誰かの不要が誰かの必要になる|コメ兵が“リレーユース”でつくる循環型社会とは

#再利用#環境#高付加価値化 2023.01.20

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【更新日:2023年1月20日 by 鈴木 智絵

株式会社コメ兵(以下、コメ兵)は全国に102店舗(2023年1月20日現在)を構え、ブランド品の中古買取と販売を中心に展開している会社だ。

誰かにとって不要なモノを、必要な誰かにリレーしていくコメ兵のビジネスはまさに循環型社会の実現につながるものだ。

有限な価値あるものを無駄にしない、買取を通した「リレーユース」を社会に広げていくためにコメ兵はどのようなことに取り組んでいるのか。

今回は、広報部の責任者を務める吉田浩之さんに株式会社コメ兵のSDGsの取り組みを伺った。

普段の仕事がSDGsのゴール達成につながる

ーー自己紹介をお願いします。

吉田:広報部長を務めております、吉田浩之です。グループであるコメ兵ホールディングスではサステナビリティ推進室を務めております。そのため、SDGsに関する取り組みについてはグループも含めて推進しています。

株式会社コメ兵では、2021年に新設された広報部の責任者として現在は企業ブランディングと社内外のコミュニケーション向上に従事しています。

ーーホールディングスのサステナビリティ推進室と株式会社コメ兵の広報ではSDGsに関してそれぞれどのような役割を担っていますか?

吉田:サステナビリティ推進室は、「自社の取り組みが社会の問題解決に繋がっている」という企業価値を発信する役割を持っていると考えます。そのため、社員やスタッフに向けてSDGsの勉強会を行っていますが、一人ひとりがSDGs自体を理解するのはもちろん、「自分たちが普段行っている仕事がSDGsゴールの達成につながっている」ということが伝わる仕組みづくりが重要な役割です。

サステナビリティ推進室は、これらの目標達成のため、CSRとして総務が担当していた役割を向上させた形で2021年に新設されました。

一方で、株式会社コメ兵としての広報は各部署との連携を行いながらSDGsに取り組む役割があります。ホールディングスにはさまざまなグループ会社があるので、売り場での企画やオペレーションでの仕組みづくりなど現場目線での取り組みを進めるべく、提案と実行を繰り返しています。

一次流通の良さを伝えるために、リレーユースを思想から文化にする。

ーーSDGsに繋がる部分である、経営理念について教えてください。

吉田:「リレーユースを思想から文化にする」ことをグループのビジョンとして掲げています。リレーユースという言葉は、二代目社長が1995年当時、中古品に対して未だにネガティブなイメージがあったことから「人に繋いで物を有効的に活用することが大切だ」という想いを伝えるためにできました。

もともと弊社は、戦後まもない頃に着物を売り資金として活用し、仕入れと売るを繰り返すことでビジネスを確立した会社です。

「リユース」という言葉が一般的になるにつれ社内でもあまり使われなくなりましたが、再度「リレーユース」というものが創業の精神に近いと考え、グループかつ株式会社コメ兵でも「リレーユース」を体現してお客様の身近な存在になっていくことを一つのビジョンとして掲げています。

ーーリレーユースの実現のため、ブランディングで大切にされていることはありますか?

吉田:一次流通のブランドのイメージを壊さず、二次流通の良さを伝えていくことです。

お客様がコメ兵を通してご購入いただくものは、ロレックスの時計やエルメスのバッグなど一次流通のブランド物がほとんどです。

仲介するコメ兵の色を出してしまうのではなく、主役である商品を目立たせる、その物の価値を正確に伝えるブランディングを意識しています。そのため、サイトのデザインなどもシンプルな作りにしています。

コピー品の流通を排除するために、AI真贋を導入

ーー近年では、プラットフォームを通して個人が直接売買を行う仕組みも増えてきています。その中で、コメ兵が果たす役割はどのようなものだとお考えですか?

吉田:しっかりと価値のある物を繋いでいくことにコメ兵が売買の間に入ることの意義を感じています。

弊社では、「長く使い続けられる商品や愛される商品を繋いでいきたい」という想いのもとで主にカバンやジュエリーを商材として扱っています。プラットフォームでは適切な価格設定の難しさやブランドのコピー品の存在など未だに問題があります。

だからこそ弊社が仲介することで、物の価値を維持かつ向上させ適切に商品のバトンを手渡すことができていると感じます。

また買取後は、「商品センター」で必要に応じたメンテナンスや商品チェックを行い売り場に商品を出しています。商品センターの設置は場所も必要となりますし、コストもかかりますが、商品を正当な価値で次につなぐためにこだわりを持って確認を行っています。

商品センターで宝石の真贋チェックをしている様子

 

ーー一次流通の価値を壊さないために、「偽物の排除」に対しての取り組みはどのようなものがありますか?

吉田:「コピー品を絶対に流通させない」という観点から2つの取り組みを進めています。

1つ目が社員・鑑定士・販売スタッフへの教育です。教育を専門にする部署があり、鑑定士を大切に育てているため買取のレベルを上げることができています。どうしてもデビューしたての鑑定士がミスしてしまうこともありますが、買取後に何重もチェックを行うことで市場に流通することを防いでいます。

商品センターで宝石のゆるみを確認している様子

2つ目が「AI真贋の導入」です。偽物の流通量が増加傾向にあるだけでなく、その造りも年々精巧になってきています。より完璧な偽物品の排除のために2020年8月からはAI真贋を導入し、偽物排除の精度を高めています。

AIによる真贋型番判定

買取イベントでリレーユースを身近なものにする

ーーSDGsに関して、具体的な取り組みはありますか?

吉田:障害者のスポーツ支援があります。約10年前に障害者雇用に力を入れるため、車いすバスケットボールをしている方がそのまま働ける場を提供する取り組みを始めました。

車いすバスケットボールは現代になってメジャーな存在になってきたと思いますが、弊社はそこまで注目されていなかった時から選手を社員として採用することで、社員の活躍とスポーツの発展の両方を応援しています。

ーーコメ兵では他業種とのパートナーシップにも積極的に取り組まれていますよね。具体的にはどのような取り組みがありますか?

吉田:買取に対してネガティブな印象をお持ちの方に向けた買取イベントである、「KAITORI GO」を開催しています。2018年に古物営業法の法改正があったことで、店舗以外で買取を行うイベント企画が実施可能になりました。買取を身近にかつポジティブに感じていただくため、飲食店・商業施設・百貨店など普段の買い物をされるお店での企画を実施しています。

最初の企画ではコメダ珈琲店にご協力いただき、愛知県石川橋にあるコメダ珈琲店本店にて買取イベントを実施したこともあります。買取の査定には時間がかかるので、待っている間にコメダ珈琲店のコーヒーチケットを渡し、コーヒーを楽しんでいただきました。その結果、1週間で約3000万の買取に成功しました。

コメダ珈琲店本店

その後も多くのイベントを実施し、お客様にとって安心した場所で買取することで、買取を利用したことがないお客様の利用拡大につなげることができました。

リレーユースに参加しやすい環境を構築できたと思っています。

弊社のリソースだけでは限界があると思っているので、他社の強みをお借りしながら大きな取り組みとして何かできないかということを日々模索しています。

お客様の好奇心を、働く人の好奇心でつくりあげていきたい

ーー今後の展望を教えてください。

吉田:SDGs自体を目的にせず、結果的に目標に繋がるような本質的な取り組みを進めていきたいです。
その上で「人が介在する価値」を明確にしていきたいです。弊社では、マーケティングでも人が介在することで付加価値がつくことに重きをおいて動いています。それに付随して、働く人の利益かつ活動自体の社会貢献につながっていく仕組みの構築を目指しています。

ーーあらゆる好循環を自社の社員も含めて作っていくということですね。

吉田:そうですね、働く人がすごく重要だと考えています。

物を買い取る際の目利きの作業から、商品センターといった商品の価値を高めていく上での人が関わる部分・お客様に届ける販売での接客までこだわりをもっています。

買取から次のお客様に届けるまで自社で一貫して行なっているからこそ、「お客様の好奇心を生み出していくために社員・鑑定士・販売スタッフ自身も好奇心を持って仕事に取り組むことができる環境づくり」を2022年4月から推進しています。事業ドメインを「好奇心製造業」に再規定したり、社内コミュニケーションや休み方改革といった働き方まで幅広く取り組みを進めています。

おわりに

取材の中でも、一次流通のブランドの価値を壊さない自社のブランディングを心がけているというお話が印象的だった。

長く愛される商品を正当な価値で繋いでいく、リレーユースを大切にしているからコメ兵だからこそのブランディングだと感じた。

また、取材中には「人が介在することの価値」という言葉が何度も出てきた。
近年では、個人同士でモノの売買が行えるプラットフォームが多く存在するが、地域での会話を生む「KAITORI GO」の取り組みやAIと人の両者で目利き、そして販売スタッフの教育の徹底などコメ兵が大切にする「人」がモノのバトンを大切に繋げているのかもしれないと思った。

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