力の源ホールディングスは、”Zuzutto”すする喜びを世界中に伝える、博多発祥のラーメン専門店「一風堂」を中心に、外食事業などを運営している。
一風堂は海外にも多くの店舗を出店しており、その美味しさは国内外問わず認められている。一方で、実はSDGsに対してさまざまなアプローチをしており、特に子どもや子ども連れに対しての取り組みに力を入れている。
今回は広報グループに所属する小栗氏に、企業のビジョンや子ども連れに対する新しいプロジェクトについて伺った。
誰もが食べやすい、入りやすい店作り
ーー自己紹介をお願いします。
小栗:広報グループの小栗です。
2019年に新卒で入社して現在4年目になりました。内定をいただいてからは、店舗でアルバイトを始めて、入社後も現場には2年ほどいました。
学生時代にラーメン屋さん巡りを始めてからずっとラーメンが好きで、ラーメンのインスタグラムを自分で開設しています。ラーメンの魅力を語りだしたら止まりません。
ーー力の源ホールディングスについて教えてください。
小栗:一風堂は、豚骨ラーメンの「臭い」「怖い」「汚い」の3Kというイメージを一新し、女性1人でも入れるような、スタイリッシュなラーメン屋をコンセプトとして1985年に創業しました。
実際に、弊社の豚骨ラーメンは、臭みを取り除く工程を大事に、丁寧にスープ作りしているため、臭みが全くありません。こうした技術で、新しいラーメンの価値を全国にとどまらず世界に展開しています。
ーー一風堂さんは世界中で親しまれているイメージがありますよね。
小栗:はじめは、九州の福岡の小さな店舗から始まりましたが、1995年に東京に進出しました。その後全国に展開していく中で、創業者である河原成美の「もっともっとラーメンの文化をみんなに知っていただきたい」という気持ちが大きくなっていきました。
そのため、一風堂はグローバルに展開しています。中でも「ZUZUTTO」という麺をすする文化を伝える目標を掲げています。海外では、音を立てて食べることはタブー視されていますが、麺をすすることはラーメンを食べるには1番ベストな食べ方だと考えているからです。
さまざまな視点からSDGsにアプローチを
ーーSDGsやサステナビリティに対する具体的な取り組みについて教えてください。
小栗:サステナビリティの部署はなく、取り組み内容によって広報やIRが分業する体制で動いています。取り組みをまとめる会議はありますが、大まかなテーマが決まってしまえば、実際に動いていくのは部署ごとです。
部署が決まっていない分、誰でもアイデアを出せる雰囲気があり、後ほど紹介するカルガモ割は、まさに私と社内メンバーの1人と一緒にこういうのやらない?という話から始まっていきました。私も新卒4年目で、まさか自分が出したアイデアが現実になるなんて思っていなかったので、そういった意味では、風通しがよくボトムアップな、企画が通っていくような会社だと思います。
ーー具体的にどのような取り組みが行われていますか?
小栗:このような体制の中、子どもへの取り組みや安心安全な食材の調達、農家さんを支援する取り組みを中心に行っています。また、替玉募金や災害支援などの取り組みもしています。さらに、「選挙割」や、お子様連れで、飲食店を利用しやすい社会にしていくための「カルガモ割」なども行いました。
豚や牛が排出してしまうガスや、豚を育てるために必要なものなどが環境に大きく影響してしまいます。そのため、環境面の取り組みでは、動物由来だけでなく、植物由来のラーメンも作っています。
実際に、一風堂で人気の赤丸新味のような味わいを植物由来だけで再現した「プラントベース赤丸」があります。不二製油さんというメーカーとコラボレーションをして、一生懸命、豚骨を使わずに旨みを表現していきました。我々は豚をメインにラーメンを出していますが、少しでも新しい食に転換していくためには、必要な動きだと思います。
ーーカルガモ割について詳しく教えてください。
小栗:カルガモ割とは、サービスに賛同して頂いたお客様に期間中、替え玉か玉子を無料でお付けするサービスです。
ラーメン屋さんというと「とても回転が早いから、早く出なきゃいけない」、「カウンター席しかないから、子連れでは行きづらい」というイメージや先入観が皆さんあると思うんですよね。私も実際に、遠慮してしまう方々を多く見てきました。
店舗に入って営業していても、ご家族連れでテーブルを使って食べられている方々が萎縮してしまっていて、周囲を警戒しているような雰囲気を感じました。「もう少し、リラックスしてくれてもいいのに」「みんなと同じように、ラーメンを楽しんでほしい」という思いを抱えていました。
ラーメン屋さんで子連れ大歓迎と謳っている所は、まだまだ少ない印象です。我々から他の飲食業界全体も巻き込むような形で、カルガモ割のような取り組みをしていけたらいいなと思い、取り組みはじめました。
ーーその他にも子どもに対する取り組みはありますか?
小栗:弊社のSDGsの全ての取り組みのベースには地域密着や、家族を大切にする考え方が強く、特にお子様はずっと大事にしています。
弊社は創業時に、地域密着で、地域の方々と一緒にお店を作りたいという思いがありました。そこで、はじめは一風堂ワークショップといって、地域の小学校に出向き、一緒にラーメンを作ってみたり、小麦から皮を作って餃子を作ったりと食育活動を全国で行ってきました。
このような取り組みがチャイルドキッチンにも繋がっています。チャイルドキッチンは、一風堂のキッチンにお子様を招いて、ラーメン作り体験などを通して食育をする活動です。
ワークショップとチャイルドキッチンは、現在はコロナ禍で休止しているのですが、コロナ禍では、今度は自分たちから出向いて、ラーメンを配ろうということで、子供食堂へと発展しています。
ーー農家さんへの取り組みではどのようなことをされていますか?
小栗:米農家を支援する取り組みに注力しています。
実は、弊社の店舗では白ご飯をおかわり無料にしていましたが大々的にはお伝えしていませんでした。しかし、コロナ禍でコメ余りが深刻化した農家さんが増えて社会問題になったため、初めて大々的におかわり無料と言い始めました。
「食べて農家さんを応援できる」と店内にポスター貼って宣伝したところ、おかわり無料だったということを知らないお客様やたくさん食べたい学生の方々にとても喜んでいただけて、良い取り組みになりました。
子どもに寄り添い続ける
ーー今後の展望をお願いします。
小栗:お子様への取り組みはもちろんずっと大事にしていきたいですし、ラーメン屋さんに子ども連れで行くことや、ラーメンデビューを一風堂でしていただくことが当たり前であればいいなと思っています。一方で地球規模で考えることも、我々が責任を持って取り組まなければならないことだと考えています。
例えば、豚骨ラーメンを作るとき非常にたくさんの廃棄物が出てしまいます。こうした意味で豚骨スープを炊き続けることは環境に良いことではないですよね。そのため、別の方法で社会に還元できる術を見出していく必要があると思っています。
ラーメン作りをしながら、環境に配慮した取り組みも同時に行っていくことで、ラーメンが未来の食事として受け入れられたらいいなと思います。
さいごに
今回の取材をした後に気づいたのは、一風堂の東京事務所下にある店舗では確かに子ども連れが入店しやすいように、他のラーメン屋に比べてテーブル席が多く設置されていたり、ピッチャーを重そうにしていたら小さいものを持ってきてくれたりと、細かな気配りが行き届いていると感じた。
一風堂では本部が実際に店舗に立つこともある。本部メンバーが発案した取り組みや思いやりが現場で実践できるのは、そういった機会があるからだと思う。
これからも、地球とお客様に寄り添った取り組みを推進する一風堂で、ラーメンデビューをする子どもが増え続けることを期待する。
SDGsコネクトインタビューユニットライター。大学では大きなくくりで性について勉強しています。人の熱量をそのままに記事を発信していきたいです。好きなものはピンクと美しいもの。