【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈】
地域の魅力を発掘し、発信することで地域経済の活性化に貢献する。そんな思いで関西を中心に5か所のホテルを展開するホロニックは、自社を「地域資源の企画編集会社」と謳い、地域に根づいた事業運営にあたっている。
ホテルを通じて「コミュニティの創出」や「地域資源の企画」を目指すホロニックは、どのような想いで、事業を行っているのか。SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のテーマである、地方創生をテーマに今回は、ホロニックの長田社長へのインタビューを通し、創業から今に至るまでの持続可能な未来を創る姿勢について伺う。
コミュニティ型ホテルとして地域共生を目指す
ーーはじめに、自己紹介をお願いいたします。
長田:ホロニックの長田と申します。よろしくお願いします。
ホロニックは1998年に創業し、今年で創業23年目を迎えます。2005年からはブライダルのプロデュース事業をしており、現在は、セトレという自社ブランドのホテルを5か所ほど展開しています。
通常ホテルは、繁華街やリゾート地、温泉地などの観光地、駅前に建てることが多いと思うのですが、弊社は居住地域に建てているといった違いがあり、地元の人や地域の人に来てもらうホテルを目指しています。地域の人たちは、言わば泊まる理由のない人です。そういった方々にどのようにしたら泊まっていただけるか、地域の方々との連携や地域共生を軸に考え、コミュニティ型ホテルといったコンセプトでホテルを運営しています。
こうしたホテル運営のほか、現在は「地域資源の企画編集会社」になるため、コミュニティ型ホテルの特徴を生かした開発のコンサルティングや物販業、JRさんと共同で会社を創り、ホテルの運営・開発を行うなどさまざまな事業展開をしています。
ーーブライダル事業からホテル運営に展開していったとおっしゃいましたが、なぜホテル運営をしようと思ったんですか?
長田:以前からブライダルに関わる仕事をしていましたが、持続的、継続的、永続的にお客様と関係を築く仕事に関心がありました。ブライダルは非常に素敵な仕事ですが、お客様が繰り返しリピートすることが基本的にない商売です。そこで、一度来てくださったお客様でも、場合によっては一生涯に渡って来てくださる機会のあるホテル運営を始めようと思いました。
また、ブライダルはレストランに食事に行くことや旅行で泊まる以上に、非常に深い関係性を築くビジネスです。新郎新婦さんは、半年もしくは1年ほど前から準備をして、一生に1度の記憶に残るような結婚式を挙げます。ホテルであれば、結婚式を挙げた方がその場所を非常に思い入れのある場所として、また訪れてくれるようなこともできますし、1周年、2周年、10周年といった記念日に、「あそこに食事に行こう」や「泊まりに行こう」と再訪してくださいます。
ブライダルだけに目的を置くのではなく、こうしたコミュニティ(ホテル)に目的を置くことで、ホテルに来てくださった方が結婚式を挙げたり、結婚式を上げた方がまた繰り返し来てくださったりします。こうしたことを考えていった結果、現在の業態になりました。
ーー「地元に密着」を掲げているホロニックさんですが、地元の方と地元以外の方はどのくらいの比率で泊まりに来てくださるんですか?
長田:現在、5か所展開しているホテルのうち4か所は関西ですが、コロナウイルスの影響を受ける前から、7割の方が主として関西在住の方です。コロナウイルスが流行してからは、9割の方が関西在住の方になっています。
ーー地域の方が来てくださるこだわりはありますか?
長田:何年もやり続けた中でこのような業態になったのですが、地域の方々に対してどのようにアプローチしていくかを大切にしてきました。
例えば神戸のホテルであれば、目の前に淡路島がありますが、淡路島のエリアに絞ると食糧自給率が非常に高いんです。野菜、肉、魚全部、生産者も含めて揃っていて、そういった方々はこだわりを持っていたり、昔からそこで営んでいたり、Iターンで就職していたりと面白い人たちがたくさんいらっしゃいます。そんな方々のものづくりに対しての想いやこだわりがとても刺激になることが多く、それを伝えていくことが私たちの役割ではないかとずっと思ってきました。
滋賀にもホテルがありますが、地元の方でも「ここはホテルに適地じゃないから上手くいかないよ」「誰が来ると思ってるの?」と言われて、「京都から来るんじゃないですか?」と言ったら、「京都から来るわけないじゃん、滋賀なんかに。」と言われるくらい自虐的な人が多かったんです。ですが、よくよく聞いてみるとプライドを持っている人やそこに住んでいる事にとても誇り持っている方、素敵な生産者の方がたくさんいらっしゃって。 そういった方々と連携して活動すると、ホテルの中で自分たちの作ったものが披露されたり使われたりすることにとても喜んでくださるんです。
ですので、はじめから地産地消というようなことを意識して活動していた訳ではなく、地域の方々をフィーチャーするほうが地域の魅力やホテルの特徴も出せるだろうと思って運営していたら、地方創生という言葉が出てきて、みなに面白いホテルと思われるようになったんです。
ーー地域の魅力を再認識させるような機能といった役割もあるのでしょうか?
長田:それが全てと言ってもいいぐらいですね。お客様のご要望に対して忠実にサービスを提供することが一般的なホテルの常識ですが、弊社はどちらかというと、職人さんや生産者さんの世界観やプロダクトの想いを伝える立場でホテルを捉えております。
ホテルでは、一般の方々が生産者さんの作品に触れる機会をつくることができます。生産者さんは基本的に、消費者の手にどのような形で届いているかは見ることができませんが、私たちが直接取引することで、消費者の手に届く瞬間を直接見ることができるので、非常に面白がってくださったり、喜んでくださいます。
「地域資源の企画編集会社」になるのが理想
ーー「地域資源の企画編集会社」について詳しく教えていただけますか?
長田:私たちはホテルを「目的」ではなく「手段」と捉え、ホテルを手段とした地域資源の企画編集会社になることが理想形だと思っています。
例えば、食に関して生産者さんとコラボレーションをしながらカレーやスープなどの商品を作り、これを流通させることで、またホテルに来るきっかけになったり、ホテルに来てくださった方が食べて持ち帰ってもらったりといった互換性を持って消費する形が生まれます。
このように、ホテル自体が雑誌のようになる「リアルメディア」として、普段であれば雑誌に掲載されているものを、ホテルに来て実際に体験していただくようなことになると非常に良い構図だなと思います。
ーー地域資源の企画編集会社としての、今後の展望をお伺いしてもよろしいでしょうか?
長田:それぞれの地域との関係性をより深めていきながら、新しいプロダクトも作りあげていきたいです。
後継者不足や人口減少によって産業自体が衰退して、技術や伝統が枯渇してしまうことはもったいないと感じています。その地域にいるホテルとして、少しでも貢献し役立つことができれば、私たちの存在意義も上がると思うので活動を続けていきたいです。環境問題やエネルギー問題、食の問題などさまざまな問題がありますが、こうした問題に向き合いながら、持続的な産業や技術が正しい形で継承できるように、私たちが寄り添って積み上げていきたいと思っています。
地域の魅力の活性化が重要な課題
ーー長田さんから見た、地方や地域の課題はありますか?
長田:地場産業や伝統産業は、後継者不足、もしくはそのモノ自体の価値があまり評価されない課題がが起こっていると感じます。
いろいろなものが便利で、効率的で、有効になり、以前は必要だったものが必要でなくなってきています。消えてしまってしょうがないモノも少なくないですが、大事に育てていくべきモノもあると思います。
ーーだからこそ御社とその地域が相互作用をしながら、今後も、その街がさらに活発化し、その中でまた持続性というのを見出していくんですね。
長田:ホテルというとどうしても、観光客や外からの入れ込みが1つの指標になり、「観光」という部分が大事になってきますが、外からのプロモーションをするよりも、地域の魅力を活性化することが重要だと考えています。私たちはその魅力を最大限に引き出すことが先だと思います。
さいごに
地域の人が訪れるホテル。そこには、地域の方々との連携を通して地域の活性化を図りたいという、長田社長の想いが溢れていた。
SDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」では、こうした地域共生の対策が求められているかもしれない。
地域資源の企画編集会社として持続可能な未来を目指す、ホロニックの今後に目が離せない。