《SDGs事例集》脱炭素を目指すデータセンターを地方で|株式会社ハイレゾ

#地方創生#脱炭素 2022.06.21

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【更新日:2022年6月24日 by 三浦莉奈

株式会社ハイレゾ(以下、ハイレゾ)は、2007年に東京都で創業し、2019年から石川県志賀町(しかまち)でGPU(※)専用データセンターを運営するスタートアップ企業です。

※GPU:Graphics Processing Unit、3Dグラフィックスなどを描写する際に必要な計算処理を行う半導体チップ

データ通信量は年々倍増していることに加え、昨今、AI・ディープラーニング等の需要が伸びていることから、それらの計算に特化したGPUサーバーやデータセンターの需要も拡大しています。

一方で、データセンターによる膨大な電力消費やITインフラの大都市圏への一極集中が課題とされており、日本政府も「グリーンエネルギーの活用」や「データセンターの地方分散」といった対策を打ち出しています。

ITインフラの持続可能な発展に向けて、ハイレゾが目指す脱炭素を実現するデータセンター運営についてご紹介します。

ハイレゾの事業

GPUに特化したサービス展開

ハイレゾは、石川県志賀町でGPUに特化したデータセンターの運営と、それを活用したクラウドサービス「GPUSOROBAN(ジーピーユー ソロバン)」を展開しています。

【提供】ハイレゾ

設立年 2007年12月
従業員数 約40名
資本金 9億5600万円(資本剰余金を含む)
事業内容 GPU専用データセンターの運営、GPUクラウドサービスGPUSOROBANの提供、広告事業

2022年6月現在*【参考】会社情報

国内最大級のGPUデータセンター

GPUとは「Graphics Processing Unit」の略で、主にゲームなどの3Dグラフィック処理をする半導体チップです。近年では用途が広がり、グラフィックだけでなくAIやディープラーニングに伴うビッグデータの計算にも活用されています。

【提供】ハイレゾ

ハイレゾではこのGPUに着目し、2019年からGPU専用のデータセンターを石川県志賀町で運営しています。世界でも珍しいGPUサーバーのみを設置したデータセンターで、一般企業のほか、AI研究を行う学術機関などにも広く利用されています。

2022年6月現在で同社のGPU稼働枚数は累計20,000枚を超え、GPU専用データセンターとしては国内最大級の規模を誇ります。

データセンターに最適な地域を選定

国内のデータセンターのうち8割が関東・関西圏に集中する中、なぜハイレゾは過疎指定地域である石川県志賀町に設立したのでしょうか。

同社は、データセンター運営を開始するにあたり、「日本でデータセンターに最も適した土地」にこだわりました。全国各地を調査した結果、サーバールームを冷やすために一年を通して冷涼な気候、北陸電力株式会社による安価で安定した電力供給、地震の少ない地盤環境、そしてきれいな空気であることを考慮し、石川県志賀町に決定しました。

ハイレゾのSDGsの取り組み

【提供】ハイレゾ

空調電力を90%削減、脱炭素を推進するデータセンター

ハイレゾが運営するGPU専用データセンターは、エアコンを使わないことで空調電力を従来の90%削減し、電力使用効率を示すPUEは国内最高水準の1.1以未満です(国内主要データセンターのPUE平均は1.4)。

2022年開設の第2データセンターでは、「違い棚屋根方式」と名付けた段差を用いた屋根による廃熱効率に優れた建築物としての意匠権と、外気とサーバーの廃熱を活用した温度・湿度調整に関する特許を申請しています。この仕組みにより、エアコンを使わないデータセンター運営を可能にし、消費電力をおさえることで温室効果ガス排出量を抑制。脱炭素を推進するデータセンターを実現しています。

【提供】ハイレゾ

過疎指定地域である石川県志賀町に新たな雇用を創出

2019年に開設した志賀町の第1データセンターでは、現地従業員として5名を採用しました。今後も現地採用を拡大する予定で、過疎指定地域に新たな雇用を創出しています。

また、石川県公式You Tubeチャンネルにおいて志倉代表へのインタビューが公開されており、「大都市圏で自分たちだけでがんばるよりも、一歩地方に出てみて自治体と協力することで、事業の発展性など多方面に広がる。」とベンチャー企業の地方進出における有用性を伝え、雇用および新産業の創出を呼びかけています。

【参考】石川県公式You Tube

外部からの評価

ESG関連有望スタートアップスに選定

ハイレゾは、日経BP社発行の書籍『スタートアップス 日本を再生させる答えがここにある』において、「ESG関連有望スタートアップス VC、CVCが選んだ92社」に選定されました。AI・IoTなどのサービス開発が大規模データセンターの活用を促しており、その膨大な消費電力と熱処理の必要性が大きな課題となっている中、省電力化と低コスト化を実現したGPUデータセンターの開発・運営が評価されています。

推薦者の東京理科大学イノベーション・キャピタルは「テクノロジーを活用した持続性のある社会基盤の形成と地域経済をけん引するITプラットフォーム構築をビジョンに掲げる国内唯一のGPUプラットフォーム提供事業者」として紹介しています。

地域経済牽引事業に認定

ハイレゾが石川県志賀町で運営するGPU専用データセンターによるサービスが、AI・ディープラーニング等の次世代技術の高付加価値化と生産性向上に寄与するものとして評価され、石川県より「地域経済牽引事業」に認定されています。

おわりに

ハイレゾではグリーンエネルギーに力をいれているほか、地方での雇用および新産業の創出にも貢献していることがわかりました。SDGsへの取り組みは大手企業が推進していることが多い中、中小企業が取り組んでいる実際の事例は、多くの企業にとって参考になりそうです。

AIやIoTの発展でデータセンターの重要性がますます高まる中、ITインフラの持続可能な発展を可能にするひとつの事例として、今後も注目していきたいと思います。

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