フェアトレードの日本の現状について、みなさんはどのくらい知っていますでしょうか。
公平な取引によって途上国の生産者を助けようとする「フェアトレード」ですが、日本での知名度は低く、店頭で見かけるフェアトレード商品の数は依然として少ないままです。
今回は日本のフェアトレードの現状に加え、フェアトレード商品も紹介します。
【この記事でわかること】 |
見出し
フェアトレードの意味や現状について紹介
フェアトレードの意味や現状について紹介します。
フェアトレードとは
フェアトレードとは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で購入することにより、その地域の生産者や労働者の生活改善を目指す貿易の仕組みを表しています。
生産者が品質の良いものを作り続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準が保証されていることが重要なのです。
また、原料の生産から製品が完成するまで国際フェアトレード基準が守られている商品には、「国際フェアトレード認証ラベル」が付与されます。これは、フェアトレードの基準を守った製品にラベルを貼付して、フェアトレードを広めていくために始まった取り組みです。
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フェアトレードの5つの問題点とは?-普及が進まない理由も徹底解説
▼参考
フェアトレードジャパン|fairtrade japan|公式サイト
フェアトレードの基準
フェアトレードの基準は団体によって違いますが、今回はその中でも代表的な国際フェアトレードの基準を紹介します。
国際フェアトレード基準は、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)によって設定されるフェアトレード全般に関する基準です。基準委員会とフェアトレードに参加する全ての生産者や貿易業者によって、定期的に基準が見直されています。
基準は、「生産者の対象地域」、「生産者基準」と「トレーダー基準」、「産品基準」の4つで構成されていますが、全てに共通するのは「経済的基準」、「社会的基準」、「環境的基準」の3つの指標です。
今回は、「経済的基準」、「社会的基準」、「環境的基準」の3つの指標について詳しく紹介します。
経済的基準 | 社会的基準 | 環境的基準 |
など |
など |
など |
フェアトレードプレミアム フェアトレードプレミアムとは、商品の代金とは別に支払われるお金で、地域の経済的・社会的・環境的開発のために使われる資金を指します。 |
▼参考
国際フェアトレード基準|fairtrade japan|公式サイト
日本のフェアトレードの認知度
日本でフェアトレードについて知っている人はどのくらいいるのでしょうか。
一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)が2019年に行ったアンケートによると、「フェアトレードという言葉を見聞きしたことがある人」は53.8%、さらにその中で「フェアトレードが貧困や環境に取り組む活動である」と答えられた人の割合は61.0%でした。
このことから、フェアトレードの認知度は32.8%であることがわかります。
20163年前に同じ調査を行った際の認知度は29.3%だったため、フェアトレードについて理解している人は増えたことになりますが、十分な数ではありません。
▼参考
『フェアトレードに関する意識・行動調査(2019)』
日本でフェアトレードが進まない理由2選
日本でフェアトレードの商品の売り上げが増加しない理由を2つ紹介します。
フェアトレード商品の値段が高い
1つ目の理由として、フェアトレード商品の値段が高いということが挙げられます。
今回は、ショッピングサイトの「Rakuten」を使用してフェアトレードの板チョコとフェアトレードではない板チョコの値段の違いについて紹介します。
まずはフェアトレードの板チョコである「People Tree」のチョコレートを調べると、チョコレート1枚の値段は388円でした。
一方で、明治のホワイトチョコレートを調べたところ、1枚あたりの値段は148円でした。
味の違いやチョコレートの色の違いはありますが、一般的にフェアトレードのチョコレートの方が高額であることがわかります。
▼関連記事
フェアトレードが普及しない理由5選-普及に必要な取り組みも解説
▼参考
Rakuten公式通販
商品の種類が少ない
2つ目の理由として、フェアトレード商品の種類が少ないということが挙げられます。
フェアトレード商品の種類は増加してはいるものの、いまだ少ないのが現状です。そのため、消費者が欲しいと思うような商品が見つからないことがあります。
例えば、食品であればチョコレートやコーヒー豆、バナナなど、限られた食品しかありません。
他にも、コットンや花、スポーツで使用されるボールなどもありますが、十分な種類があるとは言えません。
▼参考
Fairtrade Brand List | 主なフェアトレード認証商品のブランド紹介(日本)
フェアトレードのメリット3選
フェアトレードには多くのメリットがあります。
今回は3つのメリットを紹介します。
生産者のメリット
1つ目に紹介するメリットは生産者のメリットです。
国際フェアトレード基準によって、フェアトレードによって生産者が得られるメリットは多く存在しています。
例えば、フェアトレード最低価格が保証されているため、違法な低賃金で生活難を強いられる人はいなくなります。また、安全な労働環境の確保や強制労働の禁止によって、安心安全な環境で無理なく生産することができます。
フェアトレードによって、SDGsの目標1である「貧困をなくそう」の達成に近づくことができるのです。
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フェアトレードで児童労働問題は解決する?問題の現状やできることを解説
▼参考
国際フェアトレード基準|fairtrade japan|公式サイト
企業のメリット
2つ目に紹介するメリットは企業のメリットです。
「国際フェアトレード認証ラベル」が与えられている商品は、原料の生産から製品が完成するまで国際フェアトレード基準が守られている必要があります。つまり、国際フェアトレード認証ラベルを得るためには、商品が製造される一連の過程の透明性が求められるのです。
商品ができるまでの過程をクリアにすることで、企業のイメージ向上に繋がります。
▼参考
フェアトレードジャパン|fairtrade japan|公式サイト
社会のメリット
3つ目に紹介するメリットは社会のメリットです。
フェアトレードの商品が普及することで原産国にお金が流れるようになり、経済発展が進みます。
また、フェアトレードの原産国は発展途上国である場合が多いことが特徴的です。劣悪な生活環境に置かれていた人たちにお金が行き渡ることで水道設備や食料にお金をかけられるようになり、生活環境が改善されます。
これにより、目標10である「人や国の不平等をなくそう」を達成することができます。
また、生活環境が改善されることで労働者のモチベーションが保たれ、SDGsの目標8である「働きがいも経済成長も」も達成することができます。
▼参考
日本におけるフェアトレード普及率は低い?その現状と私たちにできること
日本政府のフェアトレードの取り組み
日本政府の取り組みとして外務省の例について紹介します。
外務省は2011年末から2012年にかけて、国際協力NGOセンターのウェブサイトでNGOダイレクトリーに掲載されている日本の国際協力NGO団体へアンケートを取りました。
フェアトレードについてまとめた資料がなかったため、日本全体でどのくらいフェアトレードが進んでいるかを測るために調査が実施されました。
一方で、アンケート結果からも分かるように、日本政府には「公共施設等でのフェアトレードの販売、提供」や「学校教育におけるフェアトレード教育の促進」が求められています。
フェアトレードタウンについて紹介
みなさんは「フェアトレードタウン」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
フェアトレードタウンとは、フェアトレードを「まちぐるみ」で推進している市町村のことを表しています。
日本フェアトレード・フォーラムが定めた、日本におけるフェアトレードタウンの基準は以下のとおりです。
基準1:フェアトレードタウン運動が持続的に発展し、支持層が広がるよう、地域内のさまざまなセクターや分野の人々からなる推進組織が設立されている。
基準2:地域社会の中でフェアトレードへの関心と理解が高まるよう、さまざまなイベントやキャンペーンを繰り広げ、フェアトレード運動が新聞・テレビ・ラジオなどのメディアに取り上げられる。 基準3:地元の企業や団体がフェアトレードに賛同し、組織の中でフェアトレード産品を積極的に利用するとともに、組織内外へのフェアトレードの普及に努めている。 基準4:地場の生産者や店舗、産業の活性化を含め、地域の経済や社会の活力が増し、絆(きずな)が強まるよう、地産地消やまちづくり、環境活動、障がい者支援等のコミュニティ活動と連携している。 基準5:多様なフェアトレード産品が地元の小売店や飲食店等で提供されている。フェアトレード産品にはFIラベル認証産品とWFTO加盟団体の産品、それに地域の推進組織が適切と認めるフェアトレード団体*の産品が含まれる。 基準6:地元議会がフェアトレードを支持する旨の決議を行うとともに、自治体の首長がフェアトレードを支持する旨を公式に表明し、自治体内へのフェアトレードの普及を図っている。 |
日本では、熊本市(2011年)、名古屋市(2015年)、逗子市(2016年)、浜松市(2017年)、札幌市(2019年)、いなべ市(2019年)の合計6都市がフェアトレードタウンに認定されています。
例えば、浜松市ではSDGsをテーマにした文化祭「ハママツつながる文化祭」が開催され、フェアトレード商品が発売されました。
▼参考
フェアトレードタウン基準
日本企業のフェアトレードの取り組み事例4選
多くの日本企業がフェアトレードに取り組んでいます。
今回は、日本企業の取り組みを4つ紹介します。
スターバックスコーヒージャパン株式会社-フェアトレードのクイズを開催
1つ目に紹介する企業はスターバックスコーヒージャパン株式会社です。
スターバックスコーヒージャパン株式会社は、フェアトレードのコーヒーを「生産者の方と私たちの未来を守り、次世代の人までおいしいコーヒーが飲めることを実現するコーヒー。」と考えています。
実際にスターバックスの六本木のアークヒルズ店では、フェアトレード認証コーヒーを扱っています。
また、毎月20日にフェアトレードをテーマにしたクイズを行っています。店舗によってはコーヒーセミナーを開催してフェアトレードの認知を高めるような活動も行っています。
▼関連記事
フェアトレードとSDGsの関係とは?-企業や個人の取り組みも解説
▼参考
スターバックス店舗での取り組み
企業がフェアトレードに取り組むメリット3選-企業一覧や事例も紹介
株式会社良品計画-様々なワークショップの開催
2つ目に紹介する企業は株式会社良品計画です。株式会社良品計画はフェアトレードについて多くのことに取り組んでいます。
例えば、5月をフェアトレード月間として、複数の企業や団体に呼びかけてキャンペーンを実施しています。2010年には「知る!」「選ぶ!」「伝える!」といったフェアトレードを広めるための運動を開催し、キャンペーンサイトにて100万人のアクション登録を目指しました。
また、無印良品有楽町ではフェアトレードキャンペーンを開催しました。具体的な取り組みには次のようなものがあります。
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▼参考
「知る!」「選ぶ!」「伝える!」無印良品はフェアトレード100万アクションキャンペーンを応援します
イオン株式会社-フェアトレードチョコレートの販売
3つ目に紹介する企業はイオン株式会社です。
イオンは、自然資源の持続可能性と事業活動の継続的な発展の両方を達成するため、「イオン持続可能な調達原則」に基づいて材料の調達を行っています。
イオンはこの取り組みの一例として、持続可能なカカオの調達に取り組んでいます。「持続可能性」として認められるのは次の条件を満たしているものです。
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また、イオンの独自ブランドである「トップバリュ」は、フェアトレードのチョコレートを販売しています。
▼参考
よりよい社会の実現に向けて、平和・人間・地域を大切にする活動
ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社
4つ目に紹介する企業は、ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社です。
ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社は南米の有機原料製品を取り扱っている会社で、日本をはじめとするアジア地域に果物・食品・パーム油・加工物・プレミアムコーヒー・砂糖などを提供しています。
ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社では、18歳以上の労働しか認めていません。また、若くしてシングルマザーとなった人の雇用も積極的に行っており、女性が自立できる環境を整えています。
さらに、パーム油を生産する際に二酸化炭素の排出量の実質ゼロ化を目指し、パリ協定の目標を10年早く達成する「The Climate Pledge」という目標を掲げています。
パリ協定 パリ協定とは、「京都議定書」の後継として結ばれたもので、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みを表しています。気候変動枠組条約に加盟する196カ国全ての国が目標達成のために努力することをルール化したものです。 |
▼関連記事
2050年カーボンニュートラルとは-2050年に設定された理由から取組事例まで解説
▼参考
会社概要 – ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社
フェアトレード商品を4つ紹介
フェアトレードの商品を4つ紹介します。
チョコレート
1つ目に紹介する商品はチョコレートです。
フェアトレードのチョコレートを販売している企業や団体はたくさんあります。具体的な企業や団体は次の通りです。
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フェアトレードのチョコレートを選ぶことで、カカオ農家や労働者は作物の価格に加えて、フェアトレードプレミアムを受け取ることができます。
需要があるにも関わらずカカオ豆の価格は下落しています。また、病気によってカカオの木が被害を受けている現状があります。これらの理由によって安定した収入が見込めず、若者はカカオ農業になることに消極的になっています。この流れを断ち切るためにもフェアトレードのチョコレートを購入することが求められます。
▼関連記事
フェアトレード食品を買う時のポイント3選-購入サイトや店舗も紹介
▼参考
Fairtrade Brand List | 主なフェアトレード認証商品のブランド紹介(日本)
コーヒー
2つ目に紹介する商品はコーヒーです。
チョコレートと同様、フェアトレードのコーヒーを販売している企業や団体もたくさんあります。具体的な企業や団体は次の通りです。
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コーヒー生産国の多くは発展途上国ですが、コーヒー豆の買取価格はニューヨークとロンドンの国際市場で決められてます。国際市場ではコーヒーの価格が激しく変動していますが、多くのコーヒー農家は市場の動向を知る手段がなく、不安定な生活を余儀なくされています。
フェアトレードによって多くの農家が生産者組合を作ることで、それぞれの農家で情報共有をしたり、市場と繋がって交渉力をつけたりすることができます。つまり、フェアトレードによって特定の農家だけでなく、地域社会全体を発展させることができるのです。
▼参考
Fairtrade Brand List | 主なフェアトレード認証商品のブランド紹介(日本)
お茶
3つ目に紹介する商品はお茶です。
チョコレートやコーヒーのフェアトレードよりも見かける機会はありませんが、お茶もフェアトレードされています。
お茶のフェアトレードに取り組んでいる企業や団体は次の通りです。
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お茶は1秒あたり約70000 杯飲まれていると言われています。そのため、お茶のフェアトレードが進むことで多くのお茶農家の方々が利益を得られるようになります。
ケニアの紅茶の産地では、子どもの4人に1人が栄養失調です。また、マラウイの紅茶生産地域では、10人に1人の子供が5歳になる前に死亡しています。
このような現状を解決するために、フェアトレードによって貧しい地域に資金を適切に提供することが求められます。
▼参考
Fairtrade Brand List | 主なフェアトレード認証商品のブランド紹介(日本)
コットン
4つ目に紹介する商品はコットンです。
食べ物だけではなく、服の原料であるコットンもフェアトレードすることができます。
コットンのフェアトレードに取り組んでいる企業や団体は次の通りです。
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世界中でおよそ1億世帯がコットン生産をしており、カメルーンやマリなどの西アフリカや、インドやパキスタンなどのアジアの発展途上国の人にとって重要な農産品となっています。
しかし、コットン貿易にも先進国に有利な不平等な構造があり、発展途上国の多くのコットン生産者は低価格での取引を強いられています。
不平等な現状を解決するために、コットンのフェアトレードが重要視されています。
▼参考
Fairtrade Brand List | 主なフェアトレード認証商品のブランド紹介(日本)
私たちにできること
多くの企業や団体がフェアトレードに取り組んでいる事を紹介しました。
私たちの多くはバイヤーではないため、企業や団体と同じように生産者から直接フェアトレード商品を購入することはできません。
そこで、厳しい状況の農家を救うために私たちにできることとして、スーパーマーケットや輸入食品店で売っているフェアトレード商品を購入することをおすすめします。
例えば、先ほども紹介したイオン株式会社では、独自のブランドである「トップバリュ製品」でフェアトレードのチョコレートを取り扱っています。普通の商品ではなくフェアトレード商品に注目し購入することで、救われる農家の方はたくさんいるのです。
まとめ
日本のフェアトレードの現状について新しく知ったことはありましたでしょうか。
フェアトレードに取り組んでいる企業や団体に加えて、具体的なフェアトレード商品まで紹介しました。
普段チョコレートやコーヒーを購入するときにフェアトレード商品を思い出すことで、身近なフェアトレード商品と出会うことができます。そしてフェアトレード商品を購入することで発展途上国の人の生活が豊かになります。
みなさんの小さな一歩で社会は大きく変わることができます!
大学では国際デザイン経営学科に所属し、解決が困難な問題をあらゆる角度から解決できるようにするため、日々勉学に努めている。