“実はサステナブルだった”でいい|マッシュグループのウェルネスデザインに迫る

2024.05.01

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近年ではアパレル業界や化粧品業界などのブランドやクオリティが重要視され、人生に彩を加えるような業界にもSDGsやサステナビリティを意識した商品が増えてきています。そんな中、ファッションブランドのSNIDEL(スナイデル)やgelato pique(ジェラート ピケ)、トータルビューティーブランドのCelvoke(セルヴォーク)などを展開するマッシュグループでは、業界に先駆けて、エコファーへの切り替えやナチュラル&オーガニックコスメへの投資などを行ってきました。

今回はマッシュグループ広報部 部長の牧野霞さんに「ウェルネスデザイン」というコーポレートスローガンについてやそれに紐づく具体的な取り組みについてお話を伺いました。

「ウェルネスデザイン」を掲げたのがきっかけだった

ーー自己紹介をお願いいたします

牧野:株式会社マッシュホールディングスで広報部の部長をしております牧野霞と申します。これまでは5社にわたって広報業務を経験し、マッシュグループには2017年に入社しました。入社後は、PR、経営企画部、社長室を経て、2021年から広報部に異動となり、現在は広報責任者をさせていただいています。

ーー貴社の事業内容について教えてください

牧野:現在の売上の規模からいうと、もっとも事業規模が大きいのはファッションではありますが実はグラフィックデザインの会社として1998年に立ち上がった会社でした。アニメーションやマンションの完成予想CGなどを制作するデザイン会社として始まりましたが、デザインという共通の軸のもと、2005年以降はファッションやビューティー、飲食など幅広く展開を拡大してきています。

私たちが事業を展開する基準として大切にしているのは「人々の24時間を豊かにしていきたい」という想いです。自分らしく着飾る楽しさやファッションの高揚感をお届けしていたら、安心・安全なアイテムでスキンケアやメイクアップをする楽しさも届けたいという思いに至り、さらには体の内側からきれいにしていけるライフスタイルも提案したいという考えになっていく。

このように、人々の生活にプラスαの彩りを加えられるものを届けていきたいという考えのもと、自然とビジネスが広がっていきました。現在はそこにライセンス事業が新たに加わったことで、改めてその幅が広がっています。

ーー会社としてサステナビリティに力を入れられていこうとなったきっかけや経緯はどのようなところにあったのでしょうか

牧野:2015年にコーポレートスローガンとして「ウェルネスデザイン」という言葉を掲げたのがきっかけです。このスローガンがあるからこそ、サステナビリティやCSR、SDGsというものに当たり前に取り組む企業姿勢というのが育まれたのかなと感じています。このウェルネスデザインというのは、簡単に言うと「世界中に笑顔を届けること、 笑顔を作っていくこと」ということです。グラフィックデザインからスタートし、デザインをしていくということを大事にしている会社だからこそ、「ウェルネスデザイン」という言葉に至っています。

スローガン制定が2015年になったのは、今のオフィスに移転してきたタイミングだったというのが大きいと思います。それまでは渋谷にオフィスがあったんですが、より大きなオフィスに移転することになった時に、「お客様に商品を届ける社員自体が幸せであり健康でなければ、やっぱりいいものづくりはできないよね」という考えに至りました。そこで1階に社員食堂を作ったり、 2階には託児所を併設したりするなど、社員が健康で働きやすい環境づくりを推進してきました。

ーーどのような体制でSDGsを推進されていますか

牧野:推進体制としては、2022年の1月にサステナブル推進委員会を発足しています。弊社はグループの企業が沢山あるので、その中でも代表企業としてマッシュホールディングス、マッシュスタイルラボ、マッシュビューティーラボ、マッシュライフラボの4社に委員会を設置しています。毎月代表者が集まってミーティングをしており、2030年までの達成目標に達するための進捗確認をしています。

それとは別に、ファッション事業を行っているマッシュスタイルラボでは2022年2月に「サステナブル アライアンス」を立ち上げています。

ファッション事業に携わる繊維商社と下げ札などの副資材等を扱う生産・流通関係の合計10社の方々と毎月対面でミーティングをしています。一社ではできることの幅も限られ、マッシュが声をあげただけでは力が及ばないこともまだまだあるため、「業界をあげてサステナブルに力を入れていきたい」とお取引企業の方々に声をかけたことがきっかけです。

本来は競合関係にある取引先様ではありますが、肩を並べて意見を交わすことで、各社独自の情報などを持ち寄りながらブラッシュアップしあう環境ができており、現状に即しながら効率的な取り組みにつながっていると感じています。

「サステナブルだから」と選んでもらう必要はない

ーー具体的な取り組みについて教えてください

牧野:今回は3つご紹介したいと思います。時系列順にご紹介すると、1つ目は「FUR FREE宣言」です。2016年に発表し、動物を犠牲にするリアルファーを一切使わないことを宣言をしました。当時はまだ「リアルファーの方が良い物」という価値観が根強くあり、逆にエコファーは偽物で安っぽいものという評価がされることも多い状況でした。実際のところ、宣言前は弊社でもリアルファーのコートは非常に人気のアイテムでもありましたが、2015年に掲げた「ウェルネスデザイン」というスローガンや、利益以上に動物たちと共に暮らしていくという選択を大切に考え、以降リアルファーは使用していません。

2つ目は「ナチュラル&オーガニックコスメの販売」です。弊社では2010年に、世界中からセレクトしたアイテムを展開する「Cosme Kitchen(コスメキッチン)」を皮切りにビューティー事業を展開しているのですが、当時のオーガニックコスメと言えば、非常に高価だったり、一部の方にのみ支持されるようなニッチな存在でした。また、オーガニックコスメは肌には優しいけれど、発色や使い心地に課題がある、というイメージもありました。そんな中で2016年に「Celvoke(セルヴォーク)」というブランドを立ち上げました。そのセルヴォークが2018年に新宿伊勢丹という誰もが知る商業施設に出店したというのは、オーガニックコスメの可能性を少しでも広めていけた結果なのかなと感じています。また、2022年にはスキンケアブランドとして「Mitea ORGANIC(ミティア オーガニック)」というブランドを始めており、こちらではファミリーマートさんとの協業により誕生し、文字通りオーガニックのスキンケア商品が全国1万6000もの店舗に置いていただいています。

3つ目は「店舗づくり」です。弊社はブランドが多いので、店舗だけでもかなりの数があります。だったら商品だけでなく、店舗でもサステナブルな取り組みを追求したいという思いのもと、2019年の「SNIDEL(スナイデル)」のルミネ新宿2店のリニューアルオープン時には、廃棄予定だった蛍光灯からできたリサイクルガラスを内装に使用するなど積極的に環境配慮素材を什器等に活用することで、サステナブルな新店装が実現しました。この一店舗だけでも約9000本の蛍光灯がリサイクルされています。

ーーエコファーやオーガニックコスメ等は業界に先駆けて取り組まれていたかと思いますが、事業として成功できた要因はどこにあったのでしょうか。

牧野:理由は2つあると思っています。1つ目は「今の社会にこの取り組みや商品は必要だという確信が社内にある」ということです。たとえ最初は受け入れられなかったとしても、社内には「やっていることは間違っていない」という確かな信念があるので、その取り組み自体をやめるのではなく、デザインや発信の仕方などを変えていこうという思考になります。

2つ目は「サステナビリティを押し出しすぎない」ということです。SDGsやサステナビリティは前面に打ち出しすぎると、押しつけがましさにつながると思うんです。私たちは押しつけやお説教がしたいわけではなく、あくまでもお客様が素敵だな、綺麗だなと思って手に取ったものが、結果的にサステナブルであればそれで十分だと考えています。

お客様が「サステナブルだから」という理由だけで選ぶことはないと思いますし、それ以上にデザインや商品そのものの価値を理由に選んでいただくことが本来のあるべき姿だと思っています。

ポジティブに手を取り合ってCSR活動を推進

ーーサステナブルな取り組みをされる際に意識していることはありますか

牧野:自社のビジネスに紐づいたものであること、なおかつ「ウェルネスデザイン」の考え方に当てはまることを意識しています。

ビジネス視点で分かりやすい事例は、FUR FREE宣言やオーガニックコスメ事業などがありますが、それ以外にも自分達が展開する事業の中で何かできることはないかと常に模索しています。また、他社がやっているからやるのではなく、サステナブル推進委員会のように「ウェルネスデザイン」の観点から取り組むべきだと社内で判断したのであれば、全力で推進しています。受動的ではなく、主体的にポジティブにやることが大事だと考えています。

例えば、2016年から行っている被災地復興支援プロジェクト「MASH PARK PROJECT (マッシュパークプロジェクト)」は、被災地に公園を贈るというプロジェクトです。”子どもたちに最高の笑顔を届ける”ことをコンセプトに、毎年本社でチャリティイベントを行い、そこでの売上をチャリティとして公園建設費用に充てています。このプロジェクトによる記念すべき第1号の公園は、2021年8月19日に宮城県牡鹿郡女川町に開園しました。

一見すると自社のビジネスとの関連はなさそうですが、チャリティイベントではマッシュグループの展開するファッション、ビューティー、飲食を織り混ぜたイベントとなっており、お客様と一緒になって成し遂げることを目指したプロジェクト、 言うなれば文化祭のようなイベントをして、お客さんに来てもらうことでチャリティーを集めて、お客様と一緒になってこれをやり遂げられたら素敵だなと思いが実り、実現に至りました。

ーー最後にこれからの戦略・展望について教えてください

牧野:大きく2つあります。1つは「CO2排出量の削減」です。ファッション業界やビューティー業界は廃棄が多い中で、だからこそマッシュグループとして2030年までに40%のCO2排出量削減を目指しています。これからもサステナブル推進委員会やサステナブルアライアンスを通じてどうしたら目標を達成できるのかを真摯に取り組んでいきたいと思っています。

もう1つは「ダイバーシティ」です。ダイバーシティは弊社がまだまだ課題だなと感じている部分ではありますが、昨年(2023年)にセサミストリートとのパートナーシップ契約を結んだのを契機として今後進めていきたいと考えています。セサミストリートというと、日本では英語教育番組として認識されることもありますが、本国ではダイバーシティや社会問題を取り上げる教育コンテンツとして始まっているんです。なので、放送する国や地域の特性に合わせて、様々な肌の色や病気などのバックグラウンド、多様な個性を感じさせるキャラクター達が存在し、そんな違いを受け入れようというメッセージが込められているんです。そんなセサミストリートの一面を日本でもっと広めていきたいです。

また、昨年には東京都江東区で開催されたハンディキャップアーティストの作品で街全体を美術館にしてしまう市民芸術祭「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭2023」のメインパートナーとして支援を行いました。それに合わせ、ハンディキャップを持つアーティストの方々の作品を、オフィスの内装をはじめ、自社の主催するチャリティイベントの制作物や自社ブランドの広告等、数多くのビジュアルに起用しています。アートの力が人々を引き寄せ、おしゃべりを楽しみながら、誰もがお互いを認め合い、支え合うという空間が、弊社の目指す「共に生きる」社会に当てはまっていたので、後援という形で携わらせていただきました。このような取り組みを通じて、ダイバーシティや多様性の教育に貢献していければなと思います。

さいごに

デザインを生業として始まった会社だからこその「ウェルネスデザイン」という考え方と、いくつもの具体的な取り組みの内容を伺い、会社として一貫した哲学のもとサステナブルにも取り組まれているのがとても素敵だなと感じました。

これからも人々の24時間を豊かにしていく裏側でサステナブルに取り組むマッシュグループに注目していきたいです。

 

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