SDGs11の取り組み事例-政府・自治体・企業の取り組みまで網羅

#包摂的#安全#居住#強靭(レジリエント)#持続可能#環境#脆弱#障害者 2022.07.29

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世界の人口の半数近くが都市に住んでいる今日、「持続可能なまちづくり」は多くの人々の生活に直結する課題です。

さらに近年、台風や洪水、地震などの自然災害に対応するためにも、長く安心して暮らせる環境は不可欠です。

今回はSDGs11「住み続けられるまちづくりを」に関して、世界と日本の現状から、取り組みの意義、政府・自治体・企業の取り組み事例について解説します。

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SDGs11「住み続けられるまちづくりを」とは?

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」では、包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間住居を実現することをテーマに、9個のターゲットが設けられています。
9個のターゲットは以下の通りです。

【11.1】2030年までに、全ての人々の、適切、安全、かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
【11.2】2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
【11.2】2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
【11.2】2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
【11.5】2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
【11.6】2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理にトクベツな注意を払うことによるものを含め、都市の一人あたりの環境上の悪影響を軽減する。
【11.7】2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
【11.a】各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
【11.a】各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

包摂的とは、一定の範囲内につつみこむことを意味しており、誰も排除されないことをさします。すべての人が社会に参画する機会があるということです。

これは、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」という理念に基づいています。

強靭さ(レジリエンス)とは、「回復力」、「しなやかな強さ」を意味しており、災害やパンデミックが発生しても社会が停滞しにくく、短期間で回復・復興可能な社会を目指すことを言います。

SDGs11を取り巻く現状

世界の現状

途上国の都市人口の増加

2021年4月に国際連合人口基金が発表した「世界人口白書2021」によると、2021年における世界人口は78億人を上回りました。そのうち、インドネシアやパキスタン、ナイジェリアなどの東南アジア・アフリカ大陸の国の人口が上位に位置しています。

今後、アジア・アフリカ大陸の国で人口の増加が予想されています。「世界人口白書2021」によると、2050年にはインドの人口が世界で一番多くなり、ナイジェリアは3位となる予想がされています。
また、2021年には高順位ではなかったタンザニアやコンゴが上位を占めると予想されています。

スラム街に住む人々は依然多い

スラム街とは、都市の一部地域が退廃し、公共サービスが受けられず、治安・衛生状態が良くない居住地域を指します。

2000年から2018年にかけて年々、スラム街に住む人口が減少しているもののその数は依然多いのが現状です。2020年に国際連合人間居住計画が発表した「世界都市報告書2020」によると、2020年のスラム居住人口は世界で10億人でした。

スラム街に住む人以外にも、新型コロナウイルスによって収入が少なくなってしまい、安全が確保されていない不適切な住宅で暮らす人々も数多く存在します。

大気汚染の拡大

大気汚染とは、地球を取り巻く空気がさまざまな物質によって汚れることを言います。大気汚染の主な原因は工場・自動車が排出するガスや、石炭による火力発電の粉塵です。これらが理由で光化学スモッグや、酸性雨を引き起こします。

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)によると、2019年における世界の二酸化炭素排出量は約335億トンです。中国が最も多く排出しており、アメリカ、インドと続きます。日本の排出量はアメリカや中国の4分の1以下ですが、5番目に多い国となっています。

都市部の人口が増加するにつれて二酸化炭素の排出量は増加すると想定されており、さらに大気が汚染される危険性があります。

▼SDGs目標11の現状について詳しくはこちら
SDGs11「住み続けられるまちづくりを」の現状を徹底解説

日本の現状

自然災害の増加

日本では台風、地震、洪水が自然災害として多く発生しています。自然災害の発生件数として一番割合が高いのは台風であり、地震、洪水と続きます。

とくに、2018年7月に起きた豪雨は豪雨災害として初めて激甚災害(地震・台風・豪雨などによる著しく被災自治体への財政援助や被災者への助成がとくに必要となる大災害)に指定されました。

中小企業庁によると年ごとに差はあるものの、自然災害の発生件数は年々増加しており、2000年から2018年の間では一年で少なくとも20件発生しており、被害額も150億ドルを上回っています。

地方の人口減少・高齢化

少子高齢化により日本全体の人口が減少していく中で、地方での減少がとくに目立っています。理由として、若者の大学への進学や、就職のために地方から都市部への人口移動が挙げられます。そのため、地方における多くの企業では、業種を問わず人手不足に陥っています。

内閣府によると、2018年で最も高齢化率が高いのは秋田県で36.4%となっています。そのほかにも、北海道や青森県、岩手県なども高齢化率が30%を超えています。

今後、すべての都道府県で高齢化率が上昇すると見込まれており、2045年までに秋田県は50.1%まで上昇すると予想されています。

「住み続けられるまちづくり」はなぜ重要?

現在、世界人口の半数である35億人が都市部で暮らしています。国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所によると、2050年までに65億人が都市部で暮らすと予測されています。

都市部に人口が集中することはすなわち、スラム人口の増加や大気汚染の悪化がより深刻化する可能性があります。また、自然災害による影響でライフスタイルが破壊される可能性もあります。

すべての人が環境を損なうことなく安心・安全な生活を送ることができるような都市を構築する必要があります。

▼SDGs目標11の問題点と解決策について詳しくはこちら
SDGs11「住み続けられるまちづくりを」3つの問題点とその解決策を徹底解説

SDGs11を達成するための取り組み

日本政府の取り組み

SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業の選定

「SDGs未来都市」とは内閣府が、SDGsの達成に取り組んでいる都市を選定する制度のことです。日本全体が持続可能な経済社会を促進し、優れた取り組みを世界に発信することを目的として行っています。

選定された都市は、経済・社会・環境の3側面における新しい価値創出を通して、持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域となっています。

また、「SDGs未来都市」として選定された都市の中でもとくに先導的な取り組み、10事業を「自治体SDGsモデル事業」として選定しています。

各都市の取り組みについては、「自治体の取り組み」で詳しく説明していきます。

自然災害対策

国土交通省は、台風や豪雨によって引き起こされる水害や土砂災害から私たちの暮らしを守り、被害を最小限にとどめるため、河川堤防・ダム・下水道の整備や、雨水の流出抑制のための貯留・浸透施設に取り組んでいます。

また、地震が起きた際に建物の下敷きや生き埋めになる被害を減らすため、住宅・建築物や宅地の耐震化を促進していきます。

さらに、地震時に避難や救助が阻まれることを防ぐため、危険な密集市街地の整備を行ったり、狭い道路を解消することで安全なまちづくりを目指します。

▼SDGsの世界の取り組みについて詳しくはこちら
《徹底解説》SDGsの世界の取り組み|17の目標別に世界の事例を網羅
《徹底網羅》SDGs取り組み事例51選|17のゴール別に掲載

日本企業の取り組み

コーヨー化成株式会社|二酸化炭素の削減

コーヨー化成株式会社では、地球環境に与える温暖化問題・環境保全を企業経営の重要課題と認識し、社員全員で自主的・積極的に取り組み、社会貢献していきます。

取り組みとして、空調の温度の適正化や不要照明の消灯、夜間・休日のPCの主電源OFFやLED照明の移行などの使用電力の削減や、アイドリングストップなどの自動車燃料の削減、ごみの分別の徹底などが挙げられます。

さらに、地下埋設物探査用ケーブルの開発と普及にも取り組んでます。

株式会社クボタ|都市部の整備

株式会社クボタは、日本で初めて水道管の国産化や農業の機械化を実現し、社会の発展に貢献している会社です。優れた製品・技術・サービスを通じて豊かで安定的な食料の生産や、安心な水の供給と再生、快適な生活環境の創造に取り組んでいます。

そのほかにも、急速な都市部の人口増加において人々が安全かつ快適に暮らす持続可能な社会・産業基盤の整備や、ヨーロッパに多く存在する歴史ある都市の老朽化したインフラ改修と、景観の保全を行っています。

1980年代に約90万トンもの産業廃棄物が不法投棄された香川県の豊島では、大量の産業廃棄物を処理するプロジェクトにも取り組み、14年かけて処理を完了させました。
現在は地下水浄化を行うなど、現地環境の改善に取り組んでいます。

大和ハウス|リブネスタウンプロジェスト

大和ハウスでは基本姿勢である「共に創る。共に生きる。」を受け継ぎ、住宅・建築・まちづくりを通じて持続可能な社会の実現に貢献しています。

大和ハウスが取り組む「リブネスタウンプロジェクト」では、過去に開発した公害型住宅団地などを再耕し、少子高齢化や人口減少、空き家問題などの社会課題を改善し、街の価値を築いていきます。
神奈川県横浜市にある上郷ネオポリスや、兵庫県三木市にある緑ヶ丘ネオポリスもこのプロジェクトの対象となっています。

そのほかにも、2011年4月に起きた東日本大震災の被害を受け、いまだ仮設住宅で暮らす人々に向けて公営住宅を建築したり、街のCO2削減をめざした、エネルギー自給自宅を実現させる「セキュレア豊田柿本」にも取り組んでいます。

自治体の取り組み

先ほど説明したように、内閣府はSDGs未来都市を選定しています。ここからは選定された都市が行っている取り組みについて紹介していきます。

新潟県妙高市|自然を守りながら経済・社会を加速化

新潟県妙高市は三方が山々に囲まれているため、降雪量が多く、季節の変化に富んだ地域です。そのため、雪や温泉などの自然資源を活かした宿泊業に力を入れています。

今後の課題としては、人口減少への対応や、安心・安全な暮らしの確保、グリーン社会への転換が挙げられています。

これらの課題解決のため、効率的で利便性の高い公共交通機関の維持・確保にむけた取り組みや、ワーケーション(自宅以外の観光地や帰省などの休暇先でリモートワークを行うこと)による人口の創出に取り組んでいます。

岐阜県美濃加茂市|ローカルSDGs みのかも

岐阜県は令和3年度時点で、3つの都市がSDGs未来都市として選定されており、美濃加茂市もさまざまな取り組みを行っています。
美濃加茂市では、工場誘致を積極的に行っていましたが、地域独自の産業が不足しています。そのため、地域資源を有効活用するための取り組みが必要です。そのほかにも、市民の声を施策に反映することで安心・安全・便利に暮らせるまちを目指しています。

取り組みの1つである「ローカルSDGs みのかも」は、地域規模でのSDGsのことを言い、子どもの教育から大人のビジネスまで地域の資源を生かしながら、新たな価値を生み出していく計画のことを言います。この計画を通じて得られたお金を地域に再投資することで、地域内循環していくことを目指しています。

福島県福島市|世界にエールを送るまち

福島県福島市は2011年3月に起きた東日本大震災の影響を受け、今もなお復興作業が行われています。一部の地域では、原子力発電所から放出された放射線により、仮設住宅で暮らす人々もいます。さらに、農作物などに対する風評被害もみられます。

復興状況もまだ道半ばですが、2020年前期に放送されたNHKの朝ドラ「エール」では、福島市唯一の名誉市民である古関裕而がモデルとなっています。放送後、2020年東京オリンピック大会の会場に設定されるなど、復興に向けて取り組みを行っています。

そのほかにも、子育て世代・若者の都市部への移動による人口流出や、少子高齢化を改善するため、バリアフリー・スポーツのまちとして事業を取り組んでいます。さらに、子育て・教育を支援する事業にも取り組んでいます。

▼SDGsと地方創生の関りについて詳しくはこちら
【徹底解説】SDGsと地方創生の関わり|地方自治体の地方創生の取り組みまで徹底網羅
▼SDGs未来都市について詳しくはこちら
《徹底網羅》SDGs未来都市とは|概要から自治体一覧まで網羅

まとめ

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に関する世界・日本の現状から、日本政府・企業・自治体の取り組みまでまとめてきました。

世界の多くの都市部で人口が増加するなかで、地方における少子高齢化や人口減少が多くみられます。これらの課題を解決するため、内閣府によるSDGs未来都市・自治体SDGsモデルの選定や、企業による都市のまちづくり支援が行われています。

みなさんも一度、住んでいる地域のSDGs目標達成に向けた取り組みについて、調べてみてはいかがでしょうか。

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