マテリアリティとは?ESG経営での注目ポイントや特定プロセスを解説

#ESG#SDGs#持続可能 2023.05.29

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近年、ESG課題に積極的に取り組む企業ほど、長期的に企業価値を高められると考え、事業活動とマテリアリティの関連性を参考に投資先を選ぶ投資家が増えています。

ESG経営やサステナビリティ経営におけるマテリアリティとは、さまざまな課題の中で企業とステークホルダー(利害関係者)の両者に大きな影響を与える、重要と認識する課題を優先順位付けてわかりやすく示したものです。

では、マテリアリティはどのように特定すれば良いのでしょうか。また、ESG投資家が注目するマテリアリティのポイントとは何でしょうか。

この記事では、ESG経営におけるマテリアリティについて分かりやすく解説します。

【この記事で分かること】

マテリアリティ(重要課題)とは|意味や語源も解説

マテリアリティ(重要課題)とは、企業が優先的に取り組むべき課題を指します。マテリアリティを特定する企業は、ステークホルダーへの影響や環境への影響について評価し、投資家や関係者にどのような課題について関心を持っているかをわかりやすく伝えます。

社会課題は数えきれないほど存在しますが、自社の優先すべき課題は何なのかを特定し、対策や取り組みを行うことで広く社会に貢献できます。また、マテリアリティの設定は企業の価値を判断する指標にもなり、開示することで投資家へのアピールに繋がります。

マテリアリティの重要度が高まる背景

マテリアリティは以前に比べ重要度が高まっています。時代とともに社会や環境への影響も配慮すべきだと考えられ、長期的な事業運営を行う上で、財務情報以外にSDGsなどサステナビリティへの取り組みが重要視されるようになったからです。

企業の社会的責任が求められている今、ステークホルダーは持続可能な社会を目指す企業は長期的な経営リスクを回避でき、投資リターンが大きくなると見込んで投資先に選びます。そのため非財務指標であるマテリアリティの関心が高まっているのです。

マテリアリティの特定プロセス|何が重要か・誰に伝えるのかを明確にする

マテリアリティを特定するにはプロセスに沿って検討することが重要です。

以下では特定プロセスを4つに分けて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

  1. 社会課題の把握・整理・抽出
  2. 社会課題の重要度評価
  3. 社会課題の優先順位付け
  4. 判断結果の妥当性を確認

①社会課題の把握・整理・抽出

企業にとって重要な課題は、主に2つの軸から抽出します。1つ目はリスク側の課題である社会的責任、2つ目は機会側の課題である社会課題です。

1つ目の社会的責任とは、企業の利益追求に傾倒せず、消費者やステークホルダーに対し責任のある行動をすることです。2つ目の社会課題は、社会を取り巻く様々な課題に対し解決を目指し、社会の発展に影響を与えることです。

事業やサプライチェーンの情報を集め、これらの軸から課題を把握し整理します。そのうえで企業の強みが生かせる課題を抽出します。

②社会課題の重要度評価

ある程度課題を抽出したら、様々な立場の人から課題に対する重要度を評価してもらいます。例えばお客様や株主・投資家、従業員、役員、専門家などです。ヒアリングやアンケートを元に課題を分析・評価し、この結果によってマテリアリティ案を設定します。

③社会課題の優先順位付け

社会課題は複数あるため、優先順位をつけることが必要です。その中でも企業の強みを生かし価値を提供できる課題が好ましいとされます。

その際に、どのように解決するのか具体的に明記することが大切です。

④判断結果の妥当性を確認

最後に、設定したマテリアリティが妥当かどうか、役員や社内外の専門家と確認します。意見を交換しあうことで、現状の課題に対する認識や企業の強み、取り組むべき今後の課題・目標などを一致できます。

マテリアリティの関連用語

マテリアリティは重要課題を意味しますが、似たような言葉がいくつかあります。以下では混乱しがちな言葉を3つ紹介します。

  • シングルマテリアリティ
  • ダブルマテリアリティ
  • ダイナミックマテリアリティ

シングルマテリアリティ

シングルマテリアリティとは、企業が社会、環境から受ける財務の影響のみを考慮してマテリアリティを開示することを指します。

シングルマテリアリティの主な対象者は投資家です。なぜなら投資家は投資先企業の今後の業績を見据えて投資するため、社会・環境の変化によって業績が変化する場合にそなえ、報告しなければならないからです。また、財務と関わる環境を加味して開示するという意味も含まれます。

ダブルマテリアリティ

ダブルマテリアリティとは、企業が社会や環境から影響され、また影響を与えているという相互的な関係を考慮したうえでマテリアリティを開示することを指します。

ダブルマテリアリティの主な対象者は投資家のみならず、消費者や従業員なども含む様々なステークホルダーです。これは企業活動が及ぼす影響が市民や社会全体にいきわたる可能性があるからです。

以前はシングルマテリアリティが主流でしたが、近年はSDGsや企業活動の影響について重視する人が増えたため、ダブルマテリアリティが主流になっています。

ダイナミックマテリアリティ

ダイナミックマテリアリティとは、サステナビリティ情報の開示基準を設定する主要5団体 (CDP・CDSB・GRI・IIRC・SASB)が2020年9月に発表した「より包括的な企業報告のための共同意思表明」において使用された言葉です。

マテリアリティは時代とともに変容する性質を持ち、社会の変化によってこれまで重要視されなかったものが重要視されるようになることを意味します。例えばコロナウイルス蔓延により、従業員の健康が重視されるようになりました。

この考えによって、マテリアリティは定期的に見直し、柔軟に変更すべきだと示されました。

ESG投資家が注目するマテリアリティのポイント

企業ごとにマテリアリティは異なりますが、そこには多くの共通点が存在します。特に環境、社会、ガバナンスの3つの観点は、企業の長期成長のために重要視されます。

続いて、次の3つの項目において、ESG投資家がマテリアリティのどんなところに注目しているのか紹介します。

  • 環境項目
  • 社会項目
  • ガバナンス項目

環境項目

環境項目は持続可能な社会を目指すうえで重要な事項です。

環境に悪影響のある要素を排除(ネガティブ・スクリーニング)することや、環境に良い製品づくり(ポジティブ・スクリーニング)することで環境問題にアプローチできます。近年、二酸化炭素排出量の増加や、海洋のマイクロプラスチックという環境問題が深刻化しています。そのため、企業には「低減や削減」や、環境に優しい「新たな事業創出」などが求められています。

例えば、環境項目として以下のようなマテリアリティが挙げられます。

・温室効果ガス排出量の削減
・水資源保護
・自然環境との調和(生物多様性保全)
・土壌汚染防止

社会項目

社会項目では働き方や法律・規範、財務と環境との両立などが注目されています。これからの企業には、自社の利益の追求だけではなく、従業員、顧客や取引先、地域といったあらゆるステークホルダーとの共存を考えることが必要です。すべてのステークホルダーに対してできる貢献を考えることが、みじかな社会への取り組みです。

以下は、マテリアリティの社会項目の例です。

・事業推進における人権と従業員の尊重
・顧客・消費者の持続可能で安定的な社会と暮らしの実現
・DXによる社会・産業の構築
・イノベーションを通じた社会課題の解決・新規ビジネスの創出

ガバナンス項目

ガバナンスとは統治・支配を意味する言葉であり、ここでは企業が公正な経営、運営を行えるように監視する仕組みを指します。

企業の活動において内部不正や情報漏洩が発生すると、ステークホルダーに重大な被害をもたらします。また、企業価値が侵害され信用を損ないます。ガバナンスがあることで企業体制が強化され、信用が高まるとともにステークホルダーの利益を守れるのです。

ガバナンス項目では法令の遵守や情報の開示などが注目されています。例えば次のようなマテリアリティが挙げられます。ガバナンス項目が開示されることで、投資家は透明性が高い企業だと認識します。

取締役会の独立性と構成
・コンプライアンス体制
・報告と透明性(レジリエンとな経営基盤の発展)

マテリアリティを活用する企業事例3選

実際にマテリアリティを活用している企業を3つ紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

  • Softbank
  • 味の素株式会社
  • ITOKI

Softbank

ソフトバンクは

  1. DXによる社会・産業の構築
  2. 人・情報をつなぎ新しい感動を創出
  3. オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出
  4. テクノロジーのチカラで地球環境に貢献
  5. 質の高い社会ネットワークの構築
  6. レジリエントな経営基盤の発展

の計6個マテリアリティを掲げています。

「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」をテーマに掲げており、経営理念の「情報革命で人々を幸せに」をもとに作られました。

味の素株式会社

味の素株式会社は

  1. 食と健康の課題解決への貢献
  2. 生活者のライフスタイルの変化に対する迅速な提案
  3. 製品の安全・安心の確保
  4. 多様な人財の活躍
  5. 気候変動への適応とその緩和
  6. 資源循環型社会実現への貢献
  7. フードロスの低減
  8. 持続可能な原材料調達
  9. 水資源の保全
  10. ガバナンスの強化
  11. グローバルな競争激化への備え

の計11個のマテリアリティを掲げています。

味の素の経営基盤を生かした食に関する課題解決を目指しています。また、変化する食生活に対応するためスマート調理やクリーンラベルを通し、健康な生活を支援しています。

ITOKI

株式会社ITOKIは

  1. 魅力的なワークスタイル・ワークプレイスを創造する
  2. テクノロジー×空間で、イノベーションを生み出す
  3. カーボンニュートラルな社会に貢献する
  4. 自然環境を守り、資源循環を促進する
  5. 人権や自然環境の観点で責任ある調達を行う
  6. 社員の心と体の健康を守る
  7. 社員の成長を支援する
  8. 多様な人材が働きやすいオフィスを創る
  9. 透明性と信頼の経営を確保する

の計9個のマテリアリティを掲げています。

「働く」場を取り巻く多様な課題を解決し、「社会と人々を幸せにする」「会社と社員が幸せになる」ことを実現するためにマテリアリティを検討し、様々な企業の存続を目指しています。

まとめ

今回はESGとマテリアリティについて紹介しました。

投資家やステークホルダーは、財務諸表のみならずマテリアリティなどの財務以外の情報から企業の将来性を計っています。今後はさらにESGやマテリアリティに対する信頼性や重要性が高まるでしょう。

紹介した情報をもとに、重要課題はどこにあるのかをぜひ考えてみてください。

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