【更新日:2021年10月29日 by 大森令賀】
Jeff J Mitchell, 1346389197 / Getty Images
世界で初めてオンラインによる写真のライセンスビジネスを始めたGetty Imagesは10月末、サステナビリティに関する消費者意識を調査した、最新の「Visual GPS」の調査結果を発表した。
「Visual GPS」とは、MarketCast社と提携し、26カ国13言語で1万人以上の消費者と専門家を対象に調査を行い、「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにしたガイドラインで、今日本で求められているサステナビリティのビジュアルについて、Getty Imagesのクリエイティブ専門チーム「Creative Insights」マネージャーの遠藤由理が解説する(以下)。
「Visual GPS」の詳細はこちら見出し
気候変動に対する関心の高さ
まず現状として、10月31日〜11月12日にかけて開催される、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、昨年日本政府が打ち出した、「2050年のカーボンニュートラル」「2030年の温室効果ガス46%削減を目指す」という目標を達成するため、石炭火力発電を全廃しクリーンなエネルギーへの移行を促進するための具体案が出せるかに注目が集まっている。また、今年8月に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書で、温暖化の主な原因は人間活動であることが明らかにされ、地球環境を取り巻く厳しい状況への関心が高まってきている。
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このような状況の中で、気候変動への取り組みは国際的な競争力に影響するため、日本企業も迅速な対応が求められている。
ビジュアルの推移
ビジュアルを通しても、持続可能社会のためにできることを伝えていくことが大切であるが、過去に日本企業から人気を集め多くダウンロードされていたビジュアルは、抽象的なものが多く、行動喚起には繋がらないと言える。
検索キーワードの推移
検索キーワードは、過去1年間で「SDGs」をはじめ、「カーボンニュートラル」「ゴミ捨て」「脱炭素」「再生可能エネルギー」「EV」「家庭菜園」など、より具体的で身近なワードが検索されるようになり、日本企業からもサステナブルな社会や脱炭素を示すビジュアルが求められていることがわかる。
消費者が企業に求めるサステナブルな姿勢
2021年8月に行われた最新の「Visual GPS」 の調査結果によると、日本の消費者の82%が「企業が顧客の安全・安心を重視していることを示すことは重要だと思う」、66%が「ソーシャルグッドな取り組みをしている企業やブランドから買いたいと思う」、更に43%が「環境にやさしい努力をしているブランドの製品しか買わない」と回答しており、企業のサステナビリティに対する姿勢が、消費行動に影響していることがわかる。
・消費者が好意を示す企業の取り組みトップ5
1 企業の二酸化炭素排出量の削減 2 クリーンな製造過程の開示 3 同業他社と協力してカーボンフットプリントの削減などの変革を行う 4 社会的な活動への積極的参加 5 エシカルな材料の調達と製造方法 |
消費者の意識改革
また、最新の「Visual GPS」 の調査によると、日本の消費者の85%が、「使わなくなったものはリサイクルや再利用寄付をする」と回答するなど、日常生活で持続可能な行動をとっていることがわかった。
・環境に配慮して行っている行動トップ5
1 リサイクルする 2 環境にやさしい製品を使う 3 ペットボトル飲料、カプセル式コーヒー、ビニール袋などの使い捨て製品を使用しない 4 新品を買う代わりに、再利用、修理、中古品を購入する 5 石油などの使用を減らすような交通手段の選択をする |
今求められるビジュアル
日本において、持続可能な社会について考え、行動を起こすことが当たり前となっている一方、日本の消費者の67%が、「二酸化炭素排出量を減らすために、具体的に何をしたらいいのか分からない」と回答していることからも、いかに減らせるかを明確に示すビジュアルを行動喚起や意識改革につなげていくことが不可欠だ。
家庭菜園や、家のベランダでコンポストを行ったり、古着屋で買い物をしたりなど、嘘のないポジティブな持続可能な努力を、日常生活の中で実現できる身近な行動のビジュアルを見せることが、非常に重要である。
サステナビリティを表現するビジュアルを選ぶ際のポイント
・ 製品やサービスが、労働者の福利厚生に考慮した環境で生産されていることが描かれているか。 ・ 責任ある方法によって原材料を調達し、製品が製造され、消費者の元に渡っているのかがビジュアル化されているか。 ・ 自国や地元のコミュニティの支援を後押しするビジュアルか。 ・ サーキュラーエコノミーがビジュアル化されているか。 ・ 新しい持続可能な選択肢がビジュアル化されているか。 ・ 身近なストーリーがビジュアル化されているか。 ・ インクルーシブなストーリーがビジュアル化されているか。 |
信憑性そして、そこに映る身近な人の行動は常に消費者の心に響く。
様々な人種、年齢、体型、セクシュアリティ、ジェンダーアイデンティティ、宗教、能力、社会経済的グループの人々の生活が反映されていることも、重要なポイントだ。
Getty Imagesクリエイティブ専門チームマネージャー 遠藤由理氏 プロフィール
10 代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016年からはiStockのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基にCreative Insights(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。
2019年9月に開催された国連SDGサミットで、2030年までの10年間が「行動の10年」と定められ、企業や個人の取り組みの重要性がますます顕著になっている。今回の調査でも明らかとなったが、消費者の環境に対する意識は次第に高まっているため、企業側はうわべだけの取り組みではなく消費者を巻き込みながら責任を持って持続可能な社会に貢献してほしい。