中小企業の働き方改革の課題と効果的な進め方-事例5選も紹介

##SDGs目標8##SDGs目標9#中小企業#働き方改革 2023.09.11

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近年注目され、多くの企業にその取り組みが広がっている「働き方改革」。それぞれの労働者が柔軟に働くことが出来るような職場を実現する働き方改革は、大企業だけでなく中小企業でも取り組まれています。

この記事では、中小企業に的を絞り、中小企業の働き方改革の進め方やその課題、全国の事例などを紹介していきます。

【この記事で分かること】

働き方改革とは何か-基本を分かりやすく

労働

そもそも働き方改革とは何なのでしょうか。基本的な目的などを確認してみましょう。

働き方改革の目的と意義

働き方改革とは、それぞれの労働者がそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方を自分で選択できるようにすることです。

働き方改革の実現によって、日本社会が直面している労働力不足や長時間労働問題の解決に繋がるとともに、労働生産性の向上も期待できます。

日本政府も働き方改革を推奨しており、2019年には働き方改革関連法が施行されました。

中小企業における働き方改革の必要性

働き方改革は、大企業のみならず中小企業も取り組む必要があります。日本の従業員の約7割は中小企業に勤めており、より良い労働環境の実現や労働生産性の向上は、日本全体に良い影響をもたらします。

少子高齢化や大企業との競争によって人材確保に苦しむ日本の中小企業ですが、働き方改革によってより多くの人が働くことができる労働環境の整備や魅力的な職場づくりを推進することによって、これらの問題の解決に繋がります。

中小企業における働き方改革の2つの課題

労働_課題

では、中小企業における働き方改革の実現には、どのような課題があるのでしょうか。

人手不足-働き手の確保と育成

課題の1つは、人手不足です。そもそも日本の中小企業は慢性的な人手不足に悩まされているところが多いため、一人当たりの労働時間を削減する働き方改革は、人手不足に拍車をかける恐れがあります。

ワークスタイルの変革-テレワークやフレックスタイム制度の導入課題

テレワークやフレックスタイム制度などの、ワークスタイルの変更を含む働き方改革を行う場合には、新しい勤務管理制度やそれに伴うシステム導入が必要になります。多くの中小企業にとって導入検討やシステム管理に割く人員やノウハウの不足は大きな課題になります。

中小企業における働き方改革の進め方

実際に中小企業で働き方改革を実現するためには、どのように取り組めばいいのでしょうか。

現状把握と課題の洗い出し

まず初めに、自社の現状を把握し、課題を洗い出します。働き方改革はあくまで人材確保や生産性向上を実現するための手段であるため、これらの点に課題を感じていなかったり、従業員の労働環境に問題がないのであれば、無理に働き方改革に取り組む必要がない可能性もあります。

働き方改革にとらわれず自社の現状把握と経営課題の洗い出しを行い、自社に必要な取り組みを分析しましょう。

目標設定と計画立案

現状把握と課題の分析をしたうえで、働き方改革が必要であると判断された場合、改革の実行のための目標設定と計画立案が必要となります。

働き方改革と一口に言っても、労働時間の柔軟化や有給制度の改革、非正規従業員の待遇改善など、様々なものがあります。自社に必要な取り組みを分析し、目標を設定したうえで、その実現のための計画立案を行いましょう。

実行・評価・改善のサイクル

計画立案の後は、実際に計画を実行しましょう。働き方改革の実現のためには、ただ計画を実行するだけではなく、実行後の評価とそれを反映した計画の改善を行い、修正後の計画を再度実行するというサイクルを回していくことが重要です。

計画立案とその後のサイクルには、外部の専門家をチームに加えることで、経営層への忖度や妥協を避けることができます。

中小企業が働き方改革を進める上でのポイント3選

話し合い

中小企業が働き方改革を行う際のポイントを紹介します。

1.働き方改革推進センターを活用-専門的な知識やアドバイスを得る

働き方改革に取り組む中小企業支援を目的とした、働き方改革推進支援センターに相談してみるのも良いでしょう。働き方改革推進支援センターでは労働時間制度に関する相談受付、賃金規定の見直し、利用できる国の助成金アドバイスなど、働き方改革に関連するさまざまな相談に対応しています。

働き方改革推進支援センターは全国47都道府県に設置されており、電話やメールで相談することもできます。

働き方改革推進センターは国が設置したワンストップ相談窓口で、特に中小企業・小規模事業者の方々が抱える様々な問題について相談が可能です。働き方改革に関わる労働時間や賃金の見直しなどの様々な相談に対応しており、相談は無料で47都道府県すべてに設置されています。

特に社内での実行チームの確保が難しく、ノウハウも少ない中小企業は働き方改革推進センターを利用してみてはいかがでしょうか。

2.助成金の活用-改革のコスト負担を軽減し、効果的な取り組みを行う

働き方改革の実行には、当然ながらコストがかかります。国や自治体からの助成金を活用しコスト負担を軽減することで、よりスムーズに改革をすることができます。以下の表は国からの助成金の例です。

働き方改革推進支援助成金 労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備等の実施に要した費用の一部を助成するもの
業務改善助成金 生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するもの
キャリアアップ助成金 非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するもの

3.成功事例から学ぶ-自社の取り組みに活かす

ノウハウや企業体力が不足する中小企業での働き方改革の計画には、他社での成功事例を参考にすることも重要です。加えて成功事例の改善点なども分析することができれば、より自社での成功に役立ちます。

働き方改革がもたらす3つのメリット-企業と従業員にとっての利点

働き方改革には時間や人員が必要となり、コストもかかりますが、実現すれば以下のような様々なメリットが期待できます。

生産性の向上 労働時間の縮減により、残業代の支払いが削減できるとともに、従業員の労働時間内での生産性向上が期待できます。
企業のイメージ向上と人材確保 働き方改革に率先して取り組むことにより、社会における自社のイメージ向上が期待できるとともに、労働環境の改善により人材確保にもつながります。
従業員の幸福度と労働意欲の向上 働きやすい環境を整えることで、従業員の幸福度や労働へのモチベーションの向上に繋がります。企業にとっても、離職率の低下や競争力の向上が期待できます。

中小企業の働き方改革の事例5選

最後に、国内の中小企業による働き方改革の実際の事例を紹介します。

株式会社クオレ-ICTを活用し時間外労働を0へ

株式会社クオレは、訪問介護事業や有料老人ホームの運営などを行う大阪の中小企業です。株式会社クオレは国の助成金を活用し、コロナ特別休暇や時間単位の有給休暇制度を導入することで柔軟な働き方を可能にするだけでなく、ICT機器の導入などによる勤怠管理の合理化・簡素化をすることで時間外労働をほぼ0にしました。

鈴木建設工業株式会社-若手が働きやすい職場づくりに注力

鈴木建設工業株式会社は青森県に拠点を置く、2023年9月現在で従業員30名の建設会社です。鈴木建設工業株式会社では、働き方改革の一環として若手が働きやすい環境をつくることを目的に、水曜と隔週土曜のノー残業デーを導入したり、セクハラの防止対策を実行したりしました。さらに従業員全員の正規雇用や資格取得支援など、従業員が働きやすく、定着しやすいような職場を整備しています。

株式会社大空出版-柔軟な勤務時間制度の導入

株式会社大空出版は、東京に本社を置く出版会社です。大空出版では、子育て中の社員を想定してコロナ禍以前から在宅勤務制度の整備を進めるとともに、6種類の勤務時間の中から選べる柔軟な勤務時間制度の導入や、社員一人に仕事が集中しないようにフォローし合う仕組みの導入など、社員一人一人が働きやすい労働環境の整備に力を入れています。

株式会社佐藤工機-ガイドラインや支援センターを活用し待遇差を是正

株式会社佐藤工機は、静岡に拠点を置く金属部品メーカーです。佐藤工機は、厚生労働省のガイドラインや働き方改革推進支援センターの「専門家派遣制度」を利用し、待遇格差の是正に取り組みました。具体的には、不合理な待遇差であると判断された各種休暇や手当制度の格差を撤廃し、かつ「職能別力量比較マップ」を制作して各従業員の技術力を個別に評価することで、成果報酬型の給与体系の構築とそれによる従業員の技術向上意欲の増進を実現しました。

株式会社東洋ハウス工業-育児・介護休業制度により離職を防止

愛媛県の建築・リフォーム会社である株式会社東洋ハウス工業は、働き方改革の一環として幅広い人材を活用することを目的に、育児・介護休業制度を設立して育児・介護離職を防ぐとともに、定年の廃止やフレックスタイム制度を導入することで、従来の労働条件では働きにくかった従業員にも働きやすい環境を整備しました。

まとめ

この記事では働き方改革の目的や中小企業で実行する際のポイントなどを紹介しましたが、いかがだったでしょうか。働き方改革の実現は簡単ではありませんが、社会・労働者・経営者それぞれの大きなメリットがあります。国の制度や他社の成功事例を利用しながら、少しずつでも進めてみてはいかがでしょうか。

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