LGBT教育に必要な取り組み5選-現在の問題点と海外の取り組みも紹介

#LGBT#LGBTQ#SDGs#ジェンダー#教育 2023.01.24

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【更新日:2023年1月24日 by 大川 智也

近年、性の多様化が進み、LGBTに関する認識が少しずつ深まっています。教育現場でもLGBTを含む性的マイノリティへの対応が求められており、LGBTへの支援や対応が重要になっています。

とはいえ、いまだにLGBTを原因とするいじめや偏見に悩む児童や生徒は多く、適切なLGBTに関する教育が不可欠です。

この記事では、LGBT教育の問題点や課題、求められる取り組みなどを紹介します。

【この記事で分かること】※クリックするとジャンプします。

LGBTやLGBTQの意味とは

LGBTQIA+
皆さんはLGBTやLGBTQの意味についてどのくらい知っていますか。LGBT、LGBTQはセクシュア ル・マイノリティ(性的少数者)の総称です。

まず、最初にLGBTの意味についてまとめていきます。LGBTとは以下の4つの意味があります。

L=レズビアン(女性同性愛者)

G=ゲイ(男性同性愛者)

B=バイセクシュアル(両性愛者)

T=トランスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性別にとらわれない性別のあり方を持つ人)

LGBTにQを加えて、LGBTQという言葉もありますが、このQとはクイア、クエスチョニングを表しています。「クイア」とは、規範的な性のあり方以外を包括する言葉として使われており、「クエスチョニング」は、自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人、わからない人などを意味します。

▼LGBTQについて詳しくはこちら

日本のLGBT教育の現状と問題点

レインボーフラッグ
ここまでLGBTやLGBTQにおける言葉の意味についてまとめていきました。

続いて、日本のLGBT教育の現状と問題点について解説していきます。

LGBTに関する教員の知識が不足している

問題点の一つは教員の知識不足です。

LGBTについて学ぶ機会も少ないため、教員自身がどう授業内でLGBTに関して取り扱えばよいのかわかっていないことや、また多くの教員自身がLGBTについて正確な知識がない現状です。

指導する側に十分な知識がないと、子どもたちに正しい知識を教えることができません。セミナー等に参加して理解を深めることが必要です。

LGBTの内容が教科書に盛り込まれていない

現在の教科書には、LGBTに関するテーマの記載が少ないという現状が問題として挙げられます。

例えば、平成27年に文部科学省から教職員に向けて発行された「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」の、新学習指導要領には、「性の多様性」は盛り込まれず、依然として変わらない「思春期になると異性への関心が芽生える」という記載が教科書に残ったままになっています。

これに対して、変える必要があるという声も多々ありましたが、それらの意見は文部科学省によって却下されています。

このように教職員向けのものであっても、LGBTを理解していないものがあるということも問題の一つです。

日本のLGBT教育の課題

勉強中
日本のLGBT教育の現状と問題点についてまとめていきました。

続いて、日本のLGBT教育の課題について解説していきます。

教師がLGBTについて正しい知識を身につける

日本のLGBT教育の課題は、教師がLGBTに関する正しい知識を身につけることです。

現在、LGBTに関する知識が少ない教師が多くいます。このように、教師側の LGBTに関する知識が不足していると、子どもたちに間違った知識を教えることになってしまいます。

例えば、教師が「女子だから〜」「男子だから〜」と言うことが度々あり、「LGBTに配慮している」と言う、口だけの大人が言うことに違和感を感じるLGBTの生徒も多いといいます。

教員がLGBTへの理解を深めるることで、正しい知識を教えることができるようになります。

学習指導要領や教科書を性的マイノリティに配慮した表記にする

学習指導要領や教科書を性的マイノリティに配慮した表記にするという点も課題として挙げられます。

子どもたちが学ぶ学習指導要領や教科書が性的マイノリティに配慮していない内容であると、生徒がLGBTに関する授業を受けながら不快な思いをしたり、lgbtの友達に対するいじめや差別をしてしまったりする可能性があります

そのため、学習指導要領や教科書を性的マイノリティに配慮した表記にすることが必要です。

関連記事:《徹底解説》女性とSDGsの関係性|日本の抱えるジェンダー問題を徹底解説

日本のLGBT教育に求められる取り組み5選

カラフルな本
ここまでは、日本のLGBT教育の現状、問題点や課題について紹介してきました。日本のLGBT教育に求められる取り組みとはどのようなものがあるのでしょうか。

続いて、日本のLGBT教育に求められる取り組みについて5つ紹介します。

▼ジェンダー平等に向けた取り組みについて詳しくはこちら

LGBT講演会・勉強会を開催する

LGBT講演会・勉強会を開催することにより、正しい知識を身につけることができ、より多様性のある教育を行うことができるようになります。

教えるべき立場にいる教師や、LGBTの子を持つ保護者であったり身近にLGBTの方がいる環境にある主体が学ぶ必要があります。

制服や水着、体操服の選択肢を増やす

学校では着ることを義務付けられている制服や水着、体操服の選択肢を増やすことも大切です。

様々な性的マイノリティの方が不快な思いをせずにきたい服を着ることができます。また、特定の人だけ制服や水着、体操服が違うと疑問に思う生徒が増える可能性があります。

しかし、選択肢を増やすことにより「なぜ特定の人だけ」等という疑問も解消されます。このようなことから、制服や水着、体操服の選択肢を増やすことは不可欠です。

着替えなどで多目的トイレや保健室の利用を認める

性的マイノリティの方は、どの場所で着替えるのにも自分の気持ちであったり周りの人の理解を得ることが難しいです。

そこで、多目的トイレや保健室といった別の空間で着替えることを認める等の、性同一性障害に悩む生徒へ配慮した取り組みが欠かせません。

当事者である生徒や保護者と相談する機会を作る

当事者である生徒や保護者と相談する機会を作ることで、当事者である生徒の嫌なことについてヒヤリングでき、保護者と教師が生徒の気持ちに少しでも寄り添うことができるようになります。

そのため、相談ができる環境を作るということが大切です。

学校内外で児童・生徒のサポートやケアを行う

学校内外で児童・生徒のサポートやケアを行うことも必要です。

例えば、教師・養護教諭・スクールカウンセラーを含めたサポートチームなどを作り、校内には支援委員会、校外にはケース会議などを適時開催しながら対応を進めることもできることの一つです。

他には、性同一性障害への対応は医療機関との連携があります。 医療機関による診断や助言は学校が専門的知見を得る重要な機会になります。教師や他の生徒、保護者への説明資料としても活用できますが、場合によっては、医療機関との連携やサポートが必要です。

海外のLGBT教育の取り組み3選

レインボーフラッグ
海外のLGBT教育の取り組みとはどのようなものがあるのでしょうか。

続いて、海外のLGBT教育の取り組みについて3つ紹介します。

性の多様性|スウェーデン

スウェーデンでは、1998年に国のカリキュラムで、すべての幼稚園が伝統的なジェンダーの役割とジェンダーのパターンを見直すこと、そして、子供たちに定型化されたジェンダーの役割を超えて探求することを義務付けました。

あるフィンランドの幼稚園では「男の子」と「女の子」という用語を完全に削除し、「名前」やどちらの呼び方にも属さない「hen」で呼んでいます。また、おもちゃをジェンダーで分けないことなど固定概念を生まない工夫がなされています。

公平性・反差別|フィンランド

フィンランド国旗
フィンランドの義務教育の目的は、

  1. 教育的課題
  2. 社会的課題
  3. 将来の文化的課題

をベースに考えられています。

フィンランドでは、すべての子供たちが平等な教育を受けることができ、授業料や教科書代さらには給食代もすべて無料になっています。

また、社会的課題は、教育を受けるにあたって公平、平等、公正な社会を構築し、どんな「性別」「宗教」「民族」等であっても差別されない環境を重視することです。

さらに、将来の文化的課題は、子どもたちは、その時代や環境の文化を受け入れた上で、独自の文化的アイデンティティを構築する必要があります。このようにフィンランドでは、公平性や反差別が重視された教育が行われています。

引用:National core curriculum for basic education

LGBTQ+の授業を義務化|スコットランド

2021年にスコットランドでは、世界で初めて性的マイノリティに関する授業である「LGBTQ+インクルーシブ教育」を公立学校のカリキュラムに組み込むことが義務化されました。

LGBTQ+の子供と若者の平等を促進する目的で、LGBTQ+の歴史、同性愛嫌悪への対策、LGBTQ+コミュニティに対する偏見などのトピックについて、年齢に応じたカリキュラムが組み込まれています。

また他にもスコットランドでは、4歳から親の同意なく学校での性別と呼び名を変更することや、学校のトイレや更衣室も「男性用」。「女性用」どちらでも使用することができます。このように、スコットランドでは、性別にとらわれない「ジェンダーニュートラル」を推進しています。

まとめ 

今回は、日本や海外のLGBT、LGBTQの教育について紹介してきました。

日本では、あまりLGBTの理解がされておらずまだまだ問題や課題が残っています。しかし、反対に北欧の国ではLGBTに理解がされています。

北欧の様に、今後の日本でもLGBTについて理解が深まるように一人一人が意識をもって学べるようにすることが重要です。

今後も性の多様性が広がり全ての人が生きやすい世の中になることを望んでいます。この記事で、少しでも性の多様性について関心が高まれば嬉しいです。

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