【更新日:2021年5月10日 by 佐野 太一】
海洋研究開発機構(JAMSTEC)や気象庁気象研究所などが参画する国際研究チームは5月7日、新型コロナウイルス感染症の流行による温室効果ガスやエアロゾルなどの排出量減少が地球温暖化の進行に与える影響を評価し、発表した。
各国がロックダウンなどの行動制限を課すことで、2020年に発生した二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスや人為起源エアロゾル(大気中に浮遊する微粒子)などの排出量は、前年比で産業革命以降最も大きく減少した。CO2に関しては、世界全体で年平均7%ほどの排出量減少につながったと言われている。
温室効果ガスなどの排出量減少が気候や地球温暖化にどのような影響をもたらすかについては、これまで簡単な数値シミュレーションで見積もられていたが、最新の気候モデルを用いたシミュレーション結果はまだ行われていなかった。
そこで、世界16カ国の気候モデル研究者を含む国際研究チームによるモデル相互比較計画(略称CovidMIP)が立ち上がり、排出量の減少が気候変動にどのような影響を及ぼすかが定量的に調査された。
◎新型コロナウイルス感染症の流行による温室効果ガスなどの排出量の減少がある場合とない場合の東アジア・南アジア域での年平均の地上気温変化(左)と降水量変化(右)
国際研究チームによると、2020~2021年の2年間のみ温室効果ガスやエアロゾルの排出量が減少しても、2020~2024年の地上気温や降水量にはほとんど影響しないという。コロナ禍による一時的な排出量減少が地球温暖化の進行に与える影響は限定的だということだ。
月単位などの短期的な影響や極端現象、地球の炭素循環、大気循環への影響を評価するには今後の詳細な解析が必要で、新型コロナウイルス感染症終息後、社会の取る経済シナリオを想定したシミュレーションも行っているという。
SDGsでは、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」として各国が温室効果ガス削減目標をはじめとした具体的政策を定めることが求められている。短期的な成果に一喜一憂せず、長期的な視点を持った取り組みを進めることが肝要だ。
SDGs CONNECT ニュース/イベントライター。立教大学でジャーナリズム論を主に研究。記事執筆の傍ら、陶芸制作にも取り組んでいる。好きな食べ物はメロン。