自治体はLGBTの方々に対してどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。
LGBTへの理解が海外よりも進んでいないと言われがちな日本ですが、実は多くの自治体がLGBTの方々に対する取り組みを行っています。
今回はLGBTに対する自治体の取り組み事例に加え、企業や学校の取り組みまで網羅的に紹介します。
【この記事でわかること】 |
LGBTとは-日本の現状についても解説
LGBTの意味に加え、日本におけるLGBTの現状も紹介します。
LGBTとは-それぞれの頭文字の定義
LGBTとは1つの意味を持つ言葉ではなく、意味の違う4つのアルファベットの頭文字をとったものです。
それぞれの頭文字は異なる「性」のあり方を表しています。
L : レズビアン(Lesbian)
レズビアンとは、性自認が女性で性的指向も女性であるセクシュアルマイノリティのことです。
性自認とは自分自身が認識している性別のことを意味しています。
▼参考
レズビアンとは?意味や女性の同性愛について簡単にわかりやすく解説。きっかけも紹介。
G : ゲイ (Gay)
ゲイとは、性自認が男性で性的指向も男性であるセクシュアルマイノリティのことです。
海外では同性愛者をまとめて「ゲイ」と表現することもあります。
B : バイセクシャル (Bisexual)
バイセクシャルとは、男性と女性の両方に恋愛感情や性的欲求を抱くセクシュアルマイノリティのことです。日本語では「両性愛者」と表記されることもあります。
バイセクシュアルは男性と女性の両方に性愛感情が向く人を意味するため、レズビアンやゲイと違い本人の性別は関係ありません。
▼参考
バイセクシャルの意味と特徴とは?パンセクシャルとの違いも解説
T : トランスジェンダー (Transgender)
トランスジェンダーとは、身体的特徴としての性と自身の性についての認識が異なる状態を指す言葉です。
身体的特徴としての性とは、自身の性に対する考え方に関係なく、性器などの身体的特徴に基づく性別のことを指します。
日本では医学用語の「性同一性障害」と混同されることもありますが、トランスジェンダーとは性別に違和感をもつ人々のことを表します。
このように、それぞれの性の対象や性の不一致をまとめてLGBTと呼んでいるのです。
性自認と身体的特徴としての性が一致せず違和感を感じている人や、男性でも女性でもないと感じている人もいるのが現状です。
日本のLGBTの割合-13人に1人はLGBT
日本の民間団体による調査では、人口の8%〜10%前後はLGBTと言われています。
つまり、10から13人に1人がLGBTという計算になります。
しかし、LGBTの割合を調査した団体によってその割合は違います。
また、LGBTと答える人の割合は年々増加しています。
その理由としてLGBTに対する理解が進み、自分がLGBTであることをカミングアウトしやすくなったことが挙げられます。
▼参考
LGBTの割合がバラつく理由【13人に1人? 100人に1人?】
世間のLGBTへの理解度
世間のLGBTへの理解度はどのくらいなのでしょうか。
一例として2019年に静岡県浜松市が行った「性の多様性について」のアンケート結果を紹介します。。
アンケートの結果から言葉の意味を知らない人は3割近くいることがわかります。
年代別では、若者と高齢者の約6割、子育て世代と中高年の約7割が「言葉も意味も知っている」と回答しています。
それぞれの年代に対して適切にLGBTの理解を促す必要があります。
▼関連記事
《2021年 最新版》SDGsの認知度 |世代別、年別推移、国別まで網羅
政府の施策-文部科学省の取り組み
文部科学省はLGBTの人たちに対する支援として様々なことに取り組んでいます。
文部科学省は特に教育関係の施策をしており、各自治体の学校に対してLGBTの生徒が生活しやすくなるような対応を求めています。
2015年には「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を発出し、性同一性障害の児童生徒への支援について具体的にやるべきことを取りまとめています。
2016年には教職員向け手引きを公表し、教員に対してLGBTを理解することを求めています。
▼参考
性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について | 文部科学省
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自民党が「LGBT法案」了承見送り|「性差別」表現めぐって
SDGsとLGBTの関係性
LGBTを理解することは、SDGsが目標とする「誰も置き去りにしない社会」を達成するために不可欠なことです。
LGBTとそれを取り巻くSDGsの関係を2つ紹介します。
目標3「すべての人に健康と福祉を」
LGBTの人は福祉や医療を受けられなかったり、スポーツの参加を制限されたりすることがあります。
LGBTの人が不利益を被らないために、一刻も早い対応が求められます。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
LGBTの方々が過ごしやすい社会を作るためにはジェンダー平等に対する理解を深める必要があります。
まずは性の多様性を受け入れることが求められます。
紹介した2つ以外にもLGBTとSDGsの関係は多数存在しています。
▼SDGs目標5について詳しくはこちら
▼LGBTとSDGsの関係性について詳しくはこちら
よく耳にするLGBTQ+って何のこと? SDGsとの関係は?
自治体がLGBT施策をする意義とは
自治体がLGBT施策をすることの意義として「始めやすさ」や「柔軟性」が挙げられます。
例えば、国がLGBTに関する法律を改正する際には、多くの議論を経なければなりません。
しかし、自治体であれば国よりも小さなスケールで始めることができ、柔軟性もあります。
自治体が行なっているLGBT施策の例として次のようなものがあります。
・自治体職員向けガイドラインの制定と公開 ・パートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入 ・性の多様性に関する条例の制定 ・相談窓口の開設 |
今回ご紹介したこと以外にも多くの取り組みが行われています。
▼参考
自治体による性的マイノリティに関する 施策への取り組み状況と特徴
自治体のLGBTへの取り組み事例5選
自治体のLGBTへの取り組み事例を5つ紹介します。
東京都-東京都パートナーシップ制度導入自治体ネットワークの結成
1つ目に紹介する事例は東京都の取り組みです。
東京都は、2021年に「東京都パートナーシップ制度導入自治体ネットワーク」を結成しました。
パートナーシップ制度とは、戸籍上の性が同じカップルなどが法的に婚姻関係を認められた人と同等のサービスを受けられるようにする制度です。
このネットワークは、同性パートナーシップ証明制度を導入している12市区が情報交換や利便性の向上を図るために結成したものです。
渋谷区・豊島区・港区・世田谷区・中野区・足立区・江戸川区・文京区・府中市・国立市・小金井市・国分寺市の12市区で構成されています。
▼参考
都内の同性パートナーシップ証明制度導入自治体が連携、都営住宅入居などを都に要請へ
▼関連記事
《日本一SDGs名称認知率が高い県》岡山県のSDGsの取り組み|自治体の推進体制や学校・企業の取り組みまで徹底網羅
埼玉県-企業を対象にLGBTQ研修を実施
2つ目に紹介する事例は埼玉県の取り組みです。
埼玉県は、従業員の理解促進策やLGBT向けの福利厚生制度の有無などの各企業の取組み状況を、県の公式サイトで公表しています。
県内に活動拠点がある企業や事業所の内、県が実施する「にじいろ企業研修」を受講することが条件となっています。
社員の理解不足に直面したり、情報がなくて他社の取組み状況を参考にできなかったりする事例が相次いだため、県が主導となって「にじいろ企業研修」を行うことになりました。
▼参考
埼玉県が県内の企業を対象にLGBTQ研修を実施し、社内での取組みを評価する指標の運用を始めることが明らかになりました
▼関連記事
《徹底解説》SDGsと地方創生の関わり|地方自治体の地方創生の取り組みまで徹底網羅
札幌市-札幌市LGBTフレンドリー指標制度
3つ目に紹介する事例は札幌市の取り組みです。
札幌市は、LGBTに関する企業での取組を推進することを目的として、LGBT施策に取り組む企業に登録証を交付しています。
基本方針、啓発、内部体制、福利厚生、配慮、協力連携の6つの項目についてLGBT施策を評価し、札幌市LGBTフレンドリー企業として登録しています。
登録を受けた企業は登録証を交付されるだけでなく、企業情報や取組内容について市の公式ホームページで紹介されます。
▼SDGsと自治体の関係について詳しくはこちら
大阪市-大阪市LGBTリーディングカンパニー認証制度
4つ目に紹介する事例は大阪市の取り組みです。
大阪市は、大阪市LGBTリーディングカンパニー認証制度を導入しました。
この制度は、LGBTの方々が直面している課題の解消に向けた取組を積極的に推進する事業者等を認証するものです。
認証を受けた事業者が広く認知されることでその取組が普及し、誰もが生きやすい社会の実現を目指しています。
▼参考
「大阪市LGBTリーディングカンパニー」認証の申請を受け付けています
宮崎市-レインボーグッズを用いた広報活動
5つ目に紹介する事例は宮崎市の取り組みです。
宮崎市では個人の性自認や性的指向による差別や偏見の解消のため、レインボーグッズを用いた広報活動を推進しています。
主に以下の2つのことに取り組んでいます。
・性的マイノリティの人の尊厳や社会運動を象徴する虹色の旗(レインボーフラッグ)を掲げること ・虹色の缶バッジを身につけること |
これらの広報活動を通して、性的マイノリティの人たちが過ごしやすい社会を目指しています。
その他の取り組み事例
ファミリーシップ制度
その他の取り組みとしてパートナーシップ制度やファミリーシップ制度があります。
パートナーシップ制度とは、戸籍上の性が同じカップルなどがパートナーシップ宣誓に基づき、パートナー関係がなくては受けられないサービスを受けられるようにする制度です。
ファミリーシップ制度とは、パートナーシップ制度を利用した2人とその子どもが家族関係にあることを証明する制度です。
パートナーシップやファミリーシップを宣誓することで受けられるようになるサービスは自治体によって違います。
公営住宅への入居申し込みや公営病院等での面会の権利保障などを認めているケースが多いことが特徴的です。
▼参考
自治体による性的マイノリティに関する 施策への取り組み状況と特徴
企業の取り組み事例-スターバックスコーヒージャパン株式会社
企業の取り組み事例としてスターバックスコーヒージャパン株式会社の取り組みを紹介します。
スターバックスコーヒージャパン株式会は従業員が若者たちとLGBTについて考える「レインボー学校プロジェクト」というイベントを開催しました。
レインボー学校プロジェクトでは、若者が多様な性について正しい知識を身に着けて安心して学校に通えるようになるために、多様性やLGBTQ+に関する出張授業を行いました。
授業では、スターバックスの従業員を含めた複数のLGBTやアライ(性的マイノリティを理解し、支援する人や団体)がそれぞれの経験を語ります。
体験談を聞くことでLGBTをより身近に感じ、理解を深めることができます。
▼参考
スターバックス コーヒー ジャパン 性の多様性に関する取り組みが評価され、「PRIDE指標」最高評価の「ゴールド」受賞および最も優れた事例に選定
学校の取り組み事例-制服の選択肢の拡大
学校での取り組み事例として制服の選択肢が拡大したことが挙げられます。
以前までは、男子はズボンを、女子はスカートを履くことが決められていた学校が大多数を占めていました。
しかし、現在ではそれぞれの性自認を尊重し、性別によって制服に規定がなくなっている学校が増えています。
CCCマーケティングとTポイント・ジャパンが行った調査によると、全国での女子スラックス制服の採用率は44.4%でした。
都道府県別の採用率では長野県(87.8%)、滋賀県(86.4%)、神奈川県(84.3%)が上位を占めていました。
一方で、女子スラックス制服の採用率が10%を下回る地域の存在も明らかになり、今後の対応が求められています。
▼参考
全国の女子スラックス制服の採用率は44.4%。都道府県別では長野・滋賀・神奈川が上位に【学校総選挙プロジェクト調べ】
まとめ
自治体が行なっているLGBTの方々への取り組みについて新しく知ったことはありましたでしょうか。
パートナーシップ制度やLGBTに関する課題解決に取り組む企業の承認など、多くのことに取り組んでいる自治体はありますが、そうでない自治体も多く存在します。
LGBTの人が生活しやすい社会になるために、より進んだ議論が必要です。
大学では国際デザイン経営学科に所属し、解決が困難な問題をあらゆる角度から解決できるようにするため、日々勉学に努めている。