日本のLGBTへの取り組み事例-政府や自治体・企業の取り組みを紹介

##性・生殖#LGBTQ#ジェンダー 2023.03.08

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日本ではLGBTの方々に対してどのような取り組みが行われているのでしょうか。

LGBTへの理解が海外よりも進んでいないと言われがちな日本ですが、実は多くの自治体や企業がLGBTの方々に対する取り組みを行っています。

今回はLGBTに対する政府や自治体の取り組み事例に加え、企業や学校での取り組みまで網羅的に紹介します。

【この記事でわかること】

見出し

LGBTとは-日本の現状についても解説

LGBTの意味に加え、LGBTに関する日本の現状も紹介します。

LGBTとは-それぞれの頭文字が意味するものとは

LGBTとは「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」の4つのアルファベットの頭文字をとったものです。

それぞれ「女性の同性愛者」・「男性の同性愛者」・「男性も女性も好きになる人」・「身体的な性と性自認が違う人」を指しています。

身体的な性とは性器などの身体的特徴に基づく性別を、性自認とは自身の性をどのように捉えるかを表した言葉です。

日本のLGBTの割合

日本の民間団体による調査では、人口の8%〜10%前後がLGBTと言われています。つまり人口の10から13人に1人がLGBTという計算になります。

LGBTの割合を調査した団体によってその割合は違いますが、LGBTと答える人の割合は年々増加していることがわかります。

その理由としてLGBTに対する理解が進み、自分がLGBTであることをカミングアウトしやすくなったことが挙げられます。

▼参考
LGBTの割合がバラつく理由【13人に1人? 100人に1人?】

世間のLGBTの認知度

世間のLGBTへの理解度はどのくらいなのでしょうか。

今回は2019年に静岡県浜松市が行った「性の多様性について」のアンケート結果を紹介します。

アンケートの結果からLGBTの意味を知らない人が3割近くいることがわかります。

LGBTの意味を知っている割合を100%に近づけるために様々な取り組みが必要です。

▼参考
「性の多様性について」アンケート結果(要約)

▼関連記事
《2021年 最新版》SDGsの認知度 |世代別、年別推移、国別まで網羅

日本政府のLGBTへの取り組み事例2選

日本政府のLGBTへの取り組み事例を2つ紹介します。

教育現場に対する取り組み

文部科学省はLGBT教育への対応として様々な取り組みを行っています。

2010年には児童生徒が抱える問題に対しての教育相談を徹底するように、教育委員会に連絡しています。

2015年には「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を発出し、性同一性障害の児童生徒への支援について具体的にやるべきことを取りまとめています。

2016年には教職員向け手引きの作成と公表、2017年には「いじめ防止対策推進法に基づく基本方針」の改定が行われ、LGBTへの対応が盛り込まれました。

▼参考
自民党が「LGBT法案」了承見送り|「性差別」表現めぐって

セクシュアルハラスメント指針の改定

厚生労働省は、男女雇用機会均等法のセクハラ指針に性的マイノリティの人への差別的な言動がセクシュアルハラスメントに当たることを明記しました。

これによって、職場で性的マイノリティの人への差別がなくなることを目指しています。

▼参考
セクハラ指針が改正され、LGBTに対する性的な言動もセクハラと明記されることになりました

海外政府のLGBTへの取り組み事例2選

海外政府のLGBTへの取り組み事例を2つ紹介します。

アメリカ-同性婚を法制化

アメリカも性的マイノリティの人に対して様々な取り組みを行っています。

今回は取り組みの一例として、同性婚が法制化されたことを紹介します。

アメリカ連邦議会では同性婚を立法で合法化する「結婚尊重法案」を可決しました。

この法案によって、性的マイノリティで自由に結婚できなかった人たちは新たな選択肢を得ることができました。

▼参考
米で同性婚を法制化、「結婚尊重法案」が可決 バイデン大統領が署名へ

オランダ-「性の多様性」の必修授業

オランダは世界で初めて同性婚を合法化したことで知られています。

また、性の多様性に寛容なオランダでは2012年から学校教育で「性の多様性」を扱うことが義務づけられています。

例えば、初等教育の「社会・環境学習」の科目には「セクシュアリティと性的多様性」という学習項目があり、セクシュアリティや文化の違いを尊重することの重要性について学びます。

▼参考
【EU諸国と日本でどう違う?】学校の性教育におけるLGBTs

▼関連記事
LGBT教育に必要な取り組み5選-現在の問題点と海外の取り組みも紹介

自治体のLGBTへの取り組み事例5選

自治体のLGBTへの取り組み事例を5つ紹介します。

札幌市-札幌市LGBTフレンドリー指標制度

1つ目に紹介する事例は札幌市の取り組みです。

札幌市はLGBTに関する企業での取り組みを推進するために、LGBT施策に取り組む企業に登録証を交付しています。

基本方針、啓発、内部体制、福利厚生、配慮、協力連携の6つの項目についてLGBT施策を評価し、札幌市LGBTフレンドリー企業として登録しています。

登録を受けた企業は登録証を交付される上に、企業情報や取り組み内容について市の公式ホームページで紹介されます。

▼参考
札幌市LGBTフレンドリー指標制度

▼SDGsと自治体の関係について詳しくはこちら

越前市-NPO法人丹南市民自治研究センターの取り組み

2つ目に紹介する事例は越前市の取り組みです。

NPO法人丹南市民自治研究センターは自治体職員をはじめとして、市民や研究者と共に地域課題や社会活動について意見を交換し合う市民活動団体です。

市の職員がLGBTについて学ぶため、2014年にNPO法人の虹色ダイバーシティのスタッフを招いて講演会を開催しました。

また、2016年にはアメリカの同性婚裁判を描いたドキュメンタリー映画「ジェンダー・マリアージュ」の上映会を開催しました。

▼参考
東京でもない大阪でもない地方でのLGBT

▼関連記事
自治体のLGBTへの取り組み5選-日本のLGBTの現状や企業・学校の例も紹介

宮崎市-レインボーグッズを用いた広報活動

3つ目に紹介する事例は宮崎市の取り組みです。

宮崎市ではLGBTの人に対する差別や偏見を解消するため、レインボーグッズを用いた広報活動を推進しています。

主に以下の2つのことに取り組んでいます。

・性的マイノリティの人の尊厳や社会運動を象徴する虹色の旗(レインボーフラッグ)を掲げること
・名札などに虹色の缶バッジをつけること

これらの広報活動を通して、性的マイノリティの人たちが過ごしやすい社会を目指しています。

▼参考
ALLY(アライ)活動に取り組んでいます!

埼玉県-企業を対象にLGBTQ研修を実施

4つ目に紹介する事例は埼玉県の取り組みです。

埼玉県は、LGBT向けの福利厚生制度の有無などの各企業の取り組み状況を県の公式サイトで公表しています。

県内に活動拠点がある企業や事業所のうち、県が実施する「にじいろ企業研修」を受講することが条件となっています。

LGBTに対する社員の理解不足や、情報不足によって適切な対策を講じられなくなる事例が相次いだため、県が主導となって「にじいろ企業研修」を行うことになりました。

▼参考
埼玉県が県内の企業を対象にLGBTQ研修を実施し、社内での取組みを評価する指標の運用を始めることが明らかになりました

▼関連記事
《徹底解説》SDGsと地方創生の関わり|地方自治体の地方創生の取り組みまで徹底網羅

世田谷区-同性パートナーシップの受け入れを開始

5つ目に紹介する事例は東京都世田谷区の取り組みです。

世田谷区では2015年に同性パートナーシップを受け入れるようになりました。

同性カップルはパートナーシップ宣誓を行い、区から認められた宣誓書の写しと宣誓書受領証を受け取ります。

▼参考
3 .行政が取り組む意義 4 .自治体の取組紹介

日本企業のLGBTへの取り組み事例4選

日本企業のLGBTへの取り組み事例を4つ紹介します。

KDDI-同性愛者のための家族支援

1つ目に紹介する事例はKDDIの取り組みです。

KDDIでは同性パートナーの子供を家族として扱う「ファミリーシップ申請制度」を導入しました。

法律上は認められていなくても育児休職を取得できたり、出産祝い金を受給できたりするようになりました。

この取り組みは先進的で顕著な取り組み事例として、2020度のベストプラクティス賞に選ばれました。

▼参考
LGBTQに関する取り組み指標「PRIDE指標」の最高位「ゴールド」を5年連続で受賞~同性パートナーの子を社内制度上”家族”として扱う新制度がベストプラクティス賞を受賞~

▼関連記事
企業によるLGBT支援の取り組み7選-日本と海外の企業事例も紹介

スターバックスコーヒージャパン株式会社-LGBTの認知向上のためのイベントを開催

2つ目に紹介する事例はスターバックスコーヒージャパン株式会社の取り組みです。

スターバックスコーヒージャパン株式会は従業員が若者たちとLGBTについて考える「レインボー学校プロジェクト」というイベントを開催しました。

レインボー学校プロジェクトでは、若者が性的マイノリティについて正しい知識を身に着けて安心して学校に通えるようになるために、多様性やLGBTQ+に関する出張授業を行いました。

スターバックスの従業員を含めた複数のLGBTやアライ(性的マイノリティを理解し、支援する人や団体)がそれぞれの経験を語ることで、より身近に性的マイノリティを感じることができます。

▼参考
スターバックス コーヒー ジャパン 性の多様性に関する取り組みが評価され、「PRIDE指標」最高評価の「ゴールド」受賞および最も優れた事例に選定

資生堂-イベントを開催してLGBTへの理解を推進

3つ目に紹介する事例は資生堂の取り組みです。

資生堂では、性的マイノリティの人に対する差別禁止のためにLGBTをテーマにした社員向けセミナーを開催するなど、積極的にLGBTへの理解促進に取り組んでいます。

しかし、資生堂の取り組みは社内だけではありません。資生堂は渋谷区が主催する「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA」や「Tokyo Rainbow Pride」へ賛同しています。

実際にLGBTの人々に化粧を楽しんでもらうイベントを企画するなど、コミュニティに対しても積極的に活動しています。

▼参考
日本と世界のLGBT取り組み事例を紹介 – LGBTs不動産のIRIS

富士通-アライの輪を広げる取り組み

4つ目に紹介する事例は富士通の取り組みです。

富士通では、社内でアライを広める活動として、LGBT当事者と話し合う「LGBT+Allyミーティング」の実施や、LGBTとアライをテーマにした映画上映会を行っています。

ALLY(アライ)とは、LGBTQ +の人たちに寄り添いたいと考え、支援する人のことを指します。

これらの取り組みにより、レインボーグッズを使用する社員も増えてきています。

▼参考
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン : 富士通

学校でのLGBTへの取り組み事例4選

学校でのLGBTへの取り組み事例を4つ紹介します。

豊川市立一宮西部小学校-誰でも入れるトイレの設置

1つ目に紹介する事例は、愛知県豊川市にある市立一宮西部小学校の取り組みです。

市立一宮西部小校は男女別のトイレに加えて、特別支援教室のあるフロアに「みんなのトイレ」を設置しました。

被災時に学校が避難所になった場合に備え、高齢者や障がい者だけでなく、LGBTの人も使用しやすいように設置しました。

共通の入り口を入った先に男女別トイレとみんなのトイレがあり、外からはどちらのトイレに入ったかわからないように配慮されています。

▼参考
豊川市立一宮西部小学校 | 施工事例(トイレ・洗面・浴室)

▼関連記事
LGBTのトイレのマークについて考える-オールジェンダートイレの提案や導入事例も紹介

市立柏の葉中学校-制服の選択肢の拡大

2つ目に紹介する事例は、千葉県柏市にある市立柏の葉中学校の取り組みです。

教育委員会や小学校の関係者などによる制服の検討会を経て、市立柏の葉中学校は性的マイノリティの生徒に配慮した制服を導入しました。

生徒の性別に関係なくネクタイかリボン、スカートかスラックスを選ぶことができます。

また、スラックスは女性の体型を考慮するデザインになっています。

▼参考
LGBTに優しい学校に トイレ改修、制服見直し… – 日本経済新聞

高校-公共や家庭科の教科書の見直し

3つ目に紹介する事例は、高校の公共や家庭科の授業で用いられる教科書に「LGBT」や「パートナーシップ制度」が記載されることです。

公共の教科書には「LGBT」や「SOGI」について記載され、性のあり方が多様化していることを紹介しています。

SOGIとは性的指向と性自認の頭文字を取ったもので、人の属性を表した言葉です。

また、家庭基礎の教科書では「パートナーシップ制度」について記載され、多様化する家族のあり方を紹介しています。

▼参考
来年度から高校の公共や家庭科の教科書に「LGBT」「SOGIハラ」「パートナーシップ制度」などが掲載されることになりました

中央大学-ダイバーシティセンターの発足

4つ目に紹介する事例は中央大学の取り組みです。

中央大学は性的マイノリティで悩んでいる人を救うため、2020年4月にダイバーシティセンターを発足しました。

ダイバーシティセンターで取り組んでいることを2つ紹介します。

・ジェンダー・セクシュアリティに関する学生用ハンドブック、教職員用ガイドブックの配布
・個別相談やダイバーシティに関する情報提供を行うダイバーシティーセンターの開設

中央大学では他にも性的マイノリティの人に対して多くのことに取り組んでいます。

▼参考
ダイバーシティセンター

自社・自団体でLGBTに取り組むためには

自社や自団体でLGBTに取り組むために必要なことの第一段階はLGBTについて正しく理解している人材を確保することです。

そして、LGBTに精通している人材から他の人へ情報を共有することが求められます。

また、気軽に相談できる窓口を開設することも重要なことです。

人口の10から13人に1人がLGBTと言われており、性的マイノリティの人は身近にいることを忘れてはいけません。

私たちにできること

私たちがLGBTの方のためにできることとしてALLY(アライ)になることが挙げられます。

つまり、セクシュアルマイノリティを理解するだけでなくLGBTの方の人を支援し、その立場を明確にすることが必要です。

また、自身がLGBTの人を差別しないだけでなく、差別を見過ごさないことも大切です。

まとめ

LGBTに対する日本での取り組み事例について新しく知ったことはありましたでしょうか。

法整備などの国全体に関わることは政府しか取り組むことができません。しかし、自治体や会社ではLGBTの人たちへの対応を柔軟に行うことができます。

また、制度や設備を整えるだけでなく、アライになってLGBTの人たちの支えとなることもできます。

LGBTの方々が過ごしやすい社会になるために、身の回りのできることから始めていきましょう!

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