【更新日:2021年6月21日 by 佐野 太一】
国連児童基金(ユニセフ)は6月17日、経済協力開発機構(OECD)および欧州連合(EU)加盟国(41カ国)の保育政策や育児休業政策を評価・順位付けした報告書『先進国の子育て支援の現状(原題:Where Do Rich Countries Stand on Childcare?)』を発表した。
総合1位のルクセンブルクにアイスランド、スウェーデン、ノルウェーの北欧諸国が続き、アメリカ(40位)、スロバキア(41位)などが下位に沈んだ。
日本の総合順位は21位だった。項目別の順位は以下の通り。
育児休業制度:1位 就学前教育や保育への参加率:31位 保育の質:22位 保育費の手頃さ:26位 |
日本は育休制度の項目で1位。しかし、それ以外の項目は22位以下となり、総合順位では中位に位置している。
同報告書の筆者であるユニセフ・イノチェンティ研究所のアナ・グロマダ氏は、「この結果の背景には、父親の育児休業が世界で最も長いにも関わらず取得率が低く、手頃な料金の保育サービスへのアクセスが限られているという落差があります。無償の保育・幼児教育へのアクセスの拡大、父親の育休取得の促進、保育従事者への正当な社会的評価などに、改善の余地があると言えるでしょう」とコメント。
2007年に日本で育休制度が導入されたときは、1.6%の男性のみが育休を取得していた。そこから2019年には5倍の7.5%に増え、公務員に限れば取得率は過去最高の16.4%となった。政府は、2025年までに男性の育休取得率を30%にすることを目指している。
グロマダ氏は、日本における保育従事者の社会的地位についても言及した。
「私は日頃から日本のデータ動向をチェックしていますが、最近、驚いたことがあります。保育士の3人に2人以上が、日本社会が自分の仕事を評価していないと感じているのです。これは調査した8カ国の中で最悪の結果であり、評価されていると感じている人の割合は、北欧諸国と比較すると2分の1以下です。保育士の仕事に対する世間の認識は、労働条件とともに、どのような人がその仕事に志願し、働き続けるかに影響を与えるだけでなく、保育の質の向上につながります」とコメントしている。
日本では、保育従事者となるためには学士または一定の高等教育を修了する必要がある。しかし、こうした専門職の社会的地位は低く、質の高い保育を行うために求められる複合的なスキルや子どもの発達に対する理解の高さとは相反するものとなっている。
SDGsゴール8「働きがいも 経済成長も」では、労働者の収入や健康、教育、就業機会を公平にし、著しく不利な立場に置かれる人をなくすことが掲げられている。職業や性別による待遇の差をなくしつつ、子どもたちには充実した教育機会を提供できるようにしなくてはならない。
SDGs CONNECT ニュース/イベントライター。立教大学でジャーナリズム論を主に研究。記事執筆の傍ら、陶芸制作にも取り組んでいる。好きな食べ物はメロン。