ESG経営の具体例4選-環境・社会・ガバナンスの具体例も解説

#ESG#SDGs目標9#持続可能 2023.05.31

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ESGを達成するための取り組みの具体例について、みなさんはどのくらい知っていますでしょうか。

ESG経営とは企業が長期的に成長するために必要な3つの要素を表しており、社会にも社員にも優しい経営のことを表しています。

今回はESG経営に取り組む企業の具体例を環境・社会・ガバナンスの3つに分けて詳しく解説します。

【この記事でわかること】

ESGの意味や現状について紹介

最初に「ESG」の意味や現状について紹介します。

ESGの意味

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。これら3つに配慮した経営を行っていくことで、企業は長期的に成長することができます。

「環境」「社会」「ガバナンス」それぞれが表しているものを詳しく紹介します。

環境
私たちの生活は豊かになった一方で、地球温暖化や環境汚染が進んでいます。このような現状を食い止めるために、環境に配慮した経営が求められます。具体的に取り組むべきこととして、次のような問題が挙げられます。

  • 環境汚染を食い止める
  • 生物の多様性に配慮する
  • マイクロプラスチックなどの排出物を抑える
社会
企業や個人が利益や利便性を追求することによって、不利益を被る人が出てきてしまうことがあります。

  • 企業での男女格差をなくす
  • マイノリティの人に配慮する
  • 少子高齢化や過疎・過密の問題に取り組む
  • 児童労働や強制労働を行わない

これらの問題を積極的に解決することが企業に求められています。

ガバナンス
不祥事を行い、社会全体に悪影響を及ぼす企業も存在しています。企業がしっかりとした管理体制を整えることで、社会にも会社にも良い影響をもたらします。

  • 取締役会をクリアにする
  • 社員の権利を守る
  • 情報を隠蔽しない

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ESGとは?ESG経営のメリットや持続可能な企業の取り組み事例を紹介

▼参考
ESGとは|簡単解説

日本のESG投資の拡大

続いて、日本のESG投資が拡大した背景について紹介します。

日本では2016年から2018年にかけてESG投資が拡大しました。

国連が「責任投資原則(PRI)」を提言した2006年から2014年にかけては、日本でのESG投資は活発ではありませんでした。

2016年の日本のESG投資の割合は3.4%でしたが、2018年には18.3%と急増しており、この数年で投資率が上昇しています。

責任投資原則(PRI)
責任投資原則(PRI)とは、2006年に国連環境計画・金融イニシアティブ・国連グローバルコンパクトが考案した投資に関する原則のことを表しています。具体的には次のような取り組みが行われています。

  • 資産家の影響力を強化する
  • 投資家による ESG 課題の組み込みをサポートする
  • アクティブ・オーナーシップのコミュニティを育成する
  • 説明責任強化のためにリーダーシップを発揮する
  • 責任をもって投資家への啓蒙活動を行う

▼参考
ESG投資の日本の現状とは?世界との違いや今後にも注目!

責任投資原則

企業がESG経営を取り入れるメリット3選

ESG経営に対して、ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の要素に配慮した経営をしている会社に投資することを意味しています。ESG経営の主語は企業であることに対して、ESG投資の主語は投資家であることに注意しましょう。

ここでは、企業がESG経営に取り組むメリットを3つ紹介します。

投資家からの企業評価が高まり、投資を得やすくなる

1つ目に紹介するメリットは、投資家からの企業評価が高まり、投資を得やすくなるということです。

ESGに取り組むことで、投資家からESG経営に積極的に取り組む企業であると判断されます。投資家は、投資する企業の将来的な企業価値を確認しており、長期的な成長を目指すESG経営と相性が良いのです。

今では日本のESG投資額は320兆円にものぼり、運用資産全体の約24%を占めています。

運用資産全体に占めるESG投資の割合の推移は上のグラフのとおりです。日本のESG投資額の割合が年々増えていることがわかります。過去6年間で日本ではおよそ6倍に、アメリカではおよそ1.8倍になっています。

▼関連記事
《徹底解説》ESG経営とは?|今注目される持続可能な企業経営を解説

▼参考
日本のESG投資、2020年は32%増の320兆円

SDGs達成に貢献できる

2つ目に紹介するメリットは、SDGs達成に貢献できるということです。

ESGは企業の長期的な利益が優先されていて、SDGsは企業の利益よりも持続可能性が優先されているといった特徴がありますが、この2つは全くの別物というわけではありません。ESGに取り組むことでSDGsの達成に近づくのです。

例えば、環境に関する対策をすることで、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」や目標14「海の豊かさを守ろう」を達成することができます。

また、マイノリティの人に配慮した経営を行うことで、目標10「人や国の不平等をなくそう」を達成することができます。

▼関連記事
《徹底解説》今注目の脱炭素社会(カーボンニュートラル)とは?|SDGsとの関係も解説

ステークホルダーとの関係を強化できる

3つ目に紹介するメリットは、ステークホルダーとの関係を強化できるということです。

例えば、環境に優しい商品を扱っていると聞いて顧客はどのようなことを感じるでしょうか?

  • 持続可能な取り組みをしている
  • 自分もこの商品を購入することで環境問題の解決に役立てる
  • 似たような商品を買うなら環境に良い商品を買いたい

環境に対する取り組みに関心が集まっているなかで、環境に優しい商品を扱っている会社は顧客に対してより良い印象を与えることができるのです。

また、行政からの注目を集めたり、先ほど紹介したように投資してもらいやすくなったりします。

ステークホルダー
ステークホルダーとは企業だけでなく、行政・株主・経営者・顧客・金融機関など、企業の利害に関係するあらゆる人や団体を表しています。

▼参考
ステークホルダーとは?ビジネス用語の正しい意味と使い方

ESGを推奨するための日本政府の取り組み2選

ESGを達成するために日本政府が取り組んでいることを2つ紹介します。

TCFD研究会の開催

1つ目に紹介する取り組みは、TCFD研究会の開催です。この研究会は2019年に経済産業省が始めたものであり、企業の代表者や大学の教授などで構成されています。

世界中でESG投資拡大やTCFDなどの気候関連の情報開示を求める動きが活発になっています。そのような状況の中、TCFD研究会は日本企業からの情報発信をさらに促進するために行われています。

研究会では次のような意見が出ました。

  • 日本政府一丸となって日本で取り組んでいることを海外にアピールするべきである
  • 政府だけでなく、民間企業と協力していくことが大事である
  • 多くの企業が協力しあうことでスピーディーに進めることができる

また、業種別の取り組みとして次のような事例を紹介します。

  • 自動車:温室効果ガスの排出削減に繋がる車の技術開発
  • 鉄鋼:製造プロセスの効率向上に向けた取り組み
  • 化学:環境に優しい製品の研究開発
  • 電機電子:温室効果ガス削減に繋がるIoTソリューションや省エネ化に向けた開発
  • エネルギー:再エネや発電設備の高効率化・次世代化に向けた技術開発
TCFD
TCFDは気候関連の情報をクリアにすることや金融機関の対応の指針を検討するため、金融安定理事会によって開かれました。マイケル・ブルームバーグ氏が設立しており、「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。

▼参考
ESGに関する経済産業省の取組

TCFDとは

SDGs経営/ESG投資研究会の開催

2つ目に紹介する取り組みは、SDGs経営/ESG投資研究会の開催です。この研究会も経済産業省が取り仕切っています。

今では日本も含め、世界中の多くの企業がSDGsを経営の一環としてESG経営に取り込んでおり、ESG投資を呼び込もうと力を注いでいます。そのような中、ESG経営を行う企業が持続的に企業価値を向上させ、そのような企業への投資が収益を生み出す循環を作り出すためにこの研究会は開催されています。

この研究会では、実際にSDGs経営に取り組んでいる企業の取り組み事例が紹介されています。詳しい取り組み事例は、下のパートで紹介します。

▼参考
ESGに関する経済産業省の取組

日本企業のESG経営の取り組み具体例4選-中小企業の取り組みも紹介

日本企業のESG経営の取り組み事例を4つ紹介します。

NEC-マテリアリティの設定

1つ目に紹介する日本企業はNECです。NECはコンピューターやITサービスを提供している企業です。

NECはESG視点の経営優先テーマである「マテリアリティ」を、企業と社会のサステナブルな成長を支える基盤として位置づけています。

マテリアリティの実践内容は役割定義書に明記されます。また、ESG調査や対話などを通して多くのステークホルダーからの評価やフィードバックをもらい、中長期的な計画の考案を行っています。

「マテリアリティ」の取り組み事例を「環境」「社会」「ガバナンス」の3つに分けて紹介します。

環境
NECでは気候変動や資源の枯渇を防ぐためにさまざまなことに取り組んでいます。

  • SBT1.5℃達成に向けた環境経営の加速
  • 顧客のDX化を進め、CO2排出量を減らす
社会
NECではセキュリティやAIと人権などに焦点を当てた取り組みを行っています。

  • 社会インフラをになる高度なIT人材の育成
  • 人権尊重を最優先にしたAI導入
ガバナンス

  • コーポレートガバナンスの透明化の徹底
  • 人権・環境視点でのサプライヤーとの連携強化
  • 重大コンプライアンスの撲滅
SBT
SBTは「Science Based Targets」の略で、パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定すべき温室効果ガス排出削減目標のことを指します。

▼関連記事
ESGの取り組み事例10選 ー始め方からメリットまで解説

▼参考
ESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」

SBT(Science Based Targets)について

森ビル株式会社-バランスの良いESG経営

2つ目に紹介する日本企業は森ビル株式会社です。森ビル株式会社は、都市再開発事業や動産事業を行っている企業です。

「都市を創り、都市を育む」という仕事を通じて、持続可能な社会の実現や地域の発展、人々の安全・健康・幸福に貢献することを目標にしています。

その目標を達成するために「環境」「社会」「ガバナンス」の3つの分野に対する取り組みを満遍なく行っています。

環境近年、都心部ではヒートアイランド現象などの問題が発生しています。このような都市問題を解消するため、ヴァーティカル・ガーデンシティ(立体緑園都市)を目標として都市づくりに取り組んでいます。立体的に建築物を利用することで、地表や屋上に自然と人間が共生する小自然をつくり出します。

森ビル株式会社が建設した建築として次のようなものがあります。

  • 虎ノ門ヒルズ
  • アークヒルズ
  • 表参道ヒルズ
  • 六本木ヒルズ
社会
森ビル株式会社は様々なステークホルダーとともに推進する都市づくりを通じて住む人だけでなく、働く人や訪れる人が生き生きと過ごすことができる、持続可能な社会の実現に貢献しています。また、人権を尊重するために以下のことに取り組んでいます。

  • ハラスメント防止研修の実施
  • 採用時の人権への配慮
  • 人事部に直送申告できる制度の設計
ガバナンス
森ビル株式会社はコンプライアンス委員会やリスク管理委員会を設置し、社内の透明化に尽力しています。また、社内のお金の流れもクリアにするため、税の透明化にも取り組んでいます。
ヒートアイランド現象
ヒートアイランド現象とは、都市の気温が周囲の地域の気温よりも高くなる現象のことを指します。

▼関連記事
各種ESGランキングまとめ【2022】-上位企業のESGの取り組み事例も紹介

▼参考
サステナビリティ | 森ビル株式会社

資生堂グループ-環境に優しい商品の開発

3つ目に紹介する日本企業は資生堂グループです。資生堂グループはスキンケアやメイクアップなどの「化粧品」の販売を行っている企業です。

資生堂グループはESGの中で、特に「環境」の分野に力を入れており、サステナブルな製品の開発に尽力しています。

「Premium/Sustainability」という考え方の下、製品の効果や容器のデザインなどから得られる満足感と、人や地球環境への尊重・共生を両立させることを目標にしています。

具体的には、限られた資源の有効利用に向けて容器包装を改良したり、環境への負荷が最小限になるような原材料調達の方法を模索したりしています。具体的に次のようなことに取り組んでいます。

  • 2025年までに100%サステナブルな包装容器に変える
  • 安全性や環境に良い原料で容器を製造する

▼参考
サステナビリティ | 資生堂 企業情報

株式会社ユーグレナ

4つ目に紹介する日本企業は株式会社ユーグレナです。株式会社ユーグレナは「Sustainability First」を目標に掲げており、ミドリムシを使用した食品や化粧品を開発しています。

「Sustainability First」の目標を達成するために、8つの重要課題を設定しています。

  1. 生涯にわたる健康の実現
  2. 気候変動への具体的な解決策
  3. 発展途上国の栄養不良の解消
  4. 持続可能な商品供給の実現
  5. 持続的な環境負荷低減
  6. 多様な人材が自由に働ける職場づくり
  7. 経営基盤の強化
  8. ステークホルダー・エンゲージメント

この8つの重要課題の下、主に3つのことに取り組んでいます。

ヘルスケア事業
「石垣島ユーグレナ」や「ヤエヤマクロレラ」、「カラハリスイカ」や「ミドリ麹」などの独自のサステナブルな素材を活用し、バイオテクノロジーを利用した商品を販売しています。エネルギー・環境事業
マレーシアのPetroliam Nasional Berhad社、イタリアのEni S.p.A社と共にバイオ燃料製造プラントを運営する事業に取り組んでいます。ソーシャルビジネス
「ユーグレナGENKIプログラム」を立ち上げ、栄養失調で苦しむバングラデシュの子供に豊富な栄養素を持つユーグレナ入りクッキーを提供しています。

▼参考
サステナビリティを実現するための重要課題

まとめ

ESGに取り組んでいる企業の具体例について新しく知ったことはありましたか。

ESGに配慮した経営を行うことで、SDGsの達成にも貢献できることを紹介しました。

今回は4つの企業の取り組みについて詳しく紹介しましたが、他にもESG経営に取り組んでいる企業は多く存在しています。「社会」や「ガバナンス」に取り組んでいる企業は、「環境」に取り組んでいる企業よりも少ない傾向にあります。

「環境」だけでなく、「社会」や「ガバナンス」にも配慮した経営が求められます。

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