
Rさんは、パンセクシュアルで小学校2年生の時に、男の子も女の子も好きだと気づきました。
Rさんは修学旅行のお風呂や水泳の授業など、恋愛対象と一緒に入ることになるので意識せざるをえませんでした。
誰にも相談しておらず、学校で習うことも異性愛が中心で自分の将来が不安でしかたなかったといいます。
異性愛が一般的とされている現状、LGBTで悩む人がとても多いです。
パンセクシュアル
男性・女性にとどまらず、Xジェンダーなど全てのセクシュアルを区別しないで恋愛対象とする人。 |
Tさん-公言したいけれどできない
Tさんは、小学生の頃から気になる相手が男性で、それが普通だと思っていました。
中学に上がるころ、恋愛の話が増え、その時に自分がLGBTであると自覚しました。
現在ははっきりゲイであると言えますが、中学生の当時は性別が分からなくなっていたといいます。恋愛対象が男性のためそのうち、女の子になれると思っていたそうです。
同じ悩みを抱えている友人となりたいと思い、ゲイだと公表したいと思っていますが実行できないという悩みを抱えています。
LGBTであると公表することで悩みを抱えている人と出会える可能性がありますが、周囲の目を気にして相談できない状況なのです。
わたしたちにできること
LGBTに悩む人や困っている人はたくさんいます。相談できず苦しい思いをしている人も増えてきています。
LGBT理解が進んできている今、私たちに出来ることは何でしょうか。
大人にできること
大人がLGBTに対してできることは、話せる状況をつくることです。
子どもがLGBTであることや、LGBTについて悩んでいる場合、無理に話を聞きだすことはよくありません。無理に聞くことで「悪いことをしている」「怒られている」と思いこみ、自身でふさぎこんでしまいます。
LGBTについてオープンにすることは、本人にとって重大な決断です。
行動や悩みなど困っている状況であれば解決したいと思ってしまいますが、無理をさせてはいけません。本人から打ち明けてくれるまで待ってみましょう。
さらに、気を付けることは普段の生活でLGBTに否定的な言葉を使わないことです。
特に人に伝える場合「レズビアンだ」「トランスジェンダーだ」とはっきり言うわけではありません。
「スカートが嫌」「制服を変えたい」など、本人もLGBTであるとわからず言っている場合もあります。
これに対して否定すると、一生懸命伝えたつもりが全く伝わっていないと悩む人がたくさんいます。
子どもの小さな主張を見逃さないように話を聞いてあげましょう。
中学生にできること
中学生がLGBTに対して出来ることは、受け入れることです。
中学生では、LGBTと気づく人が増えてきます。そして、周囲の視線や言動が気になってしまいます。「人と違うから変」「男・女らしくない」などが原因でいじめになっていく可能性もあります。
中学生は自身のアイデンティティ確立が始まる時期です。人と違うことは当たり前で、同じ人はいません。
人との違いを受け入れ、自分はどんな人なのか受け入れていくことが大事です。
▼関連記事
中学生とSDGs|おすすめのSDGs教材や中学生でもできる取り組みまで紹介
まとめ
LGBT中学生の悩みや事例を紹介しました。
LGBTであるというのは、人種、宗教、民族、言語などの違いと同様だと考えます。周りに話せず悩んでしまうこともあると思います。辛くなってしまう前に、信頼できる人に相談するのも一つの手です。
大学ではAIについて学んでいます。趣味でイラストを描いています。
SDGsの知識を深めて、わかりやすくて面白い記事をお届けしたいと思います!