【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈】
※Facebook社は2021年10月28日(米国時間)に社名を「Meta」にすると発表したが、日本法人Facebook Japan株式会社は当面の社名変更の予定はない。記事内では、従来のFacebook社をMetaと表記し、Facebook Japan株式会社はFacebook Japanと記載する。
スマートフォンの台頭と同時に、FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSの利用者は急増。ICT総研によると日本のSNS利用者は7,975万人(普及率80%)で2022年末には8,241万人へ拡大すると予測されている。
SDGsに注目が集まり、持続可能な社会を目指して、パートナーシップを深めていくことが求められる今、SNSを通じた発信や連携も重要性を増している。
世界中で29億1,000万人※に利用されているFacebookを有するMetaは、コミュニティを通じたSDGs実現に向けて取り組んでいる。
※2021年9月時点での月間アクティブ利用者数(MAU)
Facebook Japanは2021年9月16日に「SDGs診断~あなたに合ったSDGsアクションは?~」「Re-labelingプロジェクト」を発表した。
「SDGs診断~あなたに合ったSDGsアクションは?~」は簡単な質問に答えることで、その人にあった活動を行っているFacebookコミュニティを見つけることができる。SDGsアクションを自分事化する第一歩につながる取り組みだ。
Re-labelingプロジェクトは、「こども食堂は貧しい子どもだけが行く場所だ」という誤ったイメージを払拭し、「多世代交流が行われる地域に開かれた居場所」「空腹を満たすだけではなく、地域の大人との交流の場を創出し、食事を含むさまざまな体験を通して全ての子どもに『人としての豊かさ』を提供できる場所である」といった正しいイメージを広げるきっかけづくりを目的としている。
Facebook JapanはSDGsに対してどのような考えを持ち、取り組んでいるのか。
今回はFacebook Japan 広報統括の森村氏への特別インタビューの様子をお届けする。
見出し
すべての根底にあるのはMetaのミッション
ーーまずはじめに、森村さんの自己紹介をお願いいたします。
森村:Facebook Japanで広報統括をしております、森村と申します。
企業広報や当社が提供するプラットフォームの製品や機能、テクノロジーに関する広報を含め、メディア、政策立案者、さらにはプラットフォームをご利用いただいているビジネスや利用者といった、様々なステークホルダーに向けた対外的なコミュニケーションを幅広く担当しています。 |
ーーVR分野に進出されるなど、SNSを超えた事業拡大に取り組むMetaですが、どのようなビジョンやミッションを掲げているのでしょうか。
森村:Metaは「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」というミッションを掲げています。すべてのサービス・機能・取り組みの中で、いかにこのミッションを実現できるのかということにフォーカスしながら、社員一人ひとりが日々業務を遂行しています。
Facebook Japanでは、このミッションのために「社会・経済への貢献」「安心安全な環境づくり」「イノベーション」という主に3つの注力分野を設けています。 |
ーー今後、Metaの事業としてはVRやARが一番大きな柱になってくるのでしょうか?
森村:そうですね。CEOのマーク・ザッカーバーグも、先日新しいコーポレートブランド「Meta」を発表した際に、人々が仮想空間の中で自由に行動できるメタバースの実現に力をいれると申し上げました。
メタバースは、さまざまなオンライン上でのソーシャル体験を掛け合わせたようなものになり、時には3次元に拡張されたり、現実世界に投影されたりします。そのため、メタバースの実現には、VRやARといった最新のテクノロジーが不可欠ですが、コミュニティ、コマース、クリエイターなどさまざまな要素も重要になります。 |
ーーSDGsには、どのように取り組んでいますか。全体感をお聞かせください。
森村:Facebookは世界中の多くの方々にご利用いただき、Instagramなどのアプリもあわせると約36億人の方が利用してくださっています。これらのプラットフォームを提供する立場として、また、当社が掲げるミッションを実現するために、包括的なコミュニティづくりと、すべての人が声をあげる機会を得られる環境をつくることが重要だと考えています。
サステナビリティに関しては、社内でも基本理念の1つと考えています。人や社会、地球に意味のある変化をもたらすために、私たちも日々業務に取り組んでいます。 |
ーーサステナビリティを目指した組織体制はどのようになっているのでしょうか。
森村:グローバルではサステナビリティに特化したチームがあり、一例を挙げるとSDGsのパートナーを増やしていくための「Project 17(プロジェクトセブンティーン)というチームなどがあります。
また、各チームを横断する形でサステナビリティを担当するメンバーが在籍しています。プロダクトチームと同様にエンジニアチームでもサステナビリティの観点を取り入れるなど、単独のチームが専門的にサステナビリティに取り組むのではなく、社内全体で意識を高める編成になっています。 さらに、例えば今回の「SDGs診断~あなたに合ったSDGsアクションは?~」や「Re-labelingプロジェクト」は、主に広報チームが主体となって立ち上げていますが、こういったプロジェクトを社内のコミュニケーションチャネルであるWorkplaceでシェアし、関心をもった別のチームメンバーも巻き込むなど、さまざまな人と共に推進しています。 またFacebook Japanの社内でも、SDGsに関心の高い社員が中心となってセッションを開催したり、社員一人ひとりが普段の生活の中でできることを考えながら、行動に移しています。 |
ーービジョンの浸透がされているからこそ、Metaとして何かしなければいけないという意識を持たれている方が多いということなのでしょうか。
森村:Metaでは、「どれほどインパクトのある仕事ができたか」という視点で評価を行いますので、必然的にどのチームでも社会にインパクトを与えることを意識して目標にしています。
例えば広報チームでも、新しいプロダクトを社会に発信するだけではなく、プロジェクトを企画する際は社会全体にインパクトを与えられるかどうかという点を意識します。全ての社員がチームを問わず、同様のことを意識しています。 |
SDGsコミュニティの可能性。自分事化へのアクションの第一歩
ーー「SDGs診断~あなたに合ったSDGsアクションは?~」では、コミュニティへの参加を通じてSDGsアクションに取り組む人を増やしていくことを目指されていますね。コミュニティに参加することの重要性を教えてください。
森村:国連がSDGs達成を目指す2030年まで10年を切り、「行動の10年」を迎えました。生活者のSDGsの認知度は、100%に近いところまで来ていると感じています。その一方で、認知度は高くても生活者一人ひとりの行動変容にはつながっていない、という課題も見えてきました。この課題は、SDGsアクションを自分事化できないという方がとても多いことに起因するのではないかと考えています。
今回発表した「SDGs診断~あなたに合ったSDGsアクションは?~」では、ご自身に合ったSDGsアクションを見つけ、そのアクションに取り組むコミュニティにも出会うことができます。 SDGsアクションには1人でできるものもありますし、コミュニティ単位で推進することでさらに幅が広がるものもあります。私たちのミッションにもつながる「コミュニティの発見と参加」を促すことが、利用者がSDGsアクションを自分事として考える機会になると考え、「SDGs診断~あなたに合ったSDGsアクションは?~」を立ち上げました。 |
ーー行動変容を起こしていくためにコミュニティを活用することは確かに重要ですよね。SDGsの重要性は理解しつつもアクションを起こせている人は少ないイメージがあります。
森村:例えば、飲食店がストローをプラスチック製から紙製のものへ変える際に消費者がそれに順応していく、そういった受け身のSDGsアクションは増えてきたかと思います。しかしSDGsを自分事化し、自分から積極的に何かアクションを行うことは、ハードルが高いと感じる方もまだ多いのではないでしょうか。 |
ーーその一方で、SDGsについてどのようなアクションがあるのかを知るきっかけがないという課題が存在しています。だからこそ、この診断が重要になってくるんですね。
森村:SDGsで掲げられているゴールは幅広く、人によって取り組みやすいSDGsアクションは違います。そのため、回答者自身の趣向性に合ったアクションを見つけることができるコンテンツを目指しました。17あるSDGsのゴールの中で、自分に何ができるのかを見つけていただければと思います。 |
ーーSDGs診断の反響についてお聞かせください。
森村:Meta日本公式Facebookページでの投稿では、72万人以上のリーチがありました。エンゲージメントも5000を超え、大きな反響をいただいています。
また、周囲からも「私はCタイプだった」「当たっていた」「コミュニティに参加してみた」といった声もあり、身近なところでも反響を感じています。 このSDGs診断の中では、13のコミュニティを紹介させていただいたのですが、そちらのコミュニティの方々からも良い反応が得られたとコメントを頂戴しました。 |
【それぞれのコミュニティからの反応】
エシカルカフェ☕~珈琲片手にSDGsを語ろう~ | 563人いるグループメンバーの約半数から閲覧。また、約25%の方々(約140名)からいいねやリンククリックなどのエンゲージメントを得られた。 |
コロナ支援・訳アリ商品情報グループ「WakeAi(ワケアイ)」 | Facebook Japan発信のコンテンツに協力したことをコミュニティからの情報発信したことで、よりコンテンツの広がりをみせることができた。 |
SDGs×女性コミュニティ(エシカルガール) | 「自分事化」できる身近なコミュニティが多数紹介されており、SDGsに対する具体的な取り組みがわかりやすかったため、いいねやシェア数など、メンバーをはじめ友達からの反応も良好だった。 |
こども食堂のイメージを変えるために。オフラインコミュニティの重要性とは
ーーRe-labelingプロジェクトをはじめたきっかけをお聞きしたいです。
森村:Facebook Japanとして、「誰一人取り残さない」ことを目標にするSDGsについて、どのように取り組むことが出来るかを考えました。日本における持続的な社会の実現のためには、次の社会の担い手である子どもたちが健やかに成長できる環境づくりが大切だと感じました。人と人をつなぐプラットフォームとして、地域コミュニティや幅広い世代をサポートしていく必要性を感じ、このRe-labelingプロジェクトを立ち上げました。 |
ーー今回、こども食堂を支援されている「NPO法人 全国こども食堂支援センター むすびえ」をパートナーに選んだ理由はなんですか?
森村:プロジェクトを立ち上げるにあたって、こども食堂を運営されている多くの団体へのヒアリングを行った結果、こども食堂には「貧しい子どもたちが行く場所」というネガティブなイメージを持たれていることが多く、それによって活動に支障が出ることもあるということがわかりました。
こども食堂は貧困対策だけではなく、「多世代交流ができる地域に開かれた場所」を提供する役割も担っています。こども食堂への正しい認知を広めていきたいという想いがむすびえ様と一致し、今回、共同でプロジェクトを立ち上げることができました。 |
ーー街の課題全体を見た時、コミュニケーションの基盤が重要になってくると思います。何かそういった考えはあるのでしょうか?
森村:「住み続けられるまちづくりを」というSDGsゴールの観点でも、街自体が開発されることと同様、地域の交流も重要だと考えています。
現代では、地域の交流が失われてきていると感じている方も多いのではないでしょうか。地域は、私たちが大事にしている「コミュニティ」の基盤になるものでもありますので、地域コミュニティをベースに次世代の担い手である子どもたちにフォーカスしているこども食堂の役割には、社会的な意義があると思っています。 |
ーーオンラインのコミュニティとオフラインのコミュニティのそれぞれの良さをお伺いしたいです。
森村:オンラインとオフラインのハイブリッドなコミュニティの在り方は、コロナ禍で模索しつづけてきました。
Facebook Japanと全国の祭りのサポートを行う「オマツリジャパン」と共同で、「Withコロナ/Afterコロナ時代の新しい祭り」の実現に向けてオンラインとオフラインの両面からコミュニティづくりをサポートする「祭り未来プロジェクト」などにも取り組んでいます。このプロジェクトでは、祭りの主催者をはじめ、祭りが好きなファンや祭りを応援したい企業など、立場を超えて「祭りを盛り上げる」各者がFacebookグループに集い、積極的に互いのノウハウや情報を共有することで、祭りが抱える課題解決を目指しています。 多くのコミュニティがオンラインとオフラインのどちらでも活動を行っているからこそ、Facebook上でのコミュニティの活動を支援することが、オフラインでの活動への更なる支援につながっていくと考えています。 |
実際のオフラインイベントを通して感じたのは、次世代を担う存在の驚くべき想像力
ーー今回のプロジェクトでは、Facebook Japanはどのような役割を担っていたのでしょうか?
森村:私たちは、今回のプロジェクトでコミュニティとコミュニティを結びつける裏方のような役割を担いました。同じ目標を持って活動していながら、その存在をお互いに知らないというコミュニティを結びつける仲介のような役割です。 |
ーー実際のイベントの反響などはいかがでしたか?
森村:9月22日には、小さな子どもから大人まで楽しめる「絵本」をフックにした「リラベリング発想ワークショップ&デリバリー絵本展」を開催しました。地域の大人との交流の場の創出を目的に、プロジェクトに賛同いただいた「NPO法人スーパーダディ協会」「こども食堂waiwai」の協力のもと実施いたしました。ワークショップでは、「りんごかもしれない」という絵本を使い、ストーリーに沿って、子どもたちにもりんごを「実はりんごではなくて○○かもしれない」と考えるワークシートに挑戦してもらいました。
とても印象的だったのは、子どもたちが非常に積極的にワークショップに参加してくれていたことです。 大人になって失われてしまった、子どもならではの面白い発想に触れ、胸を打つものがありました。 また、ワークショップで子どもたちの前に立ってくださったスーパーダディ協会の方が、「自由で固定概念にとらわれない発想ができる人こそ、新しい発明やイノベーションを起こせる」とおっしゃられて、まさにその通りだなと思いました。 |
ーー今後の展望をお伺いしたいです。
森村:今回第1弾の取り組みを終えて、次回以降どのような取り組みを行っていくか、むすびえ様とも協議をしております。私たちとしても、ワークショップをたった一度開催したことは、こども食堂の正しいイメージを広げるというこのプロジェクトのゴールに向けた第一歩に過ぎないと考えています。
引き続きこども食堂の正しいイメージを広げていくための取り組みを模索し、第2弾以降でさらに広めていけるようにしていきたいと考えております。 |
さいごに
今回、Facebook Japanを取材させていただいて感じたことは、コミュニティの重要性だ。コロナ禍において人とのかかわりがすべてオンラインとなってしまい、それが日常として受け入れられてきたいま思い出してほしいのは、人と向き合って話すことで生まれる感想や発見などだ。
人には実際に触れ合ってみないとわからないという部分も多い。
オンラインで発信されているコミュニティからの情報をキャッチしながら、自分に合った活動を行っているコミュニティのリアルの活動にも参加してみるなど、オンライン・オフラインの両方をうまく活用しながら自分にできるSDGsアクションを見つけてほしい。