【更新日:2021年6月4日 by 佐野 太一】
日本ユニセフ協会は5月26日、民法の「懲戒権」に関する規定(822条)が削除されるよう、法務省に対して意見書を提出した。
民法には「監護及び教育に必要な範囲内で、懲戒することができる」(第822条)との規定がある。懲戒とは、不正・不当な行為に対して、戒めの制裁を加えることを指す。同規定の解釈によっては「子の利益のため」であれば、暴力の使用を認める余地を残しており、児童虐待を正当化しかねない文言として課題視する声もあがっていた。
これをふまえて法務省は、民法(親子法制)の改正に関する検討を推進。なお、日本の民法典のモデルとなったと言われているフランスやドイツの法律では、すでに懲戒の定めは除かれている。
同省が2021年2月に公示した「民法(親子法制)等の改正に関する中間試案」では、「懲戒権」のあり方について3案が示された。
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日本ユニセフは、2010年に児童虐待防止のための親権制度の見直しが行われた際にも、今回と同趣旨の意見書を法務省に提出している。「懲戒に関する規定を見直すこと」を検討課題とするだけでなく、児童虐待防止法の改定と並行して民法822条(懲戒)第1項、第2項を「削除」することを要望してきた。
その理由として、「懲戒」という言葉は厳罰を想起させ、体罰を容認しかねないことなどを挙げている。
また、同協会は、中間試案で言及された嫡出の推定の規定の見直しについて、子どもの人権が最優先に確保される形で実現することを求めている。
SDGsゴール16「平和と公正をすべての人に」では、「子どもに対する虐待、搾取、人身売買およびあらゆる形態の暴力および拷問を撲滅する」ことがターゲット16.2として掲げられている。児童虐待は、身体的なダメージだけでなく、トラウマやPTSDとして精神的なダメージも与える場合がある。いかなる視点からも正当化が許されない行為だ。
SDGs CONNECT ニュース/イベントライター。立教大学でジャーナリズム論を主に研究。記事執筆の傍ら、陶芸制作にも取り組んでいる。好きな食べ物はメロン。