声で世の中に貢献を|トークナビが創るセカンドキャリア

2023.11.09

この記事をSNSでシェア!

 

【更新日:2023年11月9日 by 中安淳平

アナウンサーというと、テレビの報道番組やバラエティー番組に出演している華やかなイメージを持つ方が多いと思います。しかし、結婚や出産によってテレビ局を退職した後のセカンドキャリアについて取り上げられることは少ないのではないのでしょうか。

今回はご自身も元局アナであり、株式会社トークナビを起業された樋田かおりさんに、アナウンサーのセカンドキャリアについてやどのような経緯で起業されたのかについてお話を伺いました。

トークナビについて詳しくはこちらから

声や言葉で世の中に貢献したかった

ーー自己紹介と会社の紹介をお願いします

私は、元々日本テレビ系列の地方テレビ局でアナウンサーをしていました。局アナ時代は、バラエティ番組や報道番組、声だけで伝えるラジオのパーソナリティーなど、幅広く「伝える」という仕事に携わらせていただきました。当時の経験を元に、声や言葉を使って世の中に貢献できることはないかと考え、 29歳の時にトークナビを起業しました。

トークナビは、伝えるということを軸にして事業を展開している会社です。 アナウンサーが企業の代わりとなり、メディアに情報を伝えて、取材を呼び込む「女子アナ広報室」というサービスや、アナウンサーたちがイベント・展示会のブース・入社式などで司会をする「女子アナ司会部」というサービスもあります。また、社名の通り、 トークをナビゲーションするという意味で話し方の研修事業を行っています。声を軸に複数のサービスを確立し、話す・聞くに関する事業を展開しています。

ーーなぜ今のような形の事業で起業しようと考えられたのですか

アナウンサーはテレビ局を辞めるとフリーランスで仕事をする方が多いですが、多くの人が仕事の不安定さに悩んだり、結婚や出産などを経てもう復帰できないと悩んだりしていることを知ったのがきっかけです。私も仕事がなく、同じ立場ではあったので、同じ悩みを持つ元局アナの仲間と一緒に、毎週勉強会を開き、テレビ局での経験をどうしたら世の中に還元できるのかということを考えていきました。そこから、伝えることに困っている人の役に立てるのではと思い、話し方の講師を始めました。

最初は1からのスタートだったのでとにかくやるしかないと、私が研修コンテンツを作り、 お客様の開拓も行っていきました。お客様にどんな困りごとがあるのかというニーズのヒアリングを1件1件訪問して行い、多い時だと1日で6社ほど営業マンのように会社を回り、自分たちに何ができるのかを確認しながら事業を固めていきました。

今では広報事業も行っていますが、これは、元々話し方の研修を受けてくださっていた経営者の方が、話し方がどんどん上逹され、さらに会社のことをもっとPRしたいというご要望があったことがきっかけで始まりました。経営者の方からメディアに出たいとのご要望があったとき、最初は知り合いのディレクターさんを個人的に繋いでいました。その後、広報として手伝ってほしいという声が上がり、その1人の方の声をきっかけに中小企業とメディアを繋ぐ広報のサービスを作っていきました。アナウンサー側は伝えるプロではあるものの広報としては未経験なので、広報の仕事内容を学び、事業を立ち上げていきました。

ーー起業に対して、難しさや戸惑いはありましたか?

最初は、こんなに色々なことをやらないといけないんだという驚きや、局アナという会社員だった頃は、会社に守られて、部分的な業務だけに専念させてもらえていたんだなという気づきもありました。

アナウンサーという職業は、原稿を上げてくる記者の方、映像を撮ってきてくれるカメラマン、統括をしているディレクターなど、チームの中で仕事を行っていました。そのため、様々な人たちが形にしようとしたものを最後に伝えるということがアナウンサーの役割でした。いかにわかりやすく伝えるか、その場に応じて話し方を変えるなど、職人のような仕事であったので、経営となるとまたガラッと違った仕事になります。しかし、戸惑いよりは、知らないことを行う楽しみの方が上回っていました。

オンラインでも繋がりを大切に

ーーどのようにしてアナウンサーを集めたのでしょうか

集めたという感覚はなく、「集まってきた」という印象が強いです。局アナ時代の後輩や同期などと繋がっていくので、 メンバー同士が以前から知り合いということもあります。いわゆるリファラル採用に近いイメージです。

私の場合は、日本テレビの系列が全国に何十社ある中の青森放送に所属していました。入社後の研修は、日本テレビ系列の地方局のアナウンサーが一緒に行っていたので、繋がりがありました。また、学生時代に30社ぐらいテレビ局のアナウンサー試験を受けていたため、色々な試験会場に行く中で、友達ができたこともありました。今一緒に働いているメンバーも大学生の時に就活を一緒にした人もいます。

このように、仲間たちが「集まってきた」のはありがたいですが、裏を返せば、そのくらいアナウンサーのセカンドキャリアに課題があるということだと思います。特に女性アナウンサーは結婚や出産などを経て、仕事を諦めてしまう人が少なくありません。

ーー多様な働き方として、メンバーの方は全国各地に住まわれていて、 オンラインでも仕事ができる環境があると思いますが、オンライン上でも社員間の繋がりはありますか。

オンライン上でもメンバー同士の繋がりは意識的に作っています。朝礼や定期的なミーティングに加え、アナウンサー同士の研修・学び直しを通して、さらにスキルアップをしていこうという考えがあります。

3周年を迎えた時に、社員たちが会社を「繋がりと成長」と表現してくれました。私たちが繋がることによって、それぞれの能力をさらに生かすことができており、各自が強みを出しつつ、弱みを補えるようなチームでありたいと考えています。

ーーオンラインでの働き方が主流になったのは、コロナ禍を経てからだと思います。トークナビさんは以前から、オンラインで働く形が確立されていたんですか。

トークナビではコロナ前からオンラインでの働き方を整備しており、家が職場というメンバーはたくさんいます。これには理由があって、社内のアナウンサーたちは地方局出身の人が多く、各地方で結婚して、色々なエリアに住んでいます。地方に住んでいるアナウンサーたちは、声にまつわる仕事が少なく、子育てをしながらアナウンサーに復帰することの難しさも感じています。そのため、アナウンサーとは全く関係のない仕事に就くことも多くありました。ですが、秋田や新潟に住んでいても、声や言葉にまつわる仕事を生涯やっていきたいという強い思いがある方もいます。そんな人たちが住む場所や働ける時間によって、その思いを失うのは、もったいない。だとすれば、オンラインで働ける環境を作ろうと、彼女たちが在宅で短時間でもできる広報や研修の仕事を創り出しました。

「働く」ことを前向きに

ーーアナウンサーのセカンドキャリアとして、中途採用を行うことが多いかと思います。一方で、アルバイトの方やインターン、新卒の採用も行っているとのことで、比較的若い層を採用し始めた経緯はありますか。

まず、大学生のインターン生を採用しているのは、学生のキャリア形成がとても重要だと考えていることが理由としてあります。大学生の時間のあるうちに、10年後の自分を考えることができるだけで全く違うと思っています。

私は、大学時代に先生が「女性でも長く働ける」というキャリアの授業をしてくださって、その時に初めて「働く」ことに対して前向きな気持ちになれたんです。実際に、学生時代には起業している先輩の元で働く経験もさせていただきました。この経験があったお陰で、29歳で起業した時に、抵抗なくやっていけたんです。インターン生には、私たちのような自分たちで切り開いていこうという会社を見てもらうことで、将来道に迷った時に、自分で考える力を身につけてほしいという想いがあります。このような経緯で、創業当時から大学生の方には積極的にインターンにお越しいただいています。弊社でインターンをやっていた人がアナウンサーになってトークナビに帰ってくるというケースが何人も出てきていて、嬉しい限りです。

新卒採用に関しては、長らく中途でアナウンサー経験者ばかりを採用していたので、 コミュニティのような雰囲気の会社だったのですが、会社の文化を作る為にも真っさらな人が必要だと思い、始めました。これから本格的な新卒採用を行っていこうと考えています。

ーー女性の社員が多いということで、子育てと仕事を両立できる方法はありますか

メンター制度があります。子育て後に仕事に復帰した先輩が話を聞いてくれて、自分がどのように子育てと仕事を両立していったらよいかを相談できるようにしています。人によって、ご家族・家庭を大事にして仕事は少しだけやりたいというタイプもいますし、子育てをしながらでも週3日は働きたいというタイプの方もいるので、それぞれを尊重して、この業務だったらこの条件でできますよと個別に案内をしています。

そのため、現在約70名いるメンバーは誰1人として同じ働き方をしていません。女性アナウンサーはかつて業界では「30歳定年説」などと言われていましたが、トークナビは柔軟に働ける環境をつくり、女性アナウンサーが50歳、60歳になっても働ける会社にしていきます。

ーー最後に、ジェンダー平等の考え方が徐々に広まってきている日本において、今後の女性の働き方はどうあるべきだとお考えですか

女性はカラダの調子にリズムがあり、うまくいく時と辛い時とが交互に定期的にやってくるという人が多いと思うので、自分の体調をよく理解した上で、無理なく継続的に働けることを目指した方がいいと思っています。

そのうえで、女性の仕事での可能性はまだまだあると感じています。AIが進化をして人の仕事が減ってしまうと言われていますが、人と人が向き合う仕事は残っていくと思うので、話す・聞くなどのコミュニケーション力を大切にし、誰もが継続的に働ける環境を整えていきます。

さいごに

今回はトークナビの樋田さんにお話を伺いましたが、アナウンサーのセカンドキャリアの可能性を一番に信じたていたからこそ、コロナ以前からオンラインでの働き方を確立させ、多くの企業や顧客に必要とされているんだなと感じることのできたインタビューでした。

また、オンラインでのコミュニケーションやAIによるコミュニケーションが広まってきた今だからこそ、「言葉や声のプロ」であるアナウンサーの価値がより高まっていくのではないかと感じました。

今後も株式会社トークナビの動向に目が離せません。

 

この記事をSNSでシェア!

  • ランキング

    日本のLGBTの割合は人口の約10%-高校生での割合や海外との比較も紹介

    新着記事

    アシックスの新しいランニングシューズNIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)

    SDGsの基礎知識

    食品ロスとは?原因や日本と世界の現状、家庭でできる対策を紹介

    もっとみる

    おすすめ

    「グリーンウォッシュ排除」で測る|SDG Impact Japanの目指す未来

    【特別インタビュー前編】1年でESG、SDGsを全社に浸透|すべてのマテリアリティのKPI策定にも取り組むオートバックスセブン

    SDGsの胡散臭さから脱するには?同調圧力から逃れて企業の存在意義の見直しを

    SDGsをビジネスチャンスに|日本サニパックにとってサステナビリティとは