消滅可能性都市からSDGs未来都市に進化した豊島区|一体感こそ持続性に繋がる

#SDGs目標11#居住#持続可能#都市 2021.04.28

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【更新日:2021年6月11日 by 佐野 太一

東京都を代表する繁華街 池袋を有する豊島区。全国の市区町村の中で人口密度が最も高く、さらに住民の約1割は外国籍というグローバルな一面も備えた特色のある区だ。
文化面では、舞台芸術やマンガ・アニメなどのサブカルチャーの文化が栄えている都市でもある。

しかし、豊島区は小さな都市であり、一人あたりの公園面積が東京23区で最も小さいだけでなく、空き家率が東京23区で最多であり、単身高齢者世帯割合日本一という課題も抱える都市でもある。※全国市区部において

そんな豊島区は2014年5月に東京23区で唯一「消滅可能性都市」として指摘され、区を挙げた改革がスタートした。豊島区はこれをチャンスだと捉え、SDGsへの取り組みを加速させたのだ。

今回は、豊島区政策経営部企画課の池田さんと立原さんを取材し、豊島区のSDGsへの取り組みやサスティナビリティなまちづくり、今後のSDGs戦略などについて詳しくお話を伺った。

一度は「消滅可能性都市」として危機に陥った豊島区が2020年度には「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」の2つに選定されるまでの、豊島区の多岐にわたる取り組みを探る。

小さくても深い歴史を持つ文化都市、豊島区。

ーーまず初めに自己紹介をお願いします。

池田:豊島区政策経営部企画課でSDGsの担当係長の池田です。昨年は文化デザイン課という珍しい名前のセクションにいて、豊島区2019の東アジア文化都市という日本・中国・韓国で交流する事業をしていました。

立原:同じくSDGs担当の立原と申します。SDGsが本務というわけではなく、全員兼務しながら企画課でSDGsを推進しています。

ーー豊島区の特徴を教えてください。

池田:豊島区の特徴は、区の面積が13平方kmと、23区のなかでもかなり狭いエリアだということです。ただ、そのエリアの中でも、いろんな文化が混ざっているのが豊島区の特徴です。

昔から池袋モンパルナスといって、芸術家がアトリエ付きの家みたいな所で絵を描いていたり、漫画の原点ともいえるトキワ荘などがあり、豊島区は芸術家が住む街でした。今はアニメ・漫画の街という印象が強くなっていて、池袋駅周辺だとアニメイトも有名です。

区のホールでコンサートや演劇公演をやったり、ハイカルチャーからサブカルチャーまでいろんな文化があるのが豊島区の魅力的なところですね。

ーー2014年に「消滅可能性都市」に指摘されてしまった経緯や原因はなんでしょうか?

立原:豊島区は移住してきた方も多く、人口移動がとても多いのが特徴です。学生になるタイミングで移住してきて、家庭を持ったり卒業したりすると外に出てしまう傾向があります。また、人口の1割が外国籍で、29万人の人口の内、3万人程度が外国籍です。

また、高齢者の一人世帯が多くて、単身高齢者世帯の割合が全国市区部において日本一でもあります。このような理由が「消滅可能性都市」の原因だと考えています。

消滅可能性都市:消滅可能性都市とは、2010年~2040年にかけて、20~39歳の女性が50%以上減少すると推計された自治体のこと。

ーー豊島区が「消滅可能性都市」として指摘されたときはどのように感じましたか?

池田:23区の中で唯一豊島区だけが「消滅可能性都市」となってしまい、「何で豊島区が?」庁内に激震が走りました。しかし、ピンチを何とかチャンスに変えていき、消滅しないように持続可能なまちづくりをしていくと意識したのが2014年なんです。

「消滅可能性都市」から「持続発展都市」を目指す。ピンチに陥ったからこそ見えた新たなまちづくり

ーー「消滅可能性都市」から脱却するために最初にどのようなことをされましたか?

池田:まず、女性と子供に優しい街づくりをしました。特に保育園などかなりの数を区でつくるのに加えて、民間を誘致したりして、待機児童ゼロを目指しました。積極的に情報発信をするために「女性にやさしいまちづくり担当課長」も作りました。

ーーその他にはどのような取り組みを行ったのですか?

池田:もともと豊島区では文化を軸にしたまちづくりを大事にしていて、区内の文化資源を活かした事業も行っていました。「消滅可能性都市」を指摘されてからは、住む人だけでなく、訪れる人もターゲットにして街の魅力を上げることを目標としていました。さらに国際的な文化戦略も大事にしており、その結果いろいろな文化施策を行いました。2019年には「東アジア文化都市2019豊島」というイベントも開催されました。

ーー「東アジア文化都市」とはどのようなイベントですか?

池田:2014年から毎年、中国・韓国・日本で1都市ずつ選んで3か国で国際文化交流するという事業があるんです。1番初めに横浜で開催され、横浜・新潟・奈良・京都・金沢のあとに豊島区を選んでいただいただきました。この開催に合わせて、23のまちづくり記念事業も実施しました。

東アジア文化都市2019豊島:国家的国際交流事業の2019年代表都市として選出される。
397事業、延べ350万人が参加。中国・西安市、韓国・仁川広域市との交流も始まる。

〈まちづくり記念事業の一例〉
・IKEBUS

https://travel.willer.co.jp/ikebus/

引用:IKEBUS

・Hareza池袋

引用:Hareza池袋

・トキワ荘マンガミュージアム

 

ーーこのような取り組みやまちづくりの結果は出ていますか?

池田:人口が減少するといわれていたのですが、これらのまちづくりの成果として「消滅可能性都市」の指摘を受けた2014年から、人口が4年間で15,000人増加し、女性の人口も増えています。同時に空き家率も下がっています。現在は待機児童の数もゼロです。

「消滅可能性都市」を乗り越えるための国際アートカルチャー構想
「SDGs未来都市」に選定されるまでの軌跡

ーー豊島区が2020年度に「SDGs未来都市」に選定されたのは女性と文化への取り組みが大きいのでしょうか?

池田:あとは、それ以外にも豊島区はかなり小さい自治体なので、豊島区内でのまとまりの良さもあると思います。文化事業もSDGsも同様に、行政だけで出来ることは本当に限られていて、何をやるにも、区内の企業さんや団体さんと一緒になってやろうという土壌があるんです。なので行政と住民の繋がりが、今回の選定の評価に繋がっていると思います。

また、豊島区の独自の制度で、「消滅可能性都市」を乗り越えるための構想として国際アート・カルチャー都市構想というものがあります。これは、文化で街の魅力を高めて、住む人・訪れる人を増やすという構想なんですけど、大応援団のように国際アートカルチャー特命大使がいて、区とは別の組織なんですけど、団体に年会費を払ったうえで、豊島区の魅力をいろいろ発信してくれるような方々がいます。

この制度は今の区長の声かけで、街の人と一緒にこの豊島区を盛り上げたいという思いから生まれました。このような仕組みは日本中どこにも無いので、それがSDGs未来都市として評価されたということも関係していると思います。

ーー街の方々と一体になってまちづくりをされているんですね。

立原:区の事業に対して、サンシャインシティさんや他の企業さんもSDGsに対して興味を示して、一緒に取り組んで頂いてます。
西武さんの壁のところにも大きく旗を出してもらっています。

池田:「消滅可能性都市」と指摘されたときはものすごくショックだったんですけど、今ではそのおかげで民間とのつながりが増したとも考えられます。

「自治体SDGsモデル事業」の取り組み。
SDGsを通して「国際アート・カルチャー都市」の実現へ

ーー「自治体SDGsモデル事業」に選ばれてからなにか新しくはじめたことはありますか?

池田:今回の自治体SDGsモデル事業に選ばれてから何か特別に新しい事業を始めてはいません。
ですが、以前から取り組んでいた「IKEBUS」などの事業があります。

池袋駅の周辺には4つの公園があり、その公園を環境に優しい電気バスの「IKEBUS」がつないでいます。ぜひみなさんにも乗ってもらいたいです。
「IKEBUS」 は、時速19kmしか出なくて、冷暖房がないんです。区役所の下で充電して区役所の所にもバス停があるので、約20分間隔で、池袋の周りを周遊しています。

もともと持続可能な街づくりをイメージしてやっていたので、これまでの取組とこれからの描く姿をまとめて内閣府に提案したというのが実情ですね。

ーーまちづくりの中でも公園を重視しているんですね。

池田:豊島区では、「公園を核にしたまちづくり」を実践しています。豊島区は、1人当たりの公園の面積が23区で一番狭いんです。限られた空間を魅力的なものにして人が集まる空間にするというのが、大きな課題でした。

立原:公園をつくることによって街に人を流していく、それを「IKEBUS」などのツールで繋げていくことを重要視しました。

東武や西武、ルミネなど池袋駅の中で完結してしまうのではなく、もっと人々を街に開いていくことで、住む人も訪れる人も楽しめるまちづくりができると思うので、そのためにも公園を有効活用しているんです。

豊島区が描くサスティナブルな未来。
誰もが主役になれる劇場都市

ーー これからのSDGsの戦略では、どのようなものを考えていますか?

池田:これから我々がやらなければいけないと思うのは、自治体SDGsモデル事業に選ばれた事業だけではなく、区役所全部の事業をSDGsの事業にしていくことです。

例えば、公園などの事業だけでなく、福祉や教育のあらゆる事業をSDGsの視点で見直して、再構築していきたいです。

豊島区の基本計画を今、改定し直しているところなのですが、その計画上に「SDGsに基づいて区政を行っていきます」と明確に位置付けたいなと考えています。

ーーおふたりの描く2030年の豊島区の夢というものをお聞きしたいです。

池田:豊島区の「アートカルチャー都市構想」のコンセプトは「街全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」なんです。これはSDGsの理念に似ているところがあり、もっと前向きに「誰もが笑顔で誰もが主役になれるような生活」ができる街にしていきたいと思います。
「主役になる」って人によってレベル感が違うと思うのですが、いろんな人が自分が主役になる場所を見つけ、過ごすことができる街、誰ひとり取り残さず、誰もが前向きになれる街を実現したいです。

立原:豊島区に関わってくださる方が、区を自慢し、想ってくれるような街にしていきたいです。全員が特命大使みたいな感じが良いですね。
都心にいるとシビックプライドのような気持ちが生まれにくいかもしれないですが、豊島区は特徴ある街づくりをしていると思うので、住んでいる人が自分の街を誇りに思ってくれるような、そういう街になっていれば良いなと思いますね。

まとめ

今回の取材では、豊島区がまちづくりを豊島区の行政だけではなく、そこに住んでいる方々、訪れる方々と一体になって持続可能な都市をつくろうとしていることがわかった。

豊島区のようなまちづくりは他の都市も見習うべき部分がたくさんあり、東京に暮らすわたしも自分のこととして捉えなければならないと体感した。

また、豊島区はSDGsを最終的な目標として捉えているわけではなく、SDGsを活用して、それ以上の持続可能な取り組みを目指していることが印象に残った。
これからの豊島区のまちづくりにも期待が高まる。

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