日本の小学校とLGBT教育-現状と私たちに出来ることを紹介

#LGBT#LGBTQ#ジェンダー 2023.03.24

この記事をSNSでシェア!

 

日本の小学校では、LGBTの教育に対してどのような対応をしているのでしょうか。

近年、LGBTの理解や取り組みが進むにつれて小学校での教育はどうするべきか議論になっています。

今回は、日本の小学校でLGBTについてどんな教育をしているのか、現状と問題点、私たちにできることを紹介します。

▼SDGsについて詳しくはこちら

【この記事でわかること】

LGBTとは-簡単に説明

まず、LGBTについて説明していきます。

LGBTとは、「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の頭文字をとった言葉です。

それぞれ性的指向や性自認が違います。レズビアンは「女性の同性愛者」、ゲイは「男性の同性愛者」、バイセクシュアルは「両性愛者」、トランスジェンダーは「心の性と身体の性が一致していない人」を指します。

また、LGBT以外にも「LGBTQ+」「SOGI」などの言葉も使われています。

LGBTQ+

「Q」は、「クィア」、「クエスチョニング」と呼ばれ、自分の性自認や性的指向が定まっていない人を指します。「+」はLGBT以外の分類できない性別を含んでいる事を表します。

「LGBTQ+」という言葉は、表現できていないセクシュアルを含み、全てのセクシュアルマイノリティに配慮を示す表現です。

SOGI(ソジ)

「SOGI」とは、性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)の頭文字を取った言葉です。SOGIは、全ての人が持っている「属性」を表す言葉です。

日本の小学校LGBT教育の現状

日本の小学校で行われているLGBT教育の現状はどうなっているのでしょうか。

2018年に公表された「新学習指導要領」には「性の多様性」は盛り込まれず、今までと変わらない内容になっています。

「LGBTを指導内容に入れてほしい」という声もありますが、文部科学省によって却下されています。

小学校で使用されている教科書には、LGBTに関する記述のあるものもあります。しかし、教科書の選択は自治体や学校に寄るので、必ずLGBTを学べるとは限りません。

さらに、指導する教員の知識不足が問題となっています。

指導する側のLGBTの知識が十分でなければ、正しい知識を教えることはできません。理解不足を解消するために、研修やワークショップなどを実施しています。

トランスジェンダーの8割が小学生で性別違和感を感じ始める

トランスジェンダーの人は、生活のどこで違和感を感じるのでしょうか。

初めて人と共同生活をする小学校では、トランスジェンダーの約5割の人が性別に違和感を感じ始めています。

引用:ReBit|LGBTもありのままでオトナになれる社会へ

しかし、LGBTであると自覚すると同時にいじめや不登校も起きています。

小学生のとき、LGBTでいじめや暴力を受けたことがあるLGBT人は68%、不登校を経験したことのあるトランスジェンダーは29%、自殺念慮を抱いたことのあるトランスジェンダーは58.6%となっています。

トランスジェンダーの人は小学生になると、性別の表現や自分の性別について悩み始めます。

一人称に「私」などを使っていると周囲からからかわれたり、髪を短く切ることで「女らしくしろ」と注意されることもあります。

自分では普通と思っていても、周りからは「他と違う」と言われ、いじめに発展し不登校や自殺念慮を抱くことがあります。

小学校LGBT教育のメリット・デメリット-海外の事例も紹介

LGBTへの理解を広げていくために、どの段階でLGBT教育をしたらよいのでしょうか。

小学校のLGBT教育は、小学生では理解できないからやめるべきという意見があります。しかし、実際に性別の違和感を感じている人は多く、教育も早い段階で始めるべきであるという意見もあります。

では、小学校のLGBT教育のメリットとデメリットは何でしょうか。海外の事例も合わせて説明します。

メリット-当事者のストレスや不安感を減らせる

LGBT教育で周囲や自分のことを知ることで、LGBT当事者のストレスや不安を減らすことができます。

小学校入学や進級には、環境変化があり子どもにはストレスがかかります。特にLGBTの人は、環境の変わりやすい4月・5月に学校に行きたがらない傾向があります。

LGBTの人の不登校理由として、「スカートを履きたくない」「作文を書く際に「私」と書くことに抵抗がある」などです。

不登校傾向には、LGBTであることを伝えることが出来ない、違和感があることを上手く表現できずストレスや不安を抱えてしまうことが主な原因です。

学校全体で、教師も含め生徒がLGBTについて知ることができれば、生徒は相談しやすくなり不安を取り除くことができます。

デメリット-いじめやカミングアウトに繋がる

LGBT教育で問題になるのは、正しい知識や教育環境が整っていないと、いじめやカミングアウトを助長してしまう可能性があります。

2021年に令和4年度から、高校生が使用する教科書にLGBTQについて記載されることが決定しました。

家庭科、保健体育の教科書に同性パートナーシップ証明制度や同性婚、SOGIハラについて記述されています。

このようにLGBT教育が広まってきていることは事実ですが、全ての教材に記載されているわけではありません。

さらに、小学校で使用される教科書にLGBTの記載は進んでいません。LGBT教育をする場合、外部団体に講義をしてもらうことが一般的です。教材だけでなく、LGBTの知識を身につけた教師も少ないです。

LGBTの正しい知識や対応を出来る環境が揃っていないのが現状です。

スウェーデン-就学前からLGBT教育を行う

スウェーデンでは、学校教育の中で、性の多様性を尊重する上で必要となる価値観や、LGBTの知識を教えることが義務づけられています。

スウェーデンの特徴として、LGBT教育は就学前から行われていることです。

スウェーデンでは共働きが主流で、育児休暇を終了する1歳から就学前学校に通い始めます。そこで体験を通じて集団の中で価値観を形成していきます。

就学前学校では、「ごっこあそび」をする子が多いのですが、その時に「男の子だから」「女の子だから」という理由で教師が遊びを止めることはありません。

スウェーデンの子供たちは、就学前に学校の中で差別することなく受け入れる価値観を学んでいきます。

▼関連記事

LGBTに関する日本の取り組み7選-海外と比較しながら徹底解説-

オランダ-LGBT教育先進国

オランダは、2000年に世界で初めて同性婚を合法化した国です。世界で初めて同性婚を認めたということで、LGBT教育にも力が入っています。

特にオランダでは、初等教育の段階で必須科目に「セクシュアリティと性的多様性」という項目が入っています。

この授業では、セクシュアリティや人種、文化の違いを尊重することが重要であると学びます。

さらに、中等教育ではLGBTの権利や社会的背景も学ぶようになっています。LGBTの擁護団体による授業も含まれます。

▼関連記事
海外のLGBT教育5選-フィンランド・スウェーデン他、日本との比較も紹介

LGBT教育はいつから行うのが適切か-低学年からを推奨

LGBT教育はいつから行うのが良いのでしょうか。

文部科学省では2015年から3年連続で、「性的指向や性自認の多様性について教員の理解が必要である」という文書を出しています。

しかし、実際の教育現場ではLGBTへの対応が遅いとの声も上がっています。LGBTに関する記載のある教科書は増えてきましたが、中学校や高校の教科書に多く小学校ではあまり普及していません。

さらに、小学校でLGBT当事者の6割がいじめを経験しています。このいじめは容姿やしぐさを揶揄する言動が中心です。

LGBTも含め小学校で多様性を学ぶことは、誰であろうと傷つける言葉を言ってはいけないと教えることに繋がります。LGBTの知識を小学生が得ることでいじめを減らす一歩になるのではないでしょうか。

▼関連記事

日本のLGBTの現状-教育や仕事など分野別に課題を紹介

小学生の悩み・性の違和感を感じるポイント3選

続いて、LGBT小学生の悩み、性の違和感を感じるポイントについて説明します。

小学生に入る当たりで性に違和感を持つ人は多く、悩みを抱えてしまいます。さらに、小学生は違和感を伝えることや表現することができないことがあります。

男女の文化が根強い学校で、苦しさや悩みを感じている部分はどこなのでしょうか。

いじめ-小学生LGBTのうち68%が経験

小学生LGBTのうち68%がいじめや暴力を経験しています。

引用: 【速報】LGBTQの子どもへのいじめをなくすSpirit Dayにあわせ、小学生への調査公開。6割が日常生活でLGBTQへの差別的言動を見聞き。多様な性に関する授業後は9割が今後は言わないと回答。|PRtimes

特に、いじめの多い時期は小学生高学年から中学生の二次性徴期に集中しています。
身体の変化が目に見えてわかる時期に、自身の性自認に違和感を持つことがあり悩んでしまいます。
さらに、身のこなしや話し方が周りと違うという理由でいじめが起きています。知識や情報が不十分な子どものうちは、「他の人と違う子」がいじめの対象になるのです。

二次性徴期

身体の各部分に見られる男女の特徴。成人としての性の特徴が現れてくる。

トイレ-身体の性との違いが違和感に繋がる

トイレは、男女で分かれている場合が大半です。

特にトランスジェンダーが使いづらさを感じることが多いです。どちらの性か決まっていない、または一致していないトランスジェンダーは、男女どちらのトイレを使用したらよいのか悩んでしまいます。

さらに、トランスジェンダーが性自認に基づいてトイレを使用すると身体の性と別のトイレを使用することになり、周囲からの視線が気になってしまいます。

▼関連記事

LGBTのトイレ問題とは?-問題の解決策や反対の声について紹介

ランドセルの色-男女の色のイメージが違和感に繋がる

ランドセルは、「男の子は黒、女の子は赤」というイメージが長く定着していました。今までのランドセル売り場では、男の子用、女の子用と分けられて販売されていました。

しかし、最近のランドセルでは男女関係なく多様な色展開をしています。

イオンでは、2001年に24色のランドセルを売り出しました。その後も、他のメーカーからも性別関係なくランドセルの色を選べるように業界が変化しています。

この変化は、小学校に入学する段階でLGBTの意識があると言えます。ランドセルの色選びで自分の性自認に初めて違和感を持つ人もいます。

男女の色のイメージが定着したランドセルが、LGBTの一つの機転だと言えます。

引用:AEON|ランドセル

ランドセルは一生に一度、6年間使用するカバンです。色を選ぶ子供も、男女関係なく自分の好きな色を選ぶようになってきました。

戦隊ヒーローが好きな男の子が赤のランドセルを選んだり、大人っぽい茶色や黒を選ぶ女の子もいます。

引用:edumotto|“好きな色”を選ぶことができる社会へ

引用:edumotto|“好きな色”を選ぶことができる社会へ

しかし、実際に購入されたランドセルの色を見ると、女の子は赤より紫が多いですが、男の子は黒が半分以上を占めています。色展開やデザイン性など男女のイメージは完全に払拭出来ていない部分もあるようです。

LGBTと小学生の先生-対策3選

クラスにLGBT該当者がいた場合、先生はどのような対応が必要でしょうか。

LGBTに出会う機会も少なく、良い対応をし損ねる教師もいると思います。傷つけるつもりはなくても、無意識に生徒との信頼も崩れてしまいます。

どのように対応すると良いのか、説明していきます。

先生の意識の現状-LGBTの知識の不足

LGBT理解は広がっていますが、実際に勉強すべきなのは子どもだけでしょうか。

教える立場の教師も同じ人間です。知らないことを教えることはできません。

LGBTについて積極的に学んでいる小学校教師はとても少ないです。相談できる場がないという悩みも、知識がない先生が多いことが原因の一つです。

「LGBTの知識をつける」ことを意識できていない先生もいます。

全ての人が過ごしやすくなるよう、先生がLGBTについて知ることも重要です。

▼関連記事

LGBT教育に必要な取り組み5選-現在の問題点と海外の取り組みも紹介

LGBTへの悪口に対して注意する

LGBTへの気になる言葉や悪口など、先生が注意するべき場面ではどうしたらよいでしょうか。

セクシュアルを揶揄する表現は、特にLGBT当事者が気にする言葉です。何気ない一言で一生傷を負うことにもなります。

その言動が人を傷つけているのだと説明し、釈然とした態度で接することが大切です。

おすすめ教材-Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)

最後に、セクシュアルマイノリティを勉強できる教材「Ally Teacher’s Tool Kit (アライ先生キット)」を紹介します。

引用:すべての小学校をセクシュアルマイノリティの子供にとっても過ごしやすい場所に。|ReBit

この教材は、セクシュアルマイノリティの子供にとって過ごしやすい小学校を作るための教材キットです。
教師用と生徒用の教材があり、教師は「アライ(Ally)先生」となりセクシュアルマイノリティの人も、セクシュアルマジョリティの人も自分自身を見つめ直す授業ができます。

アライ

セクシュアルマイノリティの人たちを理解し、支援する人。

▼関連記事

LGBTの人が困ること14選-現状から解決策まで徹底解説

保護者にできること

子どもがLGBTであると気づいたときや、LGBTとカミングアウトされたとき、保護者に出来ることは何でしょうか。

ずっと一緒に暮らしていた子どもがLGBTであることに驚くと思います。でも、驚くことは悪いことではありません。

本人がカミングアウトしたということは、親御さんに知ってもらいたいと思ったはずです。

今後、保護者がどのような対応をしたらよいのか、カミングアウトされていなくても普段から出来ることを説明していきます。

コミュニケーションをとる-カミングアウトのきっかけ作り

LGBT当事者にとって、カミングアウトすることは大変なことです。

同じ家に暮らしていてもコミュニケーションを取っていないと、カミングアウトされた側はびっくりするだけで、否定することがあります。

普段のコミュニケーションは、セクシュアリティについてすぐに受け入れられなくても話すきっかけ作りになります。

ただし、必ずカミングアウトをする必要もされる必要もありません。当事者が無理にカミングアウトする必要はありません。

当事者がどう思っているのか、どうしたら楽になるのか、慎重に考えていく必要があります。

そのために、普段からコミュニケーションを取ることで話しやすい状況を作って行くことが大事です。

相談窓口を利用する

LGBTであるとカミングアウトされた、子どもがLGBTかもしれないと不安になる人もいます。
ここではLGBTのために設けられた悩み相談窓口を紹介します。

よりそいホットライン

引用:よりそいホットライン

よりそいホットラインとは、国の「寄り添い型相談支援事業」による補助金を受け、授業者が行う電話相談です。

よりそいホットラインでは、7つの分野に分けそれぞれの相談員が電話に対応しています。

① 一般ライン

② 自殺予防ライン 

③ DV性被害者等女性のための専門ライン 

④ セクシュアルマイノリティライン 

⑤ 外国語ライン 

⑥ 広域避難者ライン 

⑦ 被災地の10代、20代の女性のための専門ライン

よりそいホットラインとは、国の「寄り添い型相談支援事業」による補助金を受け、授業者が行う電話相談です。

また、お悩みクラウド「Moyatter」やチャットルーム「もやもやルーム」など、若者が気軽に相談しやすい環境になっています。

▼よりそいホットラインの電話番号はこちら
0120-279-338

気負わない-それぞれの人生を尊重する

LGBT当事者を子どもに持つ親御さんは、子どもがLGBTであることを受け入れられない人や気負いすぎてしまう人もいます。

子どものことを思って相談や話を聞くことはできますが、一番大事なのは本人の気持ちです。

自分のことのように悩んでしまい苦しむ親御さんがいます。子どもに何かあったらと考えるととても心配ですが、必要以上に気負うことはありません。

子どもは子ども、親は親。それぞれの人生を尊重しましょう。無理に背負うと余計に苦しくなってしまいます。

子どもが悩んでいたら話を聞いてあげる、サポート役になりましょう。話を聞いてもらえることは本人にとっても安心する場所になるはずです。

まとめ

小学校のLGBT教育や問題点を紹介しました。

LGBTの理解や教育は広まっていますが、まだまだ苦しんでいる人は多いです。人との違いを受け入れ、理解していくためにもLGBTの教育は必要です。

「知らないからわからない」で終わらせず自分で少しでもLGBTについて知っていくことが大切です。

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    SDGsの3つの反対意見-SDGsに取り組む狙いを踏まえた解決策を紹介

    《笑い×SDGs》吉本興業の取り組むSDGs|取り組みからSDGsをテーマにした賞レースまで