企業がフェアトレードに取り組むメリット3選-企業一覧や事例も紹介

#フェアトレード#安全#持続可能#環境#開発途上国 2022.10.05

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フェアトレードはSDGsの全ての目標と関係しており、フェアトレードに取り組む企業は増えています。

「フェアトレード」とは、貧困のない公正な社会をつくるために、途上国の生産者と、先進国の消費者が対等な立場で取り引きを行い、発展途上国で暮らす生産者や労働者の生活改善と自立を目指す取り組みです。

企業がフェアトレードへの取り組みを行うことで得られるメリットは何でしょうか。また、企業はどのような方法でフェアトレードに取り組めるのでしょうか。

今回は、フェアトレードに取り組む企業事例や、企業がフェアトレードに取り組むメリット、企業がフェアトレードに取り組む方法について分かりやすく解説します。

フェアトレードが求められる背景

 

フェアトレード」とは、発展途上国でつくられた原材料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、経済的・社会的に弱い立場にある発展途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す取り組みのことです。

第二次世界大戦以前、アメリカやイギリスなどの先進国に発展途上国は支配されており、安い賃金で働かせられたり、適切な価格で取り引きできないなど不当な扱いを受けていました。

しかし今もなお、発展途上国でつくられた原材料や製品は、正当な価格で取り引きされていない場合が多く、発展途上国への不平等な対応は、労働環境の悪化や児童労働、貧困につながっています。

たとえば2020年において、世界で生きる5歳から17歳のうち1億6000万人が危険で健康を害する恐れのある労働をしています。この数は、世界の子どものうち10人に1人が児童労働をしていることに相当します。

発展途上国の生活改善を目指すには、フェアトレードの取り組みが必要不可欠です。

関連記事:フェアトレードとSDGsの関係とは?-企業や個人の取り組みも解説

フェアトレードに取り組む企業一覧

世界各国において、発展途上国における児童労働者数の削減や労働環境の改善を目指してフェアトレードを行っています。

では日本の企業は、どのようなフェアトレードの取り組みを行なっているのでしょうか。続いて、日本企業の取り組みを6つ紹介します。

フェアトレード×食品|スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

スターバックス コーヒージャパン株式会社では、フェアトレードのコーヒーを「生産者の方と私たちの未来を守り、次世代の人までおいしいコーヒーが飲めることを実現するコーヒー」と考え、取り組みを行っています。

2004年に国際環境NGO コンサベーション・インターナショナルと連携して開始した「Coffee and Famer Equity(C.A.F.E)プラクティス」では、4つの軸と200以上の指標で構成されています。

4つの軸と指標については以下の通りです。この軸と指標に基づいて定期的に発展途上国を訪問し、農園や加工施設などの労働環境について評価を行います。訪問後、評価を踏まえて、発展途上国におけるさらなる労働環境の改善を目指していきます。

1.経済的な透明性 ・サプライヤー(コーヒーの買い手)は、生産者へ支払った証拠を提出する。
・コーヒー豆がどの生産者からきているか、生産者の名前、いくら支払われたかがわかる。
2.社会的責任 ・農園主は働く労働者の権利を守り、安全で公正で、人道的な職場環境を促進するための対策を実践すること。
・最低賃金以上を定期的に支払う。
・いかなる形の児童労働も禁止する。
3.環境面でのリーダーシップ ・コーヒー栽培や加工において、水質や土壌、生物多様性の保護、化学農薬の利用削減、水やエネルギーの使用量削減など、持続可能な農業の実践を推奨する。
・天然林の農地転換、使ってはいけない殺虫剤の使用を禁止する。
・日陰をつくるための樹木(シェードツリー)や豪雨の際に土壌の侵食を防ぐ被羅植物の維持など、C.A.F.E.プラクティスに定められた方法を取り入れ、生産者が気候変動の影響に順応できるよう手助けする。
4.品質基準 ・すべてのコーヒー豆は、スターバックスの品質基準を満たさなければならない。
・スターバックスは、最高品質のアラビカ種コーヒーのみを調達し、焙煎して販売する。
・スターバックスは、品質が高くC.A.F.Eプラクティスを満たすコーヒー豆について、生産者の採算性を上げるため、商業的市場価格に加え、プレミアムを上乗せした価格を支払う。

フェアトレード×食品|株式会社良品計画

無印良品を運営する株式会社良品計画の考えは、「美味しいコーヒーや紅茶が飲めるという幸せは作る人の幸せがあってこそ」というものです。これに基づき、商品を通して社会貢献することに重点を置き、フェアトレード商品を高品質かつ手頃な価格で販売できるよう、商品開発に取り組んでいます。

さらに株式会社良品計画は2010年から始まった「フェアトレード100万アクションキャンペーン」に積極的に参加しています。「フェアトレード100万アクションキャンペーン」とは、毎年5月の第2土曜日に設定されている「世界フェアトレード・デー」に合わせて、日本国内で行われるキャンペーンです。

キャンペーン特設サイトやSNSを通じて情報を発信・シェアしたり、フェアトレード商品を購入したり、フェアトレードに関するイベントに参加したりしてキャンペーンに参加できます。

フェアトレード×食品|ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社

ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社は、1990年以降、有機農法やサステナブルな取り組みを先駆けて開始した、有機栽培のパイオニアです。果物やコーヒーだけでなく、食品やパーム油、加工物、砂糖などさまざまな製品を世界各国に届けています。

たとえば、ダーボン・オーガニック・ジャパン株式会社が取り扱うパーム油は、レインフォレスト・アライアンスによる生物多様性・持続可能性の認証を得ています。

そのほかにも女性の社会進出に対し力を入れており、シングルマザーや仕事がない女性同士の集まりを設けたり、職業訓練の場を提供しています。

レインフォレスト・アライアンス

…世界70カ国以上で活動している非政府組織(NGO)のこと。アメリカの環境活動家ダニエル・カッツによって創立され、「自然を保護し、農民と森林コミュニティの生活を改善するために社会的および市場の力を利用することにより、より持続可能な世界を創造すること」を使命として活動している。

フェアトレード×アパレル|フェアトレードカンパニー株式会社

フェアトレードカンパニー株式会社では、People Treeというフェアトレード専門ブランドを経営するなど、サステナブルな製品を約30年以上も生産・販売しています。

近年、コットンの原材料である綿花を生産する過程で必要となる水資源の過剰消費が問題となっています。この問題に対し、People Treeが取り組んでいるのが「ベターコットン・イニシアティブ(BCI)」です。「ベターコットン・イニシアティブ」とは、綿花を栽培する際に環境へかかる負担を軽減しながら、農家の生産性も維持するよう取り組むプログラムです。

そのほかにも、コットンをはじめウール・麻・絹などの原料が加工や流通を通して消費者に届く過程において、環境面だけでなく社会面にも配慮されていることを保証する「GOTS認証」を取得しています。

フェアトレード×アパレル|Patagonia

Patagoniaでは、世界で最も低い賃金で働いているアパレル労働者に対し、フェアトレードを通じてアパレル労働者の暮らしを向上させ、生活賃金を保証するための取り組みを行っています。

2014年以降、PatagoniaはフェアトレードUSA(アメリカのフェアトレード第三者認証機関)と協力して、フェアトレード認証された衣類を生産・販売しています。これにより世界10カ国にて、7万2000人以上もの労働者へ恩恵を与えています。

さらにアパレル労働者が安定した生活が出来るよう、Patagoniaは解決策を模索し続けています。現在はフェアトレード製品を求める消費者の割合に対し、消費者の要望を叶える企業は数が少ない状況です。そのため、需要を満たす製品の開発に取り組んでいます。

フェアトレード×アパレル|Enter the E(エンター・ジ・イー)

Enter the Eでは、企業独自で設定した基準に基づいて原材料の仕入れを行っています。また「洋服にも物語がある」というテーマをもち、それぞれの洋服を大切に、無駄のない生産・販売をしています。

Enter the Eが経営するブランドのうちの一つである「Thinking MU」ではデザイン性の高さを維持しながら、すべてGOTS認証された原材料を活用するなど持続可能な商品の生産・販売に取り組んでいます。

そのほかにも「LANIUS」という、「オーガニックを徹底すること」や「責任を持つこと」などをコンセプトとしたファッションブランドがあります。このブランドの特徴は、原材料の生産から商品の生産というすべての過程を開示することです。インドに学校をつくるプロジェクトへの寄付や、海を守る団体「Healty Seas」に売り上げの10%を寄付するなどの取り組みを行っています。

【企業】フェアトレードに取り組むメリット3選

ここまで食品企業やファッションブランドなど、さまざまな企業が取り組むフェアトレードについて紹介してきました。

続いて、企業にとってフェアトレードをするメリットについて説明していきます。

企業のイメージアップにつながる

企業がフェアトレードに取り組むことで、発展途上国における貧困問題やジェンダー問題など社会的な問題の改善に貢献していると認められます。

社会問題への対応が消費者や他企業に評価されることは、企業のイメージアップや新たな雇用の機会獲得につながることです。

ESG投資を受けやすくなる

ESG投資」とは、環境・社会・企業統治に配慮して行う投資のことです。世界で拡大している環境問題が顕著になっている中、環境・社会・企業統治を考慮した経営を行うことは企業の長期成長に貢献します。

フェアトレードを通じて地球温暖化問題や人権問題に取り組むことで、企業が社会的問題に対しどのように向き合っているかなど積極的な姿勢が、ESG投資をするきっかけとなります。

国際フェアトレードラベル機構によって認定されるフェアトレード認証ラベルは、SDGsに関連しており、密接な関係となっています。SDGs目標1「貧困をなくそう」や目標12「つくる責任、つかう責任」などの目標が該当項目です。

発展途上国の生活水準が向上する

フェアトレードは発展途上国の生産者・労働者の生活改善と自立を目指して支援を行うため、発展途上国の生活水準は向上します。

たとえば発展途上国の劣悪な労働環境を改善することで、生産・労働者の健康状態が維持され安定して製品がつくれます。安定した製品の製造は、企業の経営観点からもメリットとなります。

【生産者】フェアトレードによるメリット

フェアトレードは、発展途上国で暮らす生産者・労働者の生活改善や自立を目指して、長期的に公正な取り引きを行うものです。多くの発展途上国では収入が充分でないことから、子どもも学校に通わず働いています。

フェアトレードによる公正な取り引きによって生産者・労働者の収入は増加し、経済的に安定するようになります。これにより子どもたちは働くのではなく、学校に通うことができるようになります。

【消費者】フェアトレード商品の購入によるメリット

フェアトレード商品はイギリスやアメリカなどの先進国によって支援されて行われています。そのため原材料の栽培技術や加工技術を学び、高品質な製品の製造が可能です。

たとえばチョコレートでは、農薬をなるべく使わないオーガニック農法などで安心・安全なカカオを使用してチョコレートを製造できます。

フェアトレード商品は安心・安全かつ高品質な商品であるため、プレゼントを贈る際にも最適です。

【社会・環境】フェアトレードによるメリット

先進国によるフェアトレードの取り組みは、発展途上国で暮らす生産者・労働者の生活改善に貢献するだけではなく、国の発展にもつながります。

発展途上国で暮らす人々の収入が増えれば経済が回ったり、治安が良くなったりと国が安定していきます。

国が安定するだけではなく、映画などの娯楽が誰にでもたしなめるようになったり、観光客の増加したりとメリットが多くあります。

さらにフェアトレードは農薬をできる限り使用しないオーガニック農薬を活用するため、農薬や化学肥料の使用料が減り、動植物の生態系の保全にも貢献できます。

企業がフェアトレードに取り組む方法4選

社内で消費・使用する

企業にとって最も簡単で、基本的でありながら大切なことは、フェアトレード商品を社内で消費・使用することです。

現在、日本だけでなく世界各国でコーヒーの消費量は増加しています。農林水産省によると、2019年における日本のコーヒー消費量は約45万3000トンでした。

フェアトレード認証商品を社内で活用することで、多くのコーヒー豆生産者・労働者の生活改善や自立に貢献できます。

フェアトレード認証商品を仕入れる

企業が商品を仕入れ販売する中で、仕入れる商品をフェアトレード認証商品にすることも企業がフェアトレードに取り組める方法の一つです。

フェアトレード商品はコーヒーをはじめ、チョコレートや白ごま、ワイン、紅茶、生花などさまざまな物があります。

仕入れる商品をフェアトレード商品にすることで、発展途上国に暮らす生産者・労働者の生活改善や自立に貢献できます。

フェアトレード認証商品をブランド化する

日本の企業であるイオン株式会社や森永製菓などでは、フェアトレード商品を自社ブランドにして商品を販売しています。

これらのブランドでは、商品の生産者との公正な関係を重視しており、フェアトレードに積極的に取り組んでいます。

またイオン株式会社は、コーヒーとカカオ原料を2030年までに持続可能な裏付けのとれたものに転換すると発表し、チョコレート商品をフェアトレード認証商品にすることを目指しています。

フェアトレードセミナーを開催する

フェアトレードに関するセミナーを開催することも、企業がフェアトレードに取り組める方法の一つです。

フェアトレードジャパンでは、国際フェアトレード認証ラベルの普及や推進、およびフェアトレードについての知識拡大としてイベントやセミナーを行なっています。

ほかにも、フェアトレード・フォーラムではフェアトレードタウンの認定フェアトレード大学の認定などにも取り組んでいます。

フェアトレードタウン
…町の行政、企業や商店、市民団体などが一体となってフェアトレードの輪を広げることで、不利な立場・弱い立場に置かれた発展途上国で暮らす生産者・労働者の生活改善や、自立に貢献しようとする町のこと。
フェアトレード大学
…フェアトレードタウンについで、大学というコミュニティにてフェアトレードを普及すること。

まとめ

発展途上国において、安い賃金での労働や劣悪な環境下での労働など不当な扱いを受けていました。その影響がいまもなお続いている地域があります。

これらの不当な扱いを改善し、生産者・労働者の安定した生活を支援するため、日本企業をはじめ世界各国でフェアトレードが行われています。

フェアトレードに取り組むことは、企業・生産者・消費者・社会や環境にとって、企業のイメージアップや安定した収入の確保、安心安全で高品質な商品の購入など、多くのメリットがあります。

自社で取り扱う商品をフェアトレード商品にしたり、フェアトレード商品をブランド化したり、フェアトレードに関するセミナーや講義を開いたりするなど、企業にできることは複数あります。まずはできることから、始めてみませんか。

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