「コンビニが地域を活性化する」|ファミリーマートのまちづくりは子どもから

#SDGs目標11#SDGs目標2 2021.12.17

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

国内外に約25000店舗を展開しているファミリーマート。

創業から40周年を迎えたファミリーマートでは「ファミマる。」を合言葉に「40のいいこと!?」キャンペーンを実施している。40年経った今でも新たな挑戦にのぞむファミリーマートだが、そこには創業当時から変わらぬ「あなたと、コンビに」を軸としたパートナーシップの想いがあった。

2021年10月19日、ファミリーマートの新プライベートブランド「ファミマル」が登場した。さらに「スプーンのプラスチック使用量約12%削減」や「食品ロス削減」などの環境にも配慮した取り組みも実施している。

今回はサステナビリティ推進部 CSR推進グループの大澤氏を取材した。今や地域コミュニティに欠かせないコンビニの存在意義から、ファミリーマートが考えるSDGsへの想いや具体的な取り組みまでを伺う。

JR渋谷駅に掲示された交通広告【撮影】SDGs CONNECT編集部

地域社会の「家族」に|SDGsの推進体制

ーー自己紹介をお願いします。

ファミリーマート サステナビリティ推進部 CSR推進グループの大澤と申します。2019年の3月に着任し、2021年で3年目です。

1997年に入社しました。ファミリーマートは統合や合併を繰り返してきているのですが、サークルケイ・ジャパンという会社に入社し、10年ほど経ったところでサークルKサンクスという会社になり、その後2016年にファミリーマートとの経営統合をきっかけに今に至っています。

ーーコンビニは配送の受け取りからATMの利用など、さまざまな利用方法が拡大しています。社会の中でコンビニはどのような存在ですか?

コンビニ業界は大手チェーンの寡占化が進んでいます。

それぞれのチェーンは知名度もあり、大きな会社という印象があるかと思いますが、一つ一つの店舗の規模は小さく、地域の中で経営を営む小規模商店の集まりなんですよね。

そういった意味では、コンビニは地域のお客さまの声を聞いていかないと成り立ちません。

例えば、「あそこのファミリーマートとここのファミリマートはちょっと違うな」と思ったことがあるかもしれません。それは、地域のお客さまのニーズを読み取り、品揃えやレイアウトなどを、それぞれのお店が工夫した結果なんです。

ーーサステナビリティ推進部はいつ頃からできた部署なんですか?また、どのような組織になっているか教えてください。

サステナビリティ推進部という名前になったのは2020年からです。それまではCSR総務部として活動していました。SDGsへの共感の広がりなど、持続可能な社会を形成することへの意識が高まりつつある今の社会環境に適しているのは、「サステナブル」という呼称ではないかという考え方から部署名が変更になりました。

ファミリーマートは、いろいろな商品を取り揃えて販売をしたり、さまざまなサービスを提供したりすることで、みなさんの生活のお役に立てるように努めています。そこからもう一歩進んで社会やお客さまとの距離をもっと縮めていくためにも、サステナブルを意識した取り組みを専門の部署で進めています。

サステナビリティ推進部の中には、「環境推進グループ」「ダイバーシティ推進グループ」「CSR推進グループ」の3つのグループがあります。

環境推進グループでは、環境に関する政策の企画と推進に取り組んでいます。例えばファミリーマートが2020年に制定した「ファミマecoビジョン2050」に沿って目標達成をしていく計画づくりなども環境推進グループのミッションとなります。

また、近年は外国籍の方や幅広い年齢層の方など、従業員の層が多様化しています。ダイバーシティ推進グループではこのような多様性のある従業員の方たちを受け入れて育てていくシステムづくりなどに取り組んでいます。

CSR推進グループでは、具体的には「ファミマフードドライブ」、「ファミマこども食堂」、「ファミリーマートありがとうの手紙コンテスト」などの活動を担当しています。

ーーCSRの時代からSDGsの時代に進化した今、企業のあり方はどのように変わっていると思いますか?

SDGsは企業活動と密接に結びついているものだと思います。いいことをプラスアルファでやっているような感覚ではありません。

社会の意識が変化しつつある現在、SDGsに真摯に取り組まなければ、競争に負けてしまったり、お客さまに選んでもらえなかったり、これからの企業としては、(社会の中に存在する)資格がなくなってしまうと強く感じています。

店舗の経営者の中にも、お店が地域に根付いて商売していくためにはSDGsの視点が必要と捉えている方が、とても増えていると思います。

ーーCSR推進グループでは、「ファミマこども食堂」や「ファミリーマートありがとうの手紙コンテスト」など子どもへの取り組みが多くなっています。なぜファミリーマートでは子どもを中心とした活動に取り組んでいるのでしょうか。

「あなたと、コンビに、ファミリーマート」というコーポレートメッセージにもある通り、私たちは、地域の中で家族のような存在になることを目指しています。

その中でも未来を担う子どもたちへの支援を大事にすることが、持続可能な社会を実現することにつながると考えています。

たとえば、地域に密着していくにあたり、地域社会の中核とも言える学校との連携は非常に重要だと考えています。そこで「ファミリーマートありがとうの手紙コンテスト」など子ども向けの活動をご紹介し、多くの子どもたちに参加していただいています。それによって、ファミリーマートと学校のつながりが生まれ、地域コミュニティとのつながりをより強固なものにすることができます。

子どもたちとの繋がりができれば、自然と家族の方との繋がりにも広がっていきます。地域コミュニティと密接に関わっていきたいという店舗では、このような取り組みに前向きな場合が多いですね。

【出典】ファミリーマート基本理念

子ども中心の地域コミュニティの形成|実際の取り組み

ーー「ファミマこども食堂」のきっかけを教えてください。

ファミリーマートでは未来を担う子どもたちへの支援、また地域の抱える課題解決に取り組んでいます。こども食堂はファミリーマートのビジョンと共通するものがあると考え、テスト開催など半年ほどの試行錯誤を重ね、2019年4月から取り組みを開始しました。

一般的にこども食堂というと、相対的に貧困の立場に置かれている子どもたちに対しての支援など、社会的な要素の強い活動をイメージされるかもしれません。しかし「ファミマこども食堂」では、誰でも気軽に参加できるような「子どもが安心できる居場所」、「オープン型の地域交流の機会」というスタンスで取り組んでいます。

取り組み開始直後は実施店舗もなかなか増えませんでしたが、子どもたちが夏休みにさしかかる6月、7月あたりから実施店舗が急激に増えました。

「ファミマこども食堂」の様子

ーー「ファミマこども食堂」では地域の子どもたちに「楽しく食事が出来る場所」と「地域との交流の機会」を提供しているとのことですが、具体的な内容を教えてください。

「ファミマこども食堂」では、店舗内のイートインスペースを活用して、食事をしながら参加者同士の交流を深めていただきます。

また、目的の1つに地域の交流活性化があるため、ただ食事をするだけではなく、レジ打ちや商品陳列など簡単な業務を体験していただく職場体験プログラムをご用意しています。積極的にチャレンジする子どもたちの姿を見て、親子の間だけでなく、参加者同士の交流の場にもなっています。

ファミマこども食堂【引用】こども食堂|CSR・社会・環境|ファミリーマート

ーー「ファミマフードドライブ」のきっかけを教えてください。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で「ファミマこども食堂」の開催を自粛せざるを得なくなりました。同様に、全国各地でNPO等が実施しているこども食堂も活動の縮小や休止を余儀なくされる中、自らこども食堂を開催してきたファミリーマートとして、各地のこども食堂の活動継続につながるサポートが出来ないかを真剣に検討しました。コロナ禍で、食品の調達に困っているこども食堂が増加しているとお聞きしたことから、全国各地に店舗があり、いつでも気軽に立ち寄れるというコンビニならではの特徴を生かした食品寄附の取り組みとして「ファミマフードドライブ」をスタートさせることになりました。

「ファミマフードドライブ」は、店舗が食品寄付の受付窓口となり、その地域で活動するNPOや社会福祉協議会に協力していただきながら支援が必要な方に食品をお届けする、地域の方々による地域内の支え合いを実現する地域密着型の取り組みです。

「ファミマフードドライブ」の様子

ーー実際にどれくらいの食品が集まったのでしょうか。また、反響などの効果について聞かせてください。

開始してから半年間で2.3トンの寄付をいただきました。実施店舗も11月には全国で700店舗を超え、今後も実施店舗は増えていく見込みです。

米やレトルト食品、パスタ、缶詰、お菓子、飲料などが多く寄付されています。

ファミマフードドライブ【引用】ファミマフードドライブ

ーーこのような取り組みを実施するにあたり、苦労されたことはありますか。

社内の理解の獲得です。

「ファミマこども食堂」や「ファミマフードドライブ」の取り組み店舗を増やしていくためには店舗と本社を繋ぐスーパーバイザーといわれる社員に理解を深めてもらう必要があります。当初は、売上や利益に直結しない取り組みへの関心が低く、時にはスーパーバイザーがこのような取り組みを販促イベントと勘違いして各店舗に呼びかけを行ってしまうこともありました。

店舗を盛り上げようとすること自体は悪くないのですが、本来の趣旨をはき違えないように進めていくことに注意しています。お客さまや地域社会とのつながりを深め、信頼関係構築に結び付く取り組みであることを社内に粘り強く訴え、理解を獲得していきました。

「ファミマこども食堂」や「ファミマフードドライブ」には、「いつまでに何百店で開催する」といった数字の目標が一切ありません。これらは、誰かにやらされるものではなく、趣旨に賛同した店舗が自発的に取り組むべきものだと考えています。結果的に、全国で開催に賛同してくれる店舗が数多くいらっしゃることは、地域とつながることの価値を重視する経営者の方々の想いの表れと受け止め、非常に心強く、また大変ありがたく感じています。

地域の個人商店と便利さの両立へ|今後の展望

ーーこれからの社会の中でのコンビニの存在はどのように変わっていくと思いますか?

コンビニの強みの1つは仕組み化だと思います。全国どこのお店に行っても、期待した商品があり、期待したサービスが受けられるのは非常に大事なことだと思います。限られた時間を有効活用したい、気軽に買い物したい、そんなお客さまのニーズにお応えする形で、仕組み化を突き詰めた一つの方向性としてセルフレジや無人店舗化という形があります。

一方で、小売業では人と人との交流が重要だと思っています。店員さんと何気ない会話があったり、イートインでお客様同士が楽しく話したり、学生さんが待ち合わせをするなど、機能だけではない価値がお店にはあると思っています。

お客さまのニーズにお応えするという意味では、どちらも大切。これからは、便利さをさらに磨くことと、地域交流の活性化拠点としての価値を大切にすること、そのどちらも両立させていく必要があると思っています。

その中で、私たちがやっていることは、まさに人がいるからこそ実現できることです。地域社会の中で役に立ちたいというマインドを持った経営者やスタッフの皆さんの存在があるからこそ、SDGsの取り組みが実現できるのだと思います。

ーー今後の展望を教えてください。

「ファミマこども食堂」や「ファミマフードドライブ」のような取り組みは売上には直接結びつかないことかもしれませんが、それでもこれらの取り組みに賛同してくださる店舗が増えているのは、このような活動に価値を感じる方々が増えているからだと思います。

これからは、企業としてSDGsへどのように取り組むかが問われる時代です。就職活動中の学生は、企業選びの際にSDGsへの取り組み姿勢を見ていると思いますし、小学生も授業を通してSDGsについて勉強されています。そのためSDGsを基本的な価値観としている方が増えていると感じています。

だからこそ、取ってつけたような取り組みではなく、暮らしに直結する形でSDGsに取り組むことで、会社やビジネスの印象も変わると思います。

今後は新型コロナウイルス感染症の状況を慎重に考慮しながら、「ファミマこども食堂」の対面開催を復活させていきたいと考えています。また、「ファミマフードドライブ」のように、時々の社会課題に応じ、その解決のお役に立てるような取り組みを様々なパートナーの皆様の協力をいただきながら、ともに実現したいと思っています。

おわりに

「全国展開」と「各店舗の地域への密着」というファミリーマートの両側面の強みを活かして、地域活性化をコンビニから盛り上げていく姿勢が見られた。

ファミリーマートの子どもを中心とした地域との関わり方は、まさに「地域の家族」になるための第一歩である事を認識できた。

今回のインタビューでは、自社の強みや理念などをSDGsや社会課題解決と、どのようにすり合わせて、どのように向き合っていくのかが企業にとって非常に重要であると感じた。

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