ESGウォッシュとは-ESGウォッシュに対する金融庁の対策も紹介

#ESG#持続可能#環境#金融サービス 2023.06.05

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【更新日:2023年6月14日 by 田所莉沙

ニュースや企業活動など、様々な場面で聞くことが近年増えた「ESG」。企業や社会の持続性に貢献する要素を表す言葉で、近年多くの企業が取り組みをアピールしていますが、中には実態のないESG活動を報告する企業もあります。

今回はそんな「ESGウォッシュ」について説明していきます。

【この記事で分かること】

ESGウォッシュとは

ピノキオ

ESGは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つの要素のことを指し、企業や社会の持続的な発展を実現するために必要とされています。近年はESGを重視している企業に優先的に投資する「ESG投資」が投資家の間で広まっており、積極的にESG経営を行う企業も増えています。

ESG投資が広まるとともに国内外で浮かび上がってきた問題点が「ESGウォッシュ」です。ESGウォッシュとは、ESG経営を行っているとアピールをしながらも実際には行っていないことを指します。ESGウォッシュはその企業に投資した投資家の不利益になる可能性があるだけでなく、ESG経営・ESG投資全体の信頼性を下げ、今後のESG投資の拡大を妨げる可能性があります。

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グリーンウォッシュ・SDGsウォッシュとは

ESGウォッシュと同様に問題視されているのが、グリーンウォッシュやサステナビリティウォッシュです。グリーンウォッシュとは、実際には行っていない環境への取り組みを行っているとアピールする行為であり、サステナビリティウォッシュはそれのサステナビリティ版です。

ちなみに、これらの「ウォッシュ」は互いに共通の要素を多く含むため、同じ内容を指しても様々な呼び方がされることがあります。

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ESGウォッシュに対する米国とEUの対策

ESGウォッシュの問題化を受け、ESG投資が日本より進んでいる米国やEUでは、金融商品の情報開示や区分分けが行われています。

米国の対策

アメリカでは2022年に、アメリカ証券取引委員会(SEC)がESGに関連する金融商品について、ESG要素の強弱による分類や各商品の戦略についての開示を求める規則案を発表しました。投資顧問と投資会社は、ESGをうたう運用商品を要素ごとに「インテグレーションファンド」「ESGフォーカスファンド」「インパクトファンド」の3カテゴリーのいずれかに区分することが求められます。この規則案では、投資家がESGに関連する商品を選択する際により明確な情報を得ることが可能になります。

EUの対策

EUは、2018年に「EUサステナブルファイナンス行動計画」を公表していて、サステナブルな経済活動の定義をはじめ、これを参照する企業や投資家の開示規制が段階的に施行されています。このうち投資家向けの開示規制であるSFDR(Sustainable Finance Disclosure Regulation)においては、ESG投資商品を2種類に定義して、その内容開示を求めています。開示により、機関投資家や個人は運用会社のESGへの取り組みを横断的に比較できるようになります。

ESGウォッシュに対する金融庁の対策

米国・EUに遅れながらも日本の金融庁は2021年末からESGウォッシュの実態調査に乗り出し、2023年に「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部を改正しました。新たな監督指針は「投資家の誤認防止」「投資戦略」「ポートフォリオ構成」「参照指数」「定期開示」「外部委託」です。ESG情報開示項目はEUと類似していますが、定量的基準はなく、いまのところ全て定性的基準となっています。

改正された指針では、ESG投信に該当しない商品の、ESG、SDGs、グリーン、脱炭素、インパクト、サステナブルなど、ESGに関連する用語などのアピールを禁止しています。これにより、国内の金融商品のグリーンウォッシュ排除の方針が明確になりました。

ESGウォッシュを回避するために確認すべきポイント3選

ここまでは国によるESGウォッシュ対策を紹介してきましたが、投資家としてはどのような点に気を付けるべきなのでしょうか。以下3点を紹介します。

リサーチ

①商品情報が具体的に書かれているか

開示しているESG活動やESG経営などのESG情報が明確に何をしているのかよくわからない金融商品はESGウォッシュである可能性が高いと言えます。

金融商品を選ぶ前に、表面的な声明文を読むだけではなく、その商品がESG課題に対して具体的に何を行っているのかについて、より詳しい情報を集めるようにしましょう。また、投資商品を検討する際には、そのファンドの投資先企業の個別銘柄を確かめ、明確でシンプルな情報があるかをまず確認してみてください。

②商品ラベルに騙されていないか

一口にESG投資といっても、投資先の選定方法はさまざまです。同じく「ESG」や「サステナブル」と題される商品でも、社会的影響を定量的に測美選定したファンドから、投資先企業の選定プロセスに明確なESG基準を組み入れるファンド、除外項目(タバコや武器関連産業など)を適用(スクリーニング)するファンドまで様々あります。

実はその中でもインデックスファンドやETF(上場投資信託)の場合、ESGスコアが優れる銘柄への投資比率(ウェイト)を上げて、ESGスコアが優れない企業への投資比率を下げる(アンダーウェイト)という戦略が主流となっており、本来であればESGの観点から投資対象にならないはずの企業がこっそり投資先に含まれるケースは少なくありません。

商品ラベルに騙されないようにするには、投資ポートフォリオの銘柄選択がどれほど厳密に審査されており、どのような社会的、環境基準が用いられているかという情報を確認することが重要です。もし、「グリーン」や「ESG」と表示されている商品の中に、社会課題や環境問題に積極的に取り組んでいるのか微妙な企業が含まれている場合は、何らかのウォッシングが行われていると考えられます。

③自分の倫理観やESG価値観と合っているか

これはESGウォッシュ対策だけでなく、ESG投資全体でのポイントですが、投資先企業の活動が自分にとって個人的にどれだけ好ましいかというのを考えることも重要です。ESGは環境・社会・企業統治の3要素で構成され、さらに各要素の中でもその内容は多岐にわたります。特に投資を通じて社会への良い影響を副次的にもたらすことを目標とするインパクト投資を行う場合には、自身の価値観などを合わせて商品のESG情報を精査することで、目標の達成に繋がります。

まとめ

都市と車

今回の記事では、実際には行っていない社会・環境活動などを報告するESGウォッシュについて紹介してきました。

ESGウォッシュが横行すると、社会の持続的発展の実現の助けになると注目されているESG投資自体の信用に傷がつきます。投資家としては情報を精査してESGウォッシュに騙されないようにするのはもちろんのことですが、情報開示などの基準が定まらないままではそれも難しいといえます。国内・国外ともに情報開示制度の普及と規格化が求められます。

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