オーラルケアから全ての人の健康を|ライオンのSDGs

#健康#教育#環境#貧困 2022.01.26

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【更新日:2022年4月8日 by 三浦莉奈

ライオン株式会社は、主に歯や全身の健康を守る製品を提供し、私たちの健康生活をサポートする会社だ。昨年(2021年)から部署名にサステナビリティを掲げ、社内と社外全体でサステナビリティの取り組みを推進している。

今回は、オーラルケアを通じて社会や環境課題に取り組む活動である「インクルーシブ・オーラルケア」を中心に、ライオンのSDGsの取り組みについてサステナビリティ推進部の小和田様にお話を伺った。

社内93の全ての部署と繋がるサステナビリティの価値を上げて、事業に結びつけるサステナビリティ推進部

ーー自己紹介をお願いします。

小和田:サステナビリティ推進部の小和田と申します。

ライオンではこれまでにマーケティング・商品開発・宣伝に長く携わっていました。子会社の経営を経て2015年にライオンの宣伝部に戻り、2020年からはサステナビリティ推進部の前身であるCSV推進部に異動してきました。サステナビリティの分野に関わってから2年ほど経過したところです。

ーー小和田さんがCSVの部署に異動し、サステナビリティに関わるきっかけは何だったのでしょうか。

小和田:サステナビリティ活動の重要性が高まってきた事がきっかけです。今までは、サステナビリティに関する情報の共有に課題があり、事業活動とCSR活動にトレードオフが生じていました。

しかし、時代の流れを背景に「これからはサステナビリティの課題解決と、事業の成長を両立していこう」という風潮が社内に広がるようになりました。今まで多様なターゲット層に試行錯誤しながらコミュニケーションし、情報を届けてきた経験を生かし、サステナビリティを社内外に広めていく指揮を執っています。

ーーまさに、サステナビリティに重要なパートナーシップを繋ぐ役割を期待されたのかもしれませんね。サステナビリティ推進部では具体的にどのような活動をしているのでしょうか。

小和田:2020年の10月頃から社内の意識をあげるために、「当社のサステナビリティについて」の勉強会を、国内93部署に対し部署ごとに行ってきました。ここでは、「サステナビリティって何?」というレベルから世界的な情勢の話、ESG投資やリスク、ライオンの課題と取り組みについてなど、あらゆる疑問を共有しました。

勉強会をした後に、もっと知りたいという声があり、2021年3月から「サステナビリティレター」を全社員に向けて発行しています。

各部での推進力を高めるために、2021年は部署長を対象にした勉強会も開催しました。一人一人がサステナブルな活動へと自分事化していくためにも世代ごとの説明会の徹底などを取り入れています。

ーー御社の具体的なサステナビリティの取り組みである、「インクルーシブ・オーラルケア」について概要を簡単に教えてください。

小和田:「インクルーシブ・オーラルケア」は、健康に直結する「オーラルケア」の機会をすべての人に提供していき、社会課題の解決を目指す活動です。

きっかけはライオンの創業者である小林富次郎の想いです。もともと、小林は「事業を通じて社会に貢献したい」という想いでライオンを立ち上げました。特に、日本の子どもたちからむし歯を無くしたいという想いが強い創業者でした。

現代では、1日に2回から3回歯をみがく習慣が広まっており、小学生のむし歯も平均して1人当たり1本以下にまで減っています。ですが、家庭環境や災害、身体的障害などにより基本的な歯みがきを行えない方も未だに多い現状があります。

全身の健康につながる「歯」だからこそ、日頃のケアをすべての人ができるようにサポートしたいという想いが「インクルーシブ・オーラルケア」の発想に繋がりました。

【提供:ライオン】

誰でも当たり前に、自立して歯みがきができる。そんな仕組みづくり

ーーライオンではどのようなビジョンを掲げて「インクルーシブ・オーラルケア」に取り組んでいるのでしょうか。

小和田:「インクルーシブ・オーラルケア」の取り組みの目的は主に3つあります。

1つ目が、歯みがきを「誰でも当たり前に」できるようにすることです。経済的に厳しい方や職業、障害などによって歯みがきするのが難しい方にも、歯みがきができる機会を提供したいと思っています。

2つ目が、歯みがきを「自律して」できるようにすることです。人から言われて歯みがきをするのではなく、自分自身の手で自分の意思で歯みがきができる環境を整えます。

3つ目が、「仕組みで支えられるように」することです。個人では解決できない事も様々な仕組みで、課題解決に繋げたいという想いです。

ーー1つ目で掲げられた「誰でも当たり前に」のため、は具体的にどのような取り組みを行っていますか?

小和田:多くの活動を行っていますが、ここでは環境要因ということで、最近増えている災害における避難所での取り組みを例に挙げます。

実は避難所で3日間歯みがきができなかった場合、肺炎や病気に繋がる恐れがあります。「災害関連死」の中でも死因のトップは呼吸器系の病気でした(2016年熊本地震での調査)。呼吸器系の病気はウィルスや細菌が原因の一つといわれています。だからこそ、平常時の意識を上げることで災害時でも冷静にお口の健康を守れるようにしたいと考えました。具体的には、ハブラシを防災袋に入れていただくように促したり、少ない水でみがいてみる体験をしてもらうなど、平常時の備えからお口のケアの重要性を伝えるようにしています。

ーー2つ目のビジョン「自律」のための取り組みについても教えてください。

小和田:2つ目の「自律してできるように」の取り組みでは「おくちからだプロジェクト」を行っています。

現在、日本では子どもの7人に1人が相対的貧困の状態になっています。この生活困窮状況と口の状態は関連性があることがデータからわかっており、生活困窮家庭の子どもはむし歯が多い傾向があります。

実際、5本以上むし歯のある子どもの割合は、一般的な家庭に比べて、生活困窮家庭では約2倍になっています。特に、一人親家庭の場合は、お仕事の関係で仕上げみがきをする時間が取れない、忙しくて歯医者に連れて行くことができない、ハブラシを取り替えるまで手が回らないなど、多くの要因が口腔崩壊につながっています。実際にお話をさせて頂いたところ、歯みがきに関する有用な情報が届いていないという課題も浮き彫りになりました。

そこで、こういった家庭に向けた「おくちからだプロジェクト」をスタートさせました。

【提供:ライオン】

ーーおくちからだプロジェクトとは具体的にどのような活動ですか?

小和田:子どもたちの自己肯定感を上げるための、さまざまな体験プログラムを作成いたしました。

まずは歯に関する正しい情報が入ったオリジナルのダンスがあります。踊ることは誰もが簡単にでき、褒めやすいプログラムの1つです。また子どもたちも踊ることで気持ちが高揚して前向きな気持ちになれるという結果がでています。

さらに、「歯」について遊びながら学ぶすごろくゲームの「歯ごろく」も作りました。みんなでゲームをしながら自然と歯の健康について学んでいただけます。また、ハブラシにキラキラのシールなどでデコレーションをして、世界に1つだけの「マイハブラシ」を作ることで愛着感が湧き、自分から歯みがきしたくなるようにする工作プログラムも行っています。

このように、子どもたちの歯みがきに対する前向きな気持ちを引き出す取り組みが「おくちからだプロジェクト」です。現在は、歯みがきと親和性の高い食を掛け合わせた企画として、こども食堂の場を活用させていただき、歯と口の健康に関わる体験プログラムを通じ、子どもたちの自己肯定感向上に貢献する、さまざまな「体験」を提供する活動を、NPOの方々と計画・推進することで、拡大に向けた取り組みを進めています。

オーラルケアをテーマとした3つのダンス動画

歯ごろくの様子【提供:ライオン】

ーー最後に、「インクルーシブ・オーラルケア」3つ目のビジョンである「仕組みで支えられるようにする」ためにはどのような取り組みを行っていますか?

小和田:当社のハミガキは天然ミントにこだわっています。その中の和種ハッカについては、インドのサステナブルな認証ミントに切り替えています。

認証ミントを生産する認証農家になるためには、有害な農薬を使用しない、労働者の人権を守るなど、厳しい条件があります。しかし認証農家になると、天候に左右されない質の良いミントが安定的に取れると共に、プレミアムのついた価格で取引されるので、生活が安定します。さらには、地球環境に害のある農薬は使わない、水の使用も少なくてすむといった、非常に地球に優しい製法になります。

こうした認証農家を2022年までに5倍に増やすべく、2021年5月から商品の和種ハッカを順次、認証ミントに切り替えています。

ーー歯みがきとAIを掛け合わせたサービスもあると伺いました。どのようなものですか?

小和田:スマホアプリとデバイスをつけたハブラシを使って、アプリの中のキャラクターと会話しながら楽しくゲーム感覚で歯みがき習慣を身につけるIoTハブラシです。

お子様をお持ちのお母様が一番苦手とすることが、子どもの歯みがきといわれています。子どもをむし歯にさせない、というプレッシャーを持っている反面、お子さんは自分ではきちんとみがけていない、仕上げみがきを嫌がり泣き叫ぶのを何とか押さえつけてやっているという実態がありました。

子どもが自分から進んで歯みがきできるように、このプログラムはきちんとしたみがき方が音楽と一緒に可視化されています。楽しくみがけるようになっているだけでなく、最後にお母さんやお父さんにきちんと仕上げみがきをしてもらうと、キャラクターに褒められるという、親子で協力し合う仕組みになっています。またご褒美を集める、点数により目標達成が見えるという続けやすい仕組みにもなっています。

ーー最後に、インクルーシブ・オーラルケアの今後の展望を教えてください。

小和田:まずは、こども食堂での「おくちからだプロジェクト」を本格始動していきたいと思っています。

コロナ禍の影響で思うように活動できていない状況ですが、早くプログラムを浸透させたいと思っています。最終的には社内外のボランティアなども募りながら、全国的に活動を広めていきたいと考えています。

おわりに

ライオンは自社の事業領域であるオーラルケア分野で、自社の強みを生かしてさまざまな活動を行っている。

3つの柱を整えた上で多角的に啓発活動に取り組むライオンは、国内でも先進的なSDGsの事例と言えるだろう。また、その全ては、SDGsの目標3 「すべての人に健康と福祉を」にもつながっている。

SDGsを推進する上では、自社の強みを生かし、社会に対してどのような好影響を与えることができるのかを企業の存在意義に立ち返って考えることが重要である。ぜひライオンの事例を参考にしていただきたい。

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