【更新日:2021年7月16日 by 佐野 太一】
国連は7月12日、「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World)」を公表した。
この報告書は国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)の5つの機関が共同で発行した。
同報告書によると、新柄コロナウイルスの感染拡大などの影響で世界の飢餓状況は悪化した。2020年は世界人口の10人に1人にあたる最大8億1100万人が飢餓に陥ったとされている。
このままでは2030年も6億6000万人が飢餓に苦しみ、SDGs目標2「飢餓をゼロに」の達成が困難になるという。
まず課題視されているのは、世界の飢餓人口だ。世界の飢餓人口は数・比率ともに急増し、人口増加のペースを上回った。人口の約9.9%が栄養不足であったと推定され、2019年の8.4%から増加した。
飢餓によって、栄養不足の人々の半数以上(4億1800万人)はアジアに、3分の1以上(2億8200万人)はアフリカに、6000万人はラテンアメリカとカリブ海に居住していることも明らかになった。飢餓が最も急増したのはアフリカで、栄養不足に苦しむ人が人口の21%と、他の地域の2倍以上になった。
栄養不良は、特に子どもの生育に深刻な影響をもたらす。2020年には1億4900万人の5歳未満児が発育阻害(年齢に対し身長が低すぎる)、4500万人以上が消耗症(身長に対し痩せすぎている)、3900万人近くが過体重だったと推定されている。
また、飢餓問題においてもジェンダー格差が深まっていることがわかった。2020年には、食料供給に不安がある女性の数は男性の約1.1倍となり、2019年の約1.06倍から増加した。
さらに、妊娠可能年齢の女性の約3分の1が貧血に苦しんでいることも明らかになっている。世界的に見ると、完全母乳(なるべく母乳を多く与えることを推奨する考え方)で育てられる乳児が増えるなど、一部の分野では改善が見られるものの、どの栄養指標においても2030年までに目標が達成される目処が立っていない。
なお、同報告書では、6つの「変革の道筋」として政策立案者への提案がなされている。
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SDGs目標2「飢餓をゼロに」では、「2030 年までに飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする」ことがターゲット2.1として掲げられている。貧困や紛争、ジェンダー平等など、あらゆる社会問題が複雑に絡むテーマだ。
SDGs CONNECT ニュース/イベントライター。立教大学でジャーナリズム論を主に研究。記事執筆の傍ら、陶芸制作にも取り組んでいる。好きな食べ物はメロン。