【更新日:2021年9月15日 by 三浦莉奈】
大成建設株式会社(以下、大成建設)は、日本や海外にさまざまな事業を展開している総合建設会社です。
大成建設は、特に橋梁などの大型土木建築において有名です。東京2020オリンピックで話題になった、国立競技場「杜のスタジアム」は大成建設が施工しました。
大成建設はSDGsを通してさまざまな企業活動を行っています。私たちが生活をする上で欠かせない、建設会社の強みを活かした大成建設のSDGs戦略とはどのようなものでしょうか。
このページでは、大成建設の事業内容をはじめ、SDGs戦略や企業活動、外部からの評価まで、幅広く紹介していきます。
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大成建設のビジョン / 事業
大成建設株式会社の概要
大成建設は1917年に創業されました。社名である「大成」は創業者の大倉喜八郎にちなんでおり、「孟子万章下篇(衆の長所を集めて一大長所をつくる)」という「集大成」の意味を持ち、完全に成し遂げること、多くのものを集め作りあげることに通じることから、採用されました。社名に「建設」の文字を採用したのは大成建設が最初で、その後他社もこれにならって「建設」と名乗るようになりました。
大成建設株式会社の事業内容
大成建設の事業内容は多岐にわたります。ここでは一部ではありますが代表的な事業を紹介していきます。
・土木
トンネル・橋梁・ダム・鉄道・高速道路等の土木工作物の建設工事など
・建築
空港・マンション・オフィス・商業施設・工場・学校・病院などの建築物の建設工事など
・開発
再開発事業・PFI事業・プロパティマネジメント、自社開発・マンション分譲など
設立年 | 1917年(大正6年)12月28日 |
従業員数 | 8,572名(2021年3月31日現在) |
資本金 | 122,742,158,842円 |
事業 | 国内外における建築・土木の設計・施工、環境、エンジニアリング、原子力、都市開発、不動産など |
大成建設株式会社の経営理念
大成建設は「For a Lively World」というグループスローガンを掲げています。
グループスローガンは以下のことを象徴的に一言で表現したものであり、ピラミッド型になっています。
グループ理念:人がいきいきとする環境を創造する
大成スピリット:自由闊達 価値創造 伝統進化
行動指針系:組織としてグループの役員が実践すべき、また守るべき行動判断の基準
経営計画系:事業活動の具体的な実行計画として定めた、中期経営計画
大成建設株式会社のSDGs戦略
大成建設はSDGs戦略として8つのマテリアリティを定めています。マテリアリティとは、大成建設グループが社会と共に持続的に成長するために取り組むべき重要な課題として、SDGsなどのグローバル課題の解決とグループの理念体系をむすびつけ価値創造につながるものであり、事業活動の基盤となるものです。
【マテリアリティ(取り組むべき重要課題)】
①持続可能な環境型配慮社会の実現
②品質の確保と技術の向上
③持続可能な社会の実現に向けた技術開発
④サプライチェーン・マネジメントの推進
⑤労働安全衛生管理の徹底
⑥技術者の育成・担い手の確保
⑦働きがいのある魅力的な労働環境の実現
⑧コンプライアンスの徹底
グループガバナンス体制の再構築
大成建設株式会社のSDGsの取り組み
では、大成建設が具体的にどのような取り組みをしているのか、一部ご紹介していきます。
TAISEI Green Target 2050
主に対応するSDGs目標:13「気候変動に具体的な対策を」
大成建設では、地球温暖化等の世界規模の環境問題に対して、「TAISEI Green Target 2050」を掲げ、環境問題に関する取り組みを推進しています。
中でも特に、ZEB(ゼロエネルギービルディング)の普及を積極的に展開しています。ZEBとは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。
これまでに、テナントオフィスビルで国内初となるZEB Ready認証取得や、公共研究施設での国内初のNearly ZEB認証取得に携わるなどの豊富な実績に加え、2014年に建設した研究施設にてZEB認証を取得、2016年に支店社屋(大成札幌ビル)にてリニューアルによるZEB Readyを実現しました。また、その取り組みを推進するため、国内初となる、仮設作業所事務所におけるZEB Ready認証を取得すると同時に5段階評価の最高ランクを獲得しました。
これらの作業所事務所においては、仮設建築物でありながら断熱性能の向上に加え、高効率な空調システム・LED照明・自然採光などの省エネ化技術を導入することで、標準的な建築物と比べて、一次エネルギー消費量を52%~54%削減しました。
【参考】国内初 仮設作業所事務所としてZEB Ready 認証を取得 | 2019年度
TAISEI Sustainable Actionポイントシステム
主に対応するSDGs目標:13「気候変動に具体的な対策を」
大成建設は、業界で初めてとなる建設現場における環境負荷低減活動の取り組み状況を定量的に見える化するシステム『TAISEI Sustainable Actionポイントシステム』を構築し、24箇所の建設現場で先行して運用を開始しています(※2020年12月14日現在)。
今後はこのシステムを全ての現場に導入し、持続可能な環境配慮型社会の実現のために掲げた「TAISEI Green Target 2050」の実現を目指しています。
2018年に、2050年の目標達成に向けて具体的な活動内容をPDCAで示した、『TAISEI Sustainable Action』(以下、TSA)を掲げ、全社員が参画する活動として展開しています。このTSAの活動を加速させるツールが、『TAISEI Sustainable Actionポイントシステム』です。システムを用いることにより、取り組み成果が定量的に評価出来るため、環境目標達成に向けた、より効果的な活動の推進が期待できます。
■概要
PLAN
「TAISEI Green Target 2050」の4項目において、具体的な取り組み事例をまとめた「アクションリスト」から、建設現場で出来るものを選択し各項目で工事着工時に「目標設定」を行います。
DO
工事施工時は、設定した目標に基づき、環境負荷低減活動を実施します。
CHECK
工事竣工時に、選定した項目ごとに「実施評価」を行い、「ポイントシート」に結果が表示され、活動効果が「見える化」されます。定量的な評価により、社員への浸透に加え、効果的な活動の展開、推進が図れます。
ACTION
各項目の取り組み事例を収集するとともに、高ポイントを獲得した活動については積極的に水平展開を図ります。
【参考】業界初 建設現場での環境負荷低減活動評価システムの運用開始 | 2020年度
TAISEI Creative Hub
対応するSDGs目標:8「働きがいも経済成長も」
また、大成建設では魅力的な職場環境を実現する『TAISEI Creative Hub』の取り組みも展開しています。『TAISEI Creative Hub』とは、社員一人ひとりが働きがいのある魅力的な職場環境を実現し、SDGsのターゲットの一つである健康経営を推進するとともに、人と人を結び付けるHubとしての機能を加え、新たな顧客および社会の価値創造につながるイノベーションを生み出すための空間と位置付けています。
欧米では、個人が仕事を行うために最適な職場環境を選択できるABW(Activity Based Working)の概念が注目され、国内でも健康経営や働き方改革につながる新しい勤務形態として導入する企業が増えてきています。そこで大成建設では、ABWの概念を取り入れた『TAISEI Creative Hub』の取り組みを推進し、以下の3つのワークプレイスを構築することで、魅力ある働く環境づくりを目指しています。
①都心型ワークプレイス:「クリエイティブメディアラウンジ」(本社オフィス)
オフィスに求められる様々な機能を盛り込んだ多様な空間を組み合わせた、情報発信を主体としたワークプレイスです。働く人個人のワークスタイルに合わせた働く場の選択が可能で、新たな出会いや発見の場を提供します。組織の垣根を超えたつながりを持ち、様々な方々とも交流できるような多目的スペースとして展開していく予定です。
②郊外型ワークプレイス:「オープンミーティングスペース」(技術センター)
オープンテラスのような空間で、人と人との交流を主体としたイノベーションを創出するワークプレイスです。郊外型ならではの気持ちの良い屋外空間を整備し、隣接する屋内空間と共に、利用者がその時々に合わせて選択できるよう考えられています。
③仮設型ワークプレイス:「ウェルネス作業所」(建築・土木作業所)
建設現場での生産性向上を主体としたワークプレイスです。作業所で働く多様な人達が利用し、建設現場の作業状況などの情報を幅広く提供します。社員全体の約半数が現場勤務という状況の中、最前線の作業所環境においても同様な姿勢で取り組んでいきます。
ウェルネス作業所においては、100に及ぶ「ウェルネスレシピ」を用意し、作業所長がその環境に応じて選択できるように考えています。社員だけでなく、現場で働く専門工事業者の方との交流促進も図っていきます。
【引用】魅力的な職場環境を実現する『TAISEI Creative Hub』の取り組みを開始 | 2019年度
外部からの評価
大成建設のサステナブルな取り組みは外部からも評価されており、世界各国のSRI(Socially Responsible Investment)指数に組み入れられています。
・MSCI ESG Leaders Indexes
・MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数
・MSCI日本株女性活躍指数
・S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数
・SBT認定取得
【参考】外部機関からの評価 | 社会からの評価/ガイドライン
まとめ
建物という大きなものを通して持続可能な未来を目指すことは、他の業界よりも時間やコストがかかると思います。しかし、大きなものだからこそ、変えることができれば日本の、世界の環境はスピードを増して良い方向へ変化していくと確信しました。
生きるために必要な衣・食・住の「住」の部分で日本のSDGsを引っ張っていく、大成建設の今後に目が離せません!