【更新日:2022年11月30日 by 田所莉沙】
カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスを取ることで、合計をゼロにすること」です。異常気象による自然災害が多発し、気候変動への対策が急がれるいま、企業や自治体によるカーボンニュートラルへの取り組みが重要です。
企業や自治体は、どのようなカーボンニュートラルの取り組みができるのでしょうか。また、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。
この記事では、企業と自治体がカーボンニュートラルへ取り組む方法や、企業と自治体の取り組み事例、カーボンニュートラルに対する世界と日本の現状と将来性について、わかりやすく解説していきます。
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カーボンニュートラルの取り組みが重視される背景
「カーボンニュートラル」とは二酸化炭素などの温室効果ガスを大気から除去・吸収することで、温室効果ガスの排出量と除去量・吸収量をゼロにする取り組みです。日本では年々温室効果ガスの排出量が減少しているものの、いまだ多くの温室効果ガスが排出されています。
環境省によると、2020年度における日本の温室効果ガス排出量は11億4,900万トンでした。この数値は2019年度と比較するとマイナス5%、2013年度と比較するとマイナス18%です。
このように温室効果ガス排出量が減少していく理由として、環境問題が世界各国で重要視され、世界各国や企業がさまざまな取り組みを行ってきたことが挙げられます。そのほかにも、消費者による環境への意識向上が大きな影響を与えています。
カーボンニュートラルの取り組みを行うメリット
企業や自治体が「カーボンニュートラル」に向けた取り組みを行うことは、企業・自治体にとってもメリットとなります。たとえば企業が「カーボンニュートラル」達成に貢献するために省エネルギー設備を導入することで、「カーボンニュートラル」達成につながるだけではなく、ランニングコスト削減となります。
また自治体が太陽光発電などの再生可能エネルギー設備を導入することで、自然由来のエネルギーを使用できるだけではなく、災害時のエネルギー確保も可能となります。
関連記事:2050年カーボンニュートラルとは-2050年に設定された理由から取組事例まで解説
企業と自治体がカーボンニュートラルへ取り組む方法5選
ここまで「カーボンニュートラル」の概要から企業・自治体が取り組むうえでのメリットについて説明していきました。
続いて企業と自治体が「カーボンニュートラル」達成に向けてできる取り組みを5つ紹介します。
省エネルギー(省エネ)の推進
企業や自治体ができる取り組みの一つとして、省エネルギーを推進することが挙げられます。「省エネルギー」の取り組み例として、エネルギーの節電や省エネルギー設備の導入があります。
室内の電球をLED照明に変更したり、使用していない部屋の電気を消したりと、省エネ対策はたくさんあります。身近でできることを始めてみてください。
そのほかにも一般財団法人省エネルギーセンターでは「省エネ最適化診断」を行っており、各企業に適した省エネルギー活動を提案しています。このような団体に診断を申し込むことも一つの手段です。
一般財団法人省エネルギーセンター公式サイトはこちら▼
https://www.eccj.or.jp/
再生可能エネルギーの導入
「再生可能エネルギー」とは石油や石炭などの化石燃料由来のエネルギーではなく、太陽光や風力など自然由来のエネルギーのことです。再生可能エネルギーの利用は、「カーボンニュートラル」達成につながるため、取り組みが重要となります。
企業や自治体がもっとも導入しやすいのが「太陽光発電」です。空いているスペースや屋上を活用してソーラーパネルなどを設置することで、簡単に太陽光発電を運用できます。
再生可能エネルギー由来の電力への切り替え
「再生可能エネルギー」は環境にやさしいエネルギーではあるものの、設備の設置・管理に費用がかかります。そのため経済的に苦しい企業・自治体にとって取り組むことは難しいです。その場合、契約していている電力プランを再生可能エネルギー由来の電力プランに変更することで、「カーボンニュートラル」に貢献できます。
東京電力ホールディングス株式会社による「東京電力エナジーパートナー」や、ミツウロコグリーンエネルギー株式会社による「ミツウロコグリーンエネルギープラン 非FIT電気100%」など、さまざまなプランがあります。
電力プランを切り替える際にはぜひ調べてみてください。
FIT電気 …太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの再生可能エネルギーを活用してエネルギーを発電し、固定価格買取制度(FIT)によって電気事業者が買い取った電気のこと。 |
固定価格買取制度(改正FIT法) …太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの再生可能エネルギー由来の電気を、国が定めた価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付けた制度のこと。 |
低炭素車の活用
私たちが毎日使用している車は、二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に排出しています。国土交通省によると、2020年度における日本の二酸化炭素排出量は、10億4,400万トンでした。そのうち自動車・トラックなどの運輸部門は1億8,500万トンであり、全体の約17%を占めています。
「カーボンニュートラル」を達成するためには、自動車などの乗用車の低炭素化が必要不可欠です。具体的な取り組みの例として、電気自動車(EV)・ハイブリッド(HV)自動車の利用が挙げられます。
そのほかにも実際に自動車を運転する際にはアクセルを急に踏むことをやめたり、アイドリングストップに取り組んだりと、温室効果ガス排出量削減のため注意を払いましょう。
カーボン・オフセット
「カーボン・オフセット」とは生活する中でどうしても排出してしまう温室効果ガスを、植林活動に寄付するなど温室効果ガス削減活動に貢献することで、排出される温室効果ガスを埋め合わせるというものです。「カーボン・オフセット」は、イギリスなどの欧州からアメリカなどで多くの取り組みが行われています。
日本では環境省がカーボン・オフセットをさらに普及するため「カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)」を設立し、取組みに関する情報提供や相談支援を行っています。
そのほかにも国内における温室効果ガス排出量削減活動や、森林整備によって発生した温室効果ガスの削減・吸収を認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」を創設しています。これにより、カーボン・オフセットとしている取り組みが、温室効果ガスの排出削減・吸収に貢献しているという証明となります。
企業と自治体のカーボンオフセットへの取り組み事例
ここまで企業や自治体が「カーボンニュートラル」達成に向けて、できる取り組みを説明していきました。
続いて企業と自治体が取り組む「カーボン・オフセット」の取り組みについて解説していきます。
自己活動オフセット
「自己オフセット」とは企業や自治体が自分たちの活動によって排出した温室効果ガスを、除去・吸収する活動に取り組むことで埋め合わせることです。
たとえばサッカーの試合速報や最新ニュースなどの情報を提供している株式会社エスパルスや、東洋インSCホールディングス株式会社などさまざまな企業・団体が自己オフセットに取り組んでいます。各企業・団体が取り組んでいる内容については以下の通りです。
株式会社エスパルス | 清水エスパルスがアウスタ日本平で行うホームゲーム開催(年間約20試合)により排出する二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
南アルプス市役所 | 地域エネルギー(小水力発電)を有効活用した「カーボン・オフセット農産物」(トマト・さくらんぼ・シンビジューム)の販売し、購入者の日常生活に伴う二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
東洋インSCホールディングス株式会社 | CSR報告書「社会・環境活動報告書2011」の日本語版1部あたり518gの二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
会議・イベント開催オフセット
「会議・イベント開催オフセット」とはライブなどのイベントやコンサート、国際会議などを主催者が開催する際に排出された温室効果ガスの埋め合わせを行うことです。
「会議・イベント開催オフセット」ではイベントを開催するだけではなく、イベント・会議の参加者に対し「カーボン・オフセット」の取り組みを普及できるため、「カーボンニュートラル」や「カーボン・オフセット」の認知向上につながります。
神奈川県横浜市では、そうめん流しのイベント開催時に排出された温室効果ガスをオフセットしています。そのほかの団体・企業が取り組む「会議・イベント開催オフセット」については以下の通りです。
東北夏祭りネットワーク | 青森ねぶた祭り等、東北6県で行われる夏祭りの開催に伴う電力・燃料使用による二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
山口県 宇部市 | 「カーボン・オフセットの仕組みの普及・啓発」を目的に行った各イベントにおいて、来場時に利用する自動車や公共交通機関から発生する二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
神奈川県 横浜市 環境絵日記実行委員会 |
2010年日本APEC横浜開催の期間中(2010年11月7~14日)の会議場(パシフィコ横浜)と会議場 周辺のホテルでの電力・ガス・地域熱供給(蒸気・冷水)・水道の使用に伴う二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
商品使用・サービス利用オフセット
「商品使用・サービス利用オフセット」とは商品の生産・使用時やサービスの提供・利用するときなど、取り引きや消費の際に排出される温室効果ガスを埋め合わせることです。
たとえばスリーエムジャパン株式会社では、自社製品のうち7種類のライフサイクルにおいて発生する温室効果ガスをオフセットしています。また販売商品の一つである3Mスコッチティントウインドウフィルムは、「カーボン・オフセット認証商品」として認められています。
そのほかにも山崎製パン株式会社やキャノンマーケティングジャパン株式会社など、さまざまな企業が「カーボン・オフセット」に取り組んでいます。
株式会社ファミリーマート | 環境配慮型プライベートブランド「We Love Green」商品の原料から製造、廃棄までの二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
キャノンジャパン株式会社 | 再生複合機「Refreshedシリーズ」製造段階に排出する二酸化炭素排出量や、使用済みトナーカートリッジ・インクカートリッジ回収輸送時にトラックから排出する二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
山崎製パン株式会社 | 期間中の対象製品約218万7千個の製造にかかる二酸化炭素排出量の一部をオフセットする。 |
カーボン・オフセット認証 …平成21年にカーボン・オフセットにおける信頼性のある取り組みを推進・普及するため、環境省が定めた認証制度。環境省が策定した認証基準にもとづいて、気候変動対策センターが第三者として承認している。 |
自己活動オフセット支援
「自己活動オフセット支援」とは商品の購入やサービスの利用を通じて、消費者が生活の中で排出する温室効果ガスの埋め合わせをするものです。
日本興亜損害保険株式会社では、自動車保険の加入時に日常生活で排出する温室効果ガスの一部をオフセットしています。
そのほかにも株式会社ローソンや、東京急行電鉄株式会社などの企業が「カーボン・オフセット」に取り組んでいます。
株式会社ローソン | お客さまの生活から排出される二酸化炭素排出量の一部をオフセットする。 |
コカ・コーラシステム サントリー酒類 |
排出権付き飲料を販売し、お客さまの生活から排出される二酸化炭素量の一部をカーボン・オフセットする。 |
東京急行電鉄株式会社 東京臨海高速鉄道株式会社 |
「東急お台場パス」を利用して移動すると想定される二酸化炭素排出量をオフセットする。 |
企業のカーボンニュートラルへの取り組み事例4選
ここまで企業や自治体による「カーボン・オフセット」の取り組み事例について、紹介していきました。
次に企業が取り組む「カーボンニュートラル」達成に向けた取り組みについて説明していきます。
関連記事:カーボンニュートラルに取り組む企業一覧-取り組むための3つのステップも解説!
関連記事:カーボンニュートラルとSDGsの関係-企業の7つの取り組みも解説
日本通運株式会社|エコトランス・ナビ
日本通運株式会社では事業を通じて、世界の人々のより良い暮らしと持続可能な社会の発展を支えることを目標に、環境を考慮した取り組みを行っています
取り組み例として「エコトランス・ナビ」の活用があります。「エコトランス・ナビ」とは日本国内の輸送の際に排出される二酸化炭素の量を可視化し、企業のESG経営をサポートするサービスです。このサービスにより企業が事業を通じて発生させる二酸化炭素排出量が明確になり、改善策の検討に大きく貢献します。
そのほかにも気候変動対策や大気・土壌などの汚染防止として、照明のLED化やエコドライブの推進、外来種の越境防止対策などさまざまな取り組みを行っています。
ESG経営 …環境・社会・企業統治の3つの観点に焦点を当てて、事業を展開していく経営のこと。近年多くの企業が取り入れており、社会問題に積極的に取り組むことで企業のイメージアップにもつながる。 |
三井倉庫グループ|SustainaLink
三井倉庫グループが取り組んでいる「SustainaLink」では、物流業界で直面する環境リスク・労働リスク・災害リスクの3つのリスクにおける課題解決のために、サービスを提供しています。
カーボンニュートラル達成にも関連している環境リスクに向けた取り組みとして、三井倉庫グループは物品の長距離輸送について見直しをしました。
従来は各工場が使用したい量の物品を輸送していましたが、運べる時に大量に運び一つの倉庫にまとめて保管することで、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。
そのほかにも長距離輸送トラックの台数を削減するなど、環境にやさしい取り組みを実施しています。
味の素株式会社|再生可能エネルギーの導入
味の素株式会社では、アミノ酸の働きによって世界の人々の健康増進と食習慣の改善への貢献を目指して、持続可能な社会のために取り組みを行っています。
カーボンニュートラル達成に向けた取り組みとして味の素株式会社は、再生可能エネルギーを導入しています。2017年の段階では、エネルギー使用量のうち約15%を再生可能エネルギー由来の電力としています。
再生可能エネルギーの導入は日本の工場のみではなく、ブラジル・タイ・ベトナム・フランス・中国など世界5カ国で行っています。味の素株式会社は、今後も再生可能エネルギー導入量を増加させ、2030年度までに再生可能エネルギー利用比率50%の実現を目標にしています。
アルソックグループ|電気自動車・ハイブリット車の導入
アルソックグループは「ありがとうの心」と「武士の精神」という2つの基本指針を掲げ、さまざまなリスクが存在する社会の中で、安全・安心なサービスを提供しています。そして社会の多様な安全・安心ニーズに応えつつ、強靭な安心・安全サービス業を行います。
アルソックグループでは業務上、自動車など多くの車両を使用しています。その際に自動車などから発生する二酸化炭素排出量を削減するため、取り組んでいるのが電気自動車やハイブリット車の積極的な導入です。これにより安心・安全なサービスを提供しつつ、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。
そのほかにも自社施設のLED照明の設置や太陽光発電システムの導入など、省エネルギーにも取り組んでいます。
自治体のカーボンニュートラルへの取り組み事例4選
ここまで企業によるカーボンニュートラル達成に向けた取り組みについて、紹介していきました。
続いて自治体ができるカーボンニュートラル達成に貢献する取り組みについて、説明していきます。
関連記事:SDGs11日本の取り組み事例6選-自治体・企業・学校・個人の事例を解説
愛知県|ゼロカーボンシティ
愛知県蒲郡市では、令和3年度より2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするまち「ゼロカーボンシティ」の実現を目指して、取り組みを行っています。
主な取り組みとして、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入があります。風力発電では、中部電力株式会社や株式会社ジェイウィンドなどの企業の支援を受けつつ県内に風力発電施設を設置しています。
また愛知県独自の低炭素水素認証制度により、さまざまな企業が低水素なサプライチェーン構築に取り組めるよう「あいち低炭素水素サプライチェーン推進会議」で検討を行い、支援をしています。対象となるのは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電気・バイオガスから製造された水素や、食塩水の電気分解により副次的に生産される水素です。
茨城県|いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出プロジェクト
茨城県には港湾や大規模製造業・研究機関が多く集まっています。そのためカーボンニュートラル社会を実現させるため、産業地域の脱炭素化が重要であると考えており、取り組みを行っています。
カーボンニュートラル達成のための取り組みとして、「いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出プロジェクト」があります。火力発電における水素・アンモニアの活用や、石油精製・石油化学へのグリーン水素やブルー水素の導入など、環境にやさしいエネルギーの取り入れを目指しています。
そのほかにも洋上風力・太陽光を利用したグリーン水素を生産したり、人工光合成による化学品を製造したりと、さまざまな取り組みを行っています。
グリーン水素 …水を電気分解し、水素と酸素に還元することで生産される水素のこと。 |
ブルー水素 …天然ガスや石炭などの化石燃料を、蒸気メタン改質や自動熱分解などで水素と二酸化炭素に分解し、二酸化炭素を大気に排出する前に回収する方法のこと。 |
高知県|高知県脱炭素シンポジウム
高知県は日本の中で森林率が全国1位という、森林資源が豊富な地域です。そのため高知県では2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、豊かな自然資源を生かして脱炭素化に取り組んでいます。
2022年9月には温室効果ガスの削減に向けて、「高知県脱炭素シンポジウム」を開催しています。実際に議員の方を招いて講演をしたり、参加者が今後のカーボンニュートラルに向けた取り組みについてディスカッションしたりと、温室効果ガス削減に貢献する取り組みを行いました。
また高知県内における林業の振興を通じて高知の森を守りつつ、CLTの普及・環境にやさしい建築材の使用を推進しています。
CLT …Cross Laminated Timberの略。板の繊維方向を直交させており、断熱性が高くコンクリートよりも軽い木材となっている。 |
三重県|ミッションゼロ2050みえ推進チーム
三重県は日本国内において名古屋や大阪市圏につづく、ものづくり県です。近年では若者の県外流出による少子高齢化が問題となっています。そこで三重県では「ミッションゼロ2050みえ推進チーム」を立ち上げ、経済・社会・環境の3つの要素に焦点を当てて脱炭素プロジェクトを実施しています。
環境面における主な取り組みとして、バスなどの公共交通機関による通学・通勤を促進する「みえエコ通勤デー」があります。通学・通勤時に自動車を利用している人を対象に、公式サイトから申請することで「エコパ(みえエコ通勤割引きパス)」が発行されます。
毎週水曜日を「みえエコ通勤デー」と定めており、エコパを提示することでバス運賃を半額にできます。
カーボンニュートラルの目標と今後
ここまで自治体のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みについて、紹介していきました。
最後に日本と世界におけるカーボンニュートラルの目標と、今後の取り組みについて説明していきます。
【日本】カーボンニュートラルの目標と今後
日本が排出する温室効果ガスの中で、90%が二酸化炭素となっています。2019年における日本の二酸化炭素排出量は、11.1億トンでした。そのうち電力部門が40%、産業・運輸・家庭などの非電力部門が60%となっています。電力部門においては、火力発電による温室効果ガスの排出が大半を占めており、カーボンニュートラルを実現するためには火力発電に依存するのではなく、環境にやさしいエネルギーの導入が必要不可欠です。
日本ではカーボンニュートラル実現に向けて、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目標としています。
またカーボンニュートラル実現に向けて日本政府が定めた法律として「地球温暖化対策推進法」があります。この法律によって国民だけでなく、地方公共団体や事業者に向けて取り組みやイノベーションを促進しています。
関連記事:カーボンニュートラル達成に向けた政府の取り組み-目標や宣言も紹介
【世界】カーボンニュートラルの目標と今後
2019年度における世界の二酸化炭素排出量は366億トンであり、中国が約30%と多くを占めています。次にアメリカ、ヨーロッパ諸国、インドと続きます。日本の二酸化炭素排出量は世界6位となっていますが、他国と比較すると二酸化炭素排出量は多くなっています。
一方で国別一人当たりの二酸化炭素排出量はカタールやアラブ首長国連邦、サウジアラビアなど発展途上国が上位を占めます。発展途上国の二酸化炭素排出量が増加した理由として、先進国の企業が安い労働力を求めて工場を発展途上国に移転したことなどが挙げられます。
世界で最も二酸化炭素を排出している中国では、2030年までにGDPあたりの二酸化炭素排出量を2005年度比で65%削減し、2060年までに炭素中立を達成することを目標としています。
また中国の次に二酸化炭素を排出しているアメリカでは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、2030年までに洋上風力による再生可能エネルギー生産量を倍増させ、少なくとも30%を保全することを目標としています。
関連記事:世界の温室効果ガス排出量の推移と内訳-排出量が多い国の課題も解説
まとめ
「カーボンニュートラル」とは二酸化炭素などの温室効果ガスを大気から除去・吸収することで、温室効果ガスの排出量と吸収量をゼロにする取り組みです。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、企業や自治体にとってランニングコストの削減など、メリットが多くあります。
企業・自治体ができる取り組みとして、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入・切り替えやカーボン・オフセットなどがあります。カーボン・オフセットには自己オフセットや会議・イベント開催オフセットなどさまざまな種類があります。持続可能な社会のために、簡単に取り組めることから始めてみませんか。
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