リユースから廃棄物の削減まで|ブランディアの“二重の循環”

#SDGs目標12#再利用 2022.03.28

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

近年、国内ではリユース市場がますます熱を帯びている。

メルカリなど中古品をスマートフォンから気軽に売買できるCtoCマーケットプレイスもリユース業界の発展に拍車をかけ、SDGsにも大きく貢献している。

現にリサイクル通信のリユース市場規模推計によると、2020年の市場規模は前年比2.5%増の2.4兆円であり、2009年以降11年連続での市場拡大となっている。

今回は、既存のリユース事業だけではなく、その先にある廃棄物削減の取り組みも積極的に行っている、ブランディアの代表取締役社長 仙頭さんにお話を伺った。

モノの価値の循環へ|ブランディアの基盤

ーー自己紹介をお願いします。

ブランディア代表の仙頭と申します。
18年目に入るブランディアの主な事業は買取販売事業です。

ブランディアの特徴は、昔から日本で行われている質業やリユース品買取のDXをいち早く推進してきた点です。

これまでの買取事業は店舗への持ち込み型が主流でした。しかし、ブランディアではインターネット上で申し込み、届いた段ボールに売りたいものを詰めて送るというオンラインで完結するリユース買取を行っています。

ーー近年買取市場には、メルカリなどのCtoCマーケットプレイスも進出し、業界の風潮もかなり変貌してきたかと思います。その中でもブランディアが成長し続けている理由は何なのでしょうか?

大きく3つの理由があると考えます。

1つ目は1回の出品に対する費用です。

ブランディアの主流事業である宅配買取は、従来の店舗買取と単価面での違いが大きく異なります。

宅配買取では段ボールに商品を詰めていただくので、段ボールに詰められる限りユーザーの方は商品を出品できます。そのため、もともと売ろうとしていた商品の他に、段ボールに余裕があれば追加の出品もできますし、1回当たりの出品単価がブランディアの宅配買取では抑えられるのです。

2つ目は取り扱い商品の幅広さです。

店舗買取は、高額ブランド商品に絞って買い取るケースがほとんどですが、ブランディアでは7000ブランドの商品を扱っており、価格帯が低いものも含め幅広い商品を取り扱っています。

3つ目はターゲットの明確さです。

メルカリやラクマなどのCtoCのマーケットプレイスが出てきたことによって、食い合ってる部分も正直あります。しかし、CtoCでは自分で交渉や発送手続きをする必要があるので、その点を面倒だと感じるユーザーにとってブランディアの宅配買取サービスは魅力的なものになると考えています。

CtoCとの差別化ができている点もブランディアが成長を続けている1つの要因だと考えています。

また、未だ多くの方が買取サービスを使ったことがない状況でもあるので、業態全体が盛り上がること自体に意味を感じています。

ーーSDGsへの注目のきっかけを教えてください。

リユースで物に価値を与えるというブランディアのビジネスモデル自体が、環境を意識しています。そのため「SDGsが話題になっているから注目した」というより「ブランディアの事業がSDGsに適っていた」と言えると思います。

そこを踏まえた上で、株主やステークホルダーへ事業内容や活動内容を日々発信し、社会におけるブランディアの価値を明確にすることを心がけています。

また、私自身がもともと大学で環境や植物の専攻をしていたこともありますが、環境配慮などは各企業が当たり前にやらなければいけないものだと考えています。

ーー近年注目が集まるサーキュラー・エコノミーでは、物の価値をいかにして継続して高められるかに注目が集まっています。仙頭さんの考える「物の価値」とは何ですか。

よく「クローゼットに眠っている資産」という表現がありますが、結局その資産は使わなければ時間が経つにつれて痛んでしまい、価値も落ちてしまいます。

そうした資産をブラディアが適正な価格で査定し、他の人に繋いでいくことで、はじめて眠っている資産に価値を与えられると考えています。この役割をブランディアが提供していきたいです。

▼サーキュラーエコノミーに関する記事はこちら

廃棄物削減の仕組み|ブランディアの取り組み

ーー2030年までに廃棄ゼロという目標を掲げていますが、その背景を教えてください。

ブランディアのビジネスモデル上、タグが切られてしまっていたり、販売できるクオリティではないものなど、どうしても買い取れないものもあります。これまでそういったものは廃棄をしていたのですが、サステナブルという観点から見ると廃棄ゼロは必須事項であると考えました。そこで2つの方法で廃棄ゼロを目指すことにしました。

1つ目は、そもそもユーザーに対して廃棄品を生み出さないように情報発信をしていく方法です。例えば先ほどお伝えしたように、タグが切られているものは廃棄対象になってしまいます。この事実をユーザーに伝えていくことで、廃棄品を削減し、多くの商品が循環しやすい環境を作れると考えています。

2つ目は、送られてきたものを有効活用できる仕組みをつくる方法です。例えば、服飾学校へ素材として廃棄対象の商品を提供し、授業やリメイク活動にあてていただいています。また、ブランディアの実店舗にはPANECOという廃棄衣料でつくられた壁を利用しています。

ーーPANECOに関して詳しく教えてください。

PANECOはワークスタジオというデザイン会社が開発した素材になります。

廃棄ゼロを目指す上で廃棄物の有効活用方法を模索していたところ、PANECOを見つけました。廃棄物の有効活用方法として燃料活用できるものなどもありますが、多くは事前の仕分けや素材の選別があり、どうしてもハードルが高くなってしまいます。

PANECOの場合、素材に関係なく粉砕したものを圧縮してボードにします。素材の選別が必要ない点でブランディアが求めていた形と一致したため、提携させていただきました。また、ただ廃棄物をワークスタジオに無償で提供するだけでは最終的な責任を果たしきれていないと考え、実店舗に壁として使用することになりました。この取り組みの1店舗目が吉祥寺店です。

PANECOを使用した、吉祥寺店のテーブル・壁【提供:ブランディア】

吉祥寺店の様子【提供:ブランディア】

ーーその他のSDGsの取り組みなどはありますか?

働き方に関しては、新型コロナウイルス感染症がきっかけではありますが、国内ではかなり早い段階でリモートワークを取り入れました。

他社では、「週〇日はリモート」というような取り決めがあると耳にしますが、一番大切なのは企業が成長しやすい環境を働き方としてどう作っていくかだと考えています。働き方に関しては引き続き取り組んでいく予定です。

その他にはランドセルを外国の子どもたちへ寄付をする活動も行っています。日本にはあまり寄付文化がないかと思いますが、買取事業のノウハウも活かしながら取り組んでいます。

データで顧客に価値を還元|ブランディアのDX

ーー循環型社会を作るうえでデータ活用が非常に重要だと感じます。その点ブランディアではDXにも力をいれていると伺いました。DXを進めた背景を教えてください。

私のファーストキャリアがエンジニアだったためデジタル活用が早かったのかもしれません。
エンジニア時代の顧客は企業など、いわゆるtoBでした。その中でtoC向けのサービスを作りたいと考えるようになりました。

その後、さまざまなベンチャー企業の代表と会う機会を徐々に作り、現在ブランディアも属しているBEENOSグループのネットプライスという企業の代表と出会い入社、エンタメ支援やIPを活用したグッズの製作・販売をする会社を立ち上げました。その後、DXに力をいれたtoC向けの宅配買取サービス、ブランディアの代表に2019年に就任し、SDGsの取り組みやグローバルも射程にいれたデータ分析を促進しています。

ーーDXに力を入れることで差別化にも繋がりますよね。

ブランディアでは1日に約10000点の買取商品が届きます。ここまでの規模感の同業者はおそらくいないと思いますし、グループと社内どちらにもデータサイエンティストが属している分析チームも存在しています。

大規模なデータをDXでうまく活用し、ユーザーに還元できてくると本当の意味でユーザーに「価値」が戻っていくと考えています。

またブランディアの「データ」は将来的には他社でも生かせていける武器だと思ってます。

リユース商品の中には、モノによって国内より海外で販売した方が2〜3倍高く売れるものも意外と多くあるんです。しかし、カスタマーサポートの全言語対応などの問題などもあり、国内でしか販売できない事業者は数多く存在している状況です。こうした事業者も巻き込んだ世界展開も視野にいれています。

ーーDXに関して何か新しい取り組みなどはありますか?

ブランディアBellを2020年7月から開始しました。

ブランディアBellはオンラインで査定をし、金額に納得いただけたら商品を送っていただくサービスです。

特徴は、来店しなくても店舗と同様のサービスを受けられる点と即金であるという点です。宅配をやっている上で難しかったところが、高額の商品の取り扱いでした。売るかどうか決めていない高額商品を送ることに抵抗感を持つユーザーも少なくないんです。こうした課題を解決するためにブランディアBellを作りました。

店舗が近くになく、高額商品の査定を話して決めていきたいというニーズに応えられていると思います。

「もったいない」を世界へ|ブランディアの今後の展望

ーーブランディアの今後の展望などがあれば教えてください。

長期のビジョンとして、海外展開していきたいと思っています。
これまでは国内で売買をしていましたが、今後はこれまでのノウハウを活かして海外展開に注力していきます。現在でも欧米や中国、東南アジアなど、海外展開はかなり広がっています。

近年中国などを始め、世界中で買取サービスの需要がますます高まっています。実際に、世界のリユース企業の時価総額も高くついていますし、数字としても期待値の高さがうかがえますが、どの国においても買取サービスの供給が足りていないと感じます。

「もったいない文化」などによりリユース業界が進んでいる日本から、世界に買取事業を提供し、さらに価値を見出していきたいです。また、将来的には海外比率を50%にまで持っていきたいと考えております。

さいごに

インタビューを通して、ブランディアは「リユースというビジネスモデル」と「そこから出る廃棄物の再利用」という二重の循環で構成されていると感じた。

さまざまな角度からモノへ価値を与えていくブランディアの姿勢は、持続可能な社会を目指す上で欠かせない。

モノで溢れる今の世の中で、改めてモノに対して思考を深める重要性を感じた。

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