SDGs4「質の高い教育をみんなに」現状の問題点、できること、取り組み事例を紹介

#SDGs目標4#ジェンダー#教育#貧困 2021.02.12

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【更新日:2023年11月29日 by 田所莉沙

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」は、すべての子どもたちが教育を受けられる環境を整えるために定められた目標です。世界の一部の国や地域では、子どもたちが幼い頃から教育を受けられず、限られた仕事しか得られていません。

子どもたちが教育を受けられるようにするためには、各国の政府の取り組みだけではなく、多くの人々が貢献する必要があり、世界や日本では、さまざまな企業や団体がSDGs目標4の達成に向けて取り組みを行っています。

この記事では、SDGs目標4の内容や、世界・日本における現状、解決に向けた取り組みなどを解説していきます。

【この記事で分かること】※クリックするとジャンプします。

 

見出し

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」とは

まずはSDGs目標4の内容や、ターゲットの詳細について、説明していきます。

SDGs4「質の高い教育をみんなに」の意味と内容

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」は、すべての人が対等な関係で、質の高い教育を受け、学ぶ機会を得られるようにすることを目指した目標です。

日本に限らず先進国で暮らす多くの子どもたちは、初頭・中等教育を受けることができています。一方で発展途上国で暮らす子どもたちは、必ずしも全員が教育を受けられる環境にいるわけではありません

教育を受けられなかったことが原因で、職を得られなくなってしまうなど、さまざまな問題に直面します。SDGs目標4では、このような教育に関する問題を解決するために定められました。

SDGs4「質の高い教育をみんなに」のターゲット

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」は、すべての子どもが公正かつ質の高い初等・中等教育を受けられる環境を整えるというものです。

この目標を達成するために定められた具体的な取り組みとして、男女間における教育の格差をなくすことや、学校などの教育施設の整備などが挙げられます。

SDGs目標4のターゲットについて、詳しくは下記の表をご覧ください。

4.1 ・2030年までにすべての子どもが性別に関係なく、初等教育や中等教育を受けられるようにする。
・すべての子どもが無償で公正で、かつ質の高い教育を受けられるようにする。
4.2 ・2030年までにすべての子どもが男女の区別なく幼稚園に通い、初等教育を受ける準備ができるようにする。
4.3 ・2030年までにすべての子どもが性別に関係なく、無理なく支払える費用で、大学や高等教育を受けられるようにする。
4.4 ・2030年までに仕事に携われるような技術や能力を身に着けた若者や大人を増やす。
・若者や大人が働きがいのある仕事に就くことができ、新しい会社を設立できるようにする。
4.5 ・2030年までに教育における男女間の格差をなくす。
・障害を持つ人や先住民族の人、厳しい環境で暮らす子どもなど、あらゆる人が教育や職業訓練を受けられるようにする。
4.6 ・2030年までにすべての若者や大人が読み書きができ、計算ができるようにする。
4.7 ・2030年までに教育を受けるすべての人が、持続可能な社会を目指すために必要な知識や技術を身につけられるようにする。
・人権や男女の平等、暴力をつかわないことや、世界にさまざまな文化が存在していることなど、あらゆる物事における理解を深められるような教育を行う。
4.a ・子どもや障害を持つ人、ジェンダーに考慮して学校などの施設を構築し、改良する。
・すべての人々が安全で暴力がなく、誰も取り残されないような教育環境を整える。
4.b ・2020年までに発展途上国やとくに開発が遅れている途上国、島国やアフリカ大陸に位置する国で暮らす人々が、先進国で職業訓練や情報通信技術などの教育を受けられるようにする。
・高等教育を受けられるよう、奨学金による支援を世界中で増やす。
4.c ・2030年までに発展途上国やとくに開発が遅れている途上国、島国やアフリカ大陸に位置する国で、教師の研修を行う。
・教師への教育を世界各国で協力して行うことで、知識や経験のある教師の数を増やす。

引用:外務省公式サイト

世界の教育やSDGs4に関する現状と問題点

つぎに世界におけるSDGs目標4の現状や問題点について、説明していきます。

関連記事:《SDGs目標4》世界の教育の現状とは|グラフを用いて徹底解説

関連記事:SDGs目標4番の世界における現状は?|世界の地域ごとに解説

世界には2億4,400万人の子どもが学校に通う機会がない

世界の一部の国では、小さな子どもが学校に通う機会が奪われてしまっています。2021年の段階で、学校に通えない子どもの人数は、2億4,400万人でした。中でも南スーダンやリトリアなどの発展途上国では、多くの子どもが学校に通えておらず、子どもの人数のうち40%以上が教育を受けられていません。

子どもが教育を受けられない原因として、学校などの施設不足や教員不足、各地で多発している紛争などが挙げられます。子どもが教育の機会を失うことで、大人になっても読み書きや計算ができず、将来担える仕事も限られたものとなります

また読み書きや計算ができない人々が増加することで、国の経済が滞ってしまいます。国全体の経済を活性化させるためにも、子どもの教育は必要不可欠です。

一部の地域では女子が教育を受ける機会を奪われている

学校に通えない子どもの中でも、とくに女の子が教育の機会をより多く失っており、深刻な問題となっています。まず経済的な理由により女の子は学校に通えず、家庭での家事を任されたり、子どもの育児をしたりしています。

また一部の国では文化や伝統的な価値観の影響により、女の子は教育を受けるものではないという考えを持つ場合もあります。

女の子が教育の機会を失うことで、家庭での家事や育児をせざるを得なくなります。男の子だけではなく女の子も同じように教育を受けられるよう、取り組みを行っていくことが必要です。

全世界の成人の約7億7,300万人が識字能力(文字の読み書き・理解する能力)を持っていない

世界各国に存在する成人のうち、約7億7,300万人の人々は、いまだに文字の読み書きができない状況です。たとえば発展途上国で暮らす人々は、教育を得られる機会が少なく、識字率も低くなっています。ユネスコが発表した調査の結果、2023年において中央アフリカ共和国やニジェール共和国、南スーダンでは、識字率が50%以下でした。

文字の読み書きができないと、本や新聞なども読めないため、国の政治状況や健康に関する知識が得られず、生活を自立して行うことが難しくなる可能性があります。また得られる仕事も限られてしまい、得られる収入も減少してしまいます。

文字の読み書きができないことは、仕事だけではなく、生活にも大きな影響を与えます。そのため世界で識字率を高めることも、とても重要なことです。

SDGs4に関する日本の課題と解決策

続いて日本におけるSDGs目標4における課題や、その解決策について説明していきます。

関連記事:SDGs目標4で解決すべき9つの問題点-問題点に向き合う取り組み5選を紹介

経済的な事情や地域性により、質の高い教育を受けられない子どもがいる

日本でも経済格差により、得られる教育の差が問題となっています。たとえば、所得の少ない家庭で生活する子どもたちは、経済的な理由から塾や習い事に通うことが難しくなり、他の子どもたちと比べて学習の機会が限られてしまいます。

また地域による教育の格差も生じています。たとえば都市部と比べ、地方では学校の教材が不足しています。またとくに過疎地では学校が遠く、子どもたちが毎日学校に通うことが難しい現状があります。

これらの問題を解決するためには、地域や経済状況により教育機会が制限される子どもたちへの支援が必要です。具体的には、学校への通学支援や奨学金制度の充実などが挙げられます。また地域コミュニティなどと連携し、教育環境の改善に取り組むことも重要です。

経済的な理由で、学校に通えない、進学を諦めざるを得ない子どもがいる

経済的に苦しい環境にある子どもたちは、質の高い教育を受けられないだけではなく、そもそも学校に通えなかったり、高校や大学への進学を諦めてしまう場合もあります。

2021年において、日本の高校への進学率は98.9%でした。この数値をみるとたしかに日本ではほとんどの子どもたちが、高校へ進学していることがわかります。しかし一部の家庭では、高校や大学の学費が高額なため、進学を諦めざるを得なくなる子どもも一定数存在します。

すべての子どもが進学できるような環境を整えるためには、経済的に苦しんでいる人への援助や奨学金制度の拡大が重要です。

教員不足が深刻化している

日本において、教員不足も深刻な問題となっています。2021年において、日本全国で足りていない教員数は、2,558人も存在します。とくに地方や離島などの地域では、教員の確保が困難であるという現状です。

教師が足りていない原因として、産休・育休を取得する人が増えたことや、特別支援学級の数が増加したことが挙げられます。とくに特別支援学級は、子どもたちの学習状況や生活スタイルに合わせて教育を行うため、教員数の不足につながっています。

これらの問題を解消するためには、教師の労働環境や給与を改善することで志望者を増やしたり、教師が担う業務を減らすためにアシスタントを採用したりなどの工夫が必要です。

特別支援学級
…小学校と中学校に設置されている、障害のある生徒を対象にした少数制のクラスのこと。

学力テストや受験勉強が過度に重視されている

日本では一部の学校や家庭で、学力テスト・受験勉強が過度に重視されている現象が見受けられます。これは「試験の結果」すなわち「目に見える成果」が評価されやすい社会構造からくるものであり、生徒の間で競争意識を促してしまい、教育の質そのものが二の次になってしまっているという問題があります。

さらに生徒たちには過度のプレッシャーを与え、ストレスを抱え込む原因ともなっています。実際生徒たちは、学力以外の能力や個性が認められず、自己価値を見失う場合もあります。

教育の質を高めるためには、教育制度や学校教育の改革が求められます。たとえば多様な学びの場を提供し、生徒一人ひとりの個性や能力を伸ばす教育を実現することなどが重要です。

SDGs4を達成するために私たちにできること3選

つぎにSDGs目標4を達成するために私たちができることについて、解説していきます。

関連記事:【実例紹介】SDGs4達成のために私たちにできること|学生向けに高校・大学から見る事例も紹介

関連記事:SDGs目標4の取り組み10選|現状や企業・個人にできることも紹介

世界の教育問題について知識を深める

世界の教育問題について理解を深めることは、SDGs目標4への取り組みの第一歩となります。たとえば世界では多くの子どもが学校に通う機会を得られないという現実があり、一部の地域では、戦争や貧困、性別による差別などから、女の子も教育が受けられない現状があるということなどです。

これらの事実を知ることで、私たち自身の教育環境が恵まれていることを再認識でき、教育の平等性について考えるきっかけになります。またこれらの現状を知り、支援活動への参加や寄付など、自身ができる取り組みを行うことにつながります。

みなさんもまずはインターネットや本などを通じて、世界の教育に関する問題について、調べてみてください。

教育関連のボランティア活動に参加する

質の高い教育をすべての人に届けるためには、私たち一人ひとりの積極的な参加も必要です。具体的な取り組みとして、教育関連のボランティア活動への参加が挙げられます。

国内外のさまざまな団体が、教育支援のボランティアを募集しています。その活動内容は学校の建設や、教材の提供などさまざまな活動があります。またオンラインを利用した遠隔教育のボランティアも増えており、自宅からでも貢献できる選択肢が広がっています。

ボランティア参加を通して、より多くの子どもたちが教育を受けられるような環境づくりに貢献しましょう。

教育格差を解消するために活動する団体へ寄付をする

教育格差を改善するために活動する団体へ寄付をすることも、SDGs目標4の達成に大いに貢献します。

たとえば「ルーム・トゥ・リード」は、教育を受けられない子どもたちに本を届けています。団体への寄付は、新たな図書館の建設や本の購入、現地スタッフの給与などに使われます。

寄付はお金だけではなく、教材や絵本などの物品、自分の時間を使ったボランティア活動も含まれます。また教育格差の問題について広く知ってもらうために、SNSで情報発信を行ったり、イベントを開催したりする団体もあります。自分にできる形での支援を考えてみましょう。

世界と日本の教育に対する取り組み事例6選|企業・団体・政府の取り組み

最後に世界・日本で行われている取り組みについて、6つ紹介していきます。

関連記事:SDGs4達成のための企業の取り組み|企業が教育に注目する理由まで網羅

リコー|リコーインド教育支援プログラム

リコーは、インドで教育支援プログラムを実施しています。とくに教育環境が整っていない地域を重点的に支援し、子供たちが教育を受けられる環境づくりに努めています

このプログラムでは、リコー社員が現地の教育施設に出向き、パソコンの操作方法や基礎的なITスキルを子どもたちに教えています。またリコー社員自身もインドの子どもたちからさまざまなことを学び、互いの文化理解を深める機会ともなっています。

インドではプログラムのおかげで識字率が向上しつつあります。しかしいまだに多くの子どもが学校に通えておらず、とくに女の子が教育を受けられていません。今後もさらに多くの子どもが教育を受けられるようなプログラムを行っていきます。

パナソニック|ソーラーランタン10万台プロジェクト

パナソニックが取り組んでいる「ソーラーランタン10万台プロジェクト」はSDGs目標4の達成を目指した取り組みの一つです。電気がない地域でも子どもたちが自宅で勉強できるように、ソーラーランタンを提供するこのプロジェクトは、教育の機会をすべての子どもたちに提供しています。

このプロジェクトは、電力供給が不十分な地域における学習環境の改善を目指しており、2013年から開始され、数多くの子どもたちによい影響を与えています。ソーラーランタンが提供されたことで、夜間でも自宅で学習することが可能となり、学力向上やより良い教育環境の提供につながっています。

JICA|みんなの学校プロジェクト

JICAが実施している「みんなの学校プロジェクト」は、途上国の子どもたちへの教育支援を行っています。このプロジェクトでは、質の高い教育を受ける機会が十分にない子どもたちに、学校への通学機会を提供することを目指しています。

具体的な活動内容としては、学校の建設や改修、教材の提供、教員の教育・研修などが行われており、現在はアフリカ大陸に位置する8カ国で約5万3,000校まで拡大しています。

また学校数が増加するに伴い、各地域ならではのニーズに合わせて栄養改善や衛生管理に関するプロジェクトも積極的に行っています。

ユネスコ・アジア文化センター|性のための識字モデル事業(SMILE Asiaプロジェクト)

ユネスコ・アジア文化センターが進める「性のための識字モデル事業(SMILE Asiaプロジェクト)」は、アジア地域の女性に対して教育の機会を提供し、その生活改善を目指す事業です。

とくに社会的な制約から教育の機会に恵まれない女性たちに対して、基本的な読み書きの能力を身につけることを通じて、読み書き能力を高めていきます。たとえば言語の読み書き能力を習得するためのクラスの開設や、生活技術を学ぶためのワークショップの提供などです。

そのほかにも国際間で教員同士が交流する機会を設けたり、アジア太平洋地域の若者同士がともに学び、成長する機会を設けたりしています。

全国銀行協会|どこでも出張講座

全国銀行協会は、SDGs目標4の実現に向けた取り組みの一環として「どこでも出張講座」を実施しています。これは金融や経済についての教育を、学校や地域集会などで行うものです。

お金に関する教育は、人々が社会人としての基礎知識を得るために重要であり、質の高い教育と捉えられます。全国銀行協会が提供する出張講座では、専門家が直接講義を行い、質の高い知識を提供します。

経済的な事情や地域性により、金融教育を受ける機会が限られる子どもたちにも、この講座が開催されることで、お金に関する知識を身につける機会が得られます。

文部科学省|土曜学習応援団

文部科学省は、SDGs目標4を達成するために「土曜学習応援団」を設置しています。この取り組みでは教育格差を解消するために、教育を必要とする子どもたちが教育を受けられる機会を増やすことを目指している取り組みです。

具体的には、土曜日に学校で学びたい子どもたちや家庭で学びたい子どもたちに対して、無料または低価格で質の高い教育機会を提供しています。また地域のボランティアや企業、大学などと連携して行われており、社会全体で子どもたちを支援する仕組みを構築しています。

まとめ

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」では、世界中の子どもたちが教育を受けられる環境づくりを目指した目標です。世界の先進国では多くの子どもが教育を受けられているものの、発展途上国で暮らす多くの子どもたちは、教育を受けられていません。

日本においても一部の地域や家庭では、経済的な理由により進学を諦めてしまう子どもや質の高い教育が受けられない子どもが存在します。また特別支援学級の拡大により、教員不足に陥っているなどの問題が生じています。

SDGs目標4を達成するには、世界各国で協力し、子どもたちが教育を受けられる環境づくりを目指すことが必要です。私たちが身近にできることとして、ボランティア活動への参加寄付活動があります。みなさんもぜひ積極的に活動へ参加してみてはいかがでしょうか。

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