【更新日:2021年9月15日 by 三浦莉奈】
大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、幅広い印刷技術を持つことで有名な企業です。「未来が楽しみになってきた‼」というフレーズが印象的なテレビCMを見たことがある方も多いのではないでしょうか。このテレビCMでは「情報銀行」や「GREEN PACKAGING」などのDNPの製品やサービスが紹介されています。
DNPはSDGs目標達成にも積極的に取り組み、CSRマネジメントにも力を入れています。そのため多くの環境や人権の活動方針が設けられ、そこからDNPが目指す社会が見えてきます。
また、SDGsから逆算して考えられる、経済、社会、環境の3つの項目における事業リスクを導き出し、サステナブルな取り組みを事業にも取り込んでいます。
このページでは、DNPの事業内容をはじめ、SDGs戦略や活動まで、幅広く紹介していきます。
見出し
DNPのビジョン/事業
DNPの概要
1876年に創業したDNPは、終戦以降、出版・印刷事業以外にも紙器、軟包装、建材、ビジネスフォームなど幅広く事業を展開してきました。また高度経済成長に対応するために印刷技術を応用して布地、包材、建材、精密電子部品などを生産し、多くの分野で活躍の場を広げました。そしてIT社会や情報化社会に貢献するために、「情報コミュニケーション産業」を掲げ、インターネットやIPSをはじめとするソリューション型の事業に力を入れています。
DNPは2015年に「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」という新しい企業理念を発表しました。能動的に「変革」に取り組み、社会の課題を解決する「価値」を生み出すことを目標としています。
現在は情報メディアやコミュニケーション手段の変化に合わせた商品やサービスの提案・提供ができる企業を目指しています。
創業年 | 1876年 |
資本金 | 1,144億6,476万円 |
事業 | ①印刷事業 ②飲料事業 |
*2020年3月30日現在
DNPの主な事業
DNPの主な事業は、①印刷事業②飲料事業に分けられます。
①印刷事業
印刷事業は情報コミュニケーション部門、生活・産業部門、エレクトロニクス部門の3つによって成り立っています。
情報コミュニケーション部門
情報コミュニケーション部門は、出版メディアと出版流通の出版関連事業、マーケティングと情報セキュリティの情報イノベーション事業、写真プリントなどの「モノとコト(体験)」をつくるイメージングコミュニケーション事業で構成されています。
デジタルマーケティングの推進や、キャッシュレス決済関連事業の拡大に注力するほか、人手不足や働き方改革の対策のひとつとして企業の業務を代行するBPO事業などを推進しています。
主なサービス、事業
・印刷、加工
・情報セキュリティ
・マーケティング、セールスプロモーション、
・出版・電子出版
・企業コミュニケーション
・メディア企画 など
生活・産業部門
生活・産業部門においては、包装、生活空間、産業資材の3分野の事業で構成され、生活者の日常に密着した身近な製品・サービスを国内外に数多く提供するとともに、企業の製造プロセスに深く関わっています。
包装関連事業は、食品や飲料、日用品・医薬品などのパッケージの高機能化を目指すと共に製品の安定的な供給に努めています。
生活空間関連事業は、住宅や商業施設、医療・介護施設、自動車や鉄道車両の内外装材など、多様な空間をより多くの人に機能的で心地よいものにする製品・サービスを幅広く手がけています。
産業用高機能材関連事業は、リチウムイオン電池や太陽電池用の部材を生産しています。
その他にも、5G時代の到来など社会変動をとらえ、また環境問題などの社会課題に貢献する高機能フィルムなどを提供しています。
DNPは、これらの製品・サービスを、多くの人にとって使いやすいようにするために「ユニバーサルデザイン」と「インクルーシブデザイン」の2つを取り入れています。
DNPの製品やサービスをこれからもより安全や安心につながるものとして開発、提供しています。
具体的なサービス・事業
・食品、飲料向け包装材
・生活用品向け包装材
・ヘルスケア、ライフケアサイエンス
・独自の技術を使用した生活空間づくり
などの生活を支える製品・サービスを提供しています。
エレクトロニクス部門
エレクトロニクス部門では、ディスプレイ関連製品および電子デバイスの事業を国内外に幅広く展開しています。
第5世代通信規格(5G)のサービス開始によって、通信の超高速・低遅延・多接続などが実現し、IoTやAIなどの活用がさらに進んで、人々の生活をより豊かにする製品・ サービスが普及すると期待されています。
企業や人々のニーズの変化に敏感に対応し、機能性に優れた以下のような新たな製品・サービスを提供しています。
主なサービス、事業
・機能性フィルム
・産業部材、資材
・ディスプレイ部材、部品
・精密機器部材、部品
②飲料事業
DNPグループの北海道コカ・コーラボトリング株式会社が、飲料事業を展開しています。コカ・コーラブランドを活かして、独自の製品開発を行うほか、自動販売機事業、量販店向けの販売促進活動なども展開しています。
北海道コカ・コーラボトリング株式会社は、上記の画像のような有名な既製品だけでなく、北海道の豊かな自然や農作物を活かした北海道限定の製品も製造しています。北海道の「今」を見つめ魅力を伝えることに努めています。
【引用】http://www.hokkaido.ccbc.co.jp/
DNPの経営理念
DNPは「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」という企業理念を掲げています。
そして、この企業理念のもとに、事業ビジョンに「P&I イノベーション」を掲げています。
DNPは、社会の課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出を目指しています。
DNPは、自社のさまざま製品・サービスを生活者一人ひとりの身近に、「あたりまえ」に存在する「なくてはならない価値」にしていきたいという志をブランドステートメントとして「未来のあたりまえをつくる。」に込めています。
これからも変革を続ける社会に対応するために、変動要因となる気候変動や環境問題、新たな感染症などの多くの課題を解決することに努めています。
また、DNPは「DNPグループビジョン2015」というDNPグループの経営基本方針を定めています。
企業理念を中心として、事業ビジョンと行動指針の3つで構成されています。
DNPとSDGs
直接関係するSDGs
DNPが着目する社会問題
①文化活動の支援
DNPは多種多様な価値観を持つ人びとが認め合い、刺激し合い、新たな価値観を生み出せる社会を目指しています。その実現のためには「対話する文化」が必要だと考えています。
また、DNPは、「本業に近いところで息長く」をモットーにしています。そのため、印刷と深い関わりを持つ視覚芸術分野を人びとにとってより身近なものにするべきだと考えています。
主な活動
- 「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」、
- 「CCGA 現代グラフィックアートセンター」などのグラフィックデザイン、グラフィックアートの振興
- 「DNPミュージアムラボ」、「DNP京都太秦文化遺産ギャラリー」などのアートとの触れ合いの場の拡充
- アート、企画展の協賛
引用:https://www.dnp.co.jp/corporate/information/pdf/dnp_brochure_jp.pdf
②安心で安全な情報セキュリティのために
近年、多くのモノにセンサーが組み込まれ、直接インターネットに接続し、情報の収集や交換ができる「モノのインターネット(IoT)」が普及しました。それに伴い、人々の生活やビジネスのあり方が変化する可能性が高まり、豊かな時代が期待されています。その一方でサイバー攻撃やインターネットウイルスのリスクも増えています。実際に情報システムの停止や個人情報などの情報漏えいは問題となっています。
DNPはこの現状に対して、ICカードの技術を活かしてさまざまなデバイスのセキュリティ向上に努めています。
ICカード用と同じ水準の高セキュリティなICチップをIoT用デバイスに組み込むことで、個人認証やデータの暗号化に使用する個別IDや暗号鍵、電子証明書などの重要データをIoT 用デバイスのIC チップに安全に格納することができます。
DNPのSDGs戦略
DNPは新しい価値の提供を続けることで、社会的責任を果たそうとしています。
新しい価値とは、DNPが掲げる「P&I(Printing & Information)」の強みを継続的に発展させ、多様なパートナーの強みと掛け合わせていくことで、社会課題の解決に寄与することを示しています。
特に、経済・社会・環境に関する課題とリスクを正しく認識し、事業環境の細かな変化にも対応できるように心がけられています。
リスクや社会課題の特定の指針として、グローバルな社会課題やESGを分析し、経済・社会・環境の課題を広範囲に参考にしています。
これらの課題について、ステークホルダーの関心・影響やDNPにおける重要度の観点から、活動目標の設定を行っています。
DNPのSDGs取り組み
一部ではありますが、DNPのSDGsの取り組みを紹介します。
①脱炭素社会
DNPは、製品のライフサイクル全体でのGHG排出量の削減が重要と考え、DNPの製造段階だけでなく間接的に排出するサプライチェーン全体でのGHG排出量について、主要海外サイトを含めて算定し、削減に努めています。
DNPは原材料調達段階の排出量が最も多いため、主要サプライヤーに対し2025年までに
温室効果ガス削減目標の指標のひとつであるSBT(Science Based Targets)の取得を促すことで削減を推進していきます。
②環境型社会
DNPは、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)が2017年に6月に行った気候変動に関する情報開示促進の提言に賛同しています。
TCFDは2015年に、国際機関である金融安定理事会により設立されました。金融市場の不安定化リスクを低減するため、企業をはじめとする債券や株式の発行主体全てに対し、中長期にわたる気候変動に起因する事業リスクと事業機会を分析し、財務情報に反映させて開示することを提言しています。
このTCFDの提言に賛同することによって、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会についての透明性を保つことが可能になります。
「DNPグループ統合報告書」などのさまざまな手法を使い、気候変動関連の情報の開示を拡充できます。
③自然共生社会
DNPは、事業活動が生物多様性に影響を与えることを認識して、生物多様性に対する社会的責任を果たすことにより、持続可能な社会の実現を目指しています。
2010年3月に「DNPグループ生物多様性宣言」を定め、本格的な活動をスタートしました。製品開発、原材料調達、製造、販売、使用、廃棄などの事業活動における生物多様性との関わりを検討し、重点テーマとして「原材料の調達」と「事業所内の緑地づくり」の2点を選定し、取り組みを強化しています。
外部からの評価
①CDP
気候変動などの環境分野に取り組む国際的な非営利団体であるCDPが、企業のサプライチェーン全体での気候変動や温室効果ガス排出量削減への取り組みについて調査・評価するものです。
DNPはCDPによるサプライヤーエンゲージメント評価において、最高評価のリーダーボードに2年連続で選出されました。
②なでしこ銘柄
「なでしこ銘柄」とは、経済産業省が東京証券取引所と共同で、2012年度より女性活躍推進に優れた上場企業に与えられる賞です。
なでしこ銘柄は、「女性活躍推進」に優れた上場企業を「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することを通じて、企業への投資を促進し、各社の取組を加速化していくことを狙いとしています。
DNPは、「準なでしこ」という「なでしこ銘柄」に準ずる企業として選定されました。
この「準なでしこ」とは企業の将来的な成長を期待する観点から、2016年に制定されました。
まとめ
高度な技術によって多くの情報を共有し、円滑にコミュニケーションをとることができるようになりました。しかし、わたしたちの大切な情報は危険と隣り合わせということを忘れてはいけません。
印刷技術のみならず、幅広い事業を展開するDNPが提供する「新しい価値」がこれからどのようにSDGs目標達成及び、社会環境に影響を与えるのか非常に楽しみです。