2022年10月、ユナイテッドアローズは自社のサステナビリティ活動を「SARROWS」と銘打ち、サステナビリティへのさらなる貢献に向けて、加速していくことを発表した。
2020年4月、サステナビリティ推進の指針として5つのテーマと16のマテリアリティを定めたユナイテッドアローズ。今までもサステナビリティに強い関心を持ち、持続可能な社会に向けた活動を行ってきたユナイテッドアローズだが、なぜサステナビリティの活動を「SARROWS」と名付け、体制を一新したのか。
サステナビリティの活動を発信する上で、自社の活動のコンセプトをまとめる重要性とは何だろうか。
ユナイテッドアローズのSDGsについて、サステナビリティ推進部・部長の玉井さんに伺った。
“ファッションでお客様の明日を作る”お手伝いをするために
ーー自己紹介をお願いします。
玉井:サステナビリティ推進部・部長の玉井菜緒です。
1999年に新卒で入社後、店舗オペレーションを支援する部門に所属しました。その後、社会貢献活動を管轄する部門などに所属し、2021年4月からサステナビリティ推進部の部長を務めております。
ーーサステナビリティ推進部に携わることになった経緯を教えてください。
玉井:2004年頃に社内の研究開発グループ部門(当時)が環境問題や社会貢献活動を管轄することになると聞きつけ、もともと高校生の頃から環境問題に興味があり、「いつかファッションと環境問題の両方に携われたら」と考えていたため、こちらの部門に立候補し、異動しました。
この異動がきっかけで社内のサステナビリティ推進に携わるようになりました。
ーーユナイテッドアローズの「お客様の明日を作るお手伝いをする」という経営理念は、サステナビリティにどのように繋がっているのですか?
玉井:経営理念には「お客様の明日を作ることで、生活文化のスタンダードを作っていく」という想いが込められています。
誰よりもお客様やステークホルダーを大切にしている私たちですが、環境問題などのあらゆる社会問題が続けば続くほど、「お客様の明日を作ることもできなくなってしまう」という危機感がありました。
持続不可能な環境は私たちの行動から生み出されています。
経営理念である「お客様の明日を作るお手伝い」を今後も続けていくためにも、サステナビリティへの取り組みが何よりも重要だと考えています。
知識を身近に感じてほしいから、番組風動画で社内に発信
ーーサステナビリティ推進部はどのような部署ですか?
玉井:主に他部署と連携しながらサステナビリティに関連する取り組みをまとめています。
また、「サステナビリティ委員会」を毎月1回開催しています。委員会はサステナビリティ推進部が事務局となり、業務執行取締役、執行役員、常勤社外取締役が参加しています。
サステナビリティ推進部は、橋渡しとして現場と、会社の上位レイヤーを繋げる役割があります。現場で出た意見をサステナビリティ委員会で議論することもありますし、サステナビリティ委員会での決定が現場に繋がることもあります。
ーー月に1回の開催は他社様と比べても多いですよね。
玉井:経営層が、頻繁にサステナビリティに触れているので、スピード感を持って社内のさまざまな決定ができるようになりました。
ーー特徴的な取り組みなどはありますか?
玉井:社内報はもちろん、2021年の9月からは社内スタジオで撮影した番組動画も社内に発信しています。
動画内では、本部や店舗従業員を招いた対談を行っています。
また、サステナビリティ推進部の2人がサステナビリティに関する知識について説明する動画もあります。動画の中では、おすすめの書籍や映画などをサステナビリティ視点で選んでご紹介しています。
ユナイテッドアローズのサステナビリティ=SARROWS
2022年10月、ユナイテッドアローズでは、サステナビリティ活動を「SARROWS」とネーミング化し推進していくと発表した。
具体的には、「Circularity(循環するファッション)」「Carbon Neutrality(カーボンニュートラルな世界へ)」「Humanity(健やかに働く、暮らす)」の3つの目標の設定や、それぞれの目標に関する具体的な数値目標も設定した。 |
ーー「SARROWS」を策定したきっかけについて教えてください。
玉井:ユナイテッドアローズのサステナビリティ活動を、より多くのお客様の興味が湧くようにお伝えしたいと考えたのがきっかけです。
話し合いをすすめる中で、サステナビリティ活動をブランド化させるという案がでました。
ファッションレーベルのように、弊社の活動のあらゆる場面で登場する「合言葉」を作ることで、お客様・従業員・あらゆるステークホルダーの皆様にユナイテッドアローズのサステナビリティ活動を身近に感じてもらえるのではないかと考えました。
ーーSARROWSでは具体的にどのような目標を掲げていますか?
玉井:2020年4月に策定した16個のマテリアリティの中から、より従業員やお客様とともに活動を進めていくことを意識して、3つの活動分野をピックアップしました。
1つ目は、ファッションの循環を目指す「Circularity」です。
Circularityでは、2030年までに商品の廃棄率を0.1%、環境配慮商品の割合を50%にする数値目標を掲げています。
2022年8月に実施した衣料品回収の取り組みである「リサイクルアクション」では、実際にお客様に参加していただいて服が循環する仕組みを体感していただければと考えています。
2つ目は、カーボンニュートラルの実現を目指す「Carbon Neutrality」です。
Carbon Neutralityでは、2030年までに店舗やオフィスのCO2排出量30%削減、サプライチェーンのCO2排出量15%削減、再生可能エネルギーの割合50%という数値目標があります。
ユナイテッドアローズでは、店舗やオフィスにおいて省エネルギーや再生可能エネルギーへの取り組みを行っています。そのような店舗でお買い物していただくことで、お客様のカーボンニュートラルへの取り組みに貢献していきます。
3つ目は、従業員をはじめとするステークホルダーの方の幸福感を作り出す「Humanity」です。
Humanityの数値目標は、2030年までに行動規範同意書の取得率100%、従業員エンゲージメントスコア80%です。
ユナイテッドアローズでは、商品の生産を委託させていただいているお取引先様に、弊社が大切にしたいルールについて記載している「行動規範」への賛同をお願いしています。
私たちはものづくりをしている方の幸福度が上がると、製品の質も上がっていくと考えています。質が良く安全な環境で作られた服は、安心感も一緒にお客様にお届けできるのではないでしょうか。
ーーサステナビリティの取り組みをコンセプトメイキングすることの意義についてどのようにお考えですか?
玉井:ネーミング化したことで、説明的な言葉よりもイメージをしやすくなったと思います。
2020年4月に策定した16個のマテリアリティは、企業目線に立って第一に網羅性を優先して策定していたので、お客様をはじめとしたすべての方にとって分かりやすいものではありませんでした。
SARROWSを推進するにあたって、皆様と取り組みたい課題をピックアップしたり、イラストを用いたことにより、すべてのステークホルダーの皆様に身近に感じていただくことができたと思います。
ーー今後、社内でどのように「SARROWS」の活動を広げていきたいですか?
玉井:現在はまだ構想段階ではありますが、私たちのあらゆる活動の目印としてSARROWSのマークを付けていきたいです。
たとえば、環境配慮商品などにも何かしらの形でSARROWSのマークを付けたいと考えています。
また、店舗でお買い上げ時に商品を入れる包装資材にもSARROWSのマークを付けていきたいです。包装資材には環境配慮素材を使用しておりますが、現在は認証マークのみ付けられています。今後は認証マークと共にSARROWSのマークも付けていきたいです。
ーーこれからの展望について教えてください。
玉井:SARROWSを共通の目印にして、さまざまなことを実践していきます。
ファッションブランドのロゴは、ブランドの哲学やデザイナーの想いが感じられるものですよね。ブランドのロゴと同じように、SARROWSを見るだけで、「ユナイテッドアローズのサステナビリティのたたずまいが浮かび上がってくる」くらいにまでなれたらと思います。
さいごに
今回の「SARROWS」としての発信は、より一層従業員やお客様をはじめとする全ての方と「ともに」取り組みを進めていきたいという、ユナイテッドアローズの想いを感じるものだ。
サステナビリティの活動をロゴとして発信していくということは、ファッションで私たちの生活を彩っているユナイテッドアローズだからこそできる発信なのではないだろうか。
将来、「SARROWS」のロゴが作り手と消費者の想いを繋いでいくのだと感じた取材だった。
ユナイテッドアローズのサステナビリティ活動は【こちら】