デュアルキャリアとは-企業の考え方やメリット、採用する企業例を紹介

#ダイバーシティ#リーダーシップ#能力 2023.06.07

この記事をSNSでシェア!

 

「デュアルキャリア」とは、アスリートたちが選手活動を行いながら、もう一つのキャリアを行うことをいいます。従来、アスリートは、引退後に次のキャリアに進むという考えが一般的でした。しかし近年では選手として活動しながら、社会人として働く人々も増加しています。

「デュアルキャリア」という働き方が広まりつつある現代において、企業は「デュアルキャリア」に対してどのように考えているのでしょうか。またアスリートたちが「デュアルキャリア」を行うメリットとは、一体なんでしょうか。

この記事では「デュアルキャリア」の概要や、「デュアルキャリア」に対する企業の考え方について、説明していきます。さらにアスリートたちが、「デュアルキャリア」を行うメリット・デメリットもまとめていきます。

【この記事で分かること】

 

デュアルキャリアとは|意味やセカンドキャリアとの違い

デュアルキャリア」とは、アスリートがスポーツを行いながら、1人の社会人として仕事を行うことを言います。基本的にプロのアスリートが、定年65歳まで活躍することは難しく、引退後のキャリアが懸念されます。そこで注目されているのが、「デュアルキャリア」という考え方です。

似たような言葉として、「セカンドキャリア」というものがあります。「セカンドキャリア」とは、定年後のキャリアや、出産・育児後の女性における社会復帰などのことです。「第二の人生における職業」とも言われており、アスリート選手の引退後におけるキャリアも含まれています。

「セカンドキャリア」では、引退後に次のキャリアについて考えます。一方で「デュアルキャリア」は、アスリートが現役の頃から別のキャリアの道を進むため、引退後のキャリアについての心配が減ると言います

デュアルキャリアに対する企業の考え方|アスリートに求められる能力と職場での役割

近年ではアスリートの将来性を考え、デュアルキャリアを認めた働き方を、積極的に取り入れている企業も増加傾向にあります。またアスリートへの支援活動を通じて、地域貢献や多様な人材の確保を目指す企業も存在します。

アスリートは選手活動を通じて、チームとの協調性人とのコミュニケーション能力を高めており、これらの能力は、社会人として活躍する上でも重要なスキルです。

企業は選手活動を経て身につけた能力を、職場で発揮することをアスリートに求めています。デュアルキャリアを支援している企業は、まだ多くはないため、まずは自身の強みを見つけることがおすすめです。自分の強みを分析した後に、自分と相性のよい仕事を選ぶことが大切です。

アスリートやタレントが抱える課題

プロとして成果を残すために日々練習を重ねているアスリートですが、第一線として活躍できるのはごくわずかです。そのような厳しい世界にいるアスリートやタレントの人々が、第二のキャリアを歩むことになった時、いくつかの問題に直面します。

たとえばアスリートやタレントの人々は、今までの経験によって得た協調性やコミュニケーション能力を、どのように仕事に活かせるのか分からない人が多いと言います。十分に自分の能力を発揮できないために、中途採用で採用されなかったり、仕事を得たとしても役立たせることができなかったりします。

た自身の将来について長期的に考えず、目先のことのみ考えて仕事を探すことで、仕事にやりがいを感じられなくなってしまうなどの問題も抱える可能性があります。

デュアルキャリアのメリット5選

ここまでデュアルキャリアの概要や、アスリートの人々が抱える問題について、まとめていきました。

続いて、デュアルキャリアを行うメリットを5つ紹介していきます。

①社会人としてスポーツ以外の分野でキャリアを築ける

まずデュアルキャリアのメリットとして、アスリートとしてではなく、一人の社会人としてのキャリアを築けるが挙げられます。

スポーツ分野以外のキャリアを築くことで、かりにアスリートやタレントの道を終えた場合でも将来に対する心配や不安が減ります。また大会でいい成績が収められなかったり、練習時に怪我をしたりなどの問題が生じても、仕事における給与などには影響しません。そのため懸念することなく、アスリート活動に専念できます。

②収入源を確保でき、経済的な不安を軽減できる

経済的な面でのメリットも存在します。たとえば一定数の収入を確保できることです。会社員として仕事を行うことで、企業から給与が得られます。

仕事を通じて得た給与は、競技を行うために必要な資金となるだけではなく、選手引退後の生活を支えるお金となります

③スポーツ選手としての経験を職場で活かせる

アスリート活動を通じて得た経験の多くは、会社員としての仕事に活かすことができます。たとえばチームのメンバーと協力し合うことや、リーダーシップ能力などです。

仕事を行う上でも、他のメンバーと助け合うことや、周囲の人々をまとめる力が必要です。選手活動を経験するアスリートたちは、選手活動を通じて身につけている能力のため、実際に職場でも活躍できる人材となります。

④両方のキャリアで、スキルや知識を磨ける

会社員としてのキャリアだけではなく、アスリートとしてのキャリアを通じて、さまざまなスキルや知識も身につきます

たとえば会社員として得られるものとして、ビジネスマナーやヒアリング能力などが挙げられます。一方でアスリート活動では、自己管理能力や目標達成する際に直面する課題の原因を分析する能力など、さまざまなスキルが得られます。

ヒアリング能力
…顧客の悩みや望むものを聞き出し、解決したいことを明確にする能力のこと。

⑤キャリアのリスク分散ができる

デュアルキャリアを行うメリットとして、万が一のリスクに備えられるという点も挙げられます。

アスリートの道で成功する人はごくわずかで、すべてのアスリートが活躍できるわけではありません。仮にアスリートとして成功できなかった場合、経済的に生活が苦しくなってしまう可能性もあります。しかし会社員と選手活動を並行して行うことで、将来のことを心配することなく競技に専念できます。

デュアルキャリアの3つの難しさ

「デュアルキャリア」には、アスリートとして得た経験が仕事に活かせることや、安定した収入が得られるようになるというメリットがあります。一方で、アスリートたちが直面する困難もいくつか存在します。

たとえば2つのキャリアを同時に行うため、それぞれに費やす時間が足りなくなってしまいます。費やす時間が不足することで、それぞれのキャリアに必要な知識やスキルを取得するのに、人一倍時間を必要とします。

また仮に仕事によってアスリート活動にかける時間が確保できなくなってしまった場合、練習に参加できなくなり、試合にも出られないという恐れもあります。

そのほかにも仕事で長時間働いた結果、競技の練習時間が不十分になったりストレスや疲労によって、練習がうまくいかなかったりなどの問題が生じる可能性があります。

デュアルキャリアの働き方とは

アスリートとしてだけではなく、会社員として働くために必要となるのが、柔軟な働き方です。デュアルキャリアでは、フルタイムで残業が少なく、土曜日・日曜日・祝日が休みとなる業務形態が主流となっています。

企業としてもアスリートの活躍を第一に考えて、デュアルキャリアとして働く人々を支援しているため、試合や遠征などの急な都合にも柔軟に対応をしています。

たとえばマイナビアスリートキャリアでは、2019年にアスリート雇用に対する講義である「アスリート雇用に関するシンポジウム」を開催しました。

アスリート雇用を積極的に推進する企業の例3選

ここまで、デュアルキャリアのメリットやデメリットについて、まとめていきました。

続いて、実際にアスリートを雇用している企業について、紹介していきます。

関連記事:SDGs目標8番の達成に向けた解決策とは?|企業事例3選を紹介

関連記事:いろんな人がいろんな形で活躍できる社会に|企業理念に通ずる大創産業のD&I

①脳梗塞リハビリセンター|株式会社ワイズ

株式会社ワイズは、「脳梗塞リハビリセンター」という病院でもデイサービスでもない、新しい施設を全国に展開している会社です。「脳梗塞リハビリセンター」では、患者のリハビリを完全にマンツーマンで行っており、さまざまな現役アスリートを運動トレーナーとして雇用しています。

「脳梗塞リハビリセンター」では、病院の退院後のリハビリを希望する患者を対象に、サービスを提供しています。リハビリの内容としては、歩く・話す以外にも、パソコンのキーボードを打てるようになるためなど多様です。

株式会社ワイズは、デュアルキャリアを支援しており、陸上競技やバスケットボール、チアリーディングなど数多くの現役アスリートが働いています。またそれぞれのアスリートが練習に支障をきたさないよう、練習時間前まで働くという形式をとっています。

②ブランド品や貴金属のリユース|バリュエンスホールディングス

バリュエンスホールディングスは、バッグなどのブランド品や貴金属、骨董品・美術品を買い取り、さまざまな販売経路を通じて販売するリユース会社です。消費者から買い取ったブランド品や時計などは、国内外で開催されているオークションにて販売されています。

バリュエンスホールディングスでは、「大切なことにフォーカスして生きる人を増やすこと」を目標としています。その取り組みの一環として、アスリート雇用を2020年10月から「アスリートのデュアルキャリア採用」を開始しました。

採用しているアスリートたちは、サッカー選手からバスケットボール選手など、多岐にわたります。2023年1月の段階で、35名のアスリートを採用しており、柔軟な働き方に対応しています。また実際に採用したアスリートたちは、限られた時間で自身の能力を発揮しており、現場で大いに活躍をしています。

関連記事:SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」|個人でできるリサイクル事例を紹介

③無料職業紹介事業「アスナビ」|日本オリンピック委員会

「アスナビ」は、日本オリンピック委員会が運営する、現役アスリートの就職活動を支援する制度です。2020年5月の段階で、約200社の企業がアスリートを採用しており、300人を超える人がアスリート活動と会社員の両立を行っています。

「アスナビ」では、日本オリンピック委員会や日本パラリンピック委員会が認定したアスリート選手が、主に登録をしています。アスリートを採用する企業に対しても、選手の応援の仕方や入社に向けた準備方法など、さまざまなサポートを行っています

また、現役を引退し、次のキャリアへ移行しようとしているアスリート向けに「アスナビNEXT」という支援制度も設けています。「アスナビNEXT」では、アスリートが現役のうちから将来のキャリアについて考え、能力を発揮できるようにキャリアカウンセリングなどを実施しています。

デュアルキャリアを実践する際の心得3選

ここまで積極的にアスリート雇用をしている企業について、まとめていきました。

最後に、デュアルキャリアを行ううえでアスリートやタレントの人々が気をつけるべき心得について、説明していきます。

①自分の目的とキャリアを明確にすること

デュアルキャリアを行う際にまず大切なことが、デュアルキャリアを行う目的と、並行して行うキャリアについて明確にすることです。なんのために2つのキャリアを並行するのか、きちんと考えておかなければ、会社員としての仕事も中途半端になってしまいます。短期的に考えるのではなく、長い目で将来について考えることが重要です。

また将来について考えた上で自身に合った仕事に就くことも、長く仕事を行うために必要な要素となります。生計を立てるためにとりあえず決めるのではなく、引退後のことも考慮しましょう。

②時間管理や体力管理に注意すること

自身のキャリアについて明確にするだけではなく、自身が仕事や練習に費やせる時間や、自身の体調をしっかり管理することも大切です。

アスリートとして練習や試合をするだけではなく、会社員として働くことは、たしかに大変なことかもしれません。しかし練習での疲労や、ストレスを仕事にも引きずってしまうと、仕事のパフォーマンスも落ちてしまいます。仕事と競技の練習との間にメリハリをつけることが、うまく両立するコツとなります。

また体力面だけではなくメンタル面でも、しっかりメリハリをつけることが重要です。仮に試合や練習でうまくいかなくても、気持ちを切り替えて仕事に励むようにしましょう。

③両方のキャリアに必要なスキルや知識を身につけること

2つのキャリアを同時に行うためには、競技において必要なスキルや知識と、仕事において必要な知識などを身につけることも大切です。

たとえばある課題を解決するために、取り組みの方法を少しずつ改善していくアプローチ方法は、アスリートとしても会社員としても必要なスキルとなります。片方のキャリアに必要なスキルや知識だけを身につけるのではなく、両方のキャリアそれぞれに必要な知識やスキルの定着を目指すことが重要です。

まとめ

デュアルキャリア」とは、アスリートの人々が選手活動を行いながら、会社員として仕事を同時に行うことを言います。「デュアルキャリア」では、アスリートが現役の段階でもう一つのキャリアの道を歩むため、選手引退後のキャリアに対する心配が軽減されます

デュアルキャリアを行うことで、アスリートたちは安定した収入を得られたりスポーツ経験を通して得た経験を仕事に活かしたりと、さまざまなメリットが存在します。また近年では「デュアルキャリア」を認め、積極的にアスリートを採用している企業も、増加傾向にあります。

一方で練習に費やす時間がなくなり、疲れが十分に回復しない可能性もあります。「デュアルキャリア」を行うには、自身の体調管理やスケジュール管理などを徹底することも重要です。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    ESG格付け(レーティング)とは?評価機関の一覧や金融庁の対策も紹介

    SDGs目標2達成するための取り組み|世界と日本の取り組みや個人でできる取り組みも紹介

    《完全網羅》SDGsの7つの問題点|現状の課題と解決策

    《必見》プラスチック問題とは?|現状や事例、SDGsとの関係まで解説

    SDGsバッジをつけている人ってどんな人?購入方法やつける意味を解説