明治時代の銅山の公害問題を始めとして産業が近代化するにつれて、日本はいくつもの公害問題を抱えてきました。
次第に公害問題は環境問題へと大きな枠組みに変化し、問題が発見される度に解決に取り組んできました。
環境問題の解決への道はSDGsの目標とも重なる点が多いため、似たような意味で使用されることが多くなっています。
そこで今回はSDGsと環境問題のそれぞれの観点からの相違も含めて詳しく説明していきます。
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SDGsと環境問題
SDGsと環境問題は似た意味として使用されますが、どういった違いがあるのでしょうか?定義について確認しましょう。
SDGsとは?
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの頭文字を取ったものであり、日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
ここでは私たち人類がこの地球で暮らし続けていくため、2030年までに達成すべき目標が掲げられています。
環境問題とは?
環境問題とは人間の産業活動などがきっかけで生物物理学的環境に及ぼす悪影響の事を表します。
しかし最近は生物物理学的環境以外にも人間活動の負の影響を受けた環境の問題の事も含めるようになってきています。
このように「SDGs」と「環境問題」は「目標」と「問題」といったように似ているものの全く違う存在になります。
しかしながら将来のために課題解決しようとする姿勢は両者ともに兼ね備えていると言えます。
世界のSDGsから見る環境問題7選
SDGsと環境問題について定義を確認しましたが、どういった環境問題があるのでしょうか。?SDGsとの関連性も含めて紹介していきましょう。
環境問題7選
代表的な環境問題は7つあり、以下に一覧でまとめました。
①地球温暖化
地球温暖化は人間の経済活動によって排出された二酸化炭素などが温室効果ガスとなり、地表からの熱を地球内に閉じ込めることで気温上昇を起こす環境問題です。
地球温暖化は世界共通かつ最大の問題として認識されており、NASAの調査によると過去50年間の平均気温は記録史上最速のペースで上昇していると観測されています。
地球温暖化はさまざまな環境問題の原因となるものの、特に気候変動に与える影響が多く、SDGsでは目標13の「気候変動に具体的な対策を」と関連性が高くあります。
目標13では地球温暖化によって起こる気候変動の対策として、脱炭素社会を目指すなど温室効果ガスの排出を減らす取組みを行っています。
②森林破壊
森林破壊とは農業や畜産、鉱物採掘のために森林を切り崩したり、山火事などの災害によって森林が失われる問題で、人為的・自然的な原因が入り混じって起こる環境問題です。
世界の陸地の約30%を占めている森林ですが、1990年から2016年までの間に130万㎢、東京ドーム(0.047㎢)の約2700万倍の広さの森林が破壊されている現状になります。
森林破壊は生態系や気候などに大きく影響を与えるため、SDGsでは目標15「陸の豊かさも守ろう」にて触れられています。
目標15では森林も含む陸域生態系の破壊を抑え、修復するための取組みをしています。
③水質汚染
水質汚染とは人間の産業活動によって発生した化学物質や微生物の大量発生などがきっかけとなり、湖や川、海などの水質が汚染されてしまう環境問題です。農薬の使用や工場からの排水への化学物質の混入などが原因となります。
水質汚染は人間及び全ての生物の生命活動に重要な水を奪うため、SDGsでは目標14「海の豊かさを守ろう」では海洋汚染を、目標6「きれいな水とトイレを世界中に」では人間に関わる水の質の観点から水質汚染について触れ、取り組んでいます。
④農業汚染、土壌汚染
農業汚染は作物の成長スピードを変えるための肥料の過度な使用による、地下水を経由した水域の富栄養化によって引き起こされます。
富栄養化とは海水や川の水に含まれる栄養分が自然の状態より増え過ぎてしまうことです。
自然は生物が一定のバランスを保つことで守られていますが、富栄養化はこうした自然のバランスを崩してしまいます。類似した環境問題に土壌汚染があります。土壌汚染は農薬や工場から排出された化学物質が土壌内の微生物の分解以上に汚染することを指します。このような農業・土壌汚染は最終的に川や海などの環境にまで影響を与えます。SDGsでは陸と海の豊かさを守ることは別の目標として掲げられていますが、実は密接なつながりがあるのです。
⑤人口爆発(水、食料資源問題)
2020年のWHOの調査によると世界の人口は75億9496万で、2050年には90億人に増加すると考えられ、アジアやアフリカなどの地域を中心に人口爆発が起きています。
こういった人口爆発は食料などの資源問題へと発展しています。
人口爆発についてSDGsでは目標2「飢餓をゼロに」や目標12「つくる責任つかう責任」にて触れており、問題解決へと取り組んでいます。
特に目標12では先進国におけるフードロスを扱い、食の流通を見直すように行動目標を掲げています。
⑥ごみ問題
人口が増加するにつれ、生活で発生するゴミだけでなく、経済活動によって発生するゴミも増加していて現在世界では年間20億トン以上のごみが出ています。
こういったゴミは処理する際にエネルギーのコストがかかることや、大気汚染などの物質が排出されるなど多くの問題が生じています。
ごみ問題についてSDGsでは目標12「つくる責任つかう責任」で触れています。
目標12ではエコな商品作成やReduce(減らす)、Reuse(再使用)、Recycle(再利用)の3Rをコンセプトにごみ問題について取り組んでいます。
⑦エネルギー問題
世界の温室効果ガス排出量の87%がエネルギーの生産が原因であるという調査結果が出ており、加えてエネルギー資源の枯渇が2060年と迫っていることから世界的にエネルギー不足や、代替エネルギーの模索などの問題が山積みになっています。
エネルギー問題についてSDGsでは目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」にて取り上げられ、目標7では脱炭素社会を目指す取組みや、エネルギー自給率向上のための取り組みが行われています。
世界と比較した日本の環境問題
さまざまな環境問題があるものの、環境問題は世界共通とも限りません。
例えば人口爆発などは先進国ではあまり確認されず、アジアやアフリカなどの新興国で多く見受けられます。
しかし、地球温暖化といったように世界共通の環境問題もあります。
そこで今回は日本と世界を比較して環境問題への対策ができているのか?などについてEPIをもとに紹介していきます。
EPIとはなにか?
EPIとはEnvironmental Performance Indexの頭文字をとっており、環境パフォーマンス指標といいます。
EPIはイェ―ル大学とコロンビア大学が共同研究を行い、11のカテゴリー32の指標のデータをもとに、環境の衛生力や持続力などについて世界140か国を国別でランキングしている指数です。
環境への配慮が高いランキングとも称されるEPIは各国が制定した環境目標をどれほど達成しているかなどの基準として活用されています。
日本のEPIは12位
このランキングは2020年に発表されたEPIの報告書になります。
上位11位までヨーロッパ、特に北欧を中心に占めており12位にアジア1位として日本がランクインしています。
2012年に発表された際は日本は23位にランクインしていたことから、環境問題対策の成長が評価されているといえるでしょう。
しかし、ヨーロッパは環境事業への補助金などが豊富にあることから日本以上の環境への配慮をした政策が行われていると判明しました。
日本がさらなる環境問題への対策を講じるには、問題解決事業へさらなる支援・補助金が必要といえます。
参照:https://epi.yale.edu/downloads/epi2020report20210112.pdf
日本人の環境問題意識は?
世界からみた日本の環境問題への取り組みレベルは分かったものの、日本人は国内の環境問題をどのように把握しているのでしょうか?
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授が公益財団法人旭硝子財団と協力して「日本人の環境調査意識」を実施しました。
調査内での質問に日本国内の環境問題で危機的に思う項目というものがありますのでご覧ください。
日本人の環境調査意識▼
https://www.af-info.or.jp/ed_clock/jpsense_result.html
この結果より日本のZ世代と大人世代両方とも気候変動や環境汚染、社会・経済と環境・政策・施策について問題意識が高い傾向があるとわかります。
反対に、生物多様性や水資源、土地利用などの環境問題を危機的だと認識している人は少ない傾向にあることがわかりました。
日本の環境問題の実状
日本人が危機的に思う環境問題は、実際はどのような実状があるのでしょうか?
日本人の環境問題意識の高い気候変動と意識の低い生物多様性を事例に説明していきます。
日本人の意識が高い環境問題の実状
気候変動
令和2年7月に熊本県で起きた記録的な豪雨により多くの地域で冠水被害や各地でのゲリラ豪雨、記録的最高気温などが起き地球温暖化による気候変動を身近で体験したことから、日本人が一番意識する環境問題になったと考えられます。
気候変動によって生活の安全を脅かされることが多くなり、環境省はCOOL CHOICEキャンペーンを実施することで気候変動の原因となる行動を減らす取り組みをしています。
COOL CHOICEとは脱炭素社会づくりに貢献する「製品への買換え」、「サービスの利用」、「ライフスタイルの選択」など地球温暖化対策となる賢い選択を取ろうという運動のことです。具体的にはカーシェアリングやクールビズ、エアコンの温度設定などが紹介されています。
日本人の意識が低い環境問題の実状
生物多様性
レッドリストと呼ばれる絶滅の危険性のある生物種のリストがあり、第4回目の作成となる第4次レッドリストでは、3597種の生物の絶滅の危機が警告されました。第3次レッドリストと比較し442種類が新たに登録されていることから絶滅のスピードが加速し、生物の多様性が損なわれてきつつあることがわかります。
環境省は生物多様性の環境問題をさらに認識してもらうために、一般向けには普及イベントや教育など、企業や自治体向けにはSATOYAMA イニシアティブやバイオマス事業の成長を促すなどの取り組みを行っています
SATOYAMAイニシアティブとは、国連大学高等研究所と環境省によって推進されている国際的な取組みです。
里山のような二次的自然が、人の福利(=human well-being)と生物の多様性の両方を高める可能性があることに着目し、土地と自然資源を最適に利用・管理することを通じて、人間と自然環境の持続可能な関係の再構築を目指しています。
私たちができること
私たちが環境問題を改善するためにできることは数多くあり、日常生活で出るゴミの削減やマイ袋持参などがあげられます。
そういった取り組みが環境にもたらす影響は微々たるものになりますが、環境問題は多くの問題が山積みになって出来上がってしまったものです。
環境問題の原因となるものを様々な分野から、豊富な手段で一つずつ解決していく意識がなによりも大切になります。
意識を変えたり、環境の現状を調べてみることが私たちができることの第一歩となります。
まとめ
私たちは現在多くの環境問題を抱えて生活しています。
しかし、その問題は突然起きたわけではないのです。
初めは小さな問題だったものが、解決されずに時間が経過するにつれて環境問題までに発展してしまったのです。
そのため問題解決にも時間や労力、そして地球上の全員の協力が必要です。自身が行える範囲からコツコツと環境問題の解決へ挑戦していきましょう。