阪大、二酸化炭素を液体燃料の原料に効率的に還元できる触媒を開発|CO2有効活用の選択肢広がる

#SDGs目標13#SDGs目標7#SDGs目標9 2021.05.31

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【更新日:2021年5月31日 by 佐野 太一

引用:JSTと大阪大学による共同プレスリリース

大阪大学は5月26日、独自に開発した触媒を用いて、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原料として一酸化炭素(CO)を150℃以下の低温で製造することに成功したと発表した。

CO2は地球温暖化の主な原因物質とされており、世界規模でその排出量削減に向けた取り組みが行われている。日本でも2050年までにCO2を含む温室効果ガスの実質排出ゼロの実現が目標に掲げられており、CO2を炭素資源と捉えて回収し、有用物質へと再利用する技術の開発が先端科学技術の主要なテーマとなりつつある。

CO2を還元することによって得られるCOは、ガソリンやジェット燃料などの液体炭化水素の原料となる有用な化学原料。CO2をH2と反応させてCOを得る反応には、従来500℃以上の高温が必要とされており、エネルギーの非効率性が実用化への課題とされていた。

今回、阪大大学院工学研究科の桒原泰隆講師、山下弘巳教授らの研究グループは、モリブデン酸化物に白金(Pt)ナノ粒子を固定した触媒を用いると、140℃の低温でもCOが高効率に生成されることを発見。さらに、触媒に光を照射すると反応速度は最大で4倍程度まで向上したという。

◎開発した触媒の走査型電子顕微鏡像(左)と透過型電子顕微鏡像(右)

同研究グループが開発した触媒は、調製が簡単なことや、分離・回収が容易な固体であること、廃熱を利用できる低温(140℃付近)でも駆動することなど、実用化に不可欠な要素を兼ね備える。

グリーン水素や太陽光といった再生可能エネルギーと組み合わせることで、CO2を効率的に有用物質へと変換するためのクリーンな触媒技術としての利用が期待できるという。

この研究成果は英国王立化学会誌「Journal of Materials Chemistry A」で公開されている。

掲載された論文はこちら

SDGsゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」では、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーの利用が重視されている。「再生可能」とはいえ、生産できるエネルギーの量は無限ではない以上、あらゆる物質やその成分を「資源」ととらえる視点が必要になってくるだろう。

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