2023年G7広島サミットアンモニア燃料の注目理由-日本の脱炭素戦略

#エネルギー#再生可能エネルギー#持続可能#脱炭素(カーボンニュートラル) 2023.06.16

この記事をSNSでシェア!

 

2023年に開催されたG7広島サミットでアンモニア燃料が2050年脱炭素の共通ゴールの手段として認められました。

開催国である日本は燃やしてもCO2を排出しない水素やアンモニアを活用した発電について推進している一方で、欧米諸国は「火力発電の温存だ」として批判していました。

本記事では、アンモニア燃料がG7サミットで話題となった理由、アンモニア燃料の概要やメリット・デメリット、日本の脱炭素戦略について解説します。

▼SDGsについて詳しくはこちら

【この記事でわかること】

2023G7広島サミットでアンモニア燃料が注目された理由

2023年G7広島サミットでは、石炭火力の廃止期限や温室効果ガス削減についての議論が行われました。日本は石炭火力に依存しているため、廃止期限の明記を共同声明に含めませんでした。

一方で、日本は「多様な道筋」として、CO2を排出しない水素やアンモニアを活用した発電に言及しました。これに対し、G7からも認められました。

共同声明では、化石燃料の段階的な廃止に合意しました。すべての化石燃料に対象を広げることで、火力発電に関する議論を進展させる狙いがあります。さらに天然ガスを含む全化石燃料の段階的廃止に初めて合意しました。しかし、地球温暖化問題においては大きな前進が見られませんでした。G7はクリーンエネルギー移行とエネルギー安全保障の両立を目指し、アンモニアや水素を一定の条件付きで認める姿勢を示しました。

また、温室効果ガス削減の重要性を共有し、「世界全体の温室効果ガスを19年比で60%削減する」ことを呼びかけました。さらに2050年までに排出ゼロの目標を設定するよう主要経済国に要請しました。

開催国日本の動きにより、石炭火力の廃止期限の明記は回避され、条件付きでアンモニアや水素燃料が認められました。今回はこの背景に隠されていることを解説していきます。

▼関連記事
カーボンニュートラルとは?脱炭素との違いや取り組み内容をわかりやすく解説

アンモニア燃料とは-石炭火力発電での20%混焼が現実的

アンモニア燃料とは、大半が天然ガスなどの化石燃料から作られています。そして、燃焼したときに二酸化炭素を排出しないことで注目を集めています。

アンモニア燃料の利用方法は、アンモニアだけを燃やす火力発電の専焼や、現在も使われている火力発電に混ぜて燃焼させる方法があります。さらに、船舶の燃料や工業炉、燃料電池にも利用できます。

アンモニア燃料を導入することによって二酸化炭素の排出量は今よりも減ることが予測されています。アンモニア燃料は二酸化炭素を排出しないので、火力発電への混焼をすることで全体の二酸化炭素排出量は減ります。将来実現される火力発電への混焼は20%と言われています。

日本の脱炭素戦略-アンモニア燃料を推す理由4選

これまで、アンモニア燃料について説明してきました。しかし、日本は何故アンモニア燃料を推しているのでしょうか。
日本がアンモニア燃料を推す理由を4つ紹介します。

火力発電の依存からすぐには抜け出せない現状-アンモニア混焼で生きしのぐ

現在、日本の電力は化石燃料による火力発電が72.9%を占めています。

日本は1974年のオイルショック時に、再生可能エネルギーに着目してエネルギー供給を進めていましたが、現在でも7割を火力発電に頼っています。また、今後は燃料である石炭や石油の供給が不安定になると言われています。さらに、今の火力発電では二酸化炭素の排出を抑えることができません。しかし、下記で詳しく述べますが、日本は火力発電からすぐには抜け出せない現状があるのです。

そこで、アンモニア燃料を火力発電に混ぜて燃やすことで二酸化炭素の排出を抑えることができます。アンモニア燃料は、二酸化炭素の排出をしないでエネルギーを生み出すことができるのです。

現段階で、火力発電を完全にやめてしまうことはできませんが、アンモニアを混焼していくことで二酸化炭素の排出を抑えていくことができます。

これにより日本は再生可能エネルギー等に頼らず、カーボンニュートラル実現に近づくことが可能になります。

▼関連記事
温室効果ガスの測定方法とは?-排出の現状や測定方法の課題・解決策も解説

再生可能エネルギー(洋上風力)が他国と同じようにはいかないから

脱炭素を目指すためには、二酸化炭素排出量が少ない発電方法が不可欠です。特に有力な方法が、再生可能エネルギーに発電方法を変えることです。

しかし、日本の再生エネルギー比率は他の国と比べて低い状態となっています。2011年度から2020年度までに再生可能エネルギーの割合は10%から20%まで増えていますが、他の主要国と比べるとまだまだ低い状態です。

なぜ、日本の再生可能エネルギー導入は遅れているのでしょうか。

理由の1つとして、日本では洋上風力に設備費がかかってしまうことにあります。洋上風力とは、海上に風車を持っていき風力発電をする方法です。

欧米では水深の浅い海が広がっており、そのためコストが比較的低く、風力発電が普及しています。一方で日本周辺の海は水深が深く、洋上風力の導入がしやすい環境が整っていないため、コストが高くなってしまうのです。

このような背景から日本は再生可能エネルギーの普及が遅れています。よって火力発電を手放せないのです。

福島第一原発事故により原発を再開しにくい

再生可能エネルギーのイメージとして、自然由来の風力や水力が思いつきますが、実は原子力発電も再生可能エネルギーとしてみなすことができます。G7のうち、フランス、アメリカ、中国も原子力を盛んに使用しています。

日本で原子力発電を再開することで、火力発電の依存を抜け出し、脱炭素に近づくことができます。しかし、今後日本への原子力発電の導入は難しいと言われています。

それは、東日本大震災で起こった福島第一原子力発電所の事故です。過去に事故が起きてしまった以上、原子力発電を再開するのは難しく、また火力発電に依存してしまいます。さらに、先ほど言った通り再生可能エネルギーを作り出す環境にも恵まれていません。

そこで、現在も使用している火力発電にアンモニア燃料を使うことでカーボンニュートラルを目指せます。

▼関連記事
カーボンニュートラル実現のために原発は必要か?-現状から解決法まで徹底解説

燃料アンモニア導入官民協議会の設置

日本では、今後燃料アンモニアの導入、活用の拡大をしていくため取り組みが進められています。その一つである「燃料アンモニア導入官民協議会」は2020年に設立されました。

2019年時点では、世界で生産されているアンモニアは年間約2億トンです。

日本では年間消費量が約108万トンで、そのうち8割は国内生産をしています。

一方で、2020年度の日本のエネルギー自給率は11.3%と他の国と比べてとても低いです。

エネルギー自給率が低い理由として、現在エネルギーを生み出しているのは火力発電がメインとなっています。しかし、日本では火力発電で使用される石油や天然ガスがほとんど手に入らないため、大半を輸入に頼っています。

しかしアンモニアを導入することで、アンモニアは国内で確保できるためエネルギー自給率が上がります。

エネルギー自給率が低ければ、資源を輸入せざるを得なくなり、私たちの生活に必要な電気代が高くなる原因となります。アンモニア燃料が普及すれば私たちの電気代も安くなる可能性はあります。

国内で供給できるアンモニア燃料は今後も注目を浴びるエネルギー資源です。

▼関連記事
カーボンニュートラルの実現に向けた日本の現状と取り組み9選を徹底解説

欧米諸国がアンモニア燃料を批判する理由2選

日本でのアンモニア燃料の導入やメリットを紹介してきました。

しかし、日本のアンモニア燃料導入に対して批判的な意見もあります。どのような批判なのでしょうか。2つ紹介していきます。

火力発電の温存-化石燃料産業の延命治療でしかない

アンモニア燃料は、燃やしても二酸化炭素を発生させないと言われており、現在日本では脱炭素燃料の切り札と言われています。

しかし、アンモニア燃料に注力しているのは2021年時点では日本だけの様です。

アンモニア燃料に注力している国が少ない理由として、コストが高いことが挙げられます。国土の広い国では広さを利用した太陽光発電や風力発電に力を入れています。しかし、アンモニア燃料と比べるとコストがかからず二酸化炭素を排出しないためアンモニア燃料を使っている国は少ないのです。

さらに欧米では、「本来は撤廃すべき火力発電を日本は延命しているだけだ。」と言われています。

実際、火力発電に混合することで二酸化炭素を減らせることはできるかもしれないですが、根本的な火力発電をやめているわけではありません。

脱炭素へ近づくため、発電方法を見直さなければいけませんがまだまだ問題は多いのが現状です。

燃焼時に温室効果ガスであるN2Oが発生する可能性

アンモニア燃料は二酸化炭素を排出しないところばかり注目されがちですが、実際は他のガスも発生する可能性があるのです。

特に注目しなければいけないのはN2O(亜酸化窒素)です。アンモニアを燃焼した際に発生する気体で、二酸化炭素の約300倍の温室効果があると言われています。N2Oは、温室効果があるとして京都議定書でも排出規制がかけられています。

脱炭素のために始めたにもかかわらず、より地球温暖化を加速させてしまっては本末転倒です。

また、燃焼することで新たに有害な物質が発生することもあります。脱炭素を目指すために、さまざまな観点から見極めていかないといけません。
▼関連記事
畜産からも温室効果ガスは発生する?-発生原因から対策・取組事例も徹底解説

日本のアンモニア燃料優良企業事例

欧米からは批判を浴びているアンモニア燃料ですが、日本では脱炭素に近づく手段として力を入れられており、実際に動いている企業もあります。

ここでは、日本のアンモニア燃料の優良企業事例を紹介していきます。

IHIが世界初のアンモニアタービンを開発

IHIは、資源、エネルギー、社会インフラなどエネルギー需要の増加に伴う社会課題の解決を行っています。

IHIでは、2030年までにアンモニア燃料を利用していくため、技術開発を行っています。そして、液体アンモニアのみを燃料とするアンモニアタービンを開発しました。

アンモニアは炭素を含まないので、燃焼しても二酸化炭素が発生しません。ガスタービン内にアンモニアを直接噴射することでアンモニアを燃焼し、エネルギーに変換しています。

IHIでは、2025年までにアンモニア燃料100%のガスタービン実用化に向けた取り組みを進めています。

▼関連記事
カーボンニュートラルへの取り組み事例8選-企業と自治体の対策を解説

まとめ

アンモニア燃料について説明してきました。

アンモニア燃料は、燃やしても二酸化炭素を排出しない点が注目されています。日本では、カーボンニュートラルを目指す現在もアンモニア燃料が推奨されています。

今後の実用化に向けてアンモニア燃料の活躍が見逃せません。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    《実は存在した?》SDGs18番目のゴールの噂|都市伝説と実際のゴール

    「SDGsは胡散臭い」と言われる5つの理由【解説】|原因から解決法まで徹底解説

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    “実はサステナブルだった”でいい|マッシュグループのウェルネスデザインに迫る

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    ESG投資とは?意味や市場規模、メリット、企業事例を紹介