【更新日:2021年2月18日 by 佐野 太一】
引用:ユニセフ公式サイト
ユニセフ(国連児童基金)事務局長のヘンリエッタ・フォア氏 は2021年2月17日、年次公開書簡を発表した。創設75周年を記念した活動を開始するにあたり、パンデミックを子どもたちが暮らしやすい世界について考えるための重要な機会と捉えている。
フォア事務局長は書簡の中で、国際社会が注目すべき以下の5つのテーマを挙げた。
①世界的なワクチンへの信頼の再構築
②デジタル・ディバイドの解消
③若者のメンタルヘルスと福祉の課題への取り組み
④差別との闘い
⑤気候変動への取り組み
ワクチン接種への躊躇はパンデミック克服の大きな障害になると警鐘を鳴らし、ワクチンへの信頼再構築の必要性を訴えた。
さらに、世界的なロックダウンがデジタル上に内在する不平等をいかに露呈したかを指摘。2020年の休校措置のピーク時には、世界の学齢期の子どもの約30%が遠隔学習にアクセスできなかったとし、デジタル・ディバイド(情報通信技術を利用できる者と利用できない者の格差)の解消を求めている。
差別や貧困といった新型コロナウイルスの感染拡大前から存在する国際問題に関しては、パンデミックではなく社会が引き起こしたものだと糾弾。新型コロナウイルスによって人々が受ける影響が人種や収入に左右される状態を改善しなければならないと主張した。
ヘンリエッタ・フォア氏はユニセフ創設当時を振り返り、「私たちは世界各国に新しい保健福祉システムを構築し、天然痘と野生のポリオを撲滅した。そして、国連を設立した。歴史は再び、私たちにこうした前進を求めている」と述べている。
日本でもワクチン接種が開始するなど、国際協力によるパンデミック克服の兆しが徐々に見えてきたものの、世界各地に横たわる格差や分断は依然として顕著だ。1つの課題だけにとらわれない包括的なテーマへの取り組みが必要なのではないだろうか。
SDGs CONNECT ニュース/イベントライター。立教大学でジャーナリズム論を主に研究。記事執筆の傍ら、陶芸制作にも取り組んでいる。好きな食べ物はメロン。